FILE037:「私が愛したゴリラ(前編)」
2008年5月13日放送
拡大版!2回シリーズです
山極壽一(霊長類社会生態学)
現在、地球上には300種類に及ぶ霊長類が生息している。まぎれもなくその中の一種類がヒトだ。さてあなたは、ヒトが他の霊長類と比較してどのような特徴を持っているか、明確に答えられるだろうか?この疑問に、ゴリラ研究を通じて答えようとしているのが、京大SPにも出演した「ゴリラ先生」こと、ゴリラ研究の世界的権威である山極壽一・京大大学院教授だ。30年あまりに渡るフィールドワークにより、ゴリラが極めて人間と似た社会を作り上げて暮らしていることを、明らかにしてきた。「ヒトがヒトである理由」とは一体何なのか?今回、爆笑問題の二人は山極教授の引率で、日本で最初にゴリラの赤ちゃんが生まれた“京都市動物園”に行く。ワオキツネザル・アカゲサルなどいくつかのサルを見ながら、霊長類研究のプロが語り出す進化の歴史物語・・・。さらには、普段は飼育員の方しか入れないバックヤードコートに入り、超至近距離でゴリラと御対面。一体、ヒトってどんな生きものなのか?お笑い界のトップランナーと世界のゴリラ博士が語り合う2回シリーズの前編である。
山極壽一公式ウェブサイトはこちら。
http://jinrui.zool.kyoto-u.ac.jp/yamagiwa/index.html (NHKサイトを離れます)
京都市動物園のホームページはこちら。
http://www.city.kyoto.jp/bunshi/zoo/ (NHKサイトを離れます)
山極壽一(やまぎわじゅいち)
今回の対戦内容
山極壽一(やまぎわじゅいち)/爆笑問題
太田:我々普通、笑ったり泣いたりしている方が楽しいというか、幸福なような気がしているじゃないですか。
山極:喜怒哀楽な。喜怒哀楽。でも、喜怒哀楽はゴリラにもあるわけ。喜怒哀楽の表現が違うということだね。もう一つ、それをお互いに共有出来るかどうかっていうところが違う。笑うっていうのはさ、伝染するじゃん。泣くのも伝染するでしょ。だからお笑いっていうのは商売として成り立つわけじゃん。それがね、動物の世界にはないわけよ。みんなで一緒に笑ったり、みんなで一緒に泣いたりが。
田中:それあったら、本当にそれこそ笑っちゃうね。猿山でサルがみんなでケラケラ笑っている状況があったら。
山極:だから共感っていう世界は、やっぱり人間が独自に開発した世界やな。
ディレクター観戦後記
今回は「大人の遠足」的な爆問学問をやってみました。初の試みでしたがいかがだったでしょうか?
さて、ロケの演出案を考えるため、初めてゴリラのヒロミちゃんと超至近距離で対面した時のことです。
「なぜ、オリの中にいるのがヒロミちゃんで、オリの外にいるのが僕なのだろう・・・」
これが最初の素直な感想でした。おそらく誰もがあの距離でゴリラを見たらそう思うのではないのでしょうか。予想以上にゴリラの仕草や表情、反応というのは人間に近いのです。ゴリラのヒロミちゃんは彼女なりに、ヒトである僕は僕なりに、相手に印象を抱きそれを表現している。でもその表現の方法が違う・・・。その壁を乗り越えてコミュニケーションができたらおもしろいだろうなぁ。それはまさしく山極先生が長年取り組んでいらっしゃることに他ならないわけですが。
今や地球の覇者となったヒト、その数60億あまり。一方、約900万年前にヒト(やチンパンジー)との共通祖先と別れたゴリラの数は現在5万から10万程度。人間による密猟や病気など様々な理由で急速にその数を減らしているかもしれないとも言われています。同じヒト科の仲間でありながら、一体何がこの違いを生んだのでしょうか?
次回、解き明かされる”ヒトがヒトである理由”。来週、後編をお楽しみに。
プロデューサーの編集後記
山極さんの研究は、徹底した「恣意性」において人間の文化を考えるという点で一貫していると思います。つまり、人間がゴリラより優れているとはつゆほども思ってはいない、常に人間の存在を相対化しているわけです。
その意味で言えば、別にYディレクターに茶々を入れる気もないのですが、どうも私は人間が「覇者」だと思える自信もないのです。ちょっと見方をズラせば、「覇者」は“本能”の世界から締め出され、なんとか文化という名の“擬似本能”の世界を懸命に維持しようとしている哀れな生き物という視点もあり得る訳ですから・・・ね。
いや、あんまり悲観的に申し上げているつもりもありません。この傲慢かつ健気な生き物、形容矛盾に満ちた不可思議な生き物=人間の存在を、ゴリラという他者との比較においてリアルに考えた時、また新たな可能性も芽生えてくるのですから。そう、そうなのです。ゴリラ社会の考察を通して、もしかしたらありえたかもしれない人間社会の「もうひとつのかたち」の可能性も語ることができるのですから・・・。
次週、後編、さらなるダイナミックな展開をお楽しみに。
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