過去放送記録

FILE097:「驚異の人体ガスツアー」

2010年1月12日放送

 

末松誠(代謝生化学)

中毒死を引き起こす危険なガスと思われている一酸化炭素。
このガスが微量ながら体内に発生していることは1960年代に発見されていたが、その役割については長らく謎のままだった。一種の排気ガスのようなもの、と思われていた一酸化炭素の働きを立て続けに解明し、世界を驚かせてきたのが、代謝生化学を専門とする末松誠・慶應義塾大学医学部長である。
精巣内でストレスのかかった精子を殺したり、肝臓の血流をよくしたり、脳では逆に血流を抑えたりと、一酸化炭素は体内各所で多彩かつ重要な働きをしていた。末松は「こうしたガスの特性をうまく利用すれば、脳こうそくなど血管に関係する病に対して、有効な薬や治療法を開発できる可能性がある」という。固体の薬と違い、ガスは血管や細胞のバリアを簡単に越えて患部に届くからだ。さらに近年、末松は腸でのガスの働きに注目しているという。
「腸内には酸素がほとんどなく、メタンガスや一酸化炭素、二酸化炭素などが充満している、いわば太古の地球のような状態。人はその環境を体内に取り込むことで進化してきた」という末松。
生命体を維持するしくみの不思議をめぐって、爆笑問題との熱いトークが交わされる。

末松誠(すえまつまこと)
慶應義塾大学医学部教授(医化学教室)。1957年生まれ。
1983年慶應義塾大学医学部卒業。
1992年医学博士取得。
8年間内科で臨床医を務め、2001年より現職。
2007年より慶應義塾大学医学部長に就任。
活性酸素やヘム代謝、ガス状メディエーターによる血管機能の調節を主な研究分野としている。

今回の対戦内容

末松誠(すえまつまこと)/爆笑問題


田中:ガスの研究というと、おならの研究って思うじゃないですか。そのニュアンスとはちょっと違いますね、このガスの研究は。
末松:そうですね。酸素も一酸化窒素もね、漫才でいうとツッコミだね。何にでもぶつかって、相手を変えようとするんです。で、一酸化炭素はね、そういう性質がない。ボケなんだよね。ガスも1個1個キャラがあるんです。
だけど、細胞やガス分子には、意志も何もないですよね。だから不思議ですよね。うまく出来てる。こんな残りかすの排気ガスみたいなガスが、体内では、本当に無駄なく使われて化学反応している。
太田:面白いですよね。
田中:この研究が進むじゃないですか。そうすると、それはどんな病気にどういうふうに効くようなものになるんですか?
末松:脳梗塞とか、もともと血管が詰まっているところに薬を送るってすごく難しいですよね。ガスの面白いところは、そのバリアを超えられる性質があるから、コントロールする技術があれば、薬として使えると思うんです。こういう一度、血管が詰まって駄目になりそうなところとか。
太田:くも膜下出血とかさ、ああいうのにね、役立てばすごいことだよね。

先生の対戦感想

末松誠(すえまつまこと)


天文学の話に興味を持ってくれたのはうれしかった。
ガスの研究はね、まだまだIPS細胞とかのようなメジャーな研究分野にはなっていないから、これから広げていかなきゃいけないと思っているんだけど。ちょっとあれだな。太田さんたちも、この研究は、最初はつかみどころがなかったかもしれないな(笑)
太田さんが、科学を全部理詰めで突き詰めていくと、最後に遊びの部分があるかどうかって関心をもっていたじゃないですか。あれは僕もいつも考えることだね。全部が数式できちんと割り切れてっていうのがサイエンス。でも、そうじゃないところがあるんじゃないかって思っている自分と、そういうところを理屈でちゃんと説明しようとする自分がいるんだって。太田さんの反応は鋭かったね。何か妙に価値観を共有してしまったね、今日は。
面白かったです。非常にいい経験をさせてもらいましたよ。

爆笑問題の対戦感想

田中:ガスの専門家って、普通おならの話とかになるのかなと思ったら、あまりそういう感じじゃなかったですね。でも、普通にまあいわゆる酸素を吸って、それがどうなるかっていうのを知ることが出来て、考えたこともなかったから面白かったですね。
あの先生は、全部が理屈じゃないというか、哲学的なこととか、それこそ天文好きだってことで宇宙のこととか、そういうバランスがすごく取れている先生だなっていう気がしました。あまり自分の研究にガーッと行って、これだっていうようなことではなくて、お話しやすかったですね。
太田:とにかくまだ分かっていない部分がたくさんあるっていうことを感じた。一酸化炭素ガスとかが、人間が生きていくのにすごく効率的に役立っているということを一個一個証明していくと、すべてが必然っていうか、つじつまが合うようにできているかも知れない。宇宙の法則も相対性理論も、人間は最終には、それを全部見つけ出して証明すると思うけど、それと同時に、先生も最終的な部分っていうのを、自分でも疑っているって言っていたけど、やはり、どこかに何か不可解なものがないと面白くないっていう気持ちがあるわけで。やっぱり同時に存在しているっていうのは自己矛盾なんだけど。
でも、誕生して死ぬっていう生命の矛盾にも似ている。何かそういうことをよく思うんですけどね、最近。

ディレクター観戦後記

人体ガスツアーいかがでしたでしょうか?
SF映画の古典「ミクロの決死圏」から、スピルバーグ監督の「インナースペース」まで、人体の神秘をテーマにした物語は、古くから人々を魅了してきました。
末松先生のお話は、いつも人体のトリビアが満載。取材の時間は、まさに、そんな映画の主人公になりきって人体を旅しているような感じがしました。
1998年に、体の中の一酸化窒素の研究でノーベル賞を受賞した人がいます。
その人の研究は、体の中の一酸化窒素が血管調整をしているという内容でした。
その研究は、後に、「夢の薬」の開発に結びつきます。
そのノーベル賞学者は現在、「バイアグラの父」と呼ばれています。
末松先生の一酸化炭素の研究は、そんなロマンがあります。
先生、お忙しい中、時間を割いていただきありがとうございました。

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