アカイさんノート: 2017/09/18

NHK人物録 緒川たまき

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(プロフィール)

1972年生まれ。広島県出身。1993年に女優デビュー。また、1995年にはNHK教育テレビで放送されたトーク番組『土曜ソリトン SIDE-B』でミュージシャンの高野寛とともに司会を務め、幅広い世代の支持を集める。NHKではドラマも多数出演。ドラマ新銀河『木綿のハンカチ~ラストウィンズ物語~』、大河ドラマ『武蔵 MUSASHI』、プレミアムドラマ『隠れ菊』など。2017年9月スタートのプレミアムドラマ『全力失踪』では、主人公・磯山武の妻、磯山聖子役を演じる。

 

土曜ソリトン SIDE-B(1995)MC

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 おもしろかったなぁ! もう20年以上前だなんて、懐かしく思います。当初番組の司会を、とお話をいただいた際は気負いこそなかったものの、「そんなに器用には進行ができないと思いますが……」と正直に申し上げたんです。そしたらプロデューサーの方が、「それでいい!」とおっしゃってくださって(笑)。番組の毎回のテーマにさえ沿っていれば後は自由に、と。だから、進行台本はあってないようなものでしたし、私もご一緒した高野寛さんもとてもリラックスしたムードの中、自分たちの言葉で感じたままにゲストの方々とお話させていただいた気がします。

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ミュージシャンの高野寛とMCを務めた若者向けカルチャー番組

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音楽、映画、ファッション…さまざまなテーマで時代を掘り下げる

 番組へはさまざまなジャンルの方がゲストとしてご登場くださいましたが、振り返って見れば、今も変わらず尊敬を集める方々ばかりです。特にYMOの方々がご出演された回への反響は、ものすごかったのを覚えています。高野さんご自身も“YMOチルドレン”を自認するミュージシャンの1人でした。バブル景気が崩壊し、90年代は新たなカルチャーを若者たちが求めていた時代。そういう時代に80年代を象徴する音楽ムーブメントを巻き起こしたYMOの皆さんのお話をうかがえたことは、とても貴重な経験でした。番組の司会を務めていたのは1年ほどだったかと思いますが、今考えても幸せなひとときを過ごさせていただいたと思います。

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ときにはスタジオを飛び出して北へ南へ…

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ゲストに坂本龍一を迎えて

 

ドラマ新銀河 木綿のハンカチ~ライトウィンズ物語~(1997)鳥居海子役

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    市川森一先生が脚本を手掛けられたドラマでした。これよりすこし前に、市川先生とは何かの対談企画をご一緒したんです。おそらくそのご縁もあって、ドラマへお声がけいただいたんだと思います。市川先生の視点はさすがといいますか、女性特捜隊の取材をもとに描かれた興味深い内容でした。“女性刑事”って謎めいていますものね。婦人警官ならいざ知らす、女性刑事の存在については私もこの作品で初めて知ったと思います。

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海子は音楽隊に所属する女性警官だったが…

    役作りは本当に必死でした。大阪放送局の制作だったので、大阪に滞在して役に没頭する日々。でも丹波哲郎さん、檀ふみさんをはじめ共演させていただいた大先輩の皆さんが優しく見守ってくださり、いろいろと助けてくださいました。今思えば主演の私を緊張させないように、そういうムード作りをしてくださったのかもしれません。まさに、主人公の新米刑事・海子と同様に、皆さんに支えられて成長していった日々だったと思います。

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マスター・相羽(丹波哲郎)からある女性刑事の話を聞かされ…

    週5日の収録が2か月以上もあったので、心身のコンディションを保つためには、自分なりの工夫が必要だと学んだのもこの現場です。大阪の滞在先では、買い求めた切り花を大切にかわいがったり音楽を聞いたり……。でも20代半ばで、女優として真正面から自分と向き合えた貴重な時間でした。市川先生も丹波哲郎さんも故人になられてしまいましたが、すてきな皆さんとご一緒させていただいて、本当によい思い出しかないドラマです。

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女性刑事だけの特捜隊ライトウィンズの一員に

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海子の成長を見守る佐伯(檀ふみ)

 

プレミアムドラマ 隠れ菊(2016)矢萩多衣役

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  美しい着物も印象的な作品でしたが、女たちの情念が渦巻く濃厚なサスペンスでした。観月ありささん演じる通子と私の演じる多衣の役柄に、すごくコントラストがあっておもしろかったですね。本妻・通子に対して、多衣は突如目の前に現れた夫・旬平(前川泰之)の“愛人”なのです。

    多衣は、通子に離婚届けを突き付けて旬平と別れるように迫るほどの行動力がありながら、どこか計算しきれていないような危なっかしさがあるんですよね。脇が甘い、ともいえるのか……。自分の幸せを選びとっているようで選べていない、そういう多衣の女性としての哀しさみたいなものを感じたんです。そこが妙にもろく、色っぽく感じました。

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通子(観月ありさ)の前に突然現れた多衣

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夫・旬平との関係を告げ、通子に離婚届を突きつける

    女性の生き方としては決して憧れませんが、きっとこういう女の人は男性からしてもどうにも魅力的なんだろうなと(笑)。通子なら1つ1つ段階を踏んでちゃんとキャッチボールをするのに、そのボールを途中でさっと隠しちゃうのが多衣なんです。そしてまっすぐな性格の通子のことを、どこかで多衣は愛しはじめてもいくのです。それは女の友情とも違う複雑なものなんですよね。多衣を演じていて好きだったのはそういうところでした。

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多衣と旬平(前川泰之)は一目惚れの恋に落ちる

 

 山口発地域ドラマ 朗読屋(2017)早川役

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 山口の地域発ドラマということもあり、郷土出身の詩人・中原中也の詩を軸に描かれたファンタジックな作品です。山口のいいところを全部、大切にすっとすくい上げたかのようなデリケートな世界観が魅力的でした。荻上直子さんの脚本もすてきでしたし、主演の吉岡秀隆さんをはじめ共演者の皆さんもすてきで、一瞬一瞬が詩的な作品でした。

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中原中也の詩を愛する老婦人・玲子(市原悦子)

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主人公・マモル(吉岡秀隆)は朗読屋として玲子に雇われる

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玲子の世話をする早川は謎めいた女性

  中原中也の詩には、文字で眺めても声に出して読んでも、言霊(ことだま)が心に残り続けるような独特の魅力がありますよね。また、彼の肖像写真も“ニクいなぁ!”と私は思います(笑)。大きく澄んだ瞳に、どこかアンニュイな空気をまとっていて……。作者はこういう人だったのかと、普段詩に興味がない方でも、時代を超えて心をつかまれるものがあるのではないでしょうか。

 ドラマはまさにそうした中也の世界と、見事にリンクしていたと思います。私にとっても全部がすてきな思い出で、これから先もずっと大事に思い続けるドラマだと思います。

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プレミアムドラマ 全力失踪(2017)磯山聖子役

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 日本の法律上、人は行方不明となり生死もわからぬまま7年経過すると死亡したものとみなされる――⁉ 私はこの事実を、初めてドラマを通して知りました。タイトルが全力疾走ではなく、“失踪”であるのはそこなのです。誰しも生きていれば辛い現実を前に、その場から逃げ出してしまいたいと思うことがあると思います。そんな悩める人々が新しい人生を送るためのハウ・ツー作品なのかしら⁉ と思いきや(笑)、想像以上にシビアで、反面とてもハートフルな物語でした。

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妻の聖子も娘のななみ(鈴木梨央)も武(原田泰造)には冷たく…

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 私が演じる磯山聖子は、失踪した夫の武(原田泰造)に対して、とても無関心で冷たい妻です。愛し合って結婚したパートナーのはずなのに、趣味をバカにするし夫の悩みにも無関心。つまりは、夫を失踪に追い込んでしまうような妻なんです。私は妻としては絶対NGだなと思いますが、実は武も借金を抱えていたり、失踪先で羽を伸ばしていたりするので頭にも来るんです(笑)。そんな武役を、原田さんが見事に演じてくださって。私のお芝居にも、ため息ひとつ大切に反応してくださるすてきな方だなぁと思いました。それにしても、最初は私が演じる妻・聖子と娘・ななみ(鈴木梨央)からすごく冷たくされるのでかわいそうで。お芝居が終わると、梨央ちゃんが優しく原田さんを慰めてあげていてかわいかったです(笑)。

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家族はそれぞれどこに向かうのか…