
NHKアーカイブスで放送される番組は、劣化した映像や音声をデジタル技術を使って放送当時の品質に戻す努力が続けられています。
時間を経たフィルムは劣化します、色もどんどんあせていってしまいます。
長い時を超えてきたフィルムが劣化していくのはある意味自然なことです。しかし、そこに記録されている映像や音声という情報は、単なるノスタルジーへの手がかりだけではなく、私達みんなの文化的財産であるということは間違いありません。修復はそれを守ろうとする当然の行為であるといえるでしょう。
日本のテレビ放送の規格であるNTSC方式では基本的に1秒間が30フレームとなっています。ビデオデッキでコマ送りをしてみると、大抵のものなら1秒間進むのに30回のコマ送りが必要になるのがわかると思います。(もちろん、機種によってはそうでないものもあります)
もう一つ、フレームの他に、フィールドという単位が存在します。
テレビの1画面(1フレーム)は、走査線が上から下に2回走ることで一つの画面が構成されています。その1回だけ上から下に描かれた画面がフィールドという単位で扱われるわけです。1画面の半分の情報が2回表示されて、テレビは1画面を作ることになります、。その1フレームの半分の画面を1フィールド、という訳です。
16ミリフィルムの番組は1秒間に24コマで映像が記録されています、それを30コマのテレビやVTRに変換する場合には、24コマを60フィールドに変換して(あるコマは2フィールド、次のコマは3フィールドという具合で)記録していくことになります。
そのために修復の方も、フレームではなく、フィールド単位で行わなればいけません。
修復しているときも、打ち合わせの会話はついフレームではなく
「この映像は次のフィールドまで行ってますよね?」
「ええ、いってますね」
という感じになります。
なぜフィールドまで気を配るかというと、これをフレーム単位で扱ってしまうと、番組のオリジナリティを損ねたり、編集時のカットを変えるタイミングを狂わせてしまったりするおそれがあるからです。ちなみにVTRのドラマなどでも、カットを変えるタイミングは30分の1秒のフレーム単位ではなく、フィールドである60分の1秒単位で切り替わっていたりしますので、修復する方にとってもこだわる価値があるといえます。
NHKアーカイブスで30分の番組を3本放送する場合には90分=16万2千フレームとなり、さらに16万2千フレームは倍の32万4千フィールドで扱う事になります。何気なく見られている映像の変わり目にも、実は60分の1秒単位でどうしようかと悩んでいたりする私達スタッフの姿があったりするわけです。

「NHKアーカイブス」が従来の番組制作と違う大変さは、当時出演された方や関係者等の追跡調査をおこなったうえ、連絡をとり、改めて、放送することの了解を頂いていることです。
しかし、企画段階でたくさんの良質の番組を見ることができ、その当時の出来事を追体験できることが、何よりも楽しみです。でも、その対象となる良い番組が多すぎて、選ぶのにひと苦労、というのが本音です。
制作してから数十年も経過しているとは思えない、瑞々しい内容と鮮やかな画面。そこには、テレビの、ドキュメンタリーの、そして日本の戦後の歴史が詰まっています。熟年と壮年の世代が自分の人生に重ね合わせて見ることも可能、若い世代が自分の知らない日本を見いだすこともできます。
「NHKアーカイブス」には、それぞれの新しい発見があります。