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FM「今日は一日ラジオドラマ三昧」番組ガイド

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 今年90年を迎えたNHKラジオ放送。それを記念して今回の「三昧」では、いつもの音楽ではなく、「ラジオドラマ」にスポットをあてます。NHKアーカイブスに数ある保存作品の中でもなかなか再び耳にすることのできなかった、かつ「誰もが楽しめる」ものを選りすぐって12本お届けします。(NHKに保存がなく最近テープが発掘されたものも含まれています)
 選定をお願いしたのは、この番組の企画・構成担当、アンソロジストの濱田高志さん。濱田さんに聴き所や裏話など、12本についての作品情報をまとめていただきました。

(※以下の◎印が発掘テープによる再放送作品)

[各作品について] 解説:濱田高志

 「ラジオドラマ」は、ラジオ放送開始とほぼ同時に「放送劇」の冠を付して企画され、それ以降、現在に至るまで90年の長きに渡って放送されてきた。
 テレビ・映画といった映像メディアと異なり、ラジオは視覚に頼らず聴覚に直接訴求することから、受け手のイメージが固定されず、リスナーの無限の想像力に委ねられることで、より深く記憶に残るという特性があり、番組では そうしたラジオドラマを厳選して、幻の名作から話題作を、脚本家、出演俳優、演出者や音響効果担当者などのコメントと共に紹介する趣向である。
 なお、番組内で再放送する作品の選出にあたっては、いわゆる文芸大作や各賞の受賞作といった経歴に拘らず、実験的な要素を含めた「エンタテインメント性」に着目した。そのため数作を除き、本放送以来、初めて再放送される作品を選んでいる。

23日「ラジオドラマ三昧」内で、午後0時25分ごろ放送予定
(生放送ですので、時間がずれる場合があることをご了承ください)

『死ぬには手頃な日』(全10回)[10分]ステレオ ◎

(第6回)「陽のあたる大通り」
脚本:矢作俊彦 演出:音成正人(札幌局制作)
出演:宇崎竜童、蜷川有紀

 70年代に短編小説、漫画を手掛ける傍ら、ラジオやテレビドラマの構成作家としても活躍した矢作俊彦が、1978年から81年にかけて様々な雑誌に発表した短編と書き下ろし作品で編んだ作品集『死ぬには手頃な日』(文庫化の際にさらに一編の書き下ろしを追加収録)のテイストを基に書き下ろされたオリジナル作品(NHK札幌局制作)。矢作は、本作のために札幌に出向き、ホテルに缶詰状態で執筆に励んだという。
 なお、全10回のうち初回に「死ぬには手頃な日」の副題が付され、その回の終盤で「死ぬにはちょうどいい日だと思っていた…」という台詞がある以外、相互に共通点はなく、前述の短編集が原作ということではない。各話ごとにキャラクターとシチュエーションが異なり、主役の二人はその都度、独自の個性で演じ分けている。
 主演の宇崎竜童は「この作家は将来すごいものを書く逸材だ」と手放しで矢作の才能を高く評価し、「彼が書き下ろすならば」という条件付きで出演を快諾したという。宇崎はこの作品が放送された当時、自身のバンド〈竜童組〉を率いてのコンサート活動や、パーソナリティを務めるレギュラー番組などで多忙を極めており、その合間を縫って収録が行なわれた。
 相手役の蜷川有紀は、父が詩人の水野陽美、叔父が演出家の蜷川幸雄という芸術一家に生まれ、女優だけではなく画家としても活躍する才女で、1978年につかこうへい構成・演出の『サロメ』の主役でデビューし、以降、舞台・映画の分野で活躍。本作の放送当時の作品に『V.マドンナ大戦争』『恐怖時代』などがある。
 本作は、「限られた出演者による会話劇」という、ラジオドラマの王道とも呼べる構成で、本企画『ラジオドラマ三昧』の幕開けに相応しい作品といえるだろう。

(初放送:NHK-FM「FMアドベンチャー」1985年2月11日(月)21:45より放送)

午後0時40分ごろ放送予定

『ぼくのまわりで楽しい音が』[20分]モノラル ◎

脚本:前田武彦 音楽:服部克久
出演:ミッキー・カーチス

 「フリートークの天才」と呼ばれた、放送作家にして司会者としても知られる前田武彦が脚本を手掛け、様々なステージや音楽番組において、華麗なオーケストレーションで聴き手を魅了する服部克久が、オリジナルで作・編曲を手掛けた、実験的なラジオミュージカル。
 前田にとっては『夜のヒットスタジオ』(68年)『巨泉×前武のゲバゲバ90分!』(69年)を手掛ける遥か以前の放送作家時代における、ごく初期の作品である。
 一方、音楽担当の服部克久にとっては、1958年にパリ国立高等音楽院を卒業後、帰国してすぐに草創期のテレビ界で仕事を始め、ダーク・ダックスのテレビ番組や特撮ドラマ『遊星王子』(58年)の音楽などを手掛けて、めきめきと頭角を現し始めた時期の作品で、わずか20分ながら、様々な音楽要素が採用され、劇中では、次から次へとイメージの連鎖が、主人公のモノローグとサウンドで展開する。
 そして、軽妙な語り口で主人公を演じるのはミッキー・カーチス。当時の彼は、平尾昌晃、山下敬二郎と共に「ロカビリー3人男」として人気絶頂、前年には「恋の片道切符」で『第11回NHK紅白歌合戦』に出場した。

*本企画『今日は一日ラジオドラマ三昧』では、主役のミッキー・カーチス氏を招いて、当時のお話を伺う。

(初放送:R1「こども劇場」1961年8月26日(土)18:05より放送)

午後1時20分ごろ放送予定

『十円玉』[30分]モノラル

脚本:谷川俊太郎 音楽:湯浅譲二
演出:小林猛 出演:伊藤幸子、小池朝雄、高橋昌也、稲垣昭三、
桜井英一、有馬昌彦、早川正巳、三上由紀

 本作が放送された『ラジオ小劇場』では、30分の枠内で、若手ディレクターによる野心作が次々と発表されており、本作もそのうちの一本にあたる。
 同枠では、本作で演出を務めた小林猛と同期の佐々木昭一郎が、『都会の二つの顔』を演出し、本作と共に文化庁の芸術祭奨励賞を受賞した。ちなみに本作の演出アシスタントは佐々木昭一郎、『都会の二つの顔』のアシスタントは小林猛が務めている。
 本作は、20代の頃から実験的なテレビドラマや、ラジオの『放送詩集』という枠内で「詩劇」の脚本を手がけていた、詩人の谷川俊太郎が書き下ろした詩情豊かな作品で、台詞の全てが詩的な響きを持っているのが特徴だ。日常的なリズムを活かした言葉と、少女のモノローグが魅力で、場面転換の運びの巧みさに加え、湯浅譲二の音楽も作品の世界観にほどよくマッチしている。
 余談ながら、劇中、冒頭と最後に挿入されるジミー・ロジャースの「ワルチング・マチルダ」(1959年のアメリカ映画『渚にて』主題歌)は谷川自身の指定によるもの。
 主演の伊藤幸子は、当時〈文学座〉から新しい演劇を求めて分かれたばかりの〈劇団雲〉所属の女優で、脇を固める小池朝雄、高橋昌也、稲垣昭三らも同劇団のメンバーだった。

*本企画『今日は一日ラジオドラマ三昧』では、脚本を執筆された谷川俊太郎氏に取材し、当時の様子を伺う。

(初放送:R1「ラジオ小劇場」1963年7月6日(土)21:30より放送)

午後2時25分ごろ放送予定

『優しさごっこ』[45分]ステレオ

原作:今江祥智 脚色:川崎洋 音楽:林 光
演出:斎明寺以玖子 出演:原田芳雄、服部ひろ恵、左 時枝、松山照夫、
桜田千枝子、林 光(弾き歌いナレーター)


「優しさごっこ」原作
 今年3月に急逝した児童文学の作家、今江祥智の代表作のひとつで、NHKではこのラジオ版の翌年に『銀河テレビ小説』の枠内でテレビドラマ化もされている。
 原作は今江の実体験を基に書かれたフィクションだが、父娘関係や登場人物の配置には現実とリンクする面もあったという。
 前述のテレビ版は、原作とは違った解釈がなされているが、このラジオ版は、脚色を手掛けた詩人の川崎洋のアイディアにより、音楽担当の作曲家である林 光が「弾き歌いナレーター」という役柄を担ったことで、その雰囲気を壊すことなく、内容豊富な原作を見事に45分の枠内で構成した。ちなみに川崎洋は、オリジナル・脚色を含めラジオドラマの脚本を多く手掛け、NHKだけでも80作以上執筆しており、脚色には定評がある。
 音楽を担当した林 光は、実娘が原作を愛読していたこともあって、彼自身、お気に入りの作品だったようだ。林は、自著『林 光の音楽』のなかで、(劇中に挿入される)「11曲の歌の詞は、ほとんどが京都ことば、ないしは京都アクセントで書かれている。役者さんたちの方言指導についていた方にテープに吹き込んでもらって、それを聞いては一くさり曲をつけ、巻き戻して聞きなおしては消しゴムで消し、ふだんの10倍時間をかけてやっとできあがったのでした」と述懐している。
 演出を手掛けた斎明寺以玖子によれば、主演の原田芳雄が普段見せる柔らかで優しい面に期待をして出演依頼をしたそうで、それを受けた原田も、いつもと異なる役柄を気に入って演じたという。娘のあかり役は、当時モデル事務所に所属し、ポテトチップスのコマーシャルなどに出演していた服部ひろ恵。幼いながらも感情の機微を見事に演じており、それが本作の聴き所のひとつでもある。
 余談だが、今江が原作を執筆していた当時、今江家に出入りしていた作家の灰谷健次郎は、あかりのモデルとなった今江の娘・冬子(その後〈自由劇場〉の舞台女優として活躍)に触発され、のちに『太陽の子』を執筆。同作が後年NHKでドラマ化された際に主人公の「ふうちゃん」役を演じて話題になったのが、当時12才の長谷川真弓(当『ラジオドラマ三昧』のパーソナリティ)だった。

(初放送:FM「ラジオ劇場」1979年8月4日(土)21:15より放送)

午後3時15分ごろ放送予定

『ポックリ・ソング』[40分]ステレオ

脚本:つかこうへい 音楽:樋口康雄
演出:平野敦子 出演:加藤 武、倉野章子、菅野忠彦 ほか

 当時、次々と現れる若手の新進劇作家に、ラジオドラマの台本を書いてもらおうという取組みが行われており、本作もその流れで、つかこうへいに依頼された作品である。つかは、本作の放送の前年に『熱海殺人事件』で岸田國士戯曲賞を受賞、この時期、NHKでは単発ラジオドラマの脚本を、本作を含め4本担当している。その内訳は、『くわえ煙草伝平衛の幻想』(74年)、『ポックリ・ソング』(75年)『すみれ荘心中』(75年)『現代夫婦鑑』(75年)。
 ちなみに、本作『ポックリ・ソング』と同じ主題で書かれた戯曲『生涯』が、本作の放送後ほどなくして〈劇団青俳〉によって上演され、さらにその後『生涯』が小説化されたことからも、本作は、つか自身がお気に入りの作品だったことがわかる。
 なお、『ポックリ・ソング』で音楽を手掛けた樋口康雄は、当時、新進気鋭の作曲家として、テレビ、映画や舞台の劇音楽を数多く手掛けていた、NHKとも縁の深いアーティストで、彼はNHK において、『ステージ101』や『レッツゴーヤング』の音楽監修を務めたほか、『つぶやき岩の秘密』(73年)『ふりむくな鶴吉』(74年)『幕末未来人』(77年)などのテレビドラマで音楽を手掛け、唐十郎が主演した連続ラジオ小説『黒蜥蜴』や、山口百恵主演のラジオドラマ『横須賀ストーリー・甲子園少女』(78年)の音楽でも話題を集めた。漫画家の手塚治虫、アニメーション監督の富野由悠季をして「天才」と言わしめた才人である。

(初放送:FM「ドラマ」1975年3月7日(金)22:20より放送)

午後4時10分ごろ放送予定

『カムイ外伝』三之巻「鶴」[17分]ステレオ ◎

原作:白土三平 脚本:吉田玲子
演出:川口泰典 出演:古澤 徹、春風ひとみ、大谷亮介、武岡淳一、千紘あい


「カムイ外伝」原作
 白土三平の代表作である劇画『カムイ伝』の主人公の一人、忍者カムイの活躍を描いたスピンオフ的な作品『カムイ外伝』をラジオドラマ化したもので、ダミー・ヘッドで制作された意欲作。
 脚本は吉田玲子、演出は川口泰典が手掛け、この布陣では、同年8月に『続・カムイ外伝』が制作され、そちらは後年CD化されている。
 本作『カムイ外伝』の総尺は110分で、一之巻から三之巻までを約55分、四之巻を約55分で構成しており、今回紹介する三之巻「鶴」は、原作第一部の第八話「九の一」を基にしたもの(未CD化)。

*本企画『今日は一日ラジオドラマ三昧』では、演出の川口泰典、音響効果の岩崎進の両氏を招いて「ダミー・ヘッド」の秘密や制作裏話を伺う。

(初放送:FM「ダミー・ヘッド・アドベンチャー・スペシャル」1995年1月2日(月)21:00より放送)

午後5時ごろ放送予定

グランドマンガミュージカル『ブンとフン』[50分]モノラル ◎

脚本:井上ひさし 音楽:宇野誠一郎
演出:長与孝子 出演:黒柳徹子、熊倉一雄、藤村有弘、加藤 武、
天地総子、川久保潔 ほか

 井上ひさしの同名の処女小説の基になった書き下ろしのラジオミュージカル。その後、『それからのブンとフン』のタイトルで舞台化、〈テアトル・エコー〉、〈こまつ座〉によって上演され、今も人気を博している作品。
 音楽を手掛けた宇野誠一郎の述懐によれば、「そもそもは井上さんの“すごく面白い話があるんですよ”の一言から始まった企画」とのこと。演出の長与孝子と井上、宇野の三人は、『もぐっちょちびっちょこんにちは』(60年)以来、数々の名作を世に送り、その制作過程で培われた井上・宇野コンビの創作姿勢と共同作業は、やがて『ひょっこりひょうたん島』(64年)で華開いた。
 主演の黒柳徹子、熊倉一雄、藤村有弘、天地総子など「ひょうたん島」レギュラー陣が参加しているのも聴き所で、ふんだんに挿入される劇中歌も名曲揃い。なかでも天地が歌う「悪魔ソング」は、若い世代にも人気の曲で、近年『宇野誠一郎ソングブック II』において、コーラス・グループ〈Smooth Ace〉の重住ひろこによって見事にカヴァーされている(演奏:江草啓太と彼のグループ)。

(初放送:R1「新春こども劇場」1969年1月2日(木)18:00より放送)

午後5時55分ごろ放送予定

『ピアノ物語』[45分]モノラル ◎

脚本:飯沢匡 音楽:三木鶏郎
演出:山口 淳 出演:榎本健一、古川緑波、清川虹子、渡辺 篤、森 健二、美原和可代、星 十郎 ほか


「ピアノ物語」が録音保存されていたテープ(左側が紙テープ)
=画像提供:三木鶏郎企画研究所=
 本作は、三木鶏郎が体験した実話を基にした作品で、本企画『今日は一日ラジオドラマ三昧』において、最も古い音源を使用するもの。今回の再放送を機に、〈三木鶏郎企画研究所〉に保管されていたテープ素材をデジタル化して放送されることになった。
 1945年頃、『日曜娯楽版』で人気の〈三木鶏郎グループ〉が、各地劇場を巡業公演していた時のこと。東北地方巡業が福島、仙台、気仙沼と続き、岩手県の一関に到着してみると、前年に発生した洪水で街中が水没し、ピアノは水浸しで使えないと知らされる。ピアノがないと公演ができない。聞けば、山の上に一台だけピアノが残っており、それは頑固者で評判のバス運転手の持ち物とのこと。三木が運転手に頼みに行くと、「これまでピアノを貸したのは三浦環さんが来た時だけだが、あなたのピアノを是非聴きたいのでお貸しする。ただし、自分も聴きたいから、バス運転が非番になる8時半まで開演を待ってもらいたい」との条件つきだった。それを受けて、ピアノは、若者数十名によって担がれ、山から降ろされて劇場へと到着。午後7時、三木は集まった観客一堂に事情を説明し、全員から快諾を得る。
 やがて、運転手が約束の時間よりも20分早く到着し、バスの乗客も小屋に入った。客席は超満員、舞台は8時20分に始まり11時近くになって、大盛況のうちに幕を下ろした。
 その後、若者たちが手に手に松明を持って現れ、荷車にピアノを縛り上げ、行列を組み、松明の火で道を照らしながら暗い街を抜けて山へと登って行った。それはとても幻想的な光景で、この感動の夜を印象付けたという。
 この話を三木から聞いた飯沢匡が脚色し、放送されたのが本作で、当初より、古川緑波、榎本健一、音楽三木鶏郎の三人を想定して書かれている。
 三木鶏郎と榎本健一は、1949年、日本劇場における『エノケンの無茶坊弁慶』がきっかけで交流が始まり、三木の音楽を気に入った榎本は、以降、自身の出演するラジオ、映画の音楽に必ず三木を指名するようになった。余談だが、本録音で、『エノケンの無茶坊弁慶』の挿入曲「武器ウギ」が歌詞を替えて歌われている点にも注目したい。
 なお、番組冒頭で三木鶏郎が語っているように、本作品は三木鶏郎が1950年の年末、12月29日の夜半から朝方にかけて徹夜で吹き込んだもの。三木が手掛けたラジオドラマ音楽の初期の貴重な音源である。
 三木鶏郎のピアノ演奏も聴き所で、古川緑波は「古川ロッパ昭和日記」のなかで、三木の編曲、ピアノ演奏を褒めている。  本作品以降に、飯沢匡と三木鶏郎が共に手がけた作品として、舞台『崑崙山の人々』(52年)、『泣きべそ天女』(56年)などがある。

(初放送:R1「放送劇」1951年1月2日(火)20:00より放送)

夜7時50分ごろ放送予定

『ザイルの二人』(全10回)[15分]ステレオ ◎

第3回
原作:鴨 満則、鴨 秋子 脚本:馬場民子
演出:伊豫田静弘(名古屋局制作) 出演:樋捕 勉、小山茉美


「ザイルの二人」原作
 山渓ノンフィクション・ブックスから刊行された『ザイルの二人 満則・秋子の青春登攀記』を基に制作されたラジオドラマ。『ふたりの部屋』の枠で放送されたもので、主役を演じた二人にとっても印象深い作品のひとつだという。
 『ふたりの部屋』は1978年11月に、漫画『銀河鉄道999』のラジオドラマで始まった枠で、85年『さらばふたりの部屋』をもって『カフェテラスのふたり』に改題、古井由吉原作の『女たちの15の伝説』を皮切りに再スタートを切った。その後、漫画『美味しんぼ』や氷室冴子の『なんて素敵にジャパネスク』新井素子『星へ行く船』などを取り上げ、88年3月まで放送されている。

(初放送:FM「ふたりの部屋」1983年6月8日(水)22:45より放送)

夜8時10分ごろ放送予定

『気分はだぼだぼソース』日本の異様な結婚式について
(全10回)[15分]ステレオ ◎

第2回
原作:椎名誠 脚本:津川泉
演出:大沼悠哉 出演:伊武雅刀、佐々木允、島津冴子


「気分はだぼだぼソース」原作
 1979年11月に情報センター出版局から『さらば国分寺書店のオババ』デビュー、翌年の『わしらは怪しい探検隊』に次いで、「椎名誠3冊目の単行本」として刊行されたのが、本作『気分はだぼだぼソース』である。「スーパーエッセイ」の呼称で人気のジャンルを確立した椎名誠は、時代の寵児となり、その後は小説に進出。私小説、SF小説、超常小説を多数発表している。
 番組は前述の『ふたりの部屋』の枠で放送されたもので、ここでは第2回を放送、番組のエンディングには、楽屋オチ的に、脚本を手掛けた津川泉が登場している。なお、同枠では、同じく椎名の『さらば国分寺書店のオババ』(79年)と『かつおぶしの時代なのだ』(81年)を原作にしたラジオドラマも放送された。

(初放送:FM「ふたりの部屋」1982年5月18日(火)22:45より放送)

夜8時30分ごろ放送予定

『おいしいコーヒーのいれ方 メモリーズ』(全10回)[15分]ステレオ

第1回
原作:村山由佳 脚本:佐藤ひろみ 音楽:梶本芳孝
演出:千葉守(メモリーズ演出・大久保篤) 出演:内田健介、長谷川真弓、大野雅一、
大高洋夫、加賀谷純一


「おいしいコーヒーのいれ方」原作
 勝利と従姉妹のかれん、その弟の丈の同居生活における日常と成長を描いた本作は、村山由佳によるノベルシリーズで、1994年に第1巻が発表されて以降、現在はSecond Seasonの第7巻まで刊行されている人気作品。
 ラジオ版は、『青春アドベンチャー』の枠で1997年1月に放送をスタート、以降、2006年12月まで断続的に制作、第1部の最終巻までが放送された。主役の内田健介、長谷川真弓のコンビの息の合った掛け合いが絶妙で、それが本作最大の聴き所である。
 今回は、2006年に放送された、各シーズンをコンパクトに編集したダイジェスト版『おいしいコーヒーのいれ方 メモリーズ』の第1回を放送。
 なお『青春アドベンチャー』の枠は、1984年に『FMアドベンチャー』として放送を開始、翌年4月から『アドベンチャーロード』と改題、1990年4月から『サウンド夢工房』となり、1992年4月より現行タイトルになった枠で、現在も継続中である。

*番組では、原作者の村山由佳氏を招いて、収録時の模様や逸話をご紹介。

(初放送:FM「青春アドベンチャー」2006年11月20日(月)22:45より放送)

夜9時20分ごろ放送予定

『シュナの旅』[60分]ステレオ

原作:宮崎駿 脚本:宮田雪 音楽:AKIRA
演出:保科義久 出演:松田洋治、佐々木功、藤代美奈子、下元 勉、
有島一郎、戸浦六宏、松山照夫、北城真記子 ほか


「シュナの旅」ラジオドラマ台本

「シュナの旅」原作
 世界初の「サラウンド放送番組」にして、世界初の「サラウンド・ラジオドラマ」。
 本作を遡ること2年前に公開された映画『風の谷のナウシカ』(84年)。なかでも映画の後半、ナウシカの再生シーンに感銘を受けた演出家の保科義久は、自ら当時西荻窪にあった宮崎駿の事務所〈二馬力〉を訪ね、ラジオドラマのためのオリジナル・シナリオを依頼しようと試みた。しかし、宮崎は、その時点で次作に取り掛かっていたため、物理的に厳しいとの理由から難色を示す。
 ところが、落胆する保科に対して宮崎は、「そういえば、ラジオドラマにすると良いなぁと思っている絵本があるんだ」と言って、保科に絵文庫『シュナの旅』(83年)を差し出したという。
 読後、保科はすぐさま正式に企画提案して採択され、脚本と音楽は、当時すでに自然や環境といった地球規模の問題に関心を持っていた宮田雪とAKIRAに依頼し、主役のシュナには、前述の『風の谷のナウシカ』でスベルを演じた松田洋治を、脇を固める役者勢揃には、有島一郎、下元勉、戸浦六宏、松山照夫、北城真記子ら実力派をキャスティング。語り部には佐々木功を配した。

*豪華な布陣で制作された本作、番組では、パーソナリティの松田洋治が当時を振り返って収録時の模様や逸話を紹介するほか、鈴木敏夫氏(スタジオジブリ・プロデューサー)からのコメントもご紹介。

(初放送:FM「ドラマスペシャル」1987年5月2日(土)22:00より放送)

 以上、駆け足での紹介となったが、ここでは、敢えて各作品のあらすじにはふれていない。これら周辺情報を手掛かりに、放送当日は是非とも自身の耳で楽しんでいただきたい。
 なお「NHKアーカイブス」には、まだまだ膨大なラジオドラマが保存されている。本番組をきっかけにそれらに興味を持たれた方は、局宛に再放送希望の声を聞かせて欲しい。この先まだまだ発掘・再放送の機会は残されている。

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