FILE090:「新型インフルエンザの真実」
2009年11月3日放送
河岡義裕(ウイルス学)
感染拡大が続く新型インフルエンザ。季節性インフルエンザと同じだと考えていいのか?かつてのスペイン風邪のように強毒化する危険性はないのか?冬に向けて不安を抱く人も多いはず。
河岡義裕東大教授は、新型インフルエンザとスペイン風邪との類似性や、肺で増殖しやすく重篤な肺炎を引き起こすといった特徴、免疫が90代にしか存在しないことなど、その知られざる姿を矢継ぎ早に明らかにし、世界的に注目を集めるウイルス学者である。
手洗い・うがい・マスクは意味あるの?“水際作戦”や学級閉鎖は感染拡大に有効?ワクチンや抗インフルエンザ薬のメリット・デメリットは?などなど、誰もが抱く素朴な疑問に対して、目からウロコの事実が次々明らかに。
爆笑問題との対話は、「人類とウイルス」の切っても切れない深遠な関係にまで及ぶ。
緊急テーマ「新型インフルエンザの真実」。この時期、必見の内容だ!
「東京大学医科学研究所・ウイルス感染分野」のページはこちら。
http://www.ims.u-tokyo.ac.jp/virology/index.html (NHKサイトを離れます)
河岡義裕(かわおかよしひろ)
1955年神戸市生まれ。1978年北海道大学獣医学部卒業。1983年米メンフィスのセント・ジュード・チルドレンズ・リサーチ・ホスピタルに留学。1997年米ウィスコンシン大学獣医学部教授に就任。1999年東京大学医科学研究所教授に就任。2006年ロベルト・コッホ賞受賞。
今回の対戦内容
河岡義裕(かわおかよしひろ)/爆笑問題(太田/田中)
太田:ウイルスは感染していくうちにその何かの要素で強くなる?
河岡:ウイルスって結局のところ、我々が見ているのはどういうことかというと、もともとはベストじゃないウイルスが、例えば人に、今回みたくブタから人に行ったと。そこで一番よく増えるようなやつが選ばれていくわけですよね。ウイルスとして成功するのはどういうやつかというと、一番よく増えるやつ。で、結果としてたまたま人が死んでいる、ということなんですね。歴史がどんどん長くなっていくと、結局どういうウイルスが残るかというと、病気も起こさずにずっといるようなウイルスが残る。
田中:すごく派手な病気を起こすウイルスは、そんなに長くないわけですね。
河岡:結局感染して、感染した相手をどんどん殺してしまうと、ウイルスとして生き残れないので。
太田:その原因っていうのは、要は生き残ろうとするために強くなる、ウイルス自体が。まあ矛盾するわけだけど、あまり強くなりすぎると、今度は感染する場所がなくなっちゃうから、自分の居場所はなくなるわけだけど。でも、あまりにも弱いとすぐに。
河岡:どんどんウイルスがずっと増えていくうちには、それじゃあ良くないので、ベストのものとしては、増えるけれども、病気はあまり起こさないっていうのが選択っていうか、残っていくんです。
太田:じゃあその自然淘汰みたいなことがそこでこうあるとするならば、その過程なんですね。
河岡:そう。今まさしくもともとはブタのインフルエンザウイルスが人に入って、その過程で、過程はそのウイルスがよく増えるっていうので選ばれるんだけど、その段階ではたまたまよく増えすぎて、人も死んでしまったと。
太田:その途中なんだね。
田中:そうか。で、路線変更するわけですね。
河岡:ウイルスはどんどん変わっていて、環境に一番いいのが選ばれて残っているだけの話なんです。
先生の対戦感想
河岡義裕(かわおかよしひろ)
非常に楽しかったです。爆笑問題さんはもちろん前から存じ上げていますけど、実はデビューされた頃からずっと好きで、あの太田さんの切れのある感じがすごく好きなんですが、今日も全くその通りで。
日本の状況というかね、それに対して私が個人的に思っているようなことを同じように考えておられたので、普通のニュースでは伝えられないような個人的な意見というか、個人的に思うことってあるじゃないですか。そういうのを伝えられたかなという気はします。
爆笑問題の対戦感想
田中:ウイルス系の話は何度かしているんですが、いろいろ驚きの事実がありましたね。(感染者が最初に出た時期に)大阪で学級閉鎖や休校をバーッとやったのは、ちょっと過剰反応みたいに取られがちだったんだけど、実はあれは世界的に評価されていて、あれによってかなり感染拡大が防げたっていうのは、今日知りました。
うがいにはインフルエンザ予防の効果がないっていうのはショック。うがいは癖っていうか、何となく手を洗うのと同じようにうがいをしたくなるんですよね。まあ、だからといって、うがいをやめようとは思わないですけど。別に効果がなくても、のどをガーッとやりたいですもんね。
僕が出演した映画「感染列島」の話ですけど、あれだけトップの人に「あれによって対策が進んだ、よかったですよ」って言ってもらえたのは単純にうれしかったですけどね。ただ先生は、おれの出演シーンはほとんど覚えていなかったね(笑)。全然ね。ごめんなさいって言っていたからね。
太田:ウイルスだけでなく人間も、いわば強毒になっているわけだよね。ウィルスに対抗する抗体をまた身に付け、ウィルスを殺す体になっているわけだから。ウイルスがそれをまた超えるっていうのはもう、それはもう自然の摂理だと思うんだよね。
例えば蚊とかダニとかは、言ってみれば何日かで死ぬわけだから、人間のスパンよりも全然世代交代が早いわけですよね。そうすると、殺虫剤なんか使っても、どんどん次のシーズンにはもっと強い耐性を持ったのが出てきて、あっという間だと思うね。ウィルスなんていうのは、そういう意味での世代交代っていうのは、すごく頻繁に起きるわけだから。人間が何百万年かけて進化してきたことを、要するに人間は寿命が80歳ぐらいまであるから、それだけ時間が掛かるわけだけれども、ウィルスとかっていうスパンで言えば、圧倒的な速さでそれは起こるわけだから。
ところで僕はインフルエンザにはかからないと思うんだよね、かかったことがないから。
やっぱり何ていうんだろ、耐性というか、健康なんですよね、僕。健康は本当にね、病気だけはね、何の心配もないんですよ。
ディレクター観戦後記
今年4月、メキシコに突如出現した新型インフルエンザウイルス。瞬く間に感染は世界へと拡がり、世界的大流行パンデミックを起こした。このパンデミックは専門家でさえ予想できなかったと河岡教授も言っているように、ウイルスは実に神出鬼没だ。
今回の新型インフルエンザウイルスは長い間豚の間で感染を繰り返してきたと言われている。そのウイルスにいったい何が起こり人から人へに感染する能力を獲得したのか?今は謎だが、河岡教授によって今後解明されることだろう。
河岡教授は人に病気をもたらすウイルス研究に長年取り組んで来られた。その河岡教授にとっても「なぜウイルスは人に病気をもたらすのか?同じウイルスに感染してもなぜ死ぬ人と死なない人がいるのか?とにかくウイルスって分からないことだらけなんですよ。」と話す。
研究に没頭する河岡教授にしばらく終わりが訪れることはなさそうだ。
つぶやき
KEYWORD
生命
生物
人間
思想
社会
未来
