[演劇] 国内外で上演された話題の舞台芸術作品を紹介します。第1部では、舞台中継で紹介する作品の見どころを俳優や舞台制作者へのインタビューをまじえて紹介します。第2部では、来日公演を含めた舞台中継でお楽しみいただきます。

放送内容

2月12日(金)の放送内容 演劇

案内役:
礒野 佑子アナウンサー
ゲスト:
坂手 洋二(劇作家・演出家)
情報コーナー 「『現代能楽集 鵺(ぬえ)』のみどころ」

劇作家・坂手洋二が、新国立劇場に書き下ろした新作「現代能楽集 鵺」。
世阿弥晩年の作と言われる能「鵺」をもとに、源平の争乱期から現代の日本・アジアと時空を超える三部オムニバス形式で、妖怪“鵺”を描いた意欲作である。
そもそも世阿弥は、一体なぜ“鵺”を題材に選んだのか? 坂手洋二は、死者や霊的な存在と出会う夢幻能の形式で描かれた能「鵺」の成立過程に注目し、“鵺”の精神、“鵺”に潜む人間の無意識を、現代の舞台に現出させようと試みた。坂手洋二をゲストに迎え、作品のみどころをきく。


劇場中継 「現代能楽集 鵺」

[内容]
鵺は元来、鳥のトラツグミを指したが、鳴き声が夜の闇に不気味に響くことから、「鵺の声で鳴く得体の知れないもの」を呼ぶ言葉となり、サルの頭、タヌキの胴体、トラの手足、ヘビの尾などを持つ奇怪な姿で描かれてきた。
「平家物語」では、近衛帝の御所に、夜ごと不気味な生き物が出没して帝を悩ませ、弓の名手、源頼政によって退治されたと伝えられる。

乱世に彷徨う敗残の霊や正史から消された「まつろわぬ魂」との遭遇を描く「現代能楽集 鵺」は、平安時代から現代の日本、アジアへと時空を超えながら、新たな“鎮魂の劇”を目指した。三部構成の第一部は「平家物語」の源頼政による鵺退治の話、第二部は川のほとりで再会した男女の不思議な交流、第三部はアジアのどこかの国の空港を舞台に、偽装結婚や臓器売買、テロリズムを巡って現代社会の闇が描かれる。

出演は、坂東三津五郎、田中裕子、たかお鷹、村上淳と、幅広いジャンルからの4人。新国立劇場・芸術監督の鵜山仁が演出し、世阿弥の古典能でも、三島由紀夫の近代能でもない、現代の基層の再発見を試みた作品である。


【坂手 洋二】
燐光群主宰。劇作家・演出家。1983年に燐光群を旗揚げ。岸田國士戯曲賞、鶴屋南北戯曲賞など受賞多数。

<作>
坂手 洋二
<演出>
鵜山 仁
<出演>
坂東 三津五郎  田中 裕子  たかお 鷹  村上 淳
<収録>
2009年7月11日 新国立劇場 小劇場

3月12日(金)の放送内容 演劇

放送時間:22時30分〜25時00分(※放送時間を延長してお送りします)

案内役:
礒野 佑子アナウンサー
情報コーナー 「イタリア現代演劇 カステルッチの世界」

1981年、イタリア人舞台演出家、ロメオ・カステルッチが姉のクラウディアらと共に“ソチエタス・ラファエロ・サンツィオ”を結成。演劇、美術、音楽、身体表現、文学など様々な芸術ジャンルを横断しながら独自の舞台表現を展開してきた。強烈なイマージュと比類なき造形美、“生”の力強さや残忍さ、人間存在のゆらぎを舞台空間に創出。その形而上的で緊張した世界を大胆に現出させる緻密で圧倒的な表現力は、ヨーロッパのみならず世界から注目を集めている。生の深淵に触れる、カステルッチの象徴演劇の世界と舞台「神曲」の魅力を紹介する。

[案内役] 礒野 佑子アナウンサー


劇場中継 「ソチエタス・ラファエロ・サンツィオ 『神曲―地獄篇・煉獄篇・天国篇』」

2009年12月、「日本・イタリア2009公式行事」として東京で上演された「神曲−三部作」。
演出のロメオ・カステルッチは光と闇のビジュアル、不安をかき立てる音響、象徴性を駆使し細部まで計算しつくした表現で知られている。2008年夏、世界が注目するアビニョン演劇祭の芸術監督(アソシエートディレクター)の際、自ら三部作を一挙発表し、高い評価を得た。現地収録の購入映像に、今冬、来日した際の独占インタビューを合わせてお届けする。

[内容]
現代において、地獄・煉獄・天国とは何か。どこに、どのように存在しているのか。
それは、現代人の孤独、挫折、祈りなのだろうか…。

ダンテが14世紀初めに著した「神曲」は、三つの異界めぐりの果てに、神の姿を直視するまでを描く長編叙事詩。イタリア文学最大の古典かつ世界文学史上の最重要作と言われる。
しかし、舞台では原作をなぞらず、地獄・煉獄・天国という三つの言葉だけを手がかりに全く新たな世界を描こうと試みる。

現代人の存在そのものがテーマとされ、表現者と観客それぞれの置かれた状況が描かれる。表現者にできることは何か。観客とは、政治的・宗教的に機能不全に陥った私たちそのものの姿ではないのか、と。

【地獄篇】…現代は「表面的なイメージの洪水」との視点から、偶像化された終りなき単調な反復を繰り返す現代人の姿が、さまざまな象徴的なイメージを駆使して描かれる。

【煉獄篇】…「日常を生きることこそ、現実の煉獄」との視点から、何者かに支配され、無限の暴力が続く日常を描く。処罰は下るか、救いは、赦しはあるか、が問われる。

【天国篇】…果たして神聖な空間とは存在しうるのかとの問いとして、身体も物質も存在しない虚無を空間的に表現しようとする「覗く」インスタレーション。

<演出>
ロメオ・カステルッチ
<出演>
ソチエスタ・ラファエロ・サンツィオ
<収録>
2008年 アビニョン演劇祭
「カステルッチに聞く」(インタビュー)

イタリア人舞台演出家・ロメオ・カステルッチに、舞台「神曲」におけるその独自の舞台空間創出、大胆かつ緻密で圧倒的な表現方法、そして象徴演劇の世界について詳しく御話を伺う。

[聞き手] 藤井 慎太郎(早稲田大学文学学術院准教授)