過去放送記録

FILE021:「『体内時計』は いま 何時?」

2007年12月11日放送

 

上田泰己(システム生物学)

今、世界が熱い眼差しを注いでいる科学者が、神戸にいた!彼の名は・・・上田泰己・理化学研究所システムバイオロジー研究チームチームリーダー。現在32歳、生物が持つ「体内時計」の研究で世界をリードする。遺伝子の膨大な情報をコンピュータやロボットを使って分析する技術と、最新の分子生物学の研究成果を駆使する知性を併せ持った、まさに“21世紀の生物学者”である。
 ヒトゲノムが解読されるなど、世界の生命科学者が遺伝子の働きの解明にしのぎを削る現代にあって、生物の体内時計の研究はここ10年で飛躍的な進歩を遂げた。上田は若くしてその進歩に大きく貢献する研究成果を次々と発表している。28歳のときには「分子時刻法」と呼ばれる体内時計のズレを測定する方法を開発。今まで丸2日かかっていた測定時間を、わずか数時間に短縮、たった一度の測定で体内時計の測定を可能にして世界を驚かせた。
 これからの生命科学を担う男・上田を訪ねるのは、10歳年上、現在42歳の爆笑問題のふたり。お笑い界のトップランナーと若き天才科学者の議論の行方は?体内時計に秘められた生命の神秘が今、解き明かされる!

上田泰己(うえだひろき)
1975年生。理化学研究所システムバイオロジー研究チームチームリーダー。専門はシステム生物学。体内時計などを入り口に複雑に分化した生命メカニズムの全体像を明らかにしようとしている。大阪大学理学部招聘教授、徳島大学客員教授などを兼務。

爆笑問題の対戦感想

田中:いやぁ、今回の上田先生はやさしい口調の、本当にさわやかなイケメンでしたね。太田さんがいつもの調子でワーッと話をぶつけたんですけど、ちゃんと話を聞いてくれたしね。本当は俺らが話を引き出す立場なんだけど、今日は話を聞いてもらっちゃった!みたいな感じでしたね。内容は難しかったんですけど、生命科学が、細胞を作れるかもしれないっていうレベルまで来ているっていう話は、すごく興味深かったです。
太田:そうですねぇ。先生は、ものすごく思い悩んで考え込む時期と、いろんな可能性を探るためにいろんなことを試す・・・ということを繰り返して、新たな目標を見いだしていくって言ってたよね。だけど、俺みたいな人間には、それで目の前に立ちはだかる壁を乗り越えていけるという風には、思えないんだよな。そうやって動いたことがないからね。先生とは多分、わかりあえないと思うよ。
田中:っていいながら、結構のめり込んで話してたように見えたけど、俺には・・・。
太田:つまり、先生のやり方はやろうとして出来ることじゃないってこと。それも才能なんだろうな。
田中:ま、確かにそうだろうね。すごくスマートな受け答えだったけど、本当のところはいろんなこと感じて生きてるはずだよね、人間だし。複雑な感情とか、きっといろいろとあるでしょうねぇ。
太田:そりゃ、そうでしょ。自分の中でうまくバランスを取ってるんじゃない?俺みたいにどうしようもない怪物を自分の内部に抱えている人間もいるし、そうじゃない人間もこの世の中にはいるからね。でも、どうやってバランスとっているんだろうな?っていう疑問はありますけどね。
今日はもっと生物っぽい話なんだろうと思ってきたんだけど、先生の研究を志すきっかけが「時間って一体何なんだろう?」っていう、概念みたいなものから入ったっていうところが、すごく意外でしたね。

ディレクター観戦後記

番組でも紹介しましたが、上田先生は最近「『真夜中に強い光を浴びると体内時計がバラバラになる』ということを実証」しました。この現象はシンギュラリティ現象といって、30年以上の間、誰も解決できなかった問題だったそうです。

以下のやり取りは、この業績を発表する記者会見にうかがったときのことです。

ディレクター「世界で誰もが解けなかった謎を解いた気分って、どんなものなんでしょうか?」

上田先生「そうですねぇ。経験したことはないですけど、ワールドカップの決勝戦で、パスがポンポンポーンと通って、シュートがビシッと決まった!・・・って感じかもしれませんね。気持ちいいですよ。」

ディレクター「っていうと、先生がストライカーってことですか?」

上田先生「いやいや、僕はいわば監督です。今、生命科学って一人のスターがいるだけじゃダメなんです。物理学とか生化学とかいろんな分野の人々が協力し合って一つの方向を目指す・・・僕はその作戦を考える人、みたいなイメージですね。今、科学はチームでやるっていうのが、世界的な流れなんです。」

僕は「上田先生はプロデューサーみたいだなぁ」と思いました。分野の垣根を越え、年齢の壁を越え、人と人を、ジャンルとジャンルを結び付けていく・・・。それが証拠に、上田先生の言葉は、とても丁寧で分かりやすく、同時に常に‘目の前の人に伝わる言葉’を捜そうとしていらっしゃいます。

偶然にも、上田先生と同い年である僕が番組を担当させていただくこととなりました。昭和50年生まれのヒーローであり、生命科学の将来を担う男・上田先生。担当者として、個人として、今後のご活躍を心から祈っております。

プロデューサーの編集後記

コンピューターやロボットが高度な知能を持ち、
やがてその世界を維持・発展させていくために、
障壁となる人間を攻撃していく。
細菌兵器や遺伝子操作によって作り出された生物が、
何らかのはずみで暴走し、人間を襲っていく。
近未来を描いた映画などでよくテーマとなることですが、
この番組を担当していると、それを肌触りとして感じるときがあります。
今回の上田先生のお話にも、緊張感がありました。

上田先生はアインシュタインの例を出して、
20世紀初頭に物理学が経験したことを、
21世紀、生物学がその道を通ることになるだろうとおっしゃっていました。
そして、先生たちの若い世代の研究者が、その責任を背負うだろうと。

生命とは何か。
それを突き詰めていくと、生命を作りだすということにまで踏み込む。
そして先生は、そのギリギリのところでせめぎ合っていきたいと。

生命観の岐路。
倫理観の岐路。
世界観の岐路。

いや、私たちはひょっとしたら、もうそうした岐路は越えてしまっているのかも知れませんが。
そうだとしても、私たちが歩むべき道は、先生もおっしゃっていた道であろうと思います。
科学は人間の幸せのためにある。

つぶやき


KEYWORD

生命

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