アカイさんノート: 2008/06/13

連続テレビ小説「おしん」(1) ストーリー編

 1983(昭和58)年4月、テレビドラマの金字塔ともいうべきドラマが始まる。連続テレビ小説『おしん』である。

 山形の貧しい農家に生まれた少女・おしんが、明治・大正・昭和の激動の時代を背景に、さまざまな辛酸をなめながら女の生き方、家族のありようを模索しつつ必死に生きる姿を1年間にわたって描く。主人公のおしんを、小林綾子(7~10歳)、田中裕子(16~45歳)、乙羽信子(50~83歳)の3人がリレーで演じている。

 1年間の平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%(11月12日)という驚異的な数字を記録。一大ブームを巻き起こした。

 このドラマに、原作・脚本の橋田壽賀子と制作者たちは「高度経済成長の中で現代人が見失ってしまったものを提示し、問いかけよう」と意図したという。
 

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 3回に分けて、『おしん』を紹介するが、まずは、そのストーリーを振り返る。全国の2人に1人は見た"国民的ドラマ"。その物語は、昭和58年、83歳になったおしんが、家を出て苦難の人生を振り返る旅から始まった。

 

少女期 ~おしんは貧しさとたたかい、我慢に辛抱を重ねる

第1週(4月4日)~第6週(5月14日)放送

 明治34年(1901年)、山形県最上川上流の小作農の父・作造(伊東四朗)、母・ふじ(泉ピン子)の三女として生まれたおしん(小林綾子)は、家が貧しく9人の大家族(祖母、両親、おしんを入れて6人の兄弟姉妹)の食事にも事欠く中、7歳の春、学校へ行けると喜んでいた矢先に、米1俵と引き換えに材木問屋へ子守り奉公に出される。
 

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小林綾子
 

 そこで、おしんは早朝から夜遅くまで、満足な食事も与えられず働かされる。それでも、弱音を吐かずに耐えるおしんだったが、店の財布から50銭銀貨がなくなったことで、疑いをかけられたことに我慢できず、吹雪の中、飛び出してしまう。

 実家に帰ったものの、貧しい家にはおられず、今度は酒田の米問屋・加賀屋に奉公する。おしんの根性と辛抱する心を高く買った女当主・くに(長岡輝子)に可愛がられ、習字やそろばん、帳簿付け、生け花、茶の湯、行儀作法を教えられる。

 

成年期 ~おしんは様々な人と出会い、そして成長する         

第7週(5月16日)~第38週(12月28日)放送

 大正5年、山形・酒田。おしん(田中裕子)は16歳の春を迎えていた。ある日、おしんは農民運動で警察に追われている高倉浩太(渡瀬恒彦)を助けたことから、想いを寄せるようになる。しかし、浩太は加賀屋の娘・加代(東てる美)と駆け落ち同然に東京へ。

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 田中裕子 

 傷心のおしんは、8年勤めた加賀屋を去って実家に帰るが、姉の薦めもあり、東京に出ることを選ぶ。浅草の髪結いの師匠・長谷川たか(渡辺美佐子)のもとでの修行は、3年間給金をもらえない下積み生活。だが、当時、女性が独り立ちできる職業だった。

 「たとえ10年辛抱したってええっ!自分の思うように生ぎられる女子になりっでえんだっすッ!」

 そう叫ぶ、おしん。骨身を惜しまず働き、先輩を抜いて客のところに出向いて髪を結うまでになる。

 そんなおしんに好意を寄せたのは、佐賀の士族の出の豪農、田倉竜三(並木史朗)。おしんも20歳になっていた。過労で倒れたおしんを見舞い、気遣う竜三の求婚をおしんは承諾する。小作農の娘とは身分が違うという竜三の母・清(高森和子)の反対を押して、2人は祝言をあげる。結婚4年目には長男・雄も誕生。竜三とともに苦労しながら田倉商会の経営を軌道に乗せる。しかし、幸せは長く続かなかった。不況のうえ、工場完成祝賀会のまさにその日、関東大震災が起こり、竜三の商売は破たん。一家は、竜三の佐賀の実家へ身を寄せることになる。

 佐賀での生活は地獄だった。初めから結婚に反対していた姑は、勝手に一緒になった挙句の果てに無一文となって転がり込んだと、嫁のおしんにつらく当たる。それでも賢明につかえるおしんだったが、2年後、娘を死産して心身ともに傷つくと、夫を残し、長男を連れて東京へ帰り、さらに山形の実家に戻る。

 しかし、実家にも、もはやおしんの居場所はなく、酒田で一膳飯屋を出す。おしん25歳、大正14年のことである。

 「しあわせなんて、ひとがくれるものじゃない。自分で見つけるものなんだ」

 その後、おしんは初恋の人・浩太の取り計らいで、三重県の伊勢に移り、魚の行商を始める。おしんの後を追ってきた竜三との関係も修復し、次男、次女も生まれて幸せな時期を過ごすが、それも戦争が踏み潰してしまう。

 昭和20年、津で大規模な空襲に襲われた翌日に長男・雄の戦死の報が届く。そして、軍の納入業者として羽振りの良かった夫の竜三も、敗戦のショックから「私の人生で一番素晴らしかったことは、おしんに巡り合えたことだ」と言い残し、8月15日、自ら命を絶ってしまう。おしんは、またもやゼロからやり直すことになってしまう。

 

 熟年期 ~おしんは戦後、激動の時を過ごした

第39週(1月9日)~第50週(3月31日)

 おしん、激動の戦後が始まる。

 おしん(乙羽信子)は、裸一貫から魚の行商として再出発。戦後の混乱から高度経済成長の時代、おしんは必死に働き、生鮮食料品の店を出し、それを大きくする。

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乙羽信子

 そして、昭和42年の春。67歳になったおしんは20人の従業員を抱えるスーパー「たのくら」の経営者となっていた。実質的な経営は、次男の仁(高橋悦史)に任せていたが、仁は堅実な商売を続けようとするおしんの反対を押し切り、積極的なチェーン展開を行う。やがて、三重県下に16の店を持つ中堅スーパーに拡大。昭和58年、17店目が開店するその朝、83歳になったおしんは独りひそかに旅に出る。

 「今まで夢中で生きてきた途中に、大事なものをたくさん忘れてきてしまった」

 故郷の山の中で静かにつぶやいたおしんは、生きた足跡を振り返えるように酒田、東京、佐賀、伊勢と歩き続ける。

 1年間続いたおしんのストーリーを紹介したが、思い出して頂けただろうか?

 私は、第1週のおしんの生家での生活が印象的だった。特に、おしんたちが空腹を満たすために食べる「大根めし」は、このドラマで有名になった。

 これは制作者がロケの下見で山形を回ったとき知ったもので、「カテ飯」と呼ばれる混ぜご飯の一つ。記録によると大根を米粒大に切って、米と一緒に炊く。配合は五分五分から、大根六分の場合もある。実際に炊くと水っぽく、しかも貧しい農家の場合、貴重な塩や醤油を味付けにつかうわけにもいかず、ただただ「不味い」ものだったという。

 みなさんの思い出のシーンも、ぜひ教えて欲しい。

 次回は、日本、そして世界を巻き込んだ反響の大きさを紹介する。果たして、「大根めし」は、世界に通じたのか?

◇放送期間 1983(昭和58)年4月4日~1984(昭和59)年3月31日
 
◇作  橋田壽賀子
◇音楽 坂田晃一
◇考証 小木新造
◇制作 岡本由紀子
◇演出 江口浩之、小林平八郎、竹本稔ほか

◇主な出演者
     おしん:小林綾子(7~10歳)
          田中裕子(16~45歳)
          乙羽信子(50~83歳)
     父・作造:伊東四朗
     母・ふじ:泉ピン子
     祖母・なか:大路三千緒

     少女期のおしんと出会う逃亡兵・俊作 中村雅俊

    (加賀屋)
     祖母・くに:長岡輝子
     父・清太郎:石田太郎
     母・みの:小林千登勢
     娘(おしんのライバル)加代:東てる美

     おしんの永遠の恋人・高倉浩太:渡瀬恒彦

     髪結いの師匠・長谷川たか:渡辺美佐子

    (田倉家)
     おしんの夫・田倉竜三:並木史朗
     夫の父・田倉大五郎:北村和夫
     夫の母・田倉清:高森和子

     夫の家の執事・源右衛門:今福将雄

    (おしん夫妻の家族)
     次男・田倉仁:高橋悦史
     次男の妻・道子:浅茅陽子

     次女・田倉(崎田)禎:吉野佳子
     次女の夫・崎田辰則:桐原史雄

     加代の子ども・八代希望
      (加代の死後、おしん夫妻が養育):野村万之丞
     希望の子ども・八代圭:大橋吾郎
     おしんの養女・田倉初子:佐々木愛

◇ナレーター 奈良岡朋子

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みなさんからの投稿

  • おしん前から見たいと思っていた。今日新DVDかりて来てみた。
    すごく感動した。こうゆう苦労人又正義 努力 節約 は必ず報われる
    というストーリーは現代でも通用すると思う。

    ひろちゃん|投稿日2014年11月18日 01:46

  • ただただ、感動です。
    何回見ても感動です。

    だほら|投稿日2012年06月15日 11:59

  • 私は70才ですが、7、8才ころ大根飯よりもっと粗末な食事でした。味付けは塩で大根の葉でご飯粒は殆どなくスープ、今思うとベジタリアンの食事です。お肉は自分が働けるようになってはじめてたべました。今は健康できっとこの食事が良かったのかと思う今日この頃です。

    おーつう。|投稿日2012年06月12日 13:42

  • アカイさんへ。「おしん」のモデルはヤ○ハン(現・マックス○リュ東海)創業者・和田カツさんでしょうか。

    亀田宇佐治|投稿日2012年03月07日 09:39

  • おしんは日本人の心です。
    何があっても何度でも立ち上がる。涙を拭いて前に進む。
    正直に生きる。勤勉に生きる。
    日本人の原点です。

    sayo|投稿日2012年01月30日 03:34

  • 本日、ケーブルTVでおしんの最終回を見終えました。
    この1年間を振り返って、本当にいいドラマを見たと改めて思いました。
    毎週、おしんを見た後は、心が勇気づけられ、前向きな気持ちになっている自分に気がついたものでした。一緒に観ていた家内も同じでした。
    また、明治から昭和にかけての激動の時代、人々がどんな思いで生きてきたか、リアリティを持って、感じ取ることができたようにも思います。
    本当に素晴らしいドラマでした。
    このドラマは、日本の「国宝」に指定してもいいと思うほどです。

    Coupe Camper|投稿日2011年04月09日 21:07

  • 本放送中は大学生で、TVとは無縁でした。昨年夏休み(現職は大学教師)に偶然、子供時代の再放送を観てから、すっかり嵌ってしまいました。おしんや加代、初子の波瀾万丈の人生に涙し、それと同時に脇役の一人一人に至るまでとても丁寧に緻密に作られているなあと感心。その気になって探してみるとCSTVのあちこちで再放送があるある!一通り見終わった後、別枠で新年から再び第1話開始。留守録設定して完全制覇目指してます。おしんは亡き祖母と同じ歳。祖母も山形出身でした。おしんを見ながら、30年前の私自身や生前の祖母の想い出が重なります。

    ハロー|投稿日2011年01月17日 11:21

  • 私は今「おしん」を見ています。おしんは心の強い女性です。私もおしんのような心の強くて優しい女性になりたい~

    minami|投稿日2011年01月01日 16:46

  • おしん 昔も今も大好きです。
    当時、ひと泣きしてから会社に行っていました。

    何年か後VHSで10巻くらいを二晩で観た覚えがあります。

    あっこ|投稿日2010年11月02日 13:57

  • 今、ケーブルTVでの再放送を見ていますが、毎週感動しています。オンタイム時は見ていなくて、ただ、おしん=我慢の大切さというイメージでしたが、それだけでなく、思いやり、前向きな心など、いろいろ教えられることが多いです。まさに「日本の宝」とも言えるドラマですね。

    Coupe Camper|投稿日2010年10月30日 10:38

  • 長岡輝子さんがお亡くなりになられました。
    「おしん」での加賀屋の女主人役、いつもいじめられ、こき使われているおしんに、やさしく接していたおばあさん(このイメージがありました)が印象に残っています。 ホッとする場面でしたね。
    ご冥福をお祈りいたします。

    omame|投稿日2010年10月21日 06:42

  • オンタイムは幼稚園の頃、今は30代です。現在海外在住ですが数年前にNHKワールドで再放送をしていて午前2時という時間でしたが毎日観ました。本も読んでみましたが改めてあのような時代を生き抜いたおしんに衝撃を受けました。仙道伸子さんがおしんのお姉さんだったり、おしんのお兄さんのお嫁さんの意地悪さがすごく上手だったこと、おばあさんが初めの奉公前にこっそり持たせてくれた50銭など色々思い出しました。

    travelhoneybee|投稿日2010年10月20日 15:20

  • 私が小5の時に始まり、かかさず見ていました。おしん役の子とは同じ年齢。現実とドラマの区別がつかず、毎回泣いていました。家も農家で貧乏で…似た環境でも、家はまだ幸せだな。と、3世代みんなで泣いて見てました。あれから27年また一から見たいです。

    忘れない|投稿日2010年10月20日 14:12

  • 私の両親(2人共他界)が、欠かさず見ていました。私は可哀相なドラマは、結果が気になり時々しか見ていませんでした。スカパーで放映中なので今見ています。私の孫がおしんちゃんの年に近くなり、登場人物のさまざまな人の気持ちがなんとなく解って、欠かさず見ています。             
    棄てる神あれば拾う神あり・・おしんちゃんの生き方見てて、一生懸命頑張れば、報われると思い、この歳になって自分はどこまで頑張ったのか改めて考えさせられました。ありがとうございます。何でも良いものは永く続くのですね。

    もうすぐ還暦|投稿日2010年08月12日 10:37

  • おしんは素晴らしい作品です。ハイビジョンで放送して下さい。

    kirari|投稿日2010年07月26日 14:39

  • 私が子供の頃家族揃って見ていました。
    切なく、又感動的の素敵な家族を描かれている物語でとても感動いたします。  又、あの時のようにでは、私ももう、33歳の大人になりました。  今現在の目線からもう一度見たいと思います。

    ハッピー ベッティです。|投稿日2010年07月11日 02:40

  • うあーん!なんてかわいそー!!

    anna-nn|投稿日2010年05月14日 20:50

  • 今年8月、山形へ旅行した時に、おしんの舞台公演ポスターが貼られていた。残念ながら7月で終了していた。懐かしく、また当時自分は20代で断片的にしか見ていなかったので、早速DVDを購入して鑑賞した。
    すごい!役者の皆さん、何かががのり移った様で、とても演技とは思えない本物のリアリティがある。
    おしんさんには涙が止まらない。人として一番必要なもの。大切なものは何か。おしんさんに教えられた。
    外国の方々にも支持されている事にも、なにかホットするものを感じます。

    hiro|投稿日2008年08月28日 19:24

  • 一度も見たことがなく興味があり、DVDを全巻購入しました。
    みるぞー。

    おしん命|投稿日2008年07月24日 14:08

  • 私も、更紗さん同様に“圭”はおしんの血のつながった孫だと思っていました。
    私自身は、お勤めをしていたので「見ていた」と言う記憶は、あまりありません。なのに場面やあらすじはしっかりと覚えているのです。どうしてでしょう。
    母が初めて買ったドラマガイドが「おしん」でした。ガイドにはあらすじをはじめ、出演者の紹介、ドラマの名場面(前半部)、そして「大根めし」についても書かれてあったと思います。
    普通のおばさんがドラマガイドを買う位に、「おしん」は人々をひきつける何かを持ったドラマだったのですね。

    omame|投稿日2008年06月21日 06:43

  • 少女編は夏休みに放送したり、知ってるつもりだったけど、冒頭で乙羽さん演じるおしんと旅する“孫”の圭が、お加代さま(東てる美さん)の孫っていうのは忘れてました。
    そうそう、だんだん思い出してきたぞ(笑)。
    佐賀の怖いお姑さん、憎まれ役ですよね、を演じられた高森和子さんが結構白い目で見られたとか、役者鞘さんってタイヘンだなぁ~って思いましたね。
    記憶がグチャグチャなんだけど(笑)、田倉家の執事さん(?)の源右衛門さん(だっけ?)がすっごくいい人で、おしんに親切で優しかったんですよね。
    っていうか、私どこで見てたのかなぁ~。
    お昼に職場でチラ見してたのかなぁ~。

    更紗|投稿日2008年06月14日 10:39