今回の発掘ニュースは、地域で発掘された貴重な映像です。

さかのぼること今年2月、NHK鳥取放送局のディレクターから17本のフィルムが送られてきました。提供者は鳥取市にお住まいの吉川和彦さん、ご親戚が撮影したというフィルムを提供して下さいました。

“鳥取の戦時中を撮影した貴重な映像かもしれない”とのことで、番組発掘プロジェクトがお手伝いをさせていただくことに。それから半年余り…

鳥取放送局が制作する『あの日の記憶』の中で貴重な映像が電波に乗りました。

『あの日の記憶』は、開局80年を迎えるＮＨＫ鳥取放送局が立ち上げた新たなアーカイブス企画です。夕方のニュース番組「いちおしＮＥＷＳとっとり」の中で、今年１年を通して鳥取放送局が所蔵する映像やそのエピソードなど、ＮＨＫが見てきた鳥取県の記憶をお伝えしています。

「温泉」「災害」「鳥取砂丘」などテーマに分けて、これまで16回放送。第12回では「戦争と鳥取」と題して、今回発掘されたフィルム3本を含め戦争中の貴重な映像が放送されました。

近藤アナ「こちらのフィルムなんですけれども、視聴者の方が2年ほど前に“もう見ることが出来ないので”と提供して下さったんです。それをNHKが映像化して県立公文書館と一緒に調査したところ、戦時中の鳥取の様子がうかがえる貴重な資料が残っていたことが分かりました。今回、初公開というこの映像から、『鳥取県の戦争の記憶』を振り返っていきます。」

司会の近藤アナウンサーとともに、昭和6年生まれで鳥取県博物館友の会の清末忠人さんが、自分の思い出や経験も織り交ぜながら映像の解説をしてくれます。

近藤アナ「まずは昭和15年、紀元2600年の記念式典の様子です。今の県立博物館のあたりにあった公設グラウンドで行われたということです。」

近藤アナ「この式典は、初代天皇の神武天皇の即位から2600年にあたるということで全国各地で行われていたそうです。戦意高揚や国民精神の統合を目的に、小中学生もかりだされて盛大に催されたということです。」

近藤アナ「こちらは昭和16年。鳥取城跡のお堀端で行われた行進の様子です。日露戦争に勝利した3月10日の陸軍記念日に行われていたということです。こうした記念日が、当時は年5回ほどあったと？」
清末さん「陸軍記念日、海軍記念日、航空記念日というふうにたくさんありました。」

近藤アナ「女学生も行進していますね？」
清末さん「これは女子挺身隊という名前で、一つの軍隊として戦っていましたね。毎日、竹やりをやったりしていました。」

近藤アナ「こちらも今回初公開ですが、のぼりを見ると“祝　シンガポール陥落”と書かれています。昭和17年の2月に、日本軍がイギリスの占領していたシンガポールを陥落させたことを受けて、戦争の勝利を祝って祝典や行進が行われたと。」

清末さん「山下奉文が“イエスかノーか”とパーシバルにシンガポールで突きつけて、日本が勝ったというので、昼、私たちは雪の中を旗行列、夜は提灯行列。寒かったですけどね…。」

ここまでが今回発掘された映像です。この他にもNHK鳥取放送局に残されている映像が何本か紹介されました。その一つが戦時中の運動会の様子。

女性による「バケツリレー」は空襲を受けた場合の消火活動を、「肉弾突撃」は自分の体に爆弾を巻きつけて敵の陣地に突撃するという想定の競技です。競技の中の軍事色の濃さが映像からはっきりと分かります。

そして空から撮影した空襲です。

こちらは大分県の市民団体が保存している米子・大山町・岩美町での米空軍による空襲、米軍の航空機に取り付けられたカメラの映像です。米子の美保飛行場の近くの海上で貨物船が空襲を受けています。機銃掃射そしてロケット弾攻撃が生々しくフィルムに残されていました。

さらに、こんなものも…

終戦の10日前の8月5日、米軍が鳥取市内にまいたビラです。書かれている都市の名前は空襲の標的となったところです。こうした数種類のビラが、全国に合わせて198万枚まかれたといいます。

その裏には…

実際にこのビラを手に取ったという清末さんは…。

「“拾った者はすぐ警察に届けろ”というふれ回しがありまして、拾ったらすぐに警察に届けていました。『アメリカの謀略だ』『絶対に惑わされるな』とずいぶん叩き込まれました。」

こうして残された資料、そしてリアルな映像を見ることで戦争を知らない世代の私たちも、戦争を感じ取ることができることを改めて感じます。アーカイブスにたずさわる人間として身が引き締まる思いがしました。

『あの日の記憶』、この回を含めて鳥取放送局のホームページでご覧いただくことができます。こちらです。また12月7日（水）には『スタジオパークからこんにちは』の14時台に「あの日の記憶　特別編」を全国放送でもご覧いただく予定です。

思い出・コメントはこちら