アンコール@FILE079:「味のある話」
2009年9月29日放送
@@FILE079(7月14日放送分)のアンコール放送!@@
都甲潔(人工舌)
「人は生物として異常だ」と語るのは九州大学大学院教授・都甲潔(とこう きよし)。都甲は、人の味わう感覚を機械が再現する“人工舌”=味覚センサーを世界で初めて開発、味覚研究の最先端を走る男だ。都甲は、舌のメカニズムを研究する中で、人間の摩訶不思議な「味覚」の謎にのめり込んできた。もともと生物は甘みを好み、苦みを嫌う味覚を持つ。甘みは「栄養源」であり、苦みは「毒」であるからだ。これは単細胞生物である粘菌にも見られる原始的な感覚であり、生物の進化を支える重要なセンサーの役割を果たしてきた。しかし、なぜか人は進化の過程で、生物が忌避するはずの苦み(コーヒーやビール)を楽しむといった「歪んだ」味覚を備えるようになった。そこには、人類が進化の中で急速に発達させてきた「新しい脳」=大脳新皮質の存在があると都甲は考えている。人間の味覚は、この新しい脳と、古くからの生物から受け継ぐ本能との、せめぎ合いのなかにあると都甲は言う。
苦味だけにとどまらず、激辛食品がブームになるなど、「痛み」(痛覚)として感じる辛味まで嗜む人間。暴走する味覚は、進化の逸脱なのか?それとも人間らしさの現れか?
番組では、爆笑問題が、味覚を軸に人類の進化を探求する都甲と“舌戦”。味覚を通じて、人とは何か問い直す。
都甲潔(とこうきよし)
1953年福岡県生まれ。九州大学博士課程、同大助教授をへて現職。
2006年文部科学大臣表彰 科学技術賞
趣味は読書で、自宅の蔵書は一万冊。哲学など人文系から数学まで幅広い。
今回の対戦内容
都甲潔(とこうきよし)/爆笑問題(太田/田中)
太田:苦いものを避けて甘いものを摂取する粘菌みたいなものとくらべると、人の味覚は、もう格段の複雑さがあるわけじゃない。しかも見た目もあるし、いろいろな味の経験もある。世間でこの味がいま流行ってるとかっていうのも、ずうっと歴史で変わっていくわけで、そうするとさ、生存ということとはもう関係なくなってくるのは…。
都甲:人間は、もはや味覚を生存と関係ない、趣味の領域に引き込んでいます。単細胞生物の粘菌の味覚は、生き死に関わります。でも僕らは、進化しまくっちゃって、あとは舌が味わってうれしいか、というだけになっている。もう僕らはいまや、あまり舌を使ってないですね。
太田:むしろ情報のほうが勝ってる。
都甲:例えばコシヒカリがありますね。どこどこ産コシヒカリって、えらく人気ありますよね。それをDNA鑑定してね、これは本物とかウソとか言いますよね。でも人間が味わって区別がつかなかったら、それでいいじゃないですか。どうしていちいち、どこどこ産コシヒカリにこだわる必要がある。情報が勝ってるんです。
太田:それこそいわゆるブランドの情報が頭に入るということで、やっぱり微妙に味覚が変わってるっていうことでしょ。
都甲:そういうことです。人間が変わるんです。
先生の対戦感想
都甲潔(とこうきよし)
味覚に関して、きちんと見識が深くなって、対談を終えたかなと思っています。味覚を、粘菌という視点や、脳の視点から議論したり、さらには、味の数値化という話もしたり、いろんな要素が結構ごちゃ混ぜになっていたんですが、彼らはちゃんとそれについてきてくれました。彼らは自分の言いたいことも言ったし、僕も自分の言いたいことを言ったし。1時間半の会話の間に彼らが成長してくれました。従って、非常に満足しています。
会話っていうのはね、食事しながらが一番いいんです。食というのは人をハッピーにする。今日だっておいしい食事をしたじゃないですか(笑)。
彼らは、微妙なリアクションをしていましたけど、何でって思いましたね。あれ、そんなに出来が悪かったかな。もう一回チェックしないといかんな。
しかし、田中さんのウニには笑いました。ウニ、あれは良かったですよ、田中さんのウニは。これで視覚情報に味覚がだまされるっていう落としどころにぴったり来たでしょ。そういう点ですべて作戦通り。言ってみれば大成功ですよ。
爆笑問題の対戦感想
田中:面白かったですね。変わった先生でしたし・・・。楽しく、重たいところが全くない回でしたね。
結構意外だったのは、『味覚センサー』というものが、世界にないっていうこと。食品会社とか、そういうところでは結構使っていそうな気もしたんですけどね。だから、これからこれは色々使われるんじゃないかなっていう気がしましたけどね。
ただ・・・。まずかったですよ。
ミカンにしょうゆをかけたあれ、まずかったですね。ウニに感じたというか。見た目が、ミカンですからね。だから、これをウニに思わせたいのかと思って、勘違いして食べました。イクラだってちゃんと認識していたら、もしかしたら多少は「イクラっぽいな」って思ったかどうか・・・、やっぱり分からないんですけど。僕は、割と見た目や状況に味覚が左右されちゃうタイプなんです。だから、一目見て『ミカンにしょうゆとご飯』って思っちゃったら、もう駄目なんです。だから、ちょっとつらかったです。以前、番組の罰ゲームで、アジャコングさんが生卵をジョッキにいっぱい入れたのを飲んでいるのを見て、ウェーってなっちゃったぐらいなので。食べるのは結構つらかったですけど、先生は面白かったです。
太田:味って、いろいろな主観的な要素で変わる感じがするので、味覚センサーを基準にして、どうすれば本当にみんながおいしいと思うものができるのか、使い方がむずかしいところですよね。
僕が面白いと思ったのは、その開発のきっかけが、奥さんの作ったハンバーグの中に入っていたニンジンっていうところ。そんな単純なきっかけで、世界初の機械を作ってしまうまでになるんだなあって思いましたね。
ディレクター観戦後記
「生物にとっては、毒と栄養を見分ける重要なセンサー。でも現代人にとって舌は、快感を得るためだけのおもちゃ」都甲さんは取材の際、そう語りました。
確かに、視力や聴力の検査はあれども、味覚の検査を受けた記憶はありません。人の生き死にはもちろん、学習や労働といった“社会の役に立つ”活動には、関係ないとみなされてきたのでしょう。
都甲さんの専門である電子工学(エレクトロニクス)の世界でも、さまざまな製品への応用が期待される映像(視覚)や音声(聴覚)機器の開発は、めざましい進歩を遂げる一方で、味(味覚)は、マイナーな研究分野だったそうです。
そんな舌にこだわり続けることで、歪んだ現代人の本質を鮮やかに切り取ってみせる都甲さん。その姿勢には、番組の制作者としても感じ入るものがありました。
「おもちゃである舌に翻弄される現代人」。体重を気にしつつも、深夜のコンビニで、ビール(苦み)とポテトチップス(塩味、油分)をつい手にとってしまうたびに、都甲さんの顔がちらつきます。当面、糖質オフ、カロリーオフ的なもので、本能と理性のバランスをなんとか保っていこうと思っています。
つぶやき
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