トライアル研究(第3期分)審査結果 第1期分結果第2期分結果関西分結果
「NHKアーカイブスの学術利用に向けたトライアル研究」の第3期分の募集に対し、実行委員会での審査の結果、
以下の7件を決定しました。
研 究 課 題 研究者氏名 所     属
「被爆の記憶」の語り方のエスノメソドロジー
好井裕明
 筑波大学大学院 人文社会科学研究科 教授
<研究概要>
 ヒロシマを啓発するドキュメンタリーにおいて映像内で提示される被爆表象が具体的にどのような言葉や表現で語られているのかを個別作品ごとに例証する。被爆者の高齢化に伴い直接的な証言を聞く機会が今後急速に失われており 「被爆の記憶」の風化が毎年のように語られるも、これまで製作され蓄積されてきた映像が被爆問題の啓発などに効果的に使用されてきたとは言い難い現実がある。本研究は被爆表象の語り方の歴史的な変遷を追いながら、「被爆の記憶」をめぐるステレオタイプ化された語り方、描き方の特徴を解読する。そのさい被爆表象の何に焦点があてられ、どのように描かれ語られるのかを微細に検討する。ただ単に決まりきった表現として批判するのではなく、映像や表現から、どのようなリアルさ、迫真性などが取り出せるかをも詳細に検討する。そのうえでこうした映像作品を今後より効果的に使用していくためにいかなる工夫が必要であるのかを考察したい。
研 究 課 題 研究者氏名 所     属
東京オリンピック(1964)
―メディア・イベントと国民神話
Merklejn Iwona
(メルクレイン・イヴォナ)
 東京大学 社会科学研究所研究員
<研究概要>
 本研究の目的は、1964年の東京オリンピックをめぐる番組分析を通じて、この大イベントをテーマに語られてきた国民神話を追究し、メディアとスポーツとナショナル・アイデンティティのあいだの三角関係について、考察することである。現代日本の「起源神話」の一つといえる東京オリンピックをメディア・イベントとして取りあげた研究は管見の限り未だない。記録的な視聴率を得た女子バレーボールのソ連との決勝戦の中継がメディア・イベントの象徴的な事例である。「東洋の魔女」と称された女子選手たちはメディアによってナショナルヒロインに作り上げられた。彼女たちを主人公にした「成功物語」という新しい国民神話が形成され、二十一世紀の今日もなお、語り継がれている。東京オリンピックから二十一世紀初頭まで、メディアによる国民神話の形成過程、およびその内容を追究したい。
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研 究 課 題 研究者氏名 所     属
三陸の津波被災地の風景の消失を考える
―「景観史」として還元される地域の肖像―
水島久光
 東海大学 文学部 教授
<研究概要>
 3月11日の津波は東北地方太平洋沿岸に壊滅的な打撃を与えた。その復興への道筋について、現在多くの議論が交わされているが、本研究はその過程に映像記録を活かすための、実践的方法を模索するものである。応募者は2007年以降財政破綻に陥った北海道夕張市に入り、風景の消失が地域の記憶に及ぼす影響と、映像体験がそれを補綴する可能性を探求してきた。その成果を踏まえて、今回はより切実な状況への適用を検討する。復興政策がお仕着せに陥ってしまう危惧を払拭するには、その土地を生活圏とする人々の目線に立った討議がなされることが必須である。このコミュニケーション学的課題に資するアジェンダ素材を、震災以前の平時の地域映像から抽出することが、本研究の第一の目標となる。応募者は「地域の肖像権」という概念を提起し、アーカイブ映像の地域還元を構想してきた。郷愁に止まらない、過去の景観受容の意味論的可能性を拓いていきたい。
研 究 課 題 研究者氏名 所     属
テレビが「保護と観光のまなざし」形成に果たした役割分析と
地域民俗資料としてのアーカイブスの可能性
関礼子
(代表者)
 立教大学 社会学部 教授
<研究概要>
 本研究は、尾瀬の福島県側の入口に位置する檜枝岐村を事例に、観光と「伝統」の位相について明らかにする。檜枝岐村は、国有林に依存した山村から観光立村へと舵を切るなかで、農村歌舞伎の「伝統」や自然と共生した「伝統的な」生業のあり方を保持してきた。自然保護や伝統文化の保護は、日本においても近代が生み出した「観光のまなざし」と歩をーにしてきたのだが、そこにテレビというメディアが介在することの意味は何であったか。テレビ番組や報道で語られてきた文脈を通して、地域にとっての「保護と観光のまなざし」の意味を明らかにする。
 また、檜枝岐村は「秘境」「尾瀬の玄関口」と呼ばれ多くの映像にその姿が残されてきたが、村自体に残されている映像資料はさほど多くない。そこで、本研究は、村のアイデンティティの源泉でもある民俗史(誌)を紐解くための「社会的共通資本」としてアーカイブスを位置付け、新たな地域公共財としての可能性を提示する。
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研 究 課 題 研究者氏名 所     属
テレビにおける戦後「農村」表象とその構築プロセス
:「農事番組」を手がかりとして
舩戸修一
(代表者)
 静岡文化芸術大学
 文化政策学部文化政策学科 講師
<研究概要>
 本研究は、1980年代までNHKで放送されていた農事番組(『のぴゆく農村』『村の記録』『明るい農村』など)が戦後日本の農村社会の変化や暮らしの変容をどのように表象してきたのかを分析する。同時に、当時の番組制作者、及び番組に情報を提供した「農林漁業通信員(以下、通信員)」へのインタビューを通じて、そうした表象が生み出されるプロセスにも視野を向ける。制作者が農村にどのような焦点を当てようとし、逆に農村はテレビという外部からの視線による対象化を意識しつつ、自らの暮らしをどのように提示しようとしたのか。両者のイメージはどう接合し、あるいは矛盾し、また妥協を経て番組として結実したのか。さらに制作された番組を通じて農村は自らの暮らしをどのように再帰的に捉え直したのか。こうしたテレビを通じた「農村」イメージと、その構築プロセスをめぐる重層的なポリティクスを明らかにするのが本研究の目的である。
研 究 課 題 研究者氏名 所     属
テレビが描いた母と子どもの関係
―NHK教育テレビ「おかあさんの勉強室」における
 母親と〈子ども〉―
津田好子
 東京女子大学大学院 人間科学研究科
 生涯人間科学専攻
<研究概要>
 日本では明治期後半に、性別役割によって、母親が〈子ども〉を教育するようになり、高度経済成長期には母親の役割は、「育児=教育をする母親」(渡辺1999)が主流になっていく。本研究の目的は、1970年代後半から1980年代において、教育テレビが、どのような「教育する母」と〈子ども〉の関係をつくりだしてきたのか、とりわけ母と乳幼児期の〈子ども〉との関係を明らかにすることである。テレビが人びとが期待する教養や娯楽に果たしてきた役割や、テレビが〈子ども〉に及ぼす影響に関しての研究成果の蓄積は多い。本研究では、これまで取り上げられてこなかったテレビが描く母と〈子ども〉の関係に焦点をあて、文化装置としてのテレビが描いた「教育する母」と〈子ども〉の関係の様相を質的に分析する。そして教育対象としての〈子ども〉という子ども観が強くなった時代の母親にとっての〈子ども〉という存在の意味を問い返す。
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研 究 課 題 研究者氏名 所     属
建築資料的価値を持った映像資料の発見と活用方法の研究
―NHK教育「テレピの旅」を一事例として―
本橋仁
(代表者)
 早稲田大学 創造理工学研究科
 建築学専攻
<研究概要>
 本研究の目的は、「建築」を映し出すことを本来の目的としていない映像から、都市史・建築史にとって有用な情報を抽出することにある。そして、それらを広く研究に資するものにするための、アーカイブ方法の構築を目指す。上記の方法論を構築するために、NHK教育で1959年から1985年まで放映された社会科教育用番組「テレビの旅」を対象とする。本映像は、本来、小学校5年の児童に日本全国の産業や当時整備されつつあった交通網(新幹線や高速道路など)を紹介する映像番組である。教育を目的としたこの映像も、この特性ゆえに、1970年代当時の国土の様子を、周期性をもって観ることの出来る、建築資料として捉え直すことができる。本映像資料に対し、位置や撮影年といった情報や、そこに映る要素を建築的視座から情報付与していく等が考えられる。それにより、研究に資するデータベースの構築を目指し、建築映像資料の定義の拡張と、普遍的なアーカイブ方法の発展に寄与したいと考えている。
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