過去放送記録

FILE051:「宇宙を駆けるX」

2008年10月21日放送

 

小山勝二(X線天文学)

あの激論、再燃か・・・!?今年3月に放送した京大SPで、太田と激しく言い争った小山勝二・京大大学院教授。この因縁の対決に決着をつけるべく、爆笑問題は再び京都を訪れる。
小山が専門とするのは、レントゲンなどにも使われるX線を使って宇宙を観測する「X線天文学」。私達の目がキャッチしている可視光線や、サーモグラフィーなどで利用される赤外線とは違って、X線は1000万から1億度という人間の想像を遙かに超えた超高温の物体から発せられる光線だ。したがってX線で宇宙を観測すると、超高温の宇宙を見ることができる。X線での観測は、人類が今までに誰も見たことのない、全く別の宇宙の姿を見る道を切り開いたのである。そして明らかにされたのは、宇宙が「静寂の空間」などではなく、激しい動きを繰り返している「激動の空間」であったという事実だ。
この「激動の空間」である宇宙で実際に何が起きているのか。小山がこの問題を考えるに当たって研究の対象として選んだのはSN1006という天体だ。今から約1000年前に爆発し、地球でもその星の輝く様子が記録されているこの天体の研究により、小山の名は世界の天文学史に深く刻まれることとなった・・・。今やX線天文学の世界的権威となった小山が見た「誰も見たことのない宇宙の姿」とは?
番組では、「激動の宇宙」を見つめ続ける小山に、太田が独自の宇宙観をぶつけていく。私達が生きる宇宙の本当の姿とは一体どんなものなのか?世界的天文学者と漫才師のトークバトルがあなたの世界観をリニューアルする!?





小山勝二(こやまかつじ)
京都大学大学院理学研究科教授、宇宙総合学研究ユニット長。専門はX線天文学。世界から「日本のお家芸」として評されるほど高い研究水準を誇る日本のX線天文学、その中心的な存在として30年以上に渡って学会をリードしてきた。2004年紫綬褒章受章。

今回の対戦内容

小山勝二(こやまかつじ)/爆笑問題


小山:いろいろやっていくと、宇宙というのは実は、私が浮かんだ直観っていうのは、まあ時々当たるんですよね。こういうの。で、当たるというのは何だろうと思った時に、これは私のせいじゃなくて、宇宙がそういう姿を用意しておいてくれたんだと。
太田:それをたまたま見つけたんだと。
小山:そうそう。私の尊敬するロッシ先生というのがいるんだけれども、彼がこういう言い方をしたんですね。あなた方はいろいろなことを言うけれども、自然はあなた方よりももっともっと、人間よりももっともっと空想的かもしれないと。イマジネーションに富んでいるかもしれないと。で、私はその時にね、そんなことは奇麗事だと思ったんだけれども、今いろいろ研究を進めてみた時に、ああ、あれ本当なんだなと。我々が思っているよりも宇宙っていうのは、自然っていうのは奥深くて、いろいろな空想に富んで、いろいろな面白いことがあるんだなというのを実感出来るようになったということが、私にとっては幸せだと。
太田:いつごろから実感するようになったんですか?
小山:まあ・・・数年ぐらい前ですね。
太田:数年前?
小山:それまではね、そういう話はあってそうかもしれんと思ったけれども、実感としてないんですよね。
太田:それ、何がきっかけで実感したんですか?
小山:いや、こういうことが見つかってきて、意外とあの時に思ったことが実際にそうなっているなと。
太田:あ、自分で空想したことが実証されたと。
小山:実証されてくると、あ、自然っていうのは、自分の空想に合わせるようにいっぱいあるんだなと。だから、まだまだ他にあるんですよね、きっとね。たまたまその空想に当たった。
太田:先生は空想的だっていうことですか?空想したっていうことだよね。
小山::あのね、多分そうですよ。私は研究者の中では空想的な部類に入ると思いますよ。

先生の対戦感想

小山勝二(こやまかつじ)


今日は前よりは良かったですね。少しはしゃべらせてもらったからね。やっぱり太田さんという人は、宇宙は生命だとか、何だかんだとこだわりますね。まあ正直な話、ああいう議論は実りないんですよね。もともとあいまいだから。宇宙全体が生命体だとかいうのは、よく言うんですよね。じゃあ生命って何だということでしょ。物事は有機的に動いている。宇宙は有機的に動いているけど、それは生命とはまた別ですからね。だから生命体と言われても、雰囲気としてそう思いたい気持ちは分かるけど、それ以上には議論が進まないと思うんですよ。だからそういう議論は私は好きでない。もうちょっと堅実な議論をね・・・。これはこうだ、だからこうなってこうだ!というそういう話でないとね。まあ付き合いきれないな・・・というのが正直な印象です。ちょっとね、あまり生命とは・・・とか、宇宙の果てがどうなっているかとか、時間の先はどうなっているのか・・・みたいなことを必死に考えようっていう気は起こらないですね。それはなぜかと言えば、単純に難しすぎるからですよ。勝算がないからです。もっと言えばね、僕自身がね、一生懸命考えて何か新しいステップに進めるかといえば、それは無理だなぁと思うからですね。直観について話がでたけれども、直観だけじゃなくて、その直観が当たっているかどうか、こういうふうにしていけば実証出来るかもしれない・・・というような勝算がないとね。直観だけでそれ以上は進めないですよ。それと同じで、宇宙の果ての向こうは何かというのを考えて定式化していくようなことは勝算がないのでやりたくないし、宇宙は生命なんじゃないかというアイディアも、どうやって証明して明らかにしていくかという勝算が一切ないからやらないというだけなんです、僕は。勝算があればね、今言ったようなことは全体をとらえようっていう試みですから、すごく面白いことなのでやりたいですけど、とてもとても・・・。そんなところまで手を広げられないですね。
太田さんも田中さんも、個人的には面白い人たちだなと思いますからね。まあ、会うのも楽しいですよね、確かに。そんなに悪い印象はないですよ、もちろん。今回は割合好きなことが言えたから、そんなに疲れは感じなかったな。京大SPの時はちょっとねぇ・・・。ああいう討論会っていうのは難しいですね。自分の意見を思う存分言うっていうわけには行かないですからね、他の先生方の意見もあるでしょうから。そういうことでちょっと欲求不満があったけど、今回はまあそれなりに一応言えた気がするから、まあそんなに疲れていないですねぇ。

爆笑問題の対戦感想

田中:そうですね、まあ宇宙の話はどうしても難しい話になりますよね。結局、突き詰めるともう本当にそれこそ時間とかね、宇宙の果てはどこにある?みたいなことが気になってきて、もう分からなくなっちゃう感じがしますよね。それで、京大SPのこともあるので、先生と太田とがどういうふうになるかなと思ったんですけど、あんまり乗ってこなかったね、結局。のらりくらりみたいな感じでね。途中、先生が太田を無視してパソコンいじりだしたのは面白かったですけどね。でも「あなたがたは偉そうなことを言うけれども・・・」って先生が言い出した時は「来たかな・・・」と思ったけど不発に終わりましたね。今回は冷静さを保つようによほど意識していたのかもしれないですね、先生は。
それにしても小山先生は本当に魅力的な人ですね。面白い人だなと思うし。研究は僕らなんかでは想像がつかないほどスケールのでかいことなのであれですけど、X線天文学っていうのが明らかにしたことっていうのはほんとに革命的なことだったんだなっていうのは伝わってきましたね。太田さんはどうでしたか?
太田:うん、あの、話しててね、最後の方に先生の尊敬するロッシさんという物理学者の言葉がでてきたでしょ。「この宇宙は自分たちが考えるよりももっと空想的なところかもしれない」みたいなやつ。先生はその言葉を本当に実感出来るようになってきたのはここ数年なんですって言ってたじゃないですか。そのとき「ああそうなんだ・・」って思ったんです。先生と話していると「証明されないことは信じないぞ」みたいな感じがあるんだけど本当は違っていて、「どうしても空想してしまう自分」を自分の中につなぎ止めるようにしていろんなことを実証し続けてきたんだと思うわけ。だからおれなんかよりずっとずっと空想的なんだと思うよ、本当の小山先生は。だから、空想の質にはすごくこだわりがあるんだろうなっていうのをすごく感じましたね。
 まぁ、おれが無念といえば無念なのは、言葉でね、やっぱりあの先生におれの空想を先生の目に見合うものとして説明出来なかったことだね・・・。こっちはさ、一応言葉を使う表現者として毎日生きているわけでしょ。それは必ず何とか共感させられるはずだと思うんだけどね。もっといろいろ考えて、ちょっと時間をおいてから、また改めて語り合ってみたいと思える人ですね、小山先生は。

ディレクター観戦後記

京大SPそして今回と、ハイテンションになりがちな印象が強い小山先生ですが、普段は大変穏やかな方なんです。確かにいろいろとお話を伺っていると、先生は自分が正しいと思ったことに関しては徹底的に主張してそれを通してしまう激しさをお持ちだなぁとは思いますが、同時に自然に対して深い畏敬の念を抱いていらっしゃるのを感じます。

ご出演の先生方とは、番組を作るために毎回雑談を含めていろんな話をしますが、ある時小山先生はこんなことをおっしゃいました。「自暴自棄になった青年達が引き起こす悲しい事件が立て続けに起きているけれど、僕は彼らに宇宙で起きている様々なことを語って聞かせたいんですよねぇ・・・」。僕はこの言葉を聞いたとき、妙に腑に落ちるものを感じました。何百万光年とか1億度とか、人間の想像を遙かに超えるスケールをもつ宇宙を研究しているからこそ、地球という星が生まれてそこで多様な生物が生き長らえていることのかけがえのなさが、先生には実感をもって感じられるのだと思います。例えば、地球と太陽の距離がちょっと違っていただけで、地球に生命が誕生する確率はグッと下がってしまう。ものすごく微妙なバランスの上に僕らの人生が成り立っているわけです。信じられないくらい大きな‘宇宙’のスケールから自分の普段の生活を見直してみると、日々喜んだり怒ったりしているヒトの存在すら、なんだかちっぽけなものに思えてきます。

「学ぶとは誠実を胸に刻むこと。教えるとは共に希望を語ること。」取材の中で小山先生に教えていただいた仏の詩人ルイ・アラゴンの言葉です。果てしない宇宙を研究してその成果を多くの学生達に教えてきた小山先生が最も伝えたいことは、実は「ヒトはちっぽけであるけれども、この世に存在すること自体が奇跡である」というロマンティックなメッセージなのかもしれません。

プロデューサーの編集後記

京大SPで、太田さんと番組史上に残る激論を交わし、「(収録中ではなく)あとでやりあいましょうよ」という名言を残した小山教授。再戦?の申し出を快く受けていただいて、本当に感謝しております。
すさまじいエネルギーの宇宙線が製造される現場、一億度にも達するガスが充満する空間・・・X線天文学が見せてくれた、もう一つの宇宙の姿は、SF映画やスペースシャトルからの映像などで感じる、漆黒の闇のようなイメージを覆すものでした。
小山先生はご自身の「直感」を実証していくと、「宇宙は人間なんかよりはるかに空想的なのだとわかる」とおっしゃいます。研究者としてビビッときた直観。その時点では、ある一人の人間の空想にすぎないものが、検証を重ねるうち、宇宙のどこかで現実に起きていることに気づく。その衝撃はいかばかりのものでしょう!そして先生はこうした経験を重ねるたびに、何か異常なまでの宇宙の懐の深さを体験しているようです。
私たちは収録前、先生と太田さんの議論を、「実証的」VS「直観的」という構図で想像していました。しかしそれは間違いでした。先生は、ひらめきや直感がすごいからこそ、実証にこだわり、世界的な成果をあげていらっしゃるのだと思います。そうでなければ、「宇宙は人間より空想的だ」という言葉が身に染みないはずです。
普通、人は直観的に突拍子もないことを思いついた時、「まさか(ないだろう)」で終わらせることが多いのではないでしょうか?小山先生と太田さんは「そのまさかの可能性がある!」とこだわり続けることができるお二人なのかもしれません。その意味では、田中さんの「どこかの時点までは二人は似ている」という「直感」にうなずいてしまいました。

つぶやき


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生命

宇宙

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