
発掘アーキビストの【あ】です。
まずは、1年近く更新が止まってしまったことをお詫び申し上げます。
私の職場も渋谷の放送センターから、川口のNHKアーカイブス・大保管庫の上の階にある「データベースセンター」の中に移りました。渋谷に比べ、作業スペースが広〜くとれるので、発掘されたテープやフィルムをあちこちに分散させずに置くことができるので嬉しいです。ただ、通勤時間がこれまでの倍以上かかるようになったのがちょっと難点です。
この1年近くに起きた「お宝発見」の状況を少しずつお伝えしていきます。
さて、このコーナーの愛読者の皆さまにご心配をおかけした『樅ノ木は残った』ですが、全52回放送されたうち、51回分のテープが確認できました。
当初は、テープの箱に書かれたメモを見たら「本編50回分と総集編3回分で、第1回と第29回が欠けている」ということでした。
第1回というのは大河ドラマでは非常に大事なプロローグ。「これがないと大発見の価値がかなり下がるなあ」と思っていたら、妙なことに気付きました。
「何で"総集編"が3本もあるの?」
放送記録によると、『樅ノ木〜』の総集編は第1部・第2部の2回しか放送されません。
でも提供されたテープには何故か"総集編③"というものがあります。
「ひょっとして、この中に第1回、第29回が収録されているかもしれない」
いつも古いテープの修復や再生をお願いしている業者の方に聞いてみたら、私の勘はほぼ当たっていました。「総集編①」のテープに本編第1回が、「総集編②」には総集編第1部が、「総集編③」に総集編第2部が収録されていました!(残念ながら、第29回だけは未発見のままです)
しかし! 何といっても惜しいのが、すべてモノクロ収録だったことです!
「樅ノ木は残った」の番組そのものはカラー作品でしたが、この収録はモノクロ。
当時のビデオデッキはチューナーを持たず、テレビにつないで、テレビのチューナーを通して録画する方式でしたから、録画に使ったテレビが白黒テレビだと、テープがカラー対応でも録画はモノクロになってしまいます。1970年当時のカラーテレビ普及率を調べたら、「全国平均で約26%」とのこと。まあ、無理からぬことでしょう。
それにしても惜しい…
『樅ノ木は残った』にはもう1つ課題がありました。
それは、録画・保存をしていた「しばたの郷土館」(宮城県柴田町)から"地元が取り上げられた大河ドラマなので、館内で上映したい。できれば常設展示として"という要望が出されていたことです。法律的な話はちょっと複雑なので、要点だけ申し上げますと、番組の映像をNHK以外の場所で展示する場合は、出演者や脚本家・音楽家など、番組の著作権に関わる方々へ許諾していただく対価を支払う必要があります。
モノクロ収録の「樅ノ木は残った」第1回 野のふたり
しかし、今回は51話分というかなりな量がある一方、地方の小さな郷土資料館にそのような予算はありません。どのようにすべきか、私たちは、関係の部局と協議を重ねましたが、妙案が出てきません。特にネックだったのが、「しばたの郷土館」が有料の施設だったことです。
そうしたなか、東日本大震災のため、「しばたの郷土館」はしばらく避難所として使用されていました。また、地震で一部の所蔵品が破損した上、職員が沿岸の被災地の資料館・博物館の支援のため出払ってしまい、「しばたの郷土館」はしばらく休館に。
「このビデオの上映だけ、入場料を支払う手前のスペースでやってもらうとかは無理だろうか…?」「一部分だけを抜き出したダイジェスト版を制作して、許諾が必要な人や団体を絞り込んではどうか」「『樅ノ木は残った』は、郷土館公開再開の時の目玉になるんだけど、それまでに何とか権利関係を解決しなければ…」私たちアーカイブスも、関係各部局も少し焦りだしたところ、吉報が入りました。
- 小玉さん
- 「郷土館はそろそろ再開できそうです。それと、町議会の方で、入場料を無料にすることが決まりました」
入場無料なら話は早いです。無償の上映会があっさり認められ、現在、しばたの郷土館でDVDによる上映が行われています。
しばたの郷土館入口
前回ご登場の小玉副館長