FILE081:「世も金もゲームなり」
2009年7月28日放送
松島斉(ゲーム理論・経済学)
今、経済学界で熱い注目を集めているのが「ゲーム理論」だ。ここ15年のノーベル経済学賞のうち実に6回がゲーム理論の関わる受賞となっている。世界が認める気鋭の研究者・松島斉(まつしまひとし)はゲーム理論こそ「人々の満足度を高めるための学問」と語る。ゲーム理論が誕生したのは20世紀半ばのこと。将棋やオセロなどのゲームで、相手の手を読みどうやって勝つか分析することから始まり、投資・外交、男女の恋愛や心理など必ずしも勝ち負けが決まらない場合でも応用されてきた。
つまり関わり合いのある人や団体などが2つ以上ある場合、各自の満足度を最大にするためにはどうすればよいのか、社会のありようや効果的な方法を、理論的に分析するのがゲーム理論である。その分析のためには、数学が用いられる。
従来の経済学では市場万能主義と考えられていたが、「相手の出方を考える」「相互に依存する関係」「全員の満足度」といった視点を持ち込んだところが画期的だ。
結成21年目を迎える爆笑問題の太田・田中の二人の関係分析にも使えるゲーム理論、そこから松島教授が読み解く今後の活躍のヒントとは?
これからの世の中の仕組みを変えていくためのアイディアが詰まったゲーム理論は、現在の金融危機克服の手掛かりにもなるという松島教授。21世紀の経済学を担うと目される学問の最前線に爆笑問題が迫る。
松島斉(まつしまひとし)
1960年 東京都大田区生まれ 1988年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了 経済学博士。筑波大学を経て2002年より現職。 2003年 エコノメトリックソサエティーフェロー、2004年日本経済学会 中原賞 2007年 エコノメトリックソサエティー理事
趣味は野球観戦、40年来の筋金入りヤクルトファン。かつ40年来の骨董クラシック音楽音源ファン。
今回の対戦内容
松島斉(まつしまひとし)/爆笑問題
太田:ゲーム理論っていうのが、あれだけノーベル賞を取っているっていうことは、現実に応用出来るっていうことなわけですよね。その目的は何ですか。経済を要するにもうちょっと上げたい?
松島:今、金融危機が問題になっているでしょ。ばらまきとか公的資金とかって。僕から見るとね、この話をしている人たちはね、奴隷だと。
田中:いて!痛いっすよ。何ですか。
太田:どういうことですか。
田中:過去の経済学の奴隷?
松島:そう。例えばインフルエンザ、新しい変な病気が出てきたりするでしょ。ただ、症状を見るとまあ風邪と同じだなと。そうするとちゃんとしてないお医者さんは、じゃあ風邪薬、ちょっと多めに出しておきますってなるわけ。ただ単に症状が風邪に似ているっていうだけで、今までやっていたからまたやるって言っているだけなんです。今回みたいな危機は80年前に一度アメリカで起きています。でも当時は今のような経済学が全然出来上がっていない。だから今の経済学の流れの中で今回のような大きな危機っていうのは、一度も経験がない。経験がないっていうことは、何か研究上の蓄積もあまりないわけよ。だからこの金融危機の中で起きていることを調べていかなければいけない。
田中:いわゆる新型インフルエンザはどういうウィルスかということを調べる。
松島:そう。
太田:何が原因か。
松島:調べるっていうことね。そうすると正しい治療法が分かるわけですよね。ちょうどそれに対応するようなことをやるのが役回りがゲーム理論だと。
先生の対戦感想
松島斉(まつしまひとし)
爆笑問題さんはとても長いおつきあいで、ゲーム理論でいう「暗黙の協調」関係にあるといえます。今は非常にいい状態で安定していて、もし羽目を外すと立場が逆転する、そうならないように維持しようとどこかで考慮していて2人ともそれが「得」と考えるわけです。太田さんのあれこれと思いを巡らせてきちんと議論をしたいという姿勢は、ゲーム理論研究者に実に向いていると感じました。そして田中さんがいなければ爆笑問題は成り立たないという思いも強くしました。
お二人ともとても食い付きが良く、わからないことがあればどんどん言ってくる、この姿勢はむしろ学生に見習ってほしいです。そして私自身、こういう場でどんどん意見を言い、一方で良い研究をしてはっきりとしたメッセージを出していきたいと改めて思いました。
爆笑問題の対戦感想
田中:ゲーム理論って一言では分かりにくいのかもしれないけど、クイズみたいで僕は割と好きだなと思いました。これを現実に結びつけないと意味はないのだろうけど、新しいシステムやそういうものを発見する、パズルを解くような楽しさがあるんじゃないかなと思いました。
太田:まあでも実生活に応用するって言うのは結構難しくて、もうひとつアイディアがいるんじゃないかな。
田中:太田さんは話の中で、競馬にも使えるんじゃないかといったけど、どうかなあ?無関係じゃないだろうけど競馬ってやっぱり不確実だし。 人間が走るんだったらもっとゲーム理論的なものになるような気がします。
太田:ゲーム理論っていうのは世界中の人の欲求を満たす形で、なおかつ世界がうまくバランス取れるようにするというのがあると思うんだけど、そうすると本当に哲学的で、何が満足でなにが不満かということを捉えることから始まるね。となると現状がどうなのか、そこを間違えると全部その後の理屈は意味がなくなっちゃう。だから金融危機の解明っていうのも実は大切なんだよな。
ディレクター観戦後記
「100年に一度の不況だというのに、ゴマンといる世の経済学者は一体何をしているんだ!今こそ出番じゃないか!」
半年ほど前、ある研究者への取材中にその先生が突如いきり立ちました。は、はあ?と面喰った私は、この番組でしかるべき経済学者に金融危機を語っていただくべきだと考えました。その昔落ちこぼれ経済学部生だったトラウマと決別すべく経済学の教科書をひもとき、かすかに記憶していた「ゲーム理論」が脚光を浴びていることをキャッチ(といっても中身の理論は分からない)、世界にその名をとどろかせる松島先生に、教えとご出演を乞うたのです。
ゲーム理論はとても抽象的な理論です。が、松島先生の言葉の通り私たちの思いもつかない可能性を秘めています。他人との利害配分やライバル企業との共存で悩む、政治や外交の対外関係でもめている、こうした日常の課題がひとたび研究者にぶつけられることで新たなモデルが生まれ、欧米に比べ遅れている日本のゲーム理論が発展し、悩みが解消、満足度が高まる・・・・
「日本中のゲーム理論の研究者は皆さんからの相談を待っているんですよ。」 取材中、松島先生が力をこめて語っていらっしゃったこの言葉、最後に記しておきます。
つぶやき
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