NHKは何を伝えてきたか NHKスペシャル

安全システムの崩壊〜世紀末・不況・原発・戦争〜

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1999年度 大型番組 大型番組一覧を見る
世紀を越えて
世界 ビッグパワーの戦略
99.04.18〜99.06.27
世紀を越えて
戦争 果てしない恐怖
99.07.18〜99.08.29
世紀を越えて
絆 ともに生きる
99.09.19〜99.11.28
世紀を越えて
クライシス・突然の恐怖
00.01.23〜00.03.26
驚異の小宇宙・人体Ⅲ 遺伝子 99.05.02〜99.08.11 イスラム潮流 99.11.14〜99.12.12

『Nスペ』は世紀を越えて記録する

この年、金融界では第一勧銀・興銀・富士が経営統合しメガバンクが誕生、生き残りをかけた再編が進んだ。不況の出口が見えないなか、事件事故が相次いだ。新潟では9年にわたって監禁されていた女性が保護され、これをきっかけに県警の不祥事が発覚した。茨城県の東海村では核燃料加工施設で臨界事故が起き、「村内にこんな施設があったとは」と村民も驚く盲点での事故に衝撃が広がった。社会の安全システムが根本から問い直される1年となり、『NHKスペシャル』は20世紀の終幕を記録し続けた。『Nスペ』の制作本数は、91本であった。


超大型シリーズ 世紀を越えて

大型シリーズ「世紀を越えて」(1.23〜)は企業や家族、戦争、社会の安全などをテーマに22本の放送があった。このなかの「戦争 果てしない恐怖 地雷 無差別兵器の残酷」(8.29)では、この年発効した“対人地雷全面禁止条約”をとりあげた。ところがアメリカやロシアがこれに加わらず、アンゴラなど2つの大国の利害が絡み合う地域では相変わらず地雷が使用され、人の命を奪っている。「絆 ともに生きる 男と女 多様化する結婚のかたち」(10.29)に登場したのは、急増している離婚や結婚しない若者たちである。世界一離婚率の高いアメリカでは、離婚者どうしが再婚し、それぞれの連れ子と新たな家族を形成したり、親権をめぐって争いが起きたり、複雑な家族関係が広まっている。「クライシス・突然の恐怖 未知なるウイルスの襲撃」(00.2.27)では、長い間、密林の奥深くのコウモリの体内で生きてきたウイルスがヒトやブタなどに感染、突然猛威を振るうようになった実態とその防衛の最前線を描いた。

「世紀を越えて 絆 ともに生きる」
「世紀を越えて 絆 ともに生きる」

公開番組「驚異の小宇宙・人体Ⅲ 遺伝子 DNA」(5.2から7回シリーズ)は、ヒトの体の形や体質を決める遺伝子に迫った。「つきとめよ ガン発生の謎 病気の設計図」(5.3)は、遺伝子の中にP53と呼ばれるガン抑制遺伝子があり、これを分離して遺伝子操作で治療に利用すれば、大きな効果が期待されること、「命を刻む時計の秘密 老化と死の設計図」(8.9)では老いや長寿も遺伝子に支配されていることを明らかにした。しかし、遺伝子操作という新しい技術は、夢の未来を開くこともできるが、誤って使用するとヒトや社会に取り返しのつかないダメージを与える“パンドラの箱”でもある。

「驚異の小宇宙・人体Ⅲ 遺伝子 DNA」
「驚異の小宇宙・人体Ⅲ 遺伝子 DNA」

被爆・被曝 人類の奢り 世紀末

イスラム教にいち早く注目

「イスラム潮流」(11.14から4回シリーズ)は、いち早くイスラム教に焦点をあわせた番組である。21世紀は、イスラム世界とそれ以外の世界との対立を軸として動いて行くだろうという予測に立って企画された。「すべてはメッカに始まる 世界に広がる13億人」(11.14)では、およそ13億人が信仰するイスラムの世界の冷戦後の動きを取材した。ロシアの家族のもとから失踪しチェチェンの紛争で銃を取っていたイスラム教徒の少年、インドネシアでのキリスト教徒との流血の対立など、世界各地で不気味な胎動が始まっていた。その後の世界の動きは、アメリカによるアフガニスタンのタリバン政権への攻撃、ニューヨーク貿易センタービルへのテロ報復、アメリカのイラク侵攻と、2つの価値観の対立のなかで推移した。

「白神山地 命そだてる森」
「白神山地 命そだてる森」

臨界事故の恐怖

「調査報告 東海村臨界事故〜緊迫の22時間を追う」(10.10)は事故発生後10日目の番組である。核燃料加工工場で、精製中のウラン溶液が突如青い光を放ち臨界事故は始まった。茨城県は住民13万人に自宅避難を要請、街から人影が絶えた。バケツでウラン溶液を扱うなど違法な作業が明らかになり、危機管理体制が厳しく問われた。公開番組「サダコ〜ヒロシマの少女と20世紀〜」(8.6)は広島への原爆投下から10年後、白血病に倒れ12歳で亡くなった佐々木貞子の物語である。サダコの悲劇は、各国の教科書となって語り継がれ、世界の人々に平和の尊さを訴えている。「隣人たちの戦争〜コソボ・ハイダルドゥシィ通りの人々〜」(9.17)はコソボ紛争で難民キャンプに送られたアルバニア人の青年の帰還を追った。母が待つハイダルドゥシィ通りでは、かつてはセルビア人とアルバニア人が仲良く暮らしていたが、紛争発生後の憎悪が消えず、帰還した青年は再び銃を取った。公開番組「白神山地 命そだてる森」(00.1.2) は東北地方のブナの原生林が舞台である。巨大な森は、8000年の間あらゆる生物が命の循環を繰り返し、美しい姿を保ってきた。生命力に満ちたブナ林の1年の記録である。

(スペシャル番組部長 中里 堯)

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