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NHK人形劇の中でも圧倒的な人気を誇る『ひょっこりひょうたん島』。その魅力はどこにあるのでしょう。
架空の国の間を漂流する島が舞台の、奇想天外な物語。子どもの視点から社会や権威を風刺するセリフの数々。そして、極端にデフォルメされた多彩なキャラクターたち。テレビ人形劇初の棒使い人形が飛び跳ねるスピーディーな展開は、子どもだけでなく、大人にまでファン層を広げていったのです。
人形劇のシリーズは、その後も新境地を切り拓いていきます。辻村ジュサブローの端正な人形と、語り・坂本九の名調子が人気を集めた『新八犬伝』。アイドル・石川ひとみが演じたヒロインの声と、実際の政治・社会状況の大胆なパロディで話題になった『プリンプリン物語』。コンピューターによる騎馬軍団の操作や、人形劇ではタブーだった本物の火や水を使った新しい描写を模索した『三国志』。常に斬新なテーマと豊かな表現力で子どもたちの夢と想像力をかきたててきました。
10月から教育テレビで始まる連続人形活劇『新・三銃士』も、そうした伝統を受け継ぎながら、新たな挑戦を続けます。
人形劇の魅力の真髄とは何か?『ひょうたん島』の演出、美術を手掛けたOBたちと現役プロデューサーが語り合います。

![[第18回]アーカイブス・カフェ座談会
ひょっこりひょうたん島 座談会(後編)
時代の熱気がぶつかり合った](img/feature_1.jpg)
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武井 博さん(72歳 ディレクター) 昭和34年入局。教育局青少年部で人形劇『チロリン村とくるみの木』担当後、自ら提案した『ひょっこりひょうたん島』を5年間演出。その後『少年ドラマシリーズ』『おかあさんといっしょ』や年間企画『0歳からの出発』、さらに『おーい!はに丸』『おはなしのくに』などの子ども番組を担当。 |
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山岸 嵩さん(74歳 ディレクター) 昭和35年入局。教育局青少年部で人形劇『チロリン村とくるみの木』と『ひょっこりひょうたん島』の演出を担当。仙台局を経て、番組制作局学校放送部で『NHK特集 ユーカラ・沈黙の80年』や『おもしろ漢字ミニ辞典』『漢詩紀行』をはじめ、国語番組や理科番組を担当した。 |
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岸川淳一さん(71歳 デザイナー) 昭和36年入局。デザイナーとして『チロリン村とくるみの木』と『ひょっこりひょうんたん島』の小道具、スタジオセットデザインなどを担当。その後、大河ドラマ『樅ノ木は残った』『花神』や、ドラマ人間模様『続・夢千代日記』『花へんろ』、ドラマスペシャル『冬構え』などの美術を手掛けた。 |
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紀平延久さん(司会)(44歳 ディレクター) 昭和62年入局。岐阜局を経て、番組制作局学校教育番組部で『ユメディア号こども塾』『アメリカンフェスティバル』などイベント連動型番組を開発。福岡局、衛星ハイビジョン局の公開中継番組デスクを経て、現在は制作局青少年・教育番組部で三谷幸喜脚本の連続人形活劇『新・三銃士』チーフ・プロデューサー。 |
紀平 『ひょうたん島』って、子ども番組ですよね。ところがよくよく見ると、話の設定も、メッセージも、必ずしも子どもに向けてじゃないのでは、と思うんですが?
武井 ええ、子どもを特に意識しませんでしたね。子ども向けって考えてしまうと、子どもだましじゃないけど、ストーリーもこの辺までっていう、限界、枠を作ってしまう。それだと子どもも満足しないし、大人にも広がっていかない。目いっぱい本気になって作り上げる訳ですよ、作者も、我々制作スタッフも。だから、放送当初、「子ども番組らしくない」って非難されたのは当然なんですね。
山岸 私は最初、青少年部に配属されて、子ども相手かとがっかりしたんです。でも、子ども番組をやってる人こそ、「新しいものを作るんだ」という強い意識、パッションがあって、ここでこそ新しいことができると気付いたんです。
武井 『ひょうたん島』もかなり実験的ですよね。大人と子どもの関係を上下ではなく、対等に描こうとした。例えば、欲が絡む大人の象徴として、ドン・ガバチョが名声を得るために目立とうとしたり、トラヒゲが金もうけに縛られていったり。一方、子どもはそういう欲がないから、かえって現実を見ることができるというように。やっぱり、生意気でしたね。この前の戦争だって、大人はろくなことをしなかった、俺たちが苦しい思いしたのは大人のせいじゃないか、みたいな思いがあったわけですよ。
紀平 ストーリー展開は、脚本の井上ひさしさん、山元護久さんとディレクターが話し合って決めたんですか?
武井 細かい部分はそうですが、島の次の漂流先をどうするか、といったおおまかなアイデア出しは、声優さんやひとみ座の人形操作のスタッフも全員で、3日間ぐらいディスカッションをやったんです。何十人も都内の旅館とかに泊まり込んで。大体、言いたいことを言い合って、最後にバカ騒ぎして終わっちゃうんですけども(笑)。でも、「みんなで一緒にやるんだ」っていう気持ちがものすごく生まれましたね。だって、普通は声優さんと人形操作の人とは、あまり接触する機会はないでしょ。
紀平 そこからバイタリティーあふれるものが生まれたんですね。
岸川 その後、井上さんと山元さんが台本を書く段になると、お二人ともNHKにカンヅメ状態でしたね。辞書とタオル1枚持って、毎日、局に泊まってる。そうしないと間に合わなかった。
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武井 井上さんたちは、人形の動きをまったく無視して台本を書いていましたね。でも、それが良かったかもしれない。普通、人形の動きはゆっくりしているから、それに合わせて書くと、内容は半分しか入らないんです。
山岸 動きを無視したその台本をもとに、我々演出側から岸川さんたち美術側にさらに無理な注文を出すんです。「こういう絵を撮りたいから考えてくれ」って。お互いに悪口ばっかり言ってましたね。
岸川 みんな若くて血気盛んでしたからね。前作の『チロリン村とくるみの木』はほとんど舞台の正面から撮っていましたが、『ひょうたん島』では山岸さんらが「横からも裏からも立体的に撮りたい」とか、いろいろ要求してくるんです。我々美術も、桂離宮のようなコの字型のセットを作って3方向から撮れるようにしたり、人形遣いの人たちがスムーズに動けるよう動線を工夫してスピード感が出せるようにしたり。
武井 当時はカラー化したばっかりで、RCAというカメラがやたらに大きく、自由に動かせなかった。しかも、1回15分の放送分をノー編集で一気に撮らなければならない。そうした制約の中で、演出の挑戦を美術が「やってみせる」って受けるわけですよ。それが良かったですね。
紀平 脚本は最初から尺(番組の放送時間)に収まっていました?
山岸 これが全然、収まっていない(笑)。
武井 特に井上さんは、何でも徹底的に調べて、いろいろ膨らまして書いてきちゃう。病気の話が出てくると、医学の専門書まで調べる。一見、必要がないことまで調べるところがすごいんですよ。でも、尺に収めるためには、面白いところもカットしなければならないのが常でしたが。
紀平 いま私が制作している『新・三銃士』の脚本、三谷幸喜さんも同じです。いろんなことをものすごく調べて、20分番組なのに、30分ぶん書いてくれるんです。「自由に書いてください」ってお願いしていますしね。ただ、尺にあわせて切っていくと、つじつまが合わなくなったりします。そこで、変更をお願いすると、三谷さんは元の脚本に手を入れてさらに面白く変えてくる。それで、また尺が伸びちゃって(笑)。でも、やる度に面白くなっていくので、このプロセスは大切ですね。
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紀平 『ひょうたん島』はキャラクターのデフォルメ感も半端じゃないですよね。だけど、見ているうちに「こういう人いる」と思えてくる。今見ても新鮮です。
岸川 主役である人形が、丸や三角といった抽象的な形がモチーフの個性的なものでしたから、セットもリアルなものから離れて、独自の世界を作ろうと随分試行錯誤したんです。
武井 人形のデフォルメのレベルに物語、セット、セリフなど、全てのものを合わせました。だから、木1本にしても、本物は使えないんです。使っちゃうと、人形がもう、異質なところに行っちゃう。
岸川 雨のシーンも、雨そのものを作らなくても、そこに雨が降っているように影を見せるだけで、想像することができる。全部かちっと見せるんじゃなくて、何か感じさせるように作ったときに、主役の人形が語りかけてくれる。そこが、人形劇の良いところですね。
紀平 『新・三銃士』は、最初、リアリティーを追求する方に向いていたんです。でも、人形独自のカチャカチャした動きや、デフォルメされた表現の方が、逆にイメージの余地を残して刺激してくれるんですね。今は、手作り感を生かしてどこまで描けるか、挑戦しています。
岸川 あの当時は、テレビもカラー化になって、技術もどんどん変わる中、みんな膨大なエネルギーがありました。
山岸 物語のスケールも大きかった。日本の中だけで考えないで、舞台自身が丸い地球を動いていくんですから。
武井 あのころはまだ、一人ひとりの力で社会を良くしていける、世の中を動かせるっていう、夢と希望みたいなものがあった最後の時代じゃないかと思います。
山岸 山元さんが亡くなった時、お通夜の席で井上さんが言ったんです。「『ひょうたん島』は二度とできない」って。まさに、時代が生み出した番組なんですね。ですから、後(1991年)にBSでリメイクされましたけれど、やはりオリジナルの“時代の熱気”のようなものがなかったように思います。やっぱり、時代に応じた新しいものを作ることって大事なんですよ。今度の『新・三銃士』も、“いま”という時代ならではのものを期待しています。
おわり


お問い合わせ:NHKアーカイブス
TEL:03-3462-7932
NHKティーチャーズ・ライブラリー
NHKティーチャーズ・ライブラリー
好評!教育現場を支援する新サービス
NHKアーカイブスでは、保存されている膨大な番組を子どもたちに役立てていただこうと、今年度から「NHKティーチャーズ・ライブラリー」というサービスを始めました。全国のNHK施設で視聴できる「番組公開ライブラリー」の中から、「環境教育」や「平和教育」に役立つ番組を選び、高画質のDVDを教育機関に貸し出すサービスです。今年度は24本をご用意し、全国の小学校・中学校・高等学校での授業で活用いただいています。
申し込みは、所定の用紙にてファックスで受け付けています。貸出番組のリストや授業での活用例を紹介した利用ガイドブックも用意しています。
![今月の主な放送[アーカイブス関連番組]](../../img/sche.gif)
※放送日時、内容は変更する場合があります。最新の番組表はこちら。
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10月3日(土)総合/10:05〜11:25 ■ NHKスペシャル「十月の悪夢〜1962年キューバ危機・戦慄の記録〜」前後編(1992年) |
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10月10日(土)総合/11:25〜11:53 ■ 「太秦映画村〜京都〜」(1974年)より |
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10月6日(火)総合/22:50〜23:00 ■ 岡部伊都子(随筆家) |
ふたりのビッグショー(毎週水曜放送) 月替わり特集 |
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(毎月第3土曜の『ラジオ深夜便』・日付を越えた午前1時台に放送) 10月18日(日)ラジオ第1・FM/午前1時台【土曜深夜】 ■ 「錦繍」 (1982年、作:宮本輝、出演:大谷直子、高橋長英ほか) |
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![今月の新着番組[番組公開ライブラリー]](../../img/new.gif)
2009年度NHKアーカイブス年間テーマ
「教育アーカイブス」ほか
※全国のNHK放送局でご覧いただけます。
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おはようジャーナル シリーズ 学校現場 「問われる校則〜私たちに何ができるか〜」 (1987年11月18日放送・59分) |
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BSスペシャル 「青春法廷 生命(いのち)を問いかける学生たち」 (1995年2月10日放送・90分) |
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NHKスペシャル 「よみがえる教室 ある校長と教師たちの挑戦」 (2004年2月28日放送・49分) |
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大河ドラマ 新選組!スペシャル 第2部「新選組誕生」 (2004年12月26日放送・74分) |

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休刊のお知らせ
2006年10月、NHKのOBと現役職員との語らいの場としてスタートした「アーカイブス・カフェ」。テレビ全盛期を築いた先輩たちから次代を担う若い世代へ、その知識やノウハウ、さらに番組制作への熱い思いを継承していくために、毎月1回、発行してきました。
この3年間、延べ69人の方々に座談会にご参加いただき、それぞれの時代を彩った18の番組を取り上げてきましたが、3年を一区切りに本号をもって休刊します。今後は、これまでの成果と課題をふまえて、NHKアーカイブスの新しい情報発信のあり方を検討し、総合的なリニューアルを目指したいと思っております。
これまでのみなさまのご愛読、ご協力に感謝申し上げます。(H)
発行:2009年10月1日 第36号
〒150-8001 東京都渋谷区神南2-2-1
NHKライツ・アーカイブスセンター
発行人:大路幹生/編集長:早見英一
編集:MAXプロジェクト/SOCIALSOFT.INC
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