過去放送記録

FILE043:「アートのハート 後編 〜伝えること 伝わること〜」

2008年7月15日放送

 

宮田亮平(東京藝術大学学長)

爆笑問題と東京藝術大学の宮田亮平学長が、芸術と表現について語り尽くす2回シリーズ!その後編。
芸術とは何なのか?今の社会に芸術家の居場所はあるのか?そして、芸術は「学問」として成り立つのか・・・?
東京藝術大学内の制作現場を巡りながら芸術談義・・、しかし、議論は思わぬ展開を見せた。 言葉を武器にしながら、常に言葉で伝えることの難しさにもがいてきた爆笑問題・太田に、宮田亮平学長が発したのは、
「本当のことを言っているように感じない」
という一言だった・・・。
芸術についての対話は、いつしか伝え合うことの難しさへと急展開!
ヒトはなぜ、何かを伝えたいと思うのか? “伝えたい”ことを“伝える”ことは不可能なのか・・・?
日本大学芸術学部中退、そして今やお笑いという芸の最前線を行く爆笑問題と、日本の芸術の最高学府の長・宮田亮平、議論は“表現”の根源へと迫る!


宮田亮平(みやたりょうへい)
新潟県佐渡島の金属工芸家の家に生まれる。東京藝術大学に属しながら鍛金作家として活動を始め、イルカをモチーフにした幻想的な作品「シュプリンゲン」シリーズで、国内及びヨーロッパやアジアで高い評価を受ける。
JR東京駅の新しい「銀の鈴」(2007年)や、大手百貨店のモニュメントなどを手がけ、2007年に「日本現代工芸美術展」内閣総理大臣賞受賞。

今回の対戦内容

宮田亮平(みやたりょうへい)/爆笑問題


宮田:おれが言いたいことは、ちゃんとAからAに行きたいみたいなことを言っていた時代があったんだけど、違うふうに伝わってもいいやって思うようになったんだよね。
太田:伝わらなかったっていうところもいいんだって言ったけど、
宮田:そうそう。
太田:良くはないよ、それは。
宮田:いや、そういう時代もあっていい。
太田:いや、時代なんか、中島みゆきみたいなことを言わないでよ。
宮田:ははは!
田中:そんな時代もあったねと。
太田:絶対に嫌でしょ、伝わらないのは。伝わらないことは許せないじゃないですか。
宮田:いやあ。
太田:だから誰も見ないものなんて許せないじゃないですか。
宮田:誰も見ないものというのと、それはちょっとこう、違う部分がある。
太田:何でよ。
宮田:だって、いつか見るかもしれないじゃないですか。
太田:そんなの待てます? 死んじゃうって。
宮田:時間の空間の違いみたいなものっていうのは、時空の違いみたいなものってあるかもしれないじゃん。
太田:時空の違い?

先生の対戦感想

宮田亮平(みやたりょうへい)


コンビというものは面白いなとつくづく思いました。
本当にデコボコで、田中さんの、言葉は少ないけれどもグサッとくる、そちらの方が怖かった(笑)。太田さんは、言葉は多いのだけれど、ところどころにあえて隙間を作ってくれたので、言葉を挟むことができて面白かったです。
そして太田さんは、芸術というものを掘り下げていった時に、終着点に関してずいぶん尋ねておられました。しかし、方向性とか行き先、あるいは到達点というものはむしろ芸術には無い。
東京藝大は人生の中で過ごす一所として、大変肥えた空間で自分を探すことができる場所なので、今回の番組を通じてそんなことを感じてもらえたらいいなぁと思いました。
お二人は言葉で伝える世界。私は金属でものを伝える世界。伝え合うということにおいては、媒体が違えど、人様の心を揺さぶるということにおいて、お互いに面白いものを感じてくれたような気がします。

爆笑問題の対戦感想

田中:芸大は本当に初めて来て、まずその雰囲気がすごくいい感じ。建物もかっこいいしね、話したところとかもね。いい感じだよね。
太田:おれは芸大ってあこがれがあったからね。
田中:ここは確かに来たがるだろうね。作品とか、いろいろ物珍しくて、普段あまり美術館とかも行かないから、結構見ちゃったね。いろいろ回ったのも面白かった。
太田:4年間、こうやって何も考えずというか、おれが言っているような余計な下世話なことにあまりとらわれずに、4年っていう期間そこに打ち込むっていうか、純粋に創作をする時間っていうのは貴重なのかなって思ったね。
田中:学長はどういう人かなと思ったら、何かちょっとふざけた感じがあって、すごく意外だった。結構激論みたいな形になったけど、多分何かこう、太田さんの言っていることも、もちろん分かる部分はあるんだろうけどね。
太田:そうだよな。ほとんどおれが言っていることを先生がどう解釈するかっていう感じになってたかもしれない。
言葉じゃないんだって先生は言ってたけど、言葉の可能性みたいなものも、おれはあると思ってるんだよね。なんか、またわかんなくなってきたけど。
でも、学生に近い人がトップにいてくれるっていうことは、学生にとってはありがたいことなんだろうね。

ディレクター観戦後記

ひとつの言葉が矢のように心に刺さり、ずっと残っていること、ありませんか?

今回の収録で宮田学長が放った、“時空の違い”という言葉。
収録中も編集中も、放送が終わった後も、まるで小さな棘のように心にずっと刺さったままです。

「伝えたいことが伝わらないのは絶対許せない」と太田さんは言います。
自分が伝えたい“A”という理想にこだわってこだわってこだわり続ける。一方で、芸術は、批評、批判、あらゆる享受に対して開かれています。
その間にはいったい何があるのか・・・
そこには、もしかしたら“時空の違い”があるのかもしれません。

伝えたい思いがあって作品を作る、作品ができあがる。
自分の思いは、すぐには伝わらないかもしれない。
それでも、いつか、誰かに、何かのかたちで、届くことがあるかもしれない。

その“信じる力”が、芸術の根底にあるのではないか・・・
制作を終えた今、そう感じています。
テレビというのは良くも悪くも、とても刹那的なメディアだと思っています。
それでも、いつか、誰かに、自分が作った番組の一言が届いて、残るかもしれない。
思いこみかもしれませんが、そう信じることが、とても大切なことのような気がしています。

プロデューサーの編集後記

 「伝える」こと、「伝わる」こと。我々テレビ番組の作り手にも耳の痛い、そして身につまされる話です。
Aと伝えようとしても、Bと思われてしまうこと・・・。

 「Aと伝えるために、Aと言えばいいわけではない」 
実はかつて、私自身、拙著の中で、番組制作に事寄せて、こんなアマノジャクな物言いをしたことがあります。Aと伝えようとしても、番組を見てくださった方々は、B、C、D・・・と、当然のことながら様々な感想をお持ちになる、その時“やっぱり、Aとわかってほしい”、そんな風に自らの思いに拘泥している自分がいる・・・。

それから数年。そんなもどかしい思いから解き放たれ、様々な方々に様々な届き方をするそのプロセスそのものをむしろ楽しもう、BでもCでも喜んでくれる人がいればそれでいい・・・。そう考えるようになって大分楽になりました。
そして、ある時、気がつくのです。そもそも自分が本当に伝えたかったのはAだったのか、と。自分という生き物が、一番わからない、と。

藝術はそんな時のひとつの道しるべではないでしょうか?
藝術は、常に対話です。
社会と自分の、他人と自分の、そして何より、自分と自分の・・・。
学長と爆笑問題お二人との対話から、いつしか、みなさんそれぞれの自分との対話が始まれば、制作者としては望外の幸せです。

ところで、今回の異動でこの番組から、ひとまず去ることになりました。
 「東大の教養」以来、この番組の制作を通して、数多くの対話を経験させていただいたこと、感謝申し上げます。

多くの励まし、ご意見をいただき、ありがとうございました。
今後も、引き続き、プロデューサーM.Mによる、新たな「爆笑問題のニッポンの教養」をよろしくお願いします。

つぶやき


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