トップページ » 復興サポート » 2013年度までの放送 » 復興サポート 福島発 エネルギーシフト

リポート

復興への知恵を多くの人に役立てていただくために、講演やトークセッションの模様をテキストで公開しています。

復興サポート 福島発
エネルギーシフト

  • 開催日時:2012年4月27日(金)
  • 開催場所:福島県福島市
  • 放送日:【総合】2012年5月13日(日)午前10時05分~10時53分

会場 福島県福島市

司会                                                                   ゲスト

柘植 恵水(つげえみ)
NHKアナウンサー

柘植 恵水(つげえみ)

照英(しょうえい)さん
タレント

1974年生まれ 学生時代はやり投げの選手として活躍。
東海大学体育学部卒業後は、ファッションモデルとして活動。
1998年、俳優デビュー。その後、司会業、デザイナーなど多方面で活躍中。
2児(一男一女)のパパとして、等身大のメッセージを発信している。

照英(しょうえい)さん

出演者プロフィール

飯田 哲也(いいだ てつなり)さん
NPO法人環境エネルギー政策研究所 所長

自然エネルギー政策研究で国際的に活躍する第一人者。原子力産業に技術者として従事後、北欧での研究を経て、環境エネルギー政策研究所を設立。震災後、いち早く「戦略的エネルギーシフト」を提言し、自然エネルギーへの段階的な移行の必要性を訴えてきた。政策提言や活動により、国や地方自治体のエネルギー政策に大きな影響を与えている。2011年10月より経済産業省総合資源エネルギー調査会基本問題委員会委員。

飯田 哲也(いいだ てつなり)さん

石原 孟(いしはら たけし)さん
東京大学工学部教授

1962年、北京生まれ。清水建設技術研究所を経て、2000年より東京大学へ。耐風設計の専門家として、上海ワールドフィナンシャルセンターや南京大橋の設計に携わる。橋と高層ビルの設計経験を、土台とブレード(羽根)に生かし、海に浮かぶ風車(浮体式風力発電機)を開発中。現在、福島県の「再生可能エネルギー導入推進連絡会」専門部会の部会長として活躍。福島沖で始まる風力発電実証実験のテクニカルアドバイザーを務める。

石原  孟(いしはら  たけし)さん

中村 勉(なかむら べん)さん
建築家 工学院大学特別専任教授 ものつくり大学名誉教授
南相馬市復興有識者会議委員、浪江町復興有識者会議委員

東京大学を卒業後、建築家として第一線で活躍しながら、環境建築のエキスパートとして、エネルギー消費を抑えた建築・町作りを実践・政策提言してきた。震災後は、被災地の復興を専門家として支援するとともに、「エネルギーを生み出す」都市作りを主眼とした「ふくしま自然エネルギー特区構想」を福島県に提案。原発以上の電力を、光、風、水で生み出す地域を作るための活動にとりくんでいる。

中村 勉(なかむら べん)さん

佐藤 理夫(さとう みちお)さん
福島大学 共生システム理工学類 教授
うつくしまふくしま未来支援センター 地域エネルギー担当マネージャー

NTTの研究員を経て、2004年に福島大学に着任。「物質とエネルギーの移動解析」を専門とし、新エネ・省エネ・リサイクルなどの実用や普及に関わる。
震災後は、福島県の「再生可能エネルギー導入促進連絡会」で導入促進に関する部会長を務め、新エネルギー導入を計画する県内市町村と積極的に関わっている。自宅には太陽光発電を設け、バイオディーゼルで走る車で通勤するなど、実践も行う。

佐藤 理夫(さとう みちお)さん

去年3月の原発事故以来、国民的大議論となっている『脱原発』。その方針をいち早く打ち出したのが福島県です。県では今、原発に代わるエネルギーとして、『自然エネルギー』の普及に総力をあげて取り組んでいます。2040年までに県のエネルギー需要を100%賄える規模に育てることを目標に掲げ、新たな地域の産業として、復興への大きな力にしようとしているのです。"原発後"の未来をどう作っていくのか?最新の事例を紹介しながら、第一線で活動している専門家や地域の人々と語りあいます。 

福島県の自然エネルギー計画

ゲスト 照英(タレント)

司会 柘植恵水(NHKアナウンサー)

照英
妻の実家が郡山で、日々の苦労をすごく聞いています。そういう部分で、今、福島県内の方が考えてらっしゃるエネルギーのことだったり、自分も非常に興味があります。子どもが2人いるんですけれども、子どものためにも今日はいろんなことを勉強させていただきたいと思います。
柘植
さて、今回のタイトルにもなっています『エネルギーシフト』なんですが、飯田さん、少し耳にするようになってきた言葉ですが、どういうものかご説明いただけますか。

飯田哲也 (NPO法人環境エネルギー
政策研究所 所長)

佐藤理夫 (福島大学 教授)

石原孟 (東京大学 教授)

飯田
やはり去年の3月11日の東日本大震災で、この福島原発事故というものに国民全員が向き合ってですね、福島県は原発のない未来をもうすでに選択しようとしています。しかしながら、一夜にして原子力がなくなるわけでもないし、逆に一夜にして新しいこれからの自然エネルギーができるわけでもないので、時間をかけながら、原子力を減らしていき、地域の自然エネルギーを増やし、同時に省エネルギーをしていくという時間軸を持って、みんなで取り組んでいこうと。そういうものだと思いますね。
柘植
佐藤さんは福島にお住まいですが、この方向というのはどういうふうにご覧になってるんでしょう。
佐藤
よく福島は『電気のふるさと』と言われまして、首都圏の大量のエネルギー消費を結構まかなってきているわけですね。そういうことで、どちらかというと電気を産んで一方的に首都圏に送ってきたという役割があったわけですが、今回の事故でそういう時代は終わったんじゃないかなと思っています。福島だけじゃなくて、東北というのは、再生可能エネルギー資源の宝庫でして、例えば太陽光は北のほうだから弱いかなと思われがちなんですけれども、これはもう全国平均から見てまったく遜色はありません。今これだけ電気が不足している、エネルギーが不足している時期ですから「余った電気は売ってやる」ぐらいのですね、それぐらいの気合いを福島県はまず持って、逆に「売ってやるんだから、(電気を)多く作ろうよ」というぐらいの勢いというのが、これからの推進に必要じゃないかと私は考えています。
柘植
石原さんは福島でのこういった動きはどうご覧になっていますか?
石原
「グリーングロース(Green Growth=環境ビジネスによる経済成長)」という言葉が最近出てくるくらいですから、経済成長に関しても再生可能エネルギーには非常に期待しています。今、世界の風力発電設備容量はおよそ2億4千万キロワットです。これがどういう数字かというと、日本の2009年の発電設備容量(電力会社10社の合計)がおよそ2億4百万キロワットですから、もう、今の風力発電量はすでに日本全部の電力設備で生み出せる電力量を超えています。そういう状況です。
柘植
今年3月に発表された福島県の自然エネルギー導入目標なんですが、2009年では21%、2020年で40%、なんと2040年度には100%という目標です。これをお考えになったのが、今日いらっしゃっている飯田さん、石原さん、佐藤さんが委員を勤めている委員会で・・・。
照英
頼もしいですね。でも実際"100%"と聞くと、「ええ?」っていう感じがしますけど、可能なんでしょうか?

飯田
ちょっと前はですね、自然エネルギーでこんな目標を掲げると「あほちゃうか」と言われた(笑)。でもこの10年間は倍々ゲームで伸びてきました。原子力発電所は世界では増えているかのように言われていますけど、だいたい増えたり減ったりなのでほぼ横ばいです。対して風力発電は毎年々々、だいたい20%から30%、増えていっています。あと3年もすれば風力発電は、設備容量としては、発電の能力として原子力を追い越すと。10年前まで無視できるレベルだったのが、今やもうエネルギーの中心になってきたという現実があるのです。

世界が注目!浮体式風力発電プロジェクト

福島県では今、世界でも例を見ない風力発電のプロジェクトが動き始めています。福島県沖に大規模な洋上風力発電所を建設し、将来的には原発1基分に相当する百万キロワットの発電を目指すというものです。発電に使うのは「浮体(ふたい)式風力発電機」。海に浮かぶ船のような浮体に、巨大な風車を乗せるのです。強い風が吹く沖合など、広い範囲に風車を並べることができます。海上に変電所も設置され、発電した電気は海底ケーブルを通って陸上へと送られます。まずは2015年度までに3基の風車を設置し、世界初となる「海に浮かぶ風力発電所」の事業化に向けた実験を行います。日本の製造業にとっても大きな挑戦となるこのプロジェクト。参加しているのは、東京大学と日本の企業10社です。造船や鉄鋼、風車製造など、オールジャパンで新しい技術の開発を始めています。風力発電に関し世界初の技術を開発し、福島県を中心としたエリアで産業集積を図って、先ずは福島で成功させ、日本の他の地域でも展開するという未来を描いています。風車はおよそ2万点もの部品を組み合わせて作ります。部品加工や製造、メンテナンスを含め、あらゆる関連産業を福島県内に集め、風力発電の産業拠点にしようとしているのです。浮体式の風車は今後、世界でも大きく需要が伸びる可能性があります。現在実用化されているのは、ノルウェーにある1基だけですが、稼働率50%という非常に高い実績をあげています。運用する企業は今後、この技術の輸出に力を入れています。日本は今、さらに性能の良い浮体式風車を開発しようとしています。大きな津波や台風にも耐えられる、独自の技術で世界市場に売り出そうというのです。 来年8月、最初の一基が福島県沖に姿を現す予定です。

福島県・小名浜港での風力発電産業
集積イメージ


柘植
そもそも、地上よりも海上に風車を作るほうがいいんですか?
石原
海の上には障害物はありません。海は非常にいい風が吹いていますので、設備利用率がだいたい陸上の倍ぐらいあります。要は倍以上の発電をしますと。さらに海の上ですので景観の問題、あるいは騒音の問題といった問題は完全に回避できます。
照英
福島県民の方々にとってのメリットは、どういうところにあるんですか。
石原
こういう風車は非常に大きいので、どこかで作って持ってくるのではなく、風車そのものを福島県で作ると。小名浜港を中心に、実験施設を作ったり、洋上に建設したり、海外に輸出していくということを実現したいと思っています。こういった産業を集積させて、年間4000人から5000人の雇用を生み出すということを計画しています。
佐藤
補足させていただくと、新しいものを作ると新しい産業を全部作るというふうに聞こえてしまうのですが、実際福島県の浜通りには、例えば部品加工や金属加工など、実績のある工場があるんですね。なので、それらの工場がさらにここで活躍できるんだという、そういう期待もあります。
飯田
あと、同じように大事なことは、製造業の活躍もあるんだけれども、それを調べて、コンサルティングをして、弁護士をして、司法書士があって…というですね、最後建設業という、サプライチェーン全般で雇用が増えるのではと。毎年20%、30%成長が見込める産業ですから、その成長の果実が地域に隅々まで行き渡るという。
柘植
ただ、やっぱり地元の皆さんが心配しているのが、海にこういうものができると、漁業はどうなってしまうんだろう、ということもあるのではないでしょうか。
石原
もちろん今までと同じように漁をしていただきたいですよね。さらに風車で発電したものを新たな収入にして、新たな利用価値が増えると。だから、海を誰が占領するのかということではなくて、共同で利用する。このプロジェクトでも漁業関係者と一緒に、試験的にどういうふうに利用したらいいのか。もちろん風車があることによって漁に影響を与えますので、それを日本の技術をもって、こういった問題を解決して、世界の新しいモデルを作っていこうというふうに思っています。そして風車の浮体ですが、「魚礁効果」があったり、魚がむしろ集まってくるんではないかというふうに考えています。実際にヨーロッパの場合は着床式で、すでにそういった効果が表れていまして、風車を立てたことによって漁業に悪い影響を与えた例が一つもありません。
佐藤
確かに魚が増えるのはいいことなのかもしれないんですけれど、基本的に、人間が何かやると絶対にマイナス面がありますので。ただ、マイナス面があるから、絶対反対という立場にも立つべきではないですし、いいことがいっぱいだからもう押し切ってやる、ということもできないと。ここのへんを慎重に、かつ大胆にやっていくということは必要だと思っています。

――福島県内では風力発電だけではなくて、震災後新たにさまざまな自然エネルギーの事業化に向けて、調査が始まっています。

佐藤
本当に福島は再生可能エネルギーの展示場みたいな状況で。日本でも有数の風力発電所がありますし、それから1箇所としては最大規模の地熱発電所もすでにあります。それから水力発電のダムが本当に戦後の首都圏の電力をまかなってきましたというくらい、水力発電もポテンシャルが高いということなので。自然エネルギーについては、本当に各地で全ての市町村、まあ、極端な話、全ての町内会で検討していると言っていいぐらいだと、そのように感じています。

福島県内で計画中の自然エネルギー事業

地域から始まる自然エネルギー事業 ~土湯温泉街の挑戦~

福島市 土湯温泉


福島市の中心から車でおよそ30分の所にある土湯(つちゆ)温泉。古くから湯治場として知られ、年間20万人以上の宿泊客が訪れていました。しかし去年は、震災や原発事故による風評被害などによって観光客が激減し、震災前には16軒あった温泉旅館は、10軒にまで減りました。温泉街全体を元気づける新たな産業を生み出そうと、地元の事業者たちが中心となって新しい発電プロジェクトがスタートしました。計画しているのは、温泉地ならではの発電方法『バイナリー発電』です。およそ150度で噴き出す土湯温泉の源泉は、70度程度まで冷ましてから各旅館に送られます。源泉の温度を下げたときに出る余った熱でタービンを回し、発電するのです。土湯温泉で計画している発電は出力500キロワット。実現すれば、温泉街で使用する電力全てを賄い、さらに電気を売って収入も得られます。土湯温泉町復興再生協議会の会長、加藤勝一さんは、「自然に優しい温泉を使ったエネルギーを作り、電気を作る地域としてブランド化される。本当に夢のある事業になりますよ。」と語ります。さらに土湯温泉では、川の流れを利用する『小水力(しょうすいりょく)発電』も計画されています。流れる水の落差を使って発電機を回せば、24時間電力を生み出すことができるのです。地域の資源を生かした発電が地域の再生に繋がっていく。その実現への一歩を踏み出し始めています。

湯遊つちゆ温泉協同組合
理事長 渡辺久さん


佐藤
バイナリー発電っていうと、確かに今注目の技術なんですけども、原理そのものは実は私、大学生のときに習ったことがあるんですね。ですが、今まではこういったものを活用してくるような状況ではなかったわけですね。自分たちで電気を作るということについて、いろいろな制約もあったし、そこまでしなくても買ってくればいい、というカルチャーもあったと思います。

――土湯温泉協同組合の理事長、渡辺久さんが会場に来てくれました。

照英
この計画ですが、実際、旅館側の方とか、温泉街の方の意見というのは、前向きなんでしょうか。どういう意見があったりするんでしょう?
渡辺
バイナリー発電の場合は、温泉の量を安定的に確保できます。やはり今まで気付かなかった、無駄に捨てていたようなエネルギーを発電に使うと。組合にとっては温泉使用料が安くなります。もしくは、いろいろな面で地域の人に還元していって、例えば土湯に住んでいる方には電気代を少しでも安くとか。そういう形での還元をしていきたいと思っています。
佐藤
震災以降もそうですが、ほとんど毎週のようにあちらこちらへ行って、再生可能エネルギーの講演させていただいたり、技術的なお話させていただいたりしてます。そこでちょっと感じることは、1つはやはり災害に強い町づくり、自分たちのエネルギーを確保しようっていう視点が加わったと。それから今の土湯の組合さんもそうですけども、自分たちのために、自分たちで電力を作ろうっていう、そういう電力のエネルギーを活用しようという機運が高くてですね。行政がただ旗を振るだけではなくて、どちらかと言うと行政はサポートに回っていて、それで推進協議会ができているとか、NPO団体が先頭に立ってるとか。そういうところが多いですね。
飯田
自然エネルギーに関してはドイツがやはり先頭を切っていますが、今は個人の家の屋根のだいたい40%に太陽光発電が付いていて、風力発電のおよそ5割以上を、地域の人たちが持っている。その比率がどんどん増えていってますね。自分たちの地域で自然エネルギーを作るという流れが大きく広がっていますね。

何が変わる?固定価格買い取り制度

ドイツなどで自然エネルギーの普及を後押ししてきた『固定価格買取制度』。去年国会で導入が決まり、今年7月から運用が始まります。この制度は、自然エネルギーで発電した電力を電力会社が一定の期間、固定した価格で買い取ることを義務付けています。買い取りの費用は電気料金として消費者が負担。日本のエネルギー政策のターニングポイントになると期待されています。

飯田
これまで自然エネルギーの買い取り価格に関しては、まず電力会社が買うか買わないかを勝手に決めて、値段も勝手に決まっていました。それを、採算が取れる価格で長期間買うことを保証するという制度ができたということです。法律上は最初の3年間は、普及を優先しましょうということで、若干高めの価格になっています。特に太陽光は、おそらく現状の市場価格はかなり安くなってきてるんですけど、42円だとかなり利益が期待できるので、今年できる太陽光発電というのは一気に増えるんじゃないかと思うんですね。今年1年で500万キロワットくらい、原子力発電5基分ぐらいができる可能性があるというふうに見てます。

照英
ですが、個人がやっぱり買い取り価格で負担するわけじゃないですか。そういうところは気になりますけど…。
飯田
当面見渡せる範囲では、一般家庭がだいたい1カ月で100円負担が10年ぐらい。ただ、この1年間で化石燃料の値上がりなどで1000円ぐらい上がってるんですね。他のものも負担があることを考えれば、自然エネルギーを負担して、他のエネルギーの負担を避けるということを、やっぱり未来への投資だということを考えることが大事ですね。
佐藤
多くの方々に関心を持っていただいて、それでこの地で活躍していただけるというのは嬉しいことでもある反面、やはりそこで地域の人たち抜きの開発が進むっていうことに対する不安も、たぶんあるんだと思います。今福島、あるいは東北は震災からの復興の活動の進行中にあるということで、震災でダメージを受けた地域をいかに復興させていくのか。そこにその再生可能エネルギー資源をいかに取り込んでいくのか。こういった視点が欠かせないんだと、そういうふうに私は考えています。

町のきずなを守る発電事業

今福島県では、大手企業などによって、被災した土地に太陽光パネルを敷き詰め、メガソーラー発電所を作ろうという動きが加速しています。そんな中、原発に近い浪江町では、住民らの手による発電事業の取り組みが始まっています。町の復興有識者会議の委員を務めるのは、環境建築の第一人者でもある、建築家の中村勉さんです。中村さんは浜通りの町づくりに長く関わってきたこともあり、現在、浪江町の商店主たちが立ち上げた復興NPOと共に今後の事業計画を練っています。NPOがコミュニティ再建の手掛かりとしているのが、自然エネルギーを使った発電事業です。浪江町は、今もなお広範囲に渡って放射能汚染の警戒区域に指定され、立ち入りも厳しく制限されています。2万人を超える町民は各地に散らばり、長期的な仕事に就くこともできずにいるのです。地域の絆を守るために、町民たちが一緒に取り組める仕事はないか。NPOでは町民が主体となって、自然エネルギーの事業会社を設立し、町内で発電した電気から共同で収入を得ていこうと考えたのです。 実際、どんな形の発電ができるのか。そのヒントを求めて、4月、中村さんはNPOのメンバーと被災地を見て回りました。浪江町では、まだ多くの農地が被災したまま取り残され、再建のめどは立っていません。中村さんは、農地を使って発電事業を行いながら、農業再開を目指す方法を考えています。その構想とは、太陽光パネルを高い場所に設置し、その下を農地として使うというものです。育てるのは、藻やヒマワリなど、バイオエネルギーの原料となる作物が有望だと考えています。ただ土地を整地し、太陽光パネルを並べるだけでは、まちの景観も損ね、生活する上での考え方そのものとしておかしいのではないか、中村さんは語ります。 中村さんは売電による収入の試算も行なっています。2000キロワットの太陽光パネルを設置した場合、費用は約7億円掛かります。年間の売電収入は約8000万円。経費を差し引いても、1年に1000万円ほどの利益が出る見込みです。これを住民たちで分配すれば生活の大きな助けとなります。NPOや中村さんらは、土地を生かし、町民とふるさとの絆を保つ方法として発電事業の検討を始めているのです。

地域のエネルギーを地域の産業に

――ここからは、中村勉さんもパネリストに加わって頂き、コミュニティの再生と発電事業について話し合いました。

中村勉(建築家)

照英
事業が成り立つだけではだめなんだな、という、重い内容ですが…
中村
これまで、特に浜通りの人たちとの町づくりをやってきたんですが、それを思うと、やはり何か希望を持ち続けられるような構想を提供しないといけないなと思っているんですね。その中でも特に、ただエネルギーを作るだけの、大きな事業がここで行われるだけではなくて、やはりここにはいろんな歴史があるんですね。なんとか土地の人たちが、エネルギーも作りながら、さらに自分たちの生きがいにも、またあるいは20年、30年後の復活につながるような計画が必要だろうと思うんです。ただ、売るための野菜はなかなか作りきれないと思うんですね。ですから、今そこでエネルギーに使えるような藻ですとか、そういう新しい意味のエネルギー農業と言いますか、そういうものがここでは非常に有力であると考えています。そして、中央から大きな会社が来て、1つ発電できるものを作ってその収入をみんな持って行ってしまう、というようなことがないように、市民の人たちと一緒に作っていくっていう動きが大事だと思います。

――中村さんと一緒に発電事業に取り組んでいる、まちづくりNPO新町なみえの理事長、原田雄一さんに意見を伺いました。

原田
今回の事故の一番大きな問題、本質は、私どものコミュニティーを破壊されて、外に出されたということだと思うんですね。私たちはコミュニティーを破壊されたものですから、なんとかそのコミュニティーを再生してもらいたい。ただそこで生活するにはやはり収入が必要ですので、それは賠償にばかり頼ってはいれなくなると思うんですね。私どもが結局、先生の案でいいなと思える一番大きな点は、やはり自然を愛する、歴史を愛する、土地を愛する、人を愛するというですね、理念がきちっとしてること。それがないと、やはりいくら良い事業であっても、住民の支持をいただけるかどうかってことは決まってくると思うんですね。そういう先生の理念がはっきりしている。しかも、私どもが考える上で、一番の目安となる数字をきちっと出していただいてるということが、町民にこの事業を認めていただける強力な武器になるんじゃないかと思っております。

まちづくりNPO新町なみえ 理事長 原田雄一さん

飯田
その志は必ず形になるというふうに思うんですね。
佐藤
やはり、地産地消を目指すべきだと思うんです。自分たちで作るからこそ、自分たちのお金もちょっと出して、それをやって、残った分を売って、それで収益を得るっていう、そういうのが本来のあり方だと思うんですね。
飯田
やっぱりそのお金が地域で循環すると。だから、エネルギーと人とお金が地域でいかに循環するか、そういう仕組みを作っていくことが非常に重要です。秋田県がだいたい年間、1世帯当たり25万円を光熱費、電気、ガス、灯油に使っているんですが、県全体で40万世帯あるので、1000億円を光熱費で使っていることになります。これはもう生き血が流れていくように、秋田県から出て行くお金なんですね。だから秋田県では「あきたこまち」がちょうど年収1000億円なんです。一生懸命稼いだ「あきたこまち」のお金は光熱費で外へ出て行く。例えば1000本の風車を作ると、年間の売電収入がおよそ1000億円で、これは「第2あきたこまち産業」になるんですね。そのぐらいのインパクトがあるんです。

――会場の皆さんから、質問が寄せられました。

会津みしま自然エネルギー研究会
会長 岩渕良太さん

質問
私は会津みしま自然エネルギー研究会ということをしてます。町内でどのように自然エネルギーというのを作っていくかっていうことを、話し合っている段階です。で、どのように、住民や地域の方を呼び込めばいいのかな、というのを今、すごく悩んでます。
飯田
一番大事なのは誰がこれを担って、どういう場でやっていくのかということがすごく大事なんです。その担い手を支える場をどう作るのかっていうのがですね、どこの地域でも非常に大きな課題で。でも、それができれば突破できるんですね。例えば、原子力は30年、50年かかるんですけれども、自然エネルギーは1年でできるんです。1年やると経験値が上がるので、ちょうどテレビゲームのゲームみたいにですね、もう一回り大きなことができるようになるんですね。協力者も増えると。まずは身の丈から始めることです。非常に大きなプロジェクトですけど、まずは身の丈でこけても大丈夫な範囲でやりながら、知恵と経験を積み重ねながら、だんだん、だんだん大きくしていくということが成功の秘けつですね。
佐藤
これは絶対に必要なことだと思うんです。その地域で手に余るものは、基本はあんまりすぐには手を出すべきではないんじゃないかなと思ってはいます。ですので、例えば、地域の皆さんで出資して、何かの組合を作る。行政はそれが円滑に運用するようにサポートするにとどめておくぐらいが、一番居心地がいいんじゃないかと思っています。ぜひ頑張って下さい。

――これから福島の復興をあと押しするために、この自然エネルギーの分野で、私たちにどういうことができるのか。最後にパネリストの皆さんから一言ずついただきました。

飯田
これまでの中央集中というか、巨大技術で原子力や石炭火力で電気を作って、一方的に垂れ流す。そういう社会から、地域でみんなが参加しながら、しかも自分たちの風車、自分たちの太陽光という形で、しかも無数の発電所がこれからできていく…という分散型革命でもあると。特にこの福島のこの地からですね、現実を1ミリでも変えていくこと。1人が1ミリ変えていくことが、社会全体を非常に大きく動かしていくきっかけになると思いますので、日本はこの福島を、エネルギーシフト発祥の地として、ぜひ前に進めていっていただきたいなあと思っています。
石原
風力発電のサイクルは、だいたい15年から20年です。で、作ってピークになったらそれで終わりではなくて、その後リパワリングといって再度また作ります。そうすると、エネルギーも産業も、雇用はも持続されて、社会が持続できると。そのモデルを、ぜひ福島県の復興の中で実現して、日本全体でこういった社会を作っていく。福島がその起爆剤、あるいはそのモデル、世界のモデルになっていきたいと思っています。
佐藤
福島の復興に対しては、非常に応援団が多いので、これはもう絶対できると思ってます。私はちょっとその先のことを、やっぱり考えるべきかなあとも思います。再生可能エネルギーの比率が日本全体で8割、10割、となったときのことを、われわれは覚悟しなきゃいけないんじゃないかと思います。例えば、来月、金環日食がありますよね。天気予報で、全国的に穏やかな天気です、風は吹きません、と言われて、日食になったら太陽光発電は発電しない、風力発電は発電しない、これはどうすればいいのか、という話になるわけですね。こういったときのこともちゃんと覚悟して、それで再生可能エネルギーで生きるんだと。月に1回ぐらいは思い浮かべると、本当に短期の損得だけで物事を考えて、誤ったりしないんじゃないかと、そんなふうに考えます。

中村
今日は特にエネルギーを作るということのほうの議論ですけれども、もう1つは私たちが、エネルギーを使わない、省エネ型ということも必要ですね。私たちはこういう生き方をしよう、生き方をもう少し考えなおすっていうことを、個人個人でしなくちゃいけないと。それがすごく重要なキーワードになると思います。
照英
日本に生まれてよかったな、日本の自然エネルギーに感謝しなきゃいけないと思います。これから何か自分でできることを、もう一歩、また一階段、もう一階段、どんどん上がっていけるように、学びつつ頑張っていきたいと思います。素敵なひと時をありがとうございました。