放送内容

視点を変えるチカラ

2017年12月3日(日)

監督:森達也 主演:塾生 タイトル:違和感のススメ

視点を変えるチカラ

監督:森達也 主演:塾生 タイトル:違和感のススメ

今回の講師は、映画監督の森達也さん。世の中からバッシングを受ける人々に密着して、社会に対して問題提起をする映画を作ってきました。その代表作「A」では、宗教団体・オウム真理教の信者に密着。物議をかもしました。森監督は、素朴な“違和感”を大切にした結果だと言います。森監督から学びたいと集まった塾生は、東北出身の女子3人。塾生たちは、身の周りの“違和感”をテーマに、短いドキュメンタリー映画づくりという難し~~い課題に挑戦します。それでは、「監督:森達也 主演:塾生 タイトル:違和感のススメ」、どうぞご覧ください。

講師

講師

森達也さん

映画監督

プロフィール

講師の映画監督・森達也さんが教鞭をふるう明治大学で、応援団長サンドウィッチマンの軽快なトークからスタートです。トークを披露していると、ある人たちがやってきました。森監督から学びたいと集まった塾生、東北出身の女子大生3人です。塾生たちは、森さんから、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信者に密着した映画「A」を見てくるよう宿題を出されていました。森監督の講義を始める前に、サンドウィッチマンが塾生から映画の感想を聞きます。

映画「A」を見た塾生たちの感想は、「残酷な事件を起こした教団であると知っていながら、同情してしまうときがあった」、「撮っている人は、教団の人じゃないかと感じた」など。もやもやした気持ちを抱かせる映画「A」は、森監督42歳のときの作品。森監督は、地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の信者がほとんど逮捕されたあとも、“テロ集団”と報道されることに“違和感”を持ち、教団内部を撮影したものです。塾生たちの感想を聞いたところで、森監督の登場。もやもやの正体を話します。

森監督は、当時メディアがオウム真理教のことを伝えるとき、“凶暴凶悪な殺人集団”か“洗脳されて感情や理性を失った危険な集団”のどちらかだったと言います。この2つが共通していることは、自分たちとは違う存在であると、わかりやすい構図に依拠すること。しかし、森監督が撮影した事件に関わっていない信者の映像を見たとき、イメージは崩壊。森監督はその理由を、物事は視点で、どこから見るかで変わるためだと言います。

ここで森監督、塾生たちの視点を変えるために、ミッションを与えます。『“違和感”をテーマに、短いドキュメンタリー映画を作れ!』という難し~~い課題です。翌日、森監督は、困っていた塾生たちを宮城県石巻市に連れ出しました。訪れたのは、塾生の鈴木さん馴染みの場所。小中学生の学習支援のボランティアをするため、毎週、通っています。普段、何気なく接しているところで、“違和感”を探してみようというのです。ブラタモリ風に興味津々で町歩きをしていると、仮設住宅を見つけました。でも、人の気配がありません。

東北の被災地では今、仮設住宅から災害公営住宅などへの転居が進んでいます。仮設住宅に人がいなくなるのは、復興が進んでいる証でもあります。しかし、引っ越し中の人からお話を伺うと、全く違った側面が見えてきました。次の行き先は、200m先の仮設住宅。今住んでいる仮設住宅にいられるのは、あと10日ほど。1日3往復、4往復して荷物を運び出していると言います。この地域に通っている鈴木さんは、ここに仮設住宅があることさえ気づいていませんでした。東日本大震災発生から約6年半、町の整備が進む一方で、悩みを深める人々もいるんです。少し踏み込んでみると、知らない現実が見えてくることを塾生たちは学びました。

石巻での、実践研修から5日後。それぞれが見つけた“違和感”を持ち寄り、森監督に中間報告です。福島市出身の三澤由佳さんが持った違和感は、震災後の福島県に対するイメージ。どのようにイメージ形成がされるかをテーマにしました。2人目は、生まれも育ちも仙台の鈴木希望さん。20年生きてきた自分の人生の中に、すでに“違和感”の芽があるのではないか。子どものころから書き溜めてきた日記などを見返しているうちに、ある出来事を思いつきました。高校までは禁止されていた化粧が、大学生になるといつの間にか化粧することが常識になっていたことです。森監督は、当たり前になっていることを、なぜ当たり前なんだろうと思うことは大切なことだといい、鈴木さんは常識に対する違和感をテーマにすることにしました。

3人目は、佐藤そのみさん。大震災発生直後から様々な悩み、葛藤、違和感の中で生きていました。6年半前、多くの子どもたちが命を落とした大川小学校。佐藤さんの母校です。およそ10mの津波が、全校児童108人のうち、74人の命を奪いました。その中には、佐藤さんの妹・みずほさんもいます。佐藤さんは遺族の代表として、率先してメディアの前で発言してきましたが、自分の中に葛藤があると言います。故郷に対する“違和感”をテーマにしたいと思うも、糸口が見つかりません。森監督は、自分の日常に、その入り口があるんじゃないかと助言。1週間後の上映会に向けて、3人の塾生はそれぞれ動き始めます。

上映会当日。メディアが作り上げる福島県のイメージに違和感を持つ三澤さんの作品は、思いもよらない展開を見せました。「私には、編集することができませんでした」。三澤さんは、福島県のイメージを東京で、30人にインタビュー。その結果、多くの人が放射能といったマイナスイメージも、風光明媚といったプラスイメージも、両方のイメージを持っていました。それをそのまま編集してみたとき、何を伝えたいのか全く分からない作品になってしまったのです。そんな三澤さんに森監督は、情報というものは伝えるために、四捨五入して、整理整頓していることを伝えました。

常識に対する違和感をテーマにした鈴木さんの作品。化粧をすることが常識になっていることに“違和感”を持つきっかけとなった男子学生との再現シーンからスタート。その後作品では、大学生へのインタビューを重ね、就職支援課の職員や企業の人事担当にも話を聞いていきます。上映後、鈴木さんは、課題を通じて常識か非常識の2つにとらわれなくていいことに気づいたと、森監督と塾生の2人に話しました。森監督は、世の中は白黒だけじゃなくグレーゾーンがあり、そのことに気づけたことが良かったと鈴木さんに伝えました。

最後に上映するのは、被災した故郷・石巻に対する違和感をどう扱っていいか悩んでいた、佐藤さんです。中間報告の森監督からのアドバイスを参考に、身近にいる同じ石巻出身の友達2人にインタビューしてみることにしました。作品では、震災で亡くした妹のことを話せない佐藤さんが、自分の震災のことを話せるようになった友達に、なぜ話せるようになったのかをインタビューしています。作品を見た塾生の鈴木さんは、向き合えたことが素晴らしいと感想を述べました。森監督は、この作品が句読点になるのであれば良い体験だけど、無理に切り替える必要はない。簡単に論評できない、深い作品だったと話しました。

ドキュメンタリー映画「違和感」

  • 三澤 由佳さんの作品

  • 鈴木 希望さんの作品

  • 佐藤 そのみさんの作品

(※作品の動画配信は2018年1月6日までの予定です)

森達也さんのまとめ

人間って、慣れやすい生き物だからですね。あの、日常を送ってるうちに、それがどんどん前提になってしまう。けっこうね、普段の生活に慣れてしまうと、なかなか自分の位置を変えるっていう、難しいわけじゃないけど、発想しなくなってしまうから。だから、きっとみんな相当苦労したと思うんだけど。その結果、毎日同じ景色を見て、同じような時間を過ごして、同じように年をとって。とてももったいないと思うしね、そんなの。だからたぶん、今回みんなも経験したと思うけど、一つ見つけたらね、発見があって、面白いはずなんですよ。あ、こんなふうに、実はこうだったのかとか。こういうふうに見えていたのかとかね。ちょっと変えるだけでいいんだもん。

ゴールデンルール

「メディア・常識・日常の慣れ 
“違和感”を持てば別の景色が見えてくる!」

ナレーション 多部未華子のつぶやき

先日、あるバラエティ番組の内容について友人と議論しました。わたしはあくまでもバラエティなのだから、という意見でしたが友人は全く別の考えで・・・お互いヒートアップして意見をぶつけ合い?!ました。最後まで平行線で終わりましたが(苦笑)
いろんな人がいるので当然のことですが、いろいろな考え方があるものだとあらためて思いました。森監督は「物事はどこから見るかで見えるものが全然違う」と言っていました。自分で意識して見方を変えていくのは難しいことですが、人との出会いを通して、いろんな考え方を知って、自分にはなかった角度から物事を見ることができるようになれたらと思います。地下鉄サリン事件については、報道されていること以外はほとんど知りません。森監督の映画「A」を見てみたいと思いました。

番組応援団長 サンドウィッチマン 今回の一言

【富澤】うーん、メディアに警鐘を鳴らす森監督らしい終わり方でしたね。
【伊達】私は、学生たちの、作品を、えー、ノーカットで、見たかったので、あります。
【富澤】そういうと思ってね、学生の作品のフルバージョンは、番組HPで紹介します。
【伊達】えー、それはですね。えー、まさに、未来塾ノミクス、なので、あります。
【富澤】なんだよ、未来塾ノミクスって。次回の未来塾の講師は誰なんだよ。
【伊達】えー、講師はですね。なんと、決まって、いないのであります
【富澤】何ためてんだよ、お前。決まってないの?
【伊達】はい。とにかく、とにかく、ためてですね、お話をするので、あります。
【富澤】そのものまね、NHKでやって大丈夫なんすか?
【伊達】きっと、えー、だめなので、あります
【富澤】やめろよ、じゃあ。

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