発掘ニュース

No.176

2017.12.15

情報番組

昭和47年『きょうの料理』正統派“おせち”発掘!

今年、放送開始から60周年を迎えた『きょうの料理』今回の発掘番組です!

料理研究家の柳原敏雄さんが講師をつとめた1972~82年の『きょうの料理』を、ご家族から一挙18本提供いただきました!

その中でも一番古いのが、45年前のちょうど今時期に放送した6回シリーズ「正月料理」。どんな内容だったのか?少しご紹介しましょう!

一週間のメニューはこちら…

(月)「三つざかな」黒豆、数の子、ごまめ
(火)「口取り」栗きんとん、矢羽根かん、錦たまご
(水)「鉢ざかな」車えびの酒塩焼き、平目の昆布じめなど

(木)「うま煮」昆布巻き、八頭のうま煮
(金)「酒のさかな」なます、みぞれ和え

いかがですか?もう気分はお正月!美味しそうですよね。まさに“正統派のおせち”
そして6日目は…

質問コーナーの一日。FAXやメール、ホームページが無い時代。郵便での募集が唯一の手段!月曜日の放送で呼びかけて『水曜日までに!』というのがスゴイですね!こんなところにも時代を感じます。

「正月料理というのは元来、江戸からおこったものなんです、今のような“おせち”の形は。というのは三が日、材料を長持ちさせなければいけない。関西風の煮物などですと薄味なので、長持ちさせるのに骨が折れる。関東風の煮物は濃い味でしょう。特にうま煮なんかはコッテリと煮ますね。ですから冷めても美味しい味で、保存食にもなる。」
井上アナ「主婦の骨休めということもありますよね。最近ではデパートなどで重詰めになって売っているものもあるんですが、やはり家庭で何か作るというのがいいですね。」
「一品でも二品でもいいから手作りの味を加えて欲しいですね。」

今回は初日の「三つざかな(肴)」の中から黒豆の作り方をご紹介しましょう!
とにかく手間をかけた料理方法です。

ちなみに「三つざかな」というのは、おせちを代表した三種類の“祝いざかな(肴)”だとのことです。関東では、黒豆、数の子、ごまめ(田作り)の3つです。関西ではごまめの代わりに、たたきごぼうが入るそうです。

材料になるのは「丹波の黒豆」。一般的な黒豆よりも粒が大きく、ふっくらと柔らかく煮上がるといいます。そしてなるべく今年とれた豆を使ってくださいとアドバイス。

「煮る時間が違うんです。去年の豆ですと今年の豆より倍くらい時間がかかるんです。火力が不経済ですね(笑)」

流水でざる洗い。長く洗うと皮が取れてしまうので、ざるを揺すって表面のほこりが取れる程度でOK。そして豆の2倍以上(3倍くらい)の量の水に漬けて12時間浸します。早く煮るためには重曹を小さじ1杯入れます。

「一晩浸けると、こんなに膨らみました。あまり長く浸けすぎると皮が切れるんです。もっと長く浸けると芽が出てきますから(笑)ですから限度まで柔らかくなるように浸けます。これを浸け汁もそのまま煮るんです。」

黒くにごった浸け汁は捨ててはダメ!最初、アクが出るので丁寧に取ります。水が少なくなったら、ぬるま湯を用意しておき継ぎ足していきます。(やかんに1杯くらい使うことになるそうです。)今年とれた豆で、早くて3時間半から4時間。古い豆だと柔らかくなるのに8時間くらいかかるとのこと!

「結局、豆というのは忍耐力ですね。」

豆が柔らかくなったか?調べる方法です。縦に持って力を入れずにグニャグニャとつぶれるようになれば良し。そして…!

思いっきり、まな板などに叩きつけます!
「べシャっと、こんな風につぶれますね!こういう状態が良いんです。」

「昔の板前さんたちは、これを天井にポンと投げつけて、天井にペタッと貼り付いて落ちてこなければよろしいと(笑)」

柔らかくなったのが確認できたら、色を定着させるために「落としぶた」をします。
「一度出た黒い色をもう一度戻してやるんです。煮汁が減ってくると豆が頭を出してきますね。そうすると豆にシワが寄るんです。そのために紙ぶたをするんです。そしてトロ火でトロトロと煮詰めていきます。何も薬品など入れず真っ黒になります。」

煮上がった豆を今度は水洗い。水を入れながら黒い煮汁を少しずつ流しだします。豆がつぶれやすいので優しく。何度も水を入れ替えてきれいに洗ったものをざるにあけます。

洗い終わった豆です!いよいよ“蜜”に浸けて味付けです。

元々の豆と同じ分量の砂糖、そして水をあわせて、ひと煮立ちさせたものです。そこに豆を入れて紙ぶたをして…冷たい部屋で3日間浸しておきます。暖かい部屋に置くと発酵してしまいますので注意。

「元旦に美味しくいただくためには28日頃には煮て、蜜に浸けなければいけませんね。」
「さらにその前日に豆を水に浸さなければなりません。」

完成です!
まさに忍耐と計算の元に美味しい伝統的なおせちの一品が作られることを実感!
でも難しいテクニックがあるわけではなく、誰にも作ることが出来るレシピでした!

6日間にわたって関東風の正統派「おせち」を紹介したシリーズ。こうした丁寧なレシピの数々が映像として残されています。大変貴重な発掘となりました!ありがとうございました。

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