発掘ニュース

No.058

2015.05.29

ドキュメンタリー/教養

中学2年の野村萬斎さんも!能と狂言の数々を発掘!

今週は、まず35年前の5月5日“こどもの日”に放送された番組から!

1980(昭和55年)に放送された「こどもの能と狂言」。能や狂言の世界で修業をする子供たちが成果を発表する舞台です。

その中からご紹介するのは、狂言のなかでも有名な演目『附子(ぶす)』。演者の一人はこの方!

まだあどけない表情!お分かりになりますか?そう、野村萬斎さんです!このとき中学2年生の萬斎さん、演じているのは…

太郎冠者(たろうかじゃ)という役。狂言の中では主役となる登場人物!本名の『野村武司』での出演です。この番組の2年前に亡くなった野村万蔵さんのお孫さんたちで演じた舞台です。

“砂糖”が珍しい貴重な食べ物だった頃、ケチな主人は家来たちが食べないようにと「これは附子(ぶす)という毒じゃ」と脅して出かけます。舞台の真ん中にあるのが“附子”。

“附子”の方から来る風にあたっても命を失うほどの猛毒だといわれたにもかかわらず、扇子であおぎながらどんなものか確かめようとする太郎冠者。そして…

実は“砂糖”だった中身を全て食べつくしてしまいます。このあとの『言い訳』作りがこの演目の面白いところです!

主人が大切にしている掛け軸を破り、これまた大切にしている台天目という茶碗も割ってしまいます。そのうえで「留守中に居眠りをしないよう相撲を取っていたら大切な掛け軸と茶碗を壊してしまい、猛毒の“附子”で死のうと思いましたが死ねませんでした…」と。

狂言のことはほとんど知らない私も楽しめる、とても面白い舞台でした!

今や狂言だけでなく、幅広く世界で活躍する野村萬斎さん。中学2年生のころから主役として存在感を示していたのですね!

さて、このビデオテープを提供してくれたのはこちら!

東京・西東京市にある武蔵野大学・能楽資料センターです。能楽の歴史や伝統を後世に伝えていこうと1972年に開設されました。能や狂言の台本をはじめ、図書や写真そして映像などを研究のために収集し保管しています。

その中に…!

NHKで放送された能や狂言をはじめ古典芸能の録画テープの数々が保管されていたのです!今回、100本ほどのビデオテープをお借りして確認した結果、NHKに残っていない貴重な番組が記録されていることが分かり、68本の番組をアーカイブスに登録させていただきました。

最初に紹介した「こどもの能と狂言」もその一つですが、その他こんな番組も…

「ばらえてい テレビファソラシド」「太郎冠者でおじゃる」1980年放送

ゲストは狂言の和泉元秀さん。「狂言の世界の皆さんは他の分野の人たちとあまり接触しないんですよね」という永六輔さんの言葉の通り、当時はバラエティー番組に狂言の人たちが出演することは相当珍しかったようです。

和泉元秀さんの指導のもと狂言の発声練習に出演者全員で挑戦したり、狂言をバラエティーで楽しむという、当時としてはかなり斬新な企画です。
他にも「スタジオ102」や「女性手帳」、「ニュースセンター9時」など、ニュースや情報番組で能や狂言を取り上げた番組も発掘されました。

しかし何と言っても貴重なのは、名人芸をたっぷり見せてくれる舞台の数々!
伝統芸能を記録し残していくためにも一番の“お宝”です!

能楽 思い出の名人1976年放送

昭和初期の名人たちの舞台を集めたこの1本は、能楽ファンにはたまらないダイジェスト版です!

司会は日本を代表する能楽研究者の増田正造さん。そしてゲストは野村萬斎さんの祖父・野村万蔵さんです。増田さんは、その後武蔵野大学の教授をつとめた方で、今回提供いただいたビデオテープの中には、増田さんのコレクションも多く含まれています。

この番組に登場する名人の皆さん、そして演目をご紹介すると…

能「羽衣(はごろも)」宝生(ほうしょう)流 収録年不明
野口兼資(のぐち かねすけ)

舞囃子(まいばやし)「松風(まつかぜ)」観世流 昭和13年
梅若万三郎(うめわか まんざぶろう)

能「頼政(よりまさ)」 喜多流 昭和32年      
喜多六平太(きた ろっぺいた)

能「葵上(あおいのうえ)」 金春(こんぱる)流  昭和12年
櫻間金太郎(さくらま きんたろう) 宝生新(ほうしょう しん)

どの映像も“名人たち”の貴重な舞台です!

日本の伝統芸能をしっかり映像として後世に残していく…
NHKのアーカイブスに求められる一つの使命だと感じました。

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