過去放送記録

FILE069:「永久エネルギー誕生!」

2009年4月21日放送

 

原亨和(触媒化学)

私たちの生活には、ナイロン・プラスチックから医薬品まで、石油を原料とした化学物質があふれている。これらを産み出しているのが「触媒」だ。触媒とは、それ自体は変化しないで特定の化学反応を促進する物質のこと。石油資源は硫酸を触媒とすることで、様々な化学物質へと変化する。しかし、石油資源そのものの枯渇に加え、硫酸触媒は再利用ができず、使い捨てにされているなど様々な問題を抱えている。
これを一挙に解決するものとして期待されているのが、硫酸を固体化した「カーボン固体酸」だ。カーボン固体酸は、何度でも再利用が可能なだけでなく、雑草や木くずを砂糖に変え、そこから石油に代わるバイオエタノールを簡単に作りだすことができるという画期的な触媒だ。これによって、ほとんどの石油化学物質を、石油枯渇後も安価に生産することが可能になるという。この新しい触媒を作り上げたのが、東京工業大学で触媒化学を研究する原亨和(はらみちかず)教授。今回は、触媒の不思議な世界を紹介しながら、永久エネルギーの実現が人類に何をもたらすかについて爆笑問題と議論する。


原亨和(はらみちかず)
東京工業大学教授 機能セラミックス・触媒1965年生まれ。1986年 東京理科大学理学部化学科卒業。1996年 東京工業大学資源化学研究所触媒化学部門助手を経て2006年より現職。カーボン固体酸の開発により、2006年サイエンス・アメリカ誌によって世界で注目される研究者50人に選ばれる。

今回の対戦内容

原亨和(はらみちかず)/爆笑問題(太田/田中)


原:石油がなくなったら怖いですよね。
太田:何とかなりますよ。
原:あのね、ところが身の回りにあるもの、すべて石油のもので私たち生きていて。この文明レベルを下げずに生きていけるかどうかっていうのは、私不安でしょうがないんですね。なくなっちゃったらどうしようみたいな、そういったものが常に頭にあった。
太田:じゃあ先生は、なくならない燃料というか、素材。要するに無限に使い続けることが出来る。それを作ろうとした?
原: 植物からものを作るんだったらば、人間がもし賢く植物を扱うことが出来るんだったら、ちょびっとながらも私たちは、こういったものが獲得し続けられるんじゃないだろうかと。まあ燃料にしてもプラスチックにしても。常に石油化学製品みたいなものを常に持っておきたい。それが私の願いですね。
太田:何が石油より効率が良くなるの?
原:効率がいいとは思いません。一つは、草木から取っていて、草木の成長速度よりも、ちゃんと草木の成長速度を考えて、ちゃんと草木から取ってやれば、また草木が生えてくる。
太田:石油が出来上がるまでの時間よりも、回転がいいと。
原: 回転がいい。石油はですね、数万年掛けて作るんですけれども、私たちの触媒はそれを数時間で作る。数時間で燃料とかそういったものにするということで、早い。効率は良くなるけれども、草木の使い方を間違えて使ってしまえば、やはり同じことです。要するに森林資源を破壊して駄目にしてしまう。

先生の対戦感想

原亨和(はらみちかず)


思った以上に楽しくしゃべれましたね。普通の会話っていうのは、最近あまりしていないものですから。田中さんにしても、太田さんにしてもおっしゃっていたことっていうのは、みんなが感じている。こうなったら危険なんじゃないのかなとか、ああいう話っていうのはね、まさにその通りです。だから私はむしろ、ああいう意見が世の中のみんなから出て、そういった意見を取りこめるような形。今まで何かサイエンスの話とか、テクノロジーの話っていうのは、一般の人抜きの話で進んでいますよね。そういうのではなくて、これからエネルギーとかそういう問題は、そういう意見がないと全然話にならないと思う。それでその意見が聞けたという意味ではね、私は対決するのかと思っていたんですけど、逆にむしろ楽しませてもらったというか、久々楽しかったです。楽しんでいたと言った方が正解です。何よりもうれしかったのは、私と同じ世代だっていうので、大海に友を見つけたような。その意味ではうれしかったですね。

爆笑問題の対戦感想

田中:明るくて面白い人でしたね。あんなね、キャラクターもなかなかいないと思いますけど。確かに分かりづらいというか、ロボットみたいなああいうテクノロジーみたいな見てすぐ分かるものと、化学っていうのが違うっていうのはその通りだなっていう気がするんですが。ただ本当に聞けば聞くほど、そんなに触媒っていうのがね、重要だったっていうのは初めて知りました。
太田:面白かったですね。触媒なんて、普段あまり考えないからね。先生も言っていたけど、どれでも僕はバンザイだって言っていたけど。今エネルギー問題っていうのを、みんな世界中がそれに代わるものって。それこそ風力だの何だのとか、あとは太陽光とか、もうあらゆる方面からのアプローチがあるから、どれがその主導権を握るのかまだ分からないじゃないですか、石油に代わるっていう意味ではね。逆に取られちゃったらむなしいだろうって思っちゃうんだけど。まず最初の出発点が倫理観。先生独特の何か理想っていうイメージから、ああいう化学の方に行っているっていうのが、僕は一番興味深いなと思いましたね。石油ショックのあの光景がつながったっていうのは、一番特徴的だなと思いましたね。
田中:確かにね、子どもの頃のオイルショックのトラウマがあって、その恐怖心っていうのから始まって、今、子どものためとかっていうのも、確かに何か説得力があるというかね。何かそんな嘘をついていなさそうなキャラクターじゃないですか。インチキ臭いところがない感じがすごくしましたね。

ディレクター観戦後記

「私、硫酸マニアなんです。」原 亨和教授との初対面の挨拶の言葉だった。正直、いったいこの人は…?しかし話を聞くにつれ、原教授の永遠のエネルギーへの熱き思いに引き込まれていった。小学校時代に原少年を襲ったオイルショックが永久エネルギーを求める原点だという。同じ経験をしているのに、ショックさえも感じなかった自分とのあまりにも大きすぎる違いはなんであろうか。比べると雲泥の差がある。硫酸マニア原 亨和が苦節20年の果てに作り出したカーボン固体酸。このまったく新しい触媒によって木くずから取り出されたほのかに甘い水の味は、永久エネルギーに一歩近づいたのを実感させてくれた。
いま僕は、原 亨和マニアになってしまった。

プロデューサーの編集後記

「触媒化学」という分野を知っている人はどれくらいいたでしょうか?少なくとも夜の11時のテレビで主役を張るほどには知られていないと思います。だが、謎の研究室を訪れてみると、待ち構えていたのは、豪快な笑い声が印象的な、マンガのキャラクターのような(すみません!)原教授。しかしてその研究の実体は、石油の代わりになるかもしれない「永久エネルギー」というとんでもないものでした!「爆問学問」の醍醐味を堪能していただけましたでしょうか?
原教授が人生をかけて生み出した燃料エネルギーは、石油資源による世界のパワーバランスを変える可能性を秘めていると思います。「この研究がもたらすものが何なのかは、その時になってみないと分からない。とにかくあがくしかない」と語り、地球資源をなんとかしたいという焦燥感はハンパではありませんでした。
この現代の錬金術師の源が、少年のころ感じたオイルショックの恐怖であり、その時感じた、私たちが手にした生活を持続できなくなることへの許せなさ、だったとは!
・・・・というわけで、原教授の「許せない話」をお贈りしました。

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