NHK旭川放送局 旬 あさひかわ

旭川放送局が
“地域を応援する音楽番組”として制作した
「旭川発・故郷のうた
“Frozen Stars In Your Eyes”」


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今年度(2019年度)も
超高精細の映像と、5.1サラウンドの音声による
NHKスーパーハイビジョン“BS4K”の番組として
引き続き、全国放送します。

近々の放送は・・・

6/3(月)午後11:05〜
6/6(木)午後0:10〜
6/15(土)午前9:45~
6/17(月)午後3:50〜
6/24(月)午前6:50〜
6/28(金)午後1:55~

・・・の予定です。

インターネットでも
旭川局ホームページの他、
“NHKどーがレージ”、“YouTube”、
“ニコニコ動画”、“GYAO !”で配信中です。
ぜひ、ご覧下さい。

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さて、「旭川発・故郷のうた」の
制作に関わった人々をご紹介するシリーズ。 
第5回は、撮影を担当した旭川放送局の
八戸聡明(はちのへ・さとあき)カメラマンです。

八戸カメラマンは、
NHKスペシャル「ミラクルボディ」や
アテネ・オリンピック、
日韓W杯サッカーの中継で
撮影を担当したカメラマンです。

活躍のフィールドはスポーツにとどまらず、
“いきものがかり”のステージを
生中継した音楽番組でも
チーフ・カメラマンを務めました。
現在は、旭川放送局の技術部に在籍し、
副部長として、後進の指導・育成にも
当たっています。

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2018年1月、
楽曲“Frozen Stars In Your Eyes”の
レコーディングを前に、
私と八戸カメラマンは、映像のイメージを
打ち合わせていました。

今回の番組では、
楽曲に超高精細の4K映像を組み合わせ、
地域放送だけでなく、
スーパーハイビジョンのコンテンツとしても
放送する計画です。

「スタジオでレコーディングに臨む
 松本優香(まつもと・ゆうか)さんの姿を、
 ハンディの4Kカメラで美しく収録したいんだ」

私がそう言うと、八戸カメラマンは、
困った表情を浮かべ、腕組みをしています。

「4Kのカメラは感度が高くありませんから
 アイリス(レンズの絞り)が
 開放に近くなります。
 被写界深度(ピントの合う深さ)が浅いので、
 歌っている人の表情を追いかけるのは、
 難しそうですね」


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「トニー・ベネット(米国音楽界の大御所)が
 レコーディングで
 レディー・ガガと共演する映像が
 “
YouTube”にアップされてるんだけど、
 あんな感じに、ならないかな(笑)」

「それは、かなりハードルが高いですね(笑)」

私たちは、冗談のような会話を交わしながら、
それでも、かなり本気で
「美しい映像を撮りたい」と考えていました。

「“Frozen Stars In Your Eyes”には、
 随所に“光”を連想させる歌詞が
 出てきますよね。
 逆光の照明を生かすカメラワークが
 効果的なのでは、と思います」

八戸カメラマンの胸中には“勝算”があるようで、
私は、腕利きカメラマンのひらめきに期待して
“絵作り”を委ねることにしました。


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2018年2月4日、
東京・渋谷の放送センターにある
音楽専用スタジオ“CR-506”で
八戸カメラマンは、
レコーディングが始まる3時間前から、
照明のセッティングを始めていました。

「きっと、あの小さなライトが、
効果を発揮するはずです」

八戸カメラマンは、そう言って
コンデンサーマイクの後ろに立てた
遮音板の上を指さしました。

そこには、とても小さな、
しかし、強い光を放つライトが取り付けられ、
銀色に輝くコンデンサーマイクを
背後から照らしていました。


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この日、八戸カメラマンには、
レコーディングの一部始終を
ドキュメント形式で撮影することも
お願いしていたので、
照明のセッティングが終わると、
早速、撮影が始まりました。

安部遼(あべ・はるか)リポーターを伴って、
弦楽四重奏の演奏風景や
サックスの河田健(かわた・けん)さんの
撮影に大忙し。
私は、ミュージシャンやアレンジャーとの打合せや
レコーディングのチェックに追われ、
八戸カメラマンには、ディレクター役を兼ねて、
主体的に撮影を進めてもらうことにしました。

ここで、視聴者の皆さんに、秘話をひとつ。
サックスの河田さんがソロを吹く映像、
演奏と運指が完全に一致していることに
お気付きでしょうか。


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これは、レコーディングの最中に
八戸カメラマンが河田さんのすぐ近くで
カメラを構えていたから収録できた
“完全なシンクロ映像”です。

当然と思われるかも知れませんが、
普通、楽曲のレコーディングでは、
演奏に集中してもらうため、
スタジオの中にいるのはミュージシャンだけです。

カメラマンは、
レコーディングが終わってからスタジオに入り、
ミュージシャンに演奏を再現してもらい、
その様子を撮影します。

こうしてカメラに収めた映像を
後日の編集で、音楽と合わせるのですが、
厳密には、微妙に映像と音楽が
合わなかったりします。

今回の“完全なシンクロ映像”は、
どんな状況でも最高のパフォーマンスをする
ジャズ・ミュージシャンの
河田さんだからこそ撮影できた、
そして、持ち前の人間力で
取材相手との“心の距離”を縮められる
八戸カメラマンだからこそ撮影を許された、
貴重な映像なのです。


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レコーディングは、
河田さんのサックス&フルート、
松本さんのボーカルと、順調に進み、
午後7時過ぎに終わりました。

「では、松本さんの撮影、始めます」

いよいよ八戸カメラマンの腕の見せ所です。
松本さんは、別室で、衣装とヘア&メイクを整え、
再びスタジオに戻ってきました。
スタジオにオケが流れ、松本さんが歌い始めます。
八戸カメラマンは、
その様子を4Kカメラで撮影開始。
 

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「♪ Ah、眩しい夏、肌を焦がし、
 ラベンダー、揺れる〜」

歌に合わせて、近付いたり、遠ざかったり、
表情を追いながら回り込んだり。
4Kカメラ特有の浅いピントを調整しながら、
八戸カメラマンは自在なフレーミングで、
松本さんを捉えます。

「♪ 今、私には、希望の、星が見える〜」

一瞬、松本さんの後方から、
眩しい光が現れ、画面に拡がります。
後光が差したような映像。
松本さんの後方に仕込んだ逆光の照明を
“星”に見立て、タイミングを見計らって、
フレームに写し込んだのです。

歌詞を踏まえた一瞬のカメラワーク。
八戸カメラマンの狙い通り、
準備した照明が絶妙な効果を発揮した瞬間でした。

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レコーディングから半月後、
私は、八戸カメラマンに
またまた厄介なお願いをしていました。

「春まだ浅い旭岳の映像を撮って欲しいんだ」

今回の「旭川発・故郷のうた」では、
技術部が4Kカメラで撮り貯めた
道北の四季折々の映像を使おうと決めていました。
ところが、編集を始めてみると、
タイトルバックを始め、幾つかのシーンの映像が
どうしても足りません。

「ロケに出てもらえないかな」
「わかりました。やってみましょう」

それから数日後の午前5時。
八戸カメラマンは、美瑛町に出かけ、
早春の旭岳の絶景を4Kカメラに収めました。


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天気は快晴。
気温は氷点下20度。
大雪山系の山々が陽光に輝き、
稜線がくっきりと浮かび上がる気象条件は、
めったに出会えるものではありません。

八戸カメラマンいわく、
「あんなに美しい旭岳は、正直、初めてでした。
 それはもう、感動的な美しさ。
 陽が高く昇って光線が変わったり、
 雪が微妙に溶け始めたりすると、
 景色が変わってしまうので、
 気温が低いうちが勝負と思い、
 あちこち移動しながら、印象的な情景を
 次々とカメラに収めていきました」


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神々しく輝く旭岳や、
雪解け水が清らかに流れる小川、
広い雪原に点々と残るキタキツネの足跡など、
早朝の美瑛で出逢った“一期一会の情景”は
道北の自然の美しさを象徴する映像として
タイトルバックを始め、
番組の“要”になりました。


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一連のロケを振り返って、
八戸カメラマンは、次のように語っています。

「先日、行きつけの店を訪ねたら
 “故郷のうた”の話題になりました。
 “いい歌だし、いい景色だね”と言われ、
 嬉しくなりました。
 あんまり嬉しくて
 “あの映像、僕が撮ったんですよ”と
 自慢しました(笑)
 自分の放送局が作った番組を
 地域の人たちに観てもらえる幸せ。
 こういうのって、
 “僕たちの仕事の原点だな”って思いました。
 自分のスキルを地域のために
 生かせて良かったですし、
 これからも地域の皆さんに
 喜んでもらえる番組作りに携わりたいです」


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経験に裏打ちされたアイディアと、
レンズの先にある被写体への愛情溢れる眼差し。
八戸カメラマンのおかげで、
「旭川発・故郷のうた
“Frozen Stars In Your Eyes”」は
印象深い映像に満ちた番組に仕上がりました。
八戸カメラマン、お疲れさまでした。

(文/星野豊、写真/安部遼)

◇次回は、旭川のバーチャル・アイドルを
 生み出した「モカプロ」の
 二木真澄(にき・ますみ)さんと、
 谷越のりあき(たにこし・のりあき)さんです。