FILE076:「『時間』という名の怪物」
2009年6月23日放送
一川誠(実験心理学)
大人になると時間の流れが速く感じられるのはなぜか?苦手な上役と一緒だったり、退屈な会議に出ていると、なぜ時間は長くなるのか?そんな身近な疑問から、人間の知覚認知の処理過程まで、「時間」という対象と格闘しているのが、実験心理学者・一川誠(いちかわ まこと)だ。一川は、物理的時間ではなく心的時間としての時間の特性を研究してきた。人が置かれた状況などによって、どう時間は変化していくのかということである。身体の代謝の変化による時間の感じ方の違い、止まっているモノを見るよりも、動いているモノを見る方が処理時間が短いという認知特性、死という個人的時間の限界に向かっているのにそれを見つめない自己防衛機能…。一川はそうした研究から、人間がいかに時間の特性を知らないで生きているかを明らかにしている。そして一川は現代日本を、人類史上例を見ない、時間に支配された文明だと考える。「時間の厳密化」「時間の高速化」「時間の均質化」である。かつては太陽の運行と順応し、歩くスピードで物事をはかり、人それぞれが個人の時間を持っていた生活から、わずかな間に激変した社会の状況。その先には、どんな未来が待ち受けているのか。一方、爆笑問題は、まさに時間に追われる日々を送っている。二人を心理学の実験室に閉じこめ、それぞれの時間感覚をはかるなど、実験も取り入れながら時間の不思議に迫る。
一川誠(いちかわまこと)
実験的手法を用いて、人間の時間や空間の知覚認知過程や感性の特性について研究を行っている。
今回の対戦内容
一川誠(いちかわまこと)/爆笑問題
太田:基本のグリニッジ天文台の何とか時計みたいなものがあるじゃん。要するにあれを基準にするわけですよね。だけど、それではたしていいのかっていう気すらします。
一川:グリニッジの時間に合わせたのって、日本で言うと明治21年なんですよね。それまでは昼間は日が昇ってから落ちるまでっていうのを時一つっていうのを、まあ日の出から日の入りまでを六つに分けてっていうことをしていたんです。
等間隔の時間を使って生活するようになったのは、まあせいぜいこの150年ぐらいで、人類の長い歴史の中で見ると、すごく特殊な生活を私たちは実際はしていて。実はもうちょっと長い時間にわたって、太陽のペースに合わせて生活していたはずなんですけど、今は別に太陽のペースに合わせなくても、こうやって照明をつけて夜中でも仕事が出来たりしますけど、まあこういう環境自体がこう実は人間にとってすごく特殊な状況で。
太田:そうすると、それこそニワトリのブロイラーじゃないけど、電気をつけた、消したで勘違いして卵産んじゃうわけだよね。ああいうことが実際に起きるっていうことは、人間も絶対にそういうことがね、起きているわけで。
そうすると、グリニッジの時間なんかさ、あてになるわけがなくて。それぞれが持っている時間でしかないわけで。
先生の対戦感想
一川誠(いちかわまこと)
当初考えた話題よりも、壮大な時間の話があったので、随分広がりのある内容になったなと思います。
個々人で多分、時間の感じ方っていろいろ違うし、時間にまつわるエピソードとか違うと思うんですけど。何かこうやっぱり時間っていうのは、心理学だけじゃなくて、物理学であるとか、あるいは生物学であるとか、いろいろなアプローチをしていって初めていろいろな議論が展開していくんだろうなっていうのを改めて感じましたね。
浦島太郎のような“お話”として残っている時間に対してのいろいろなファンタジーみたいなものも、調べてみるとやっぱり人間が時間とどう付き合ってきたかみたいなことが、時間をどうとらえてきたかみたいなことが分かってきたりするので、そういう点でも、まあ何か広がりがあるトークだったなと思います。
私にとって勉強になる時間でしたね。
爆笑問題の対戦感想
太田:「時間」については何度も話していることでね。話す度に何が言いたいのか分からないっていうのがすごくあって。
想像を絶する世界のことを想像しようとすることに、どだい何か無理があるという感じもするけど、難しいですね。
何かとらえようのないところで暫定的に考えているっていうことで。全部を理解したいんだけど、それはなかなか難しいですよね。この世の中を誰が作ったのかっていう話みたいなことになっちゃうから。それをやっぱり想像しようとすることに無理があるのは分かっているんですが。何か説明出来るような気もするから面白いですよね。
田中:時間のああいう話って、「年を取ると1年が早い」みたいなことって、本当にみんなが思っていて。誰でも経験があるっていうか。
「距離」とか「時間」っていうのはちょっと不思議で、無限のような気もするし、ゼロにもならないみたいな、そういう感じがありますね。
1秒の、さらに0コンマ0000でも一応時間があるってなっちゃうと、「そこでも十分生活出来るほどの速さで動いている生物がいれば…」みたいなことを考えると、結局時間ももう基準がないっていうか、長いのも短いのも一緒かなというふうには思っちゃうっていうのは、よく考えたりするんですけどね。
ディレクター観戦後記
「時間」という、とてつもなく漠としたものに説明をつけようと試みている一川先生。
先生は「WHYじゃなくてHOWを見つけようとしているんです」とおっしゃっていましたが、さまざまな実験をして時間にまつわる事例をあげていくことで、周りからジワジワと時間というものの正体に迫っていっているんですね。
そうすることで分かってきた時間の特性を説明されると、不思議とそれまで「どうすることも出来ないどうしようもないモノ」と諦めていた「時間」が、ちょっとだけ自分に歩み寄ってきてくれた気がする。
今回のお話を聞いて、時間に追われて焦っている時でも、「どうやって乗り切るのがいいだろう?」と、自分なりに冷静に考えられるようになりました。
この“心のゆとり”を得られたことは、私にとってかなり大きな収穫です。
KEYWORD
人間
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