No.057
2015.05.22
ドラマ
村野武範さんから幻の時代劇「天下堂々」2本発掘!
今回の発掘、提供者はこちらの方です!
そう、俳優の村野武範さんです!現在70歳の村野さん、何のビデオを提供して下さったかというと…
1973(昭和48)から74年放送の「天下堂々」!江戸時代の天保年間、若者たちが生き抜く姿を社会問題やユーモアをまじえながら描いた時代劇です。まるまる残っている回は1つだけという幻のドラマ!(発掘ニュースNo.13参照)テープには…
第22回「人はそれぞれ冬の旅」<1974年3月8日放送>
第30回「襟裳の春は何もない」<1974年5月17日放送>
この2話が収録されていました!
まもなく30歳という村野さんが演じているのは、平手造酒(ひらて みき)という剣の達人です。どちらの回も造酒がストーリーの中心となっています。
特に第30回では…
実は、探検家の間宮林蔵が平手造酒の育ての親であり、造酒はロシア人とのハーフで本名はヒラテビッチ・ミキノフだった…という衝撃の事実が明かされます!
平手造酒も間宮林蔵も歴史上実在した人物ですが、ストーリーはもちろんフィクション。遊び心たっぷりの物語です。
Q 貴重な映像をご提供下さり本当に有難うございます!何故、この「天下堂々」が?
「もともと1/2オープンリールのデッキを所有していて全部録ってあったんですが、引っ越しを重ねる度に場所を取るものですから邪魔になって処分してしまったんですね。ただ「天下堂々」だけはVHSにダビングしてあったんです。」
Q ということは、出演した全ての作品をお持ちだったのですか?!
「はい。『赤ひげ』もあったし『ふりむくな鶴吉』も全部録画してありました。しかし処分してしまったんですよね~。」
ガーン…(涙)
気を取り直して…どうして第22回と第30回の2話が残っていたのか聞いてみました。
「僕の立ち回りシーンが格好良いんですよね~。撮影時にかなり苦労して立ち回り稽古をさせられて…。ダメ出しを相当食らいまして、ボロボロになりながらも懸命に演じた努力の結晶なんです。それでちゃんと残しておこうと。」
たしかに殺陣のシーンを見るとカッコイイです!しかも第22回よりも第30回の方が、腕前がさらに上がっているのが分かります。
Q 撮影現場はどんな雰囲気でしたか?
「共演した役者仲間は皆、若かったですから…主演の篠田三郎や桃井かおり、といった同世代の仲間だったので仕事というより遊びに行く感覚でしたね。収録が終われば渋谷ですから、当然飲みに行くわけですよ。それが楽しくて楽しくてね。」
今回さらに村野さんからのサプライズが…!
「私のデビュー作、NHKの『走れ玩具』という作品のフィルムです。」
Q えっ?どういう事ですか?
「実は僕の初主演でありデビュー作となった『走れ玩具』を演出された北嶋隆さんが、“こんな物はNHKに残しておいても何の役にも立ちはしねえからお前にやると。営利目的でなければずっとお前の記念碑にしておけと。それでこれまで大事に持っていたんですよ。でも、家に保存していても劣化してしまうのでNHKさんに戻します。宜しくお願いします!」
「走れ玩具」は1969(昭和44)年に放送されたドラマで、芸術祭優秀賞を受賞しました。
村野さんが演じるのは新車のテストドライバー。ある日、団地で見かけた、おもちゃの車で人形をひいて遊ぶ女の子が気になります。最初は心を閉ざしていた女の子ですが、次第に心を開き、二人は心を交わしていきます。村野さん24歳のデビュー作です。
「当時、僕は文学座の研究生で駆け出しの身だったんですが、まさかオーディションで自分が通るとは思ってもいなかったので晴天のへきれきでしたね。演技は凄く下手だったですよ。自分で言うのもなんなんですがね(笑)それからちょいちょい役を貰えるようになっていきましたね。「走れ玩具」は僕にとっては切っても切り離せない作品ですね。」
数多くのドラマに出演している村野武範さんが大切に手元に残していた作品、それは記念すべき初主演のドラマと、懸命に努力して演じた努力の結晶でした。
アーカイブスでも末永く大切に保管していきます。
村野さん、ありがとうございました!