FILE084:「21世紀 マンガノチカラ」
2009年9月8日放送
6月8日(火)午前2:25〜2:54(7日・月曜深夜)<総合>
浦沢直樹(漫画)
初回放送より90回近く、ひたすら大学や研究所の教授陣と知の格闘を繰り広げてきた「爆笑問題のニッポンの教養」が、大学や研究所を飛び出すシリーズの2回目。今回登場するのは、漫画家の浦沢直樹。世界一面白いといわれる日本の漫画。その世界で最も勢いに乗る漫画家の一人が浦沢直樹だ。『YAWARA!』『20世紀少年』とメガヒットを連発、コミック総売上は1億冊を超す。
浦沢作品はなぜ大人気なのか。
爆笑問題はその秘訣を探るため制作スタジオに潜入、そこで明かされる『20世紀少年』の制作秘話、永遠の師匠・手塚治虫氏への思い、はたして漫画は芸術なのか…。
爆笑問題×浦沢直樹の熱い表現者対談の結末やいかに!
浦沢直樹(うらさわなおき)
1960年 東京都府中市出身
1982年 『Return』で小学館新人コミック賞入選
1983年 漫画家デビュー
代表作に『YAWARA!』『MONSTER』『20世紀少年』『PLUTO』など
今回の対戦内容
浦沢直樹(うらさわなおき)/爆笑問題
太田:おれなんかお笑いをやっていると、どうしてもビートたけしっていう人の影響をモロ受けているわけです。で、発言や何かっていうのはどうしても亜流になっちゃう自分がいて、すごく嫌なわけですよね。けれどもそこから抜けられない、それがきっかけになっちゃっているから。で、あいつ早く死んでくれないかなとかって。
田中:何だそりゃ。
太田:いうことをラジオで言って、また問題になったりするんですけど。正直いなければ。でも、いなければ今のおれはいないんだけどどうすればいいのよ、これっていう。いつまでたってもそれを覆せないとおれやっている意味ないじゃんって思ったりしてむなしくなったりするんです。漫画界にとっては、手塚治虫ってまさにその位置にいるわけじゃないですか。そういうのってどうすればいいんですかね。超えられないでしょ、だって。
浦沢:僕も随分ね、悩んだことがあるんですよ、同じように。そうしたらローリングストーンズのギターのキース・リチャーズがさ、彼が『自分が死んだら墓碑銘に、過去の遺産を未来に語り継いだ男と刻んでくれと。自分のやったことはそのぐらいだ』って言ってて、ああこのスタンスはかっこいいわって思ったわけ。
太田:そうだろうね。多分手塚さんも、誰かから学んでいるわけだし。
浦沢:超えられないわって思った段階で、あるちゃんと真理が分かっているんです。自分は究極の芸のようなものはなかなか出せないけれども、こんなのだよ、だったよっていうのをとにかく今の若い世代に語り継ぐっていうぐらいしか出来ないだろうと。
太田:まあそうなんでしょうけど。
浦沢:もしでもそれが出来たら、それはそれですごいもん。
太田:まあ語り継ぐことが出来たらね。
先生の対戦感想
浦沢直樹(うらさわなおき)
太田さんとはもう少しぶつかるかなって思っていたんですけど、フィールドは違っても何か立っている位置っていうのが似通っていると感じましたね。「似たもの同士」が会うと照れるんですよ、何か自分を見ているみたいで。だから今日も少し照れました。あと田中さんはすごかった。太田さんには田中さんが必要だなと思いました(笑)。いやあ、大事にした方がいいわ、田中さんは、っていう感じですね。
もしかするとあの人たちにとっては、すべての活動が別ジャンルではなく全部自分たちの漫才なんじゃないかなって瞬間的に思いました。今日はちょっと爆笑の漫才に参加してもらってうれしいなっていう感じです。
爆笑問題の対戦感想
田中:『20世紀少年』や『MONSTER』とか、すごく好きで読んでいたので会えてうれしかったです、率直に。全然想像していないような話もありました。『20世紀少年』の最後ははじめから考えていたっておっしゃったじゃないですか。それはすごく意外でした。
お互い読んできた漫画がそう違わないんで、手塚治虫が好きだなっていうのは本当に分かるし、コマ割りも手塚さんや映画の影響をすごく受けているという話が出来たことはすごくうれしい。同じ世代の共通の価値観みたいなものはよく分かりました。
太田:『20世紀少年』のともだちの正体のことなんかそうだけど、あそこまで話題、論争になるぐらいものっていうのは誰もが描けるものじゃない。僕はそんなものをまだ生み出せていないので。それはすごいなと思います。
田中:あと漫画は芸術だと思っているけど、芸術になっちゃうとちょっと変わっちゃうみたいな話も分かりやすいなと思って聞いていました。
太田:漫画って技術職じゃないですか。だから浦沢さんの、「ここまで修得してきてやっと自在に使えるようになったんだからもっとこのジャンルでやりたい」っていう気持ちはすごくよく分かります。それ一本でやってきた人の力っていうのがある。でも俺らのやっていることは専門的なことではなく、あっちに手を出してこっちに手を出してどれも納得がいかないみたいなところがあるから、何かそういう自信っていうかねそれを今フルに使って表現出来るようになったっていうのはでかいんだろうなと思うんだけどね。
でもやるなら手塚治虫にならなきゃつまらないっていうところで、多分浦沢さんもそういうところで葛藤があるんじゃないかな。おれにとってのビートたけしという存在と同じようにね。
ディレクター観戦後記
漫画家、それは究極の「一人映画監督」です。
絵はもちろん、ストーリーを紡ぎ台詞回しを考える。役者に演技をさせ、すべてのカメラ割りをして衣装や美術の小道具大道具、時代考証や風俗考証もする。毎回これだけの作業を経てメガヒットを連打する浦沢先生の仕事ぶりは、実に「スマート」でした。もちろん頭を掻きむしり机にかじりつく時もおありでしょう。しかし情熱と冷静が常に併存し、自負と謙虚さを兼ね備えていらっしゃる、そのバランス感覚が浦沢作品の根幹にはありました。
それにしてもかっこよすぎるよなあ、浦沢先生!と感じた方にはこんなお話を。漫画を描きながら登場人物が何時間も睡眠をとっていなかったり、何時間も食事をしていなくて空腹だと気づいたとたん、ストーリーを中断してでも眠らせたり、ご飯を食べるシーンにするのだとか。「だって人間として当たり前のことでしょう。」26年前、漫画家になるに当たって古典落語を浴びるように聞き、民主主義の原点として拠り所にしようと思ったという浦沢先生。世界的な人気の源泉はこんなところにもあるんだ、という私の発見だったのですが、皆さんはいかがでしょう。
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