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連載コラム「お宝発見ニュース」

第18回 樅ノ木(もみのき)は残っていた!(その2)&その他いろいろ

発掘アーキビストの【あ】です。
まずは、1年近く更新が止まってしまったことをお詫び申し上げます。

私の職場も渋谷の放送センターから、川口のNHKアーカイブス・大保管庫の上の階にある「データベースセンター」の中に移りました。渋谷に比べ、作業スペースが広〜くとれるので、発掘されたテープやフィルムをあちこちに分散させずに置くことができるので嬉しいです。ただ、通勤時間がこれまでの倍以上かかるようになったのがちょっと難点です。

この1年近くに起きた「お宝発見」の状況を少しずつお伝えしていきます。
さて、このコーナーの愛読者の皆さまにご心配をおかけした『樅ノ木は残った』ですが、全52回放送されたうち、51回分のテープが確認できました。

当初は、テープの箱に書かれたメモを見たら「本編50回分と総集編3回分で、第1回と第29回が欠けている」ということでした。
第1回というのは大河ドラマでは非常に大事なプロローグ。「これがないと大発見の価値がかなり下がるなあ」と思っていたら、妙なことに気付きました。

「何で"総集編"が3本もあるの?」

モノクロ収録の「樅ノ木は残った」第1回 野のふたり

放送記録によると、『樅ノ木〜』の総集編は第1部・第2部の2回しか放送されません。
でも提供されたテープには何故か"総集編③"というものがあります。
「ひょっとして、この中に第1回、第29回が収録されているかもしれない」
いつも古いテープの修復や再生をお願いしている業者の方に聞いてみたら、私の勘はほぼ当たっていました。「総集編①」のテープに本編第1回が、「総集編②」には総集編第1部が、「総集編③」に総集編第2部が収録されていました!(残念ながら、第29回だけは未発見のままです)

しかし! 何といっても惜しいのが、すべてモノクロ収録だったことです!
「樅ノ木は残った」の番組そのものはカラー作品でしたが、この収録はモノクロ。
当時のビデオデッキはチューナーを持たず、テレビにつないで、テレビのチューナーを通して録画する方式でしたから、録画に使ったテレビが白黒テレビだと、テープがカラー対応でも録画はモノクロになってしまいます。1970年当時のカラーテレビ普及率を調べたら、「全国平均で約26%」とのこと。まあ、無理からぬことでしょう。
それにしても惜しい…

『樅ノ木は残った』にはもう1つ課題がありました。

それは、録画・保存をしていた「しばたの郷土館」(宮城県柴田町)から"地元が取り上げられた大河ドラマなので、館内で上映したい。できれば常設展示として"という要望が出されていたことです。法律的な話はちょっと複雑なので、要点だけ申し上げますと、番組の映像をNHK以外の場所で展示する場合は、出演者や脚本家・音楽家など、番組の著作権に関わる方々へ許諾していただく対価を支払う必要があります。

しばたの郷土館入口

しかし、今回は51話分というかなりな量がある一方、地方の小さな郷土資料館にそのような予算はありません。どのようにすべきか、私たちは、関係の部局と協議を重ねましたが、妙案が出てきません。特にネックだったのが、「しばたの郷土館」が有料の施設だったことです。

そうしたなか、東日本大震災のため、「しばたの郷土館」はしばらく避難所として使用されていました。また、地震で一部の所蔵品が破損した上、職員が沿岸の被災地の資料館・博物館の支援のため出払ってしまい、「しばたの郷土館」はしばらく休館に。

前回ご登場の小玉副館長

「このビデオの上映だけ、入場料を支払う手前のスペースでやってもらうとかは無理だろうか…?」「一部分だけを抜き出したダイジェスト版を制作して、許諾が必要な人や団体を絞り込んではどうか」「『樅ノ木は残った』は、郷土館公開再開の時の目玉になるんだけど、それまでに何とか権利関係を解決しなければ…」私たちアーカイブスも、関係各部局も少し焦りだしたところ、吉報が入りました。

小玉さん「郷土館はそろそろ再開できそうです。それと、町議会の方で、入場料を無料にすることが決まりました」

入場無料なら話は早いです。無償の上映会があっさり認められ、現在、しばたの郷土館でDVDによる上映が行われています。

連続テレビ小説「わたしは海」(第131回か?)

その他、この1年に起きた、主な「お宝関連情報」をお伝えします。

(1)2007年に寄贈されたものの、倉庫の奥の方に眠っていたVHSテープ約400本が日の目を見ることになりました。1979年〜84年ごろの番組が収録されており、提供者の亡くなったお父様が録画されたそうです。
お仕事が生物学の先生、趣味が邦楽(J-POPのことではなく、長唄とか新内といった"純邦楽")ということで、その方面の発掘番組が多かったのですが、

  • 1979年4月30日放送『ウルトラアイ(一部)』
  • 1979年9月19日放送『新日本紀行』(これまで素材のみ保存がありました)
  • 1979年3月ごろ放送『連続テレビ小説・わたしは海』(冒頭タイトル部分が欠けていたので第何回かは不明)
  • 1979年3月12日放送『連続人形劇・紅孔雀』

…といった、発掘アーキビストとしては嬉しい発見もありました。

第16回「紅白歌合戦」(100分短縮バージョン)

(2)私と同期入局で、音楽番組のディレクターをしているS君が「これ、今は再生できないよねー」とすまなそうに持ってきたビデオテープ、『第16回紅白歌合戦』と書かれていました。
「第16回紅白歌合戦」と言えば昭和40年の放送です。「紅白歌合戦」はこの前の年の昭和39年にカラー化され、カラー放送としては2回目になる貴重なビデオテープです。
これまで番組の後半だけ収録されたカラーテープと、モノクロで収録されたテープの保存はあるのですが、カラーで完全版となると大発見です。

し・か・し、S君が持ってきたテープは「2インチテープ」。すでに再生できる機械は"絶滅"したと言われています。NHK放送博物館には2インチテープのビデオレコーダーが展示されていますが、これは5年ほど前に動かなくなった、いわば"剥製"です。
さて、どうしたものかと途方に暮れていると、天の声がしました!
アーカイブスに電子機器類や保存用メディアを納入しているメーカーの方が、「英国に、まだ動く2インチ再生機があるそうです。日本に取り次ぎをしてくれる代理店がありますので、聞いてみてはいかがですか?」と教えてくれたのです。

さっそく連絡してみると、その代理店の社長さんというのは、何と私とほぼ同世代で、しかも学生時代にNHKでバイトしていたとか。さらによくよく聞いてみたら、『樅ノ木は残った』の保存媒体作成の際、2社に分けて発注したうちの1社の下請けとして、作業を行っていたことも分かりました。
…この話だけで「お宝発見ニュース」1回分できてしまうのですが、私が英国まで行った訳ではないので、いかんせん写真などの資料がありません。
結論から申し上げますと、無事、カラー再生された『第16回紅白歌合戦』がデジタルテープになって帰ってまいりました。

しかし!残念なことに、このテープ、「編集済み」だったのです!
坂本九や植木等やザ・ピーナッツなどがまるまるカットされていました。
2時間45分の番組だったのに、テープの長さは1時間40分。誰が何のために、このような「短縮版」を制作したのかは、今となっては永遠の謎です。

「玉藻前」

(3)間もなく川口アーカイブスで大きな工事が始まります。
保存コンテンツを、これまでのビデオテープではなく、データファイルの形で保存するための装置を入れる工事なのですが、その準備として昨年末、大規模な倉庫整理がありました。

やはり、出てきましたよ、「お宝」!
昭和28年、NHKのテレビ開局直後に放送された人形劇!
数あるNHK人形劇の最初の作品である、その名も『玉藻前(たまものまえ)』!!
すごい、ヤッターーーーーーー!!!
…いや、待てよ、昭和28年の人形劇は生放送だったはず。じゃあ、これは何?

よくよく調べてみると、昭和36年に『芸術劇場』という番組の枠で制作されたリメイク版でした。
リメイク版とは言え、50年以上前の作品。さっそくアーカイブ化して、公開ライブラリーのラインナップに加えました。ぜひ、お近くのNHKにある公開ライブラリーの専用端末でお楽しみください。

みなさんのお宅にも、古いビデオやフィルム、残っていませんか?
NHKの番組が録画されているようでしたら、NHKアーカイブス 番組発掘プロジェクト「映像募集」からご一報をお願いいたします。

【あ】

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