あさノート Asa-note

あさノート28 「これでよかったんだす」雁助とうめ、大人の恋の終着点。雁助は娘がいる伊予へたち、うめはあさと生きることを決断。ふたりが選んだ人生とは。

あさノート28

ひとりでそっと加野屋を去っていく雁助については、俺、そんな格好ようなくていいですよ?って思ったりしたんですよ。みんなにきっちりお礼言うて、ひと晩みんなと飲み明かしてから行ってもええんちゃうかなって。でもやっぱり、雁助はこういう人間なんでしょうな。
正直なことを言えば、すがすがしい気持ちで伊予へ行くわけじゃないと思う。病気の娘のためやし、20年前に何もしてあげれなかった娘に対して、もう後悔したくないという気持ちでしょうね。でも、そういう思い、40歳過ぎたぐらいから分かるような気がします。人生の中で、同じ失敗をしたら意味ないなと思いますしね。ずっと加野屋のために生きてきた雁助にとって、自分の人生に対しての初めての決断やったと思うんですよ。

「かんにんな」は申し訳ないけれど。雁助 山内圭哉さん

「うめ、かんにんな」ってね、ホンマは言うたらあかんと思うんですよ。雁助を演じる山内としては「なんでそんなん言うねん」って思うけど、雁助はたぶん、これ以外かける言葉を持ってない。新次郎さんなら知ってるやろうけど、雁助もうめも、恋愛に慣れてるわけじゃないですからね。
わてと一緒にこの家出ぇへんか」っていう言葉は、確かに突発的なところもあったと思います。でも翻弄する気持ちはまったくなく、本音を言っているだけ。それに、うめは絶対についてこないことも知ってるんですよ。うめがおあさ様から離れるわけないし、離れさせたらあかん。それは同じ奉公人として雁助が一番よう分かってると思います。

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切ないけど、これがうめの生き方。うめ 友近さん

雁助さんともちろん一緒になりたい気持ちもあるけれど、おあさ様に一生ついていくことを決めているうめにとっては、「これが自分の生き方なんや」って自分に言い聞かせた部分もあると思いますね。雁助さんへの「これでよかったんだすがな」という言葉は、きっと本心かな。相手の気持ちも分かるし、言葉にしなくても分かり合えている気がするし。“これでええんですよね、お互いに”と目で確認する感じ。そこは大人ですよね。
この思い出があったら、うちはもう一生ひとりで生きていけます」って、切ないなぁとは思いますけどね。だけど、自分の感情は後まわしで、これが運命だと言い聞かせながら生きる人もきっといるんやろなと思います。私なら好きって言ってしまうやろうから、うめを通して、こういう生き方ができているのがうれしいですよね。

おあさ様との相撲シーンでは、自分を励まそうとしてくれているのも分かってるし、「しょうがありまへんなぁ」なんて返しもうめらしい。でもがっつり組み合うと、今までのいろんなことが頭に浮かんできて、自然と涙が出ました。おあさ様とはふたりのシーンになるだけで、グッとくるものがいつもあるんですよ。ここまで積み上げてきたものがあるので、演じていてもやっぱり特別な感情がありますね。 人のために生きることを決めたうめだから、それを最後までまっとうできることが、きっとうめの幸せなんやと思います。

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監督目線 チーフ演出 西谷真一 大人のビターな恋物語でした。

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亀助とふゆとはまた違う、熟年であるふたりの恋。感情を前に出すわけでもなく、お互いをそっと見守るような切なさがあります。第7週で雑巾がけをする手が触れ合ってから、少しずつ積み上げてきたふたりなんです。山内くんは緻密に計算して確かな芝居をする役者さんだし、友近さんはその場で気持ちを入れるライブ感覚の芝居をする。ふたりの大人のビターな芝居が、じんと泣けてきますよ。いいシーンになっていると思います。

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そして、うめとあさの相撲シーンでは、いつもと立場が逆転します。うめが、涙も出ないほどつらく懸命にこらえているものを、あさが吐き出させる。
友近さんには、とにかく子どものように泣きじゃくってほしいとお願いしました。波瑠さんにはまるで母親のようにうめを包み込んでほしい、と。
あさとうめ、ふたりの絆の深さが表現できたと思っています。