アカイさんノート: 2018/09/12

NHK人物録 國村隼

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1955年生まれ、大阪府出身。1981年の映画デビュー以来、ドラマ、舞台、ナレーションなど幅広い活躍を見せる。「ブラック・レイン」「キル・ビルVol.1」など海外作品でも強烈な存在感を残す。NHKでも出演作多数。ドラマ新銀河『この指とまれ!!』『この指とまれ2』、金曜ドラマ『行列48時間』、NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』、『大仏開眼』、BS『雲霧仁左衛門』シリーズ、連続テレビ小説『芋たこなんきん』、大河ドラマ『平清盛』など。BS時代劇『雲霧仁左衛門』シリーズでは安部式部役で活躍。

 

ドラマ新銀河 この指とまれ2(1997)藤吉一役

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このドラマ、当時ものすごい反響があったのを覚えています。この2年前に放送された『この指とまれ!!』の続編ですが、舞台や設定などはガラリとかわっていました。“2”の主人公は、藤山直美さん演じる町医者、大熊すみれ。僕がこの作品で演じたのは、藤吉という結構な腕の板前の役でした。しかも、双子の父親でバツイチという設定。双子を演じたのは『ふたりっ子』でもご一緒した三倉茉奈さんと佳奈さんで、まだ当時10歳前後だったかと思います。彼女たちはいわゆる子役らしい演技というより、とても自然体なので、彼女たちと父子役を演じることに無理は感じませんでした。

futagoto3s.PNG藤吉は双子の娘 純子(三倉茉奈)・愛子(三倉佳奈)と3人暮らし

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姉・純子の心臓に異常が見つかり、すみれ(藤山直美)は検査を勧める

 

何より大変だったのが、“結構な腕の板前”という点です(笑)。どうせやるからには下手なことはできない。芝居はセリフをしっかり頭に入れていればある程度なんとかなっても、包丁を持ったら握り方ひとつ、引き方ひとつで上手・下手が観る人に伝わってしまいます。実はあるお店に通って、1週間ぐらい料理の指導もしていただいたんです。ところがその店の大将はもともと知っていた人だったのですが、指導となったらめちゃくちゃ厳しくて(笑)。その戸惑いは今も忘れられません。でも、お陰様で鯛を1尾さばき、松笠づくりという皮目を湯引きする刺身の調理法まで習得できました。

演技の原点って、モノマネみたいなことからスタートしてると聞いたことがあるんです。だからこそ“真似”だとしても、僕は細部に手は抜きたくない。役者として、そこを探求することも課題のひとつだと思います。

nikuup.PNGitamae1s.PNG料亭で働く藤吉は腕のいい板前

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連続テレビ小説 芋たこなんきん(2007)徳永健次郎役

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 『この指とまれ』シリーズでご一緒した藤山直美さんと、まさか数年後に“朝ドラ”のヒロインと相手役を務めることになるとは夢にも思いませんでした(笑)。“朝ドラ”は放送だけでなく、撮影期間も長丁場。その長い時間を、芝居の天才ともいえる藤山直美さんと夫婦役としてご一緒できたことは、僕の役者人生においても大きな糧になりました。

kenjirodr.PNGmatikobs.PNG“命を削って小説を書く”という町子(藤山直美)に医師の健次郎は“命より大切なものはない”と反論し…

chabudai2s.PNG藤山さんが演じた町子と、僕の演じた町医者の“カモカのおっちゃん”こと徳永健次郎の話は、原案の田辺聖子さんご夫婦の実話がベースになっています。この時代に、子連れのバツイチ医師と結婚をしてバリバリと作家業もこなすという生き方は、女性としてかなり先端的だったはずです。でも、今ようやく時代が追いついてきた感じでしょうか。田辺さんの、先見の明のある生き方には改めて驚かされます。カモカのおっちゃんも、そうした聖子さんと似た人生観の持ち主だったのでしょうね。田辺さんとは何度か実際にお会いし、直接カモカのおっちゃんについてさまざまなお話を聞く機会に恵まれました。

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“カモカのおっちゃん”こと健次郎の飾らないプロポーズ

 

ドラマの中では、結婚を迷う町子に、「中途半端と中途半端が2つ寄って、トータルしたら満タンや!」とプロポーズする場面がありますが、カモカのおっちゃんらしい言葉だなぁと思います。“半端と半端を合わせて満タン”って、男女間だけでなく、どんな場面にも当てはまる人生の示唆に満ちた言葉ですね。
放送後は、想像以上にたくさんの方にドラマを愛していただいてうれしかったです。僕も街中を歩いていて“カモカのおっちゃん!”と、役名でたくさん声を掛けていただけたのは後にも先にもこれだけです(笑)。

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金曜ドラマ 行列48時間(2009)宝福喜朗役

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これは僕自身大好きな作品。ドラマなのに、まるで舞台のような味わいの、洒脱な雰囲気の連続ドラマなんです。自宅でタバコを吸う権利を得るために、妻と娘に代わって有名デパートの初売りの福袋を買う列に並んだ主人公が、ありえないような事件に巻き込まれていく。その偶発的なおもしろさが、演じていてもとても魅力的でした。

fukubukurogs.PNG福袋を買うために行列に並んだだけだったのに…

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なんとその行列は、誘拐事件の身代金2億円の受け渡し場所だった!

 

行列に並んでいる人たちにはそれぞれ事情があったりして、それがいつの間にか物語として数珠つなぎのようにどんどん展開していくんです。まず主人公が、宝福喜朗なんておめでたい名前のくせに、会社にリストラされちゃっているんですよ。しかも、それを妻と娘にうまく言い出せないまま列に並んでいること自体、ちょっと笑ってしまう。そういえば、行列の5番目に並んだ僕が演じる喜朗と、行列6番目の金田明夫さん演じる生方柳太郎役のやり取りでは、永遠にアドリブが続いてカットがかからなくて驚いたことも(笑)。監督は民放でも多数のドラマを手掛ける土方政人さんでしたが、監督も「どこでカットかけたらいいか、わからなかったよ」なんて言いながら、思い切りこの世界観を楽しんでいたのを覚えています。

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宝福は、後ろに並ぶ生方(金田明夫)が身代金の2億円を抱えているとはつゆ知らず…

 

僕は主演を務めていたということを抜きに、この作品のファンというか、こういう大人のコメディが大好き。この作品で初めてご一緒した方もたくさんいましたしね。特に佐野史郎さんとは、撮影の合間にも話が弾んで、彼がゴジラにものすごい詳しいなんてことも初めて知りました(笑)。本当に楽しい現場であり、作品でした。

tyokkaiotoko.jpg周囲の人にちょっかいを出す行列9番目の男、笹島(佐野史郎)の正体は?

未解決事件07 警視庁官狙撃事件(2018) 原雄一警部役

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この作品に携わらせていただくきっかけになったのは、黒崎博ディレクターの存在が大きいです。黒崎さんとは約20年前の彼のデビュー作ともいえる『浪花少年探偵団』や、2013年の『メイドインジャパン』といった作品で仕事をご一緒していました。その黒崎さんが『未解決事件』の実録ドラマで「ぜひ一緒にやりたい」と、かなり早い段階で僕に声を掛けてくれたんです。ただし、未解決事件として迷宮入りした経緯についてはドキュメンタリー放送も別にあるし、僕は“再現ドラマ”タッチになるならそれはちょっと違うなと感じていました。そしたら、黒崎さんも同じ考えでいてくださった。もう断る理由なんてありません。また、その後、黒崎さんが書き上げてくれた脚本もすばらしくて。僕自身、演じる前からどんどん楽しみになっていきました。

harakeibu.PNG1995年に起きた警察庁長官狙撃事件は未解決のまま時効を迎えた

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別の強盗事件をきっかけに中村(イッセー尾形)が容疑者として浮かび上がるが…

 

私が、原雄一警部として追いかけるのは、1995年の警視庁長官狙撃事件。真犯人と目されるイッセー尾形さん演じる容疑者・中村泰に対して取り調べをじっくりと続けていくわけです。イッセーさんとここまでしっかり共演するのは初めてだったのですが、お互いの全く異なるテンションのぶつかり合いがとても心地よかった。現実とフィクションのはざまにある、報道の裏付けにしっかり基づいた、独自の実録ドラマになったと思います。

torisirabe.PNG真犯人を名乗る中村の言葉に“真実”はあるのか…?

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BS時代劇 雲霧仁左衛門(2013~)安部式部役

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希代の盗賊、宿敵・雲霧仁左衛門(中井貴一)を捕まえることに執念を燃やす、火付盗賊改方・安部式部役。安部と雲霧一党の攻防も第4シリーズに突入しました。追いつ追われつ、実は安部と仁左衛門は仲がいいんじゃないかと思うくらい(笑)。尊敬の念にも似た男同士の関係性を、見てくださる方にも楽しんでいただけているのかなと思います。

abechokan.PNG阿部は火付盗賊改方の長官として大盗賊・雲霧仁左衛門を追う

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決して殺さず、貧しい者から奪わない仁左衛門(中井貴一)との間には信頼にも似た絆が…

 

僕はこの雲霧シリーズで、いつも京都の撮影所のスタッフさんの技術力に感心せずにはいられないんです。数々の時代劇を手掛けてきたスキルとノウハウが積み重ねられて。カメラの技術ひとつライトの当て方ひとつ、時代劇になくてはならない存在なんです。今や映像の世界は4K、8Kの時代。例えば、僕らが見せたくないようなカツラの地肌の合わせ目の網や、地毛を隠す羽二重も、ライトひとつで見事に消し去ってくれたり。その技術の細やかさには驚かされました。またカツラ、着物・着付けでは、この人の立場、役職ならこういうものをこんな風に身につけているに違いない――とう知識もちゃんと継承されているんです。演じる側としてもゆだねられますし、僕らの表現を何倍にもして時代劇らしくみせてくれる。そういうプロフェッショナルな方たちと一緒に仕事をできていることを幸せに思っています。時代劇の様式美を、根底で支えてくれている影の立て役者です。

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