特集 special

連続テレビ小説 あさが来た 誕生秘話を語る。後編 制作統括 佐野元彦 インタビュー

ちょんまげ朝ドラ が生まれるまで。

人に媚びない、凛とした女性。ヒロイン・あさの素質を、波瑠さんに見出しました。
あさが来た

 ドラマの顔となるヒロイン・あさを演じる方には、人間として凛としている女性がいいなと思いました。
モデルの広岡浅子さんのように、人に媚びている感じがしない、すっと生きている人。これは感覚的なもので、ヒロインのオーディションでピンと引っ掛かったのが波瑠さんでした。
 オーディションでは相撲をとるシーンも演じていただいたんですよ。実際のドラマでは、友近さん演じる付き人・うめとあさが気持ちと体をぶつけ合う、とても重要なシーンです。
「オーディションだから演技の相撲でいいですよ」と言っても、やはりみなさん一生懸命になる。その中でも、波瑠さんはいっそう気持ちがしっかりしていて、それを前に出せる人だなと思いましたね
これまではどちらかと言えば、楚々とした、言いたいことを飲み込むイメージの役柄が多かったように思うのですが、「この人、実は違うな」という感じがあった。
芯の強いヒロインを演じる素質があると実感しました。

あさが来た

 そういえば、波瑠さんにヒロイン決定を伝えた日の夜、「ぐっすり寝られました」という話を聞きましてね。普通は感情が高ぶって眠れない気がするでしょう?これは相当な度胸のある方だなと思いましたよ。事実、キャリアのある俳優陣に囲まれていても、その演技は決して動じない。
この『あさが来た』が終わったとき、俳優として一段とりりしくなった波瑠さんをすごく楽しみにしています。すでに彼女は、日に日に“あさ”になってきていますから。あさの象徴である大股歩きが、日頃から板についてきたような気がするほどです。本当に頼もしいですね。

「五代友厚は、日本人がもっと知るべき人物である」その思いから生まれた、ドラマのキーパーソン。
あさが来た
あさが来た

 今回のドラマでは、原案本では少ししか描かれていない“五代友厚”にもクローズアップしています。まだドラマの企画を考えていたころ、神戸・京都・大阪の図書館に6週間通い詰めて、あらゆる本を読みました。やはりヒロインとして描きたかったので広岡浅子さんに着目しましたが、それとは別に魅了されたのが五代友厚さんという人物でした。
 “近代大阪経済の父”と呼ばれる彼の人生を調べるほどに感じたのが、「五代友厚という人物はあまりに語られていない」ということ。いかに私利私欲なく、みんなの暮らしが豊かになるために大きなビジョンを持って生き、道半ばにして無念な思いのまま亡くなっていったのか……。その姿に深く感動して、どうしても描きたいと思ったのです。
 五代友厚さんは、広岡浅子さんより13歳年上。正直、このふたりがどれだけ親しかったのかという文献は残っていません。それを今回のドラマでは、あさというヒロインを立体的に表現するために、五代友厚さんを大きくクロスさせています。ヒロインの100m先で大きな目標を持って生きる人間が、その背中で志を語り、企業人としてのヒロインの成長の羅針盤になっていくのです。
 その彼を誰に演じていただくのか、実はものすごく考え抜きました。薩摩藩士として海外へ渡り、外からの目線で大阪を愛した人物ですから、他のキャラクターとは一線を画す温度感がほしかったんですね。あらゆる方を想定して最終的にたどり着いたのが、香港や台湾など海外を拠点に活躍してきたディーン・フジオカさん。ワールドワイドな視点で、日本を指南する五代の役にふさわしい方だと思います。笑顔もいいですよね……!
 このドラマを通して、日本中の人が五代友厚という人物を知り、彼の名前にもっと親しみを感じてもらえることを僕は楽しみにしているんです。

幸せにはいろんな形があります。人の可能性を『あさが来た』で伝えたい。
あさが来た
  ヒロイン・あさの生き方を描くこのドラマの脚本は、絶対に女性の作家に書いてもらおうと思っていました。そこで迷いなく、以前『桜ほうさら』でご一緒した大森美香さんにオファーをさせていただきました。大森さんは、「人間」というものを信じていらっしゃる作家だと思うんですね。人をネガティブに捉えないところがヒロインの生き方そのものだし、人を描かれるタッチに柔らかさがあることが大きな魅力です。
 『あさが来た』は、「昨日よりもいい一日にしよう」とスタートする朝のドラマですから、できることなら見てくださる一人ひとりがポジティブになって頂けたらと願っています。あさを中心とした人々の個性豊かな生き方を通して、幸せには人の数だけいろんな形があるということ、そして、実は身の回りにある幸せにも気づいてもらえるといいですね。
あさが来た
あさが来た
   そして、結婚に憧れない若者が増えているという昨今、あさと新次郎という夫婦像を通して何かを感じてもらいたいとも思っています。もちろん、結婚しない人生のすてきさもあるでしょうし、人間はまずひとりで立つことが大原則です。
でも、ふたりで共に立つことで見られるすばらしい景色もあると思います。
それが拡大して、何人もの力で何かをなし得ていく世界になればもっといい
ヒロインあさの人生を通して、人の可能性をもっと感じるきっかけになればうれしく思います。
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