番組数70万、ニュース項目490万という、NHKアーカイブスが保有する世界屈指の膨大な放送資源の研究目的の公開が始まります。私たちトライアル研究実行委員会は、今回、はじめの一歩を踏み出すこの試みが、これからのメディア研究にとって、またこれまで蓄積されてきたコンテンツの教育利用や次世代の映像文化の作り手の育成にとって、とても大きな第一歩になると確信しています。
 今回のトライアル研究により開かれる新たな研究フロンティアは広大です。たとえば、メディアやジャーナリズムの幅広い研究者がNHKアーカイブスに蓄積された膨大な放送資産にアクセスし、その分析を通じて研究を深化させていくことができるようになります。日本のメディア研究にとって、過去の放送番組へのアクセスが困難なことは、研究を発展させる上での最大の障害となってきました。その大きな障害が取りのぞかれる糸口が、今回の試みによって開かれるのです。
 第二に、教育分野の研究者にとって、今回のトライアル研究は、NHKが蓄積してきた膨大な教育・教養系のコンテンツを、21世紀の学校教育や生涯教育、教養形成のために再利用していく可能性を開くものです。
 さらに、より実践的な研究、たとえば次世代の映像や放送の作り手の育成を目指す観点からするならば、過去の多くの優れた番組を発掘し、そのテーマや手法から次世代が育っていくための多くのヒントを得ることも可能でしょう。
 ぜひとも強調したいのは、今回の試行が、全国の大学大学院に在籍中の大学院生にも開かれていることです。博士論文や修士論文でNHKアーカイブスの過去のコンテンツを利用したいと考えている大学院生は、一定の手続きを経てこのトライアル研究に応募することができます。これは、今回はじめて開かれる可能性で、意欲ある若手研究者は、ぜひ応募して、これまでの先人たちがアクセスできなかった新しい材料の分析から新たな発見をもたらしてほしいと思います。
 私たち実行委員会は、この第一歩を成功させて有意義な成果を出し、より広い層を対象とした公開化のステップへと歩みを進ませることができるようにしたいと考えています。今回は、東京だけでの試行ですが、北海道から沖縄までの全国に在住する研究者が、より容易な仕方で公開された資源を研究活用していくことができるようにする必要もあるでしょう。そのような第二歩、第三歩に向けた進展のためにも、まず今回のトライアル研究を成功させることが大切です。
 研究者のみなさん、ぜひこのトライアルに応募してください。また、他の研究者の方々にも公募情報を広めてください。実行委員会よりお願いいたします。
トライアル研究実行委員会
座 長
副座長
委 員


吉見俊哉(東京大学教授)
音 好宏(上智大学教授)
石田佐恵子(大阪市立大学教授)
委 員



伊藤 守(早稲田大学教授)
小林傳司(大阪大学教授)
佐藤卓己(京都大学准教授)
委 員



萩原 滋(慶應義塾大学教授
ジャクリーヌ・ベルント(京都精華大学教授)
美馬のゆり(公立はこだて未来大学教授)
敬称略、アイウエオ順