FILE067:「人口は口ほどにものを言う」
2009年4月7日放送
鬼頭宏(歴史人口学)
2005年から、日本の人口は減少を始めた。予測では、今後も減り続け、100年後には現在の3分の1にまでなるという。この減少は何を意味しているのか。一万年に及ぶ日本の人口の変遷を明らかにした歴史人口学者・鬼頭宏は、「我々の暮らす文明が終わっている証拠」だという。鬼頭は長年の研究の結果、日本の人口はこれまで4つの大きな減少・停滞期があったことを明らかにした。狩猟採集〜稲作〜市場経済〜工業化と移り変わってきた日本の文明。人口の減少は、いつもこうした文明の転換点に起きてきたと鬼頭は語る。今、工業化文明の終わりにあるという日本。今後私たちはどう生きればいいのか。鬼頭はこう言う。「我々は過去とは全く異なったライフスタイルを創造すべきである」。今こそ、過去にしがみつくのではなく、新たな生き方を模索する実験の時代だという。人口減少と高齢化の時代に対応した生き方とは何か? 結婚や老後の形はどう変わるのか?爆笑問題と日本の未来について語り合う。
鬼頭宏(きとうひろし)
日本人口学会賞、日本生活学会今和次郎賞。
今回の対戦内容
鬼頭宏(きとうひろし)/爆笑問題
鬼頭:だって人間の寿命って、理論的には120歳って言ってますからね。そうなったらね、何かいろんなことをやっぱりある意味、悪いことばかりじゃなくて、実験しなきゃいけないですよ。その中で、現在の長寿とか、人口減少とか、もういろんなこととうまくフィットするような家族類型っていうものをね、見つけていくっていうことが必要なのかなって。そういう意味では、この20年、30年、ものすごく大きな実験の時代なんじゃないですか。
太田:こんなことを言う60代はかつては絶対いなかったですよ。それだけでもやっぱり違いますよね。だって、枠、もう一回結婚してもいいんじゃないかなんて、そんなことを60代って。
鬼頭:それは僕がしたいと言っているんじゃないですよ。そういう人がいてもいいということですよ。
太田:人のせいにして言ってますけどね。でも、そういう考え方をする人はあまりいなかったですよね。テレビでこうやって大学教授がですよ。公に出てきて、不倫万歳みたいなことを言っているんだから。
田中:言ってねえよ、不倫万歳なんて一言も言ってねえよ。
先生の対戦感想
鬼頭宏(きとうひろし)
太田さんも田中さんも、TVでみるより、はるかにまじめな印象をうけました。
そ れにあんがい小柄でしたね。頭の回転が速く、反応がすばらしい。短時間の情報インプットで、ものすごい本質的なことを突かれました。感心感心。これからも民放の番組、サーフィンしますよ。
年寄りは山へ捨ててしまえといわれて、つい、団塊世代の習いで、売り言葉に買い言葉、「おれたちゃ自分たちだけで暮らしてみせる」なンて言ってしまいましたよ。本当は、行儀よく、「いやいや、そんなことは言うものではないよ。いろんな世代の人が支え合いながら一緒に暮らすのが大切。高齢者は、 ワカモンの希望の星になるようないい老後を見せたやりたい」と言うべきでしたね。幸田文さん流に言うなら、「身の納まり」をつけたいもの。尊厳ある老後、 役立つ老人、が目標です。
それと、人生結婚二回論はぼくの希望じゃないんですよ。そこんとこは強調しておかないと、家を追い出されちゃいます。この説は、医師で推理作家の木々高太郎氏や、人口学の泰斗、寺尾琢磨先生もつねづねおっしゃっていました。ぼくも授業で聴いた覚えがあります。要は、熟年離婚は、人生が二倍になった現在、けっしておかしくないと言いたかっただけですから。念のため。
収録は、けっこう時間がかかるので、たいへんな仕事だと思いました。しかし私は、講義もある種の演出と演技が必要だと確信しました。映像ではなくても、劇場の演劇のように考えればいいのかも。メイクしなかったのが残念です。
爆笑問題の対戦感想
田中:とても面白い先生でしたけど。まあ人口歴史学っていうのも全然知らなかったんですけど。縄文時代で日本、何人ぐらいだったって聞かれても、見当も付かないじゃないですか。8万人っていうのは面白かったですね、なるほどそんなものかと思って、そこから稲作が始まって増えて、で、限界が来ると、次の文明が始まるみたいなのっていうのは、ああ、面白いなって思って。だから今これから減少に行くってなると、この今のやつの限界が来たっていうのも説得力があるなという気がするよね。
太田:やっぱり想像力の学問だなと思ったね。だから数字、数字ってばかにするけどって言っていたじゃないですか、先生。だからそれはやっぱり、先生の中に、それが本当という確証は永遠にないんだろうけれども、逆に言うと未来も、その想像力が合っていれば、その予想っていうのもまた真実味があるのかなっていう気がしたね。
田中:あと、江戸時代のあの家族のあれは、デンジロウだ、何だって、あの辺は面白かったけど。歴史そのものにそんなに興味はなくても、昔の人のリアルな生活みたいなものとか、そういうものが見えると、ちょっとワクワクする。
太田:ああやって縄文時代からずっと生活を見てくる中で、やっぱり倫理観みたいなことっていうのは、その今この瞬間の倫理観でしかないわけじゃない。それはもう本当に歴史を見てみると、いくらでもグルグル変わっていくものだね。
ディレクター観戦後記
私は小学校から大学に至る17年間、電車通学でした。東京でしたので、毎日満員でした。
特に子どものときはまさに通勤地獄でした。身長130cmくらいです。立っているだけで大人たちは、そこにスペースがあると勘違いして突進してきます。中には、ランドセルに手を置いて休む人までいました。でも当時は、こんなものだろうと思っていました。
しかし、鬼頭先生のお話を聞けば、この150年くらいで日本の人口は4倍になっているとのこと。そりゃ、混むわけです。
鬼頭先生は、そんないまいちピンとこない人口という数字が静かに語る、人類の盛衰にいち早くピンときた研究者です。温厚な先生は、一万年を旅してきた仙人のように達観しており、また、未来が待ちきれないといった少年のようでもあり、とても魅力的な方でした。
先生が人口と文明の関係を発表したのは30年ほど前。そのときは、ほとんどの人が聞いてくれなかったといいます。ところが、人口が減り、さまざまな社会の形が変化する今、先生の説は現実になっているとさえ言えるかもしれません。
経済力低下、社会保障制度の見通し不明、家族形態の変化などなど、人口減少は暗い話題もつきまといます。しかし、我々は日本史上5回目の変化にたまたま立ち会ったのです。どんな文明になるか、前向きに考えようという先生の言葉を忘れないようにしたいものです。
プロデューサーの編集後記
「数字はただの数字ではない」とおっしゃる鬼頭教授。私のような門外漢でも、人口が増減を繰り返すグラフをじっと見つめていると、何かもっと大きな意志のようなものを感じてくるから不思議です。
「人生はゴムバンド」説もそうです。明治・大正時代は平均寿命が40歳前後だった。その長さのゴムバンドを現在の寿命80歳位まで伸ばすと、明治大正のハタチが現在の40歳くらいにあたる、というもの。
「ゆーとぴあ」の漫才のネタのようで、そこはかとなくおかしいのですが、伸びたゴムを見ていると何か感じてしまう。そういえば、この番組の成人の日特集で、爆笑問題さん、糸井重里さん、立花隆さん、という錚々たる「オトナ」が「40歳位でやっと大人になった気がする」という発言をしていたなあ、とか。
昔に比べて圧倒的な情報量とスピードを獲得した現代は、実は人生の密度をゆるくしているんじゃないだろうか?とか。
グラフの折れ線の具合とかゴムの張りって、なんか饒舌な気がしました。(疲れているのかな?)
つぶやき
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