社会が急速に変化する中、家族、地域、そして職場などで、人と人との絆が失われつつあると言われています。こうした中、新しい絆を育てようという日本各地の取り組みについて、「絆はじめよう」と題して、特集しました。
11回目のテーマは、「限界集落で生まれた住民と若者の絆」です。
住民の半数以上を、高齢者が占め、存続が危ぶまれている、いわゆる「限界集落」。ここで過疎地に暮らすお年寄りなどを支援しようと、国が今年度から始めた「地域おこし協力隊」が活躍しています。その一員として、秋田県のある小さな集落に、都会から移り住んだ若者の日々を追いました。
秋田県有数の豪雪地帯、上小阿仁村。その中心部から20キロ離れた山あいに、8世帯19人が暮らす集落があります。八木沢集落です。住民の7割は、65歳以上のお年寄り。集落に焦点はなく、買い物は、週4回の移動販売が頼りです。
2009年11月、ここに「地域おこし協力隊」の2人が、都会から移り住みました。村から、月16万円を受け取りながら、2年にわたってお年寄りを見守り、暮らしを手助けします。協力隊の1人、東京からやって来た水原聡一郞さん、23歳です。初めて経験する雪国での仕事は、戸惑うことばかりです。去年の春、大学を卒業した水原さん。就職が決まらず、アルバイトを続ける生活に、社会から取り残されているという孤独感を募らせていました。そんな時、新聞で知った「地域おこし協力隊」の募集。自分を必要としてくれる場所を、遠い秋田の地に求めたのです。
水原さんたちは、毎日、集落の家々を見まわります。この日は、ひざを悪くしている88歳のお年寄りに変わって、雪かきを引き受けました。自分の力が、この集落に必要とされている。水原さんは、やりがいを感じ始めています。
日ごろのお礼にと、手作りのきりたんぽを、ごちそうになる水原さん。集落のことをもっと知りたいと、昔の写真を見せてもらいました。かつて農林業で栄え、300人が暮らしていたころの八木沢集落。農作業のあとなど、ことあるごとに住民達は集まっていたと言います。
中でも最大の楽しみは、お盆に行われる「八木沢番楽」。江戸時代から続く、集落の伝統行事です。子どもからお年寄りまで、総出で参加するこの神楽は、小さな集落で共に生きる人々の心のよりどころでした。しかし、過疎化で担い手が不足し、八木沢番楽は20年以上前にとだえてしまったのです。
集落がにぎわいを失っても、人々の心に残っている八木沢番楽。それを復活させることで、少しでも集落を元気にしたい。水原さんは、そう考えました。
先月下旬、公民館に、集落の人たちが集まりました。一緒に八木沢番楽を復活させようと、水原さんたちが呼びかけたのです。大切に保管されていたお面や衣装を久しぶりに目にし、住民たちの表情が変わりました。八木沢番楽をよみがえらせたいという水原さんの思いを受け、集落の人たちも、どうすれば復活できるのか、考え始めました。
小さな集落で生きるお年寄りと、その暮らしを支える若者たち。
新たな絆が、集落を変えようとしています。





