アカイさんノート: 2018/09/05

NHK人物録 徳井優

tokuiima.PNGのサムネイル画像

1959年生まれ、大阪府出身。主な出演作に、映画『Shall we ダンス?』『クワイエットルームにようこそ』『アイ アム ア ヒーロー』など。NHKでは、連続テレビ小説『天うらら』『ごちそうさん』、『坂の上の雲』『とんび』『坂の上の雲』『ちかえもん』『幕末グルメ ブシメシ!!』、大河ドラマ『義経』『篤姫』『平清盛』などに出演。土曜ドラマ『不惑のスクラム』では、中年ラグビーチームの主務を担当する緒方真一郎役で出演。

 

連続テレビ小説 天うらら(1998)木村伸男役

D0009120726_00000_S_001.jpg

archives_comment_button01.gif

ヒロインのうらら(須藤理彩)が入門する工務店の脇棟梁の役で、棟梁は小林薫さんでした。僕が朝ドラに出演するのは初めてだと知って「頑張れよ」と言ってくれたのですが、一緒のシーンになると薫さんの芝居のタイミングが完璧でとにかくカッコいいんです。僕は何台かのカメラを同時に回して撮影するというスタジオドラマの手法に慣れていないから、舞台と同じように一気に気持ちを出して演じてしまっていた。それではディレクターがカメラを切り替えるタイミングと合わなかったりするんです。薫さんはそこの間の取り方が絶妙でね。物語の前半、二人で腕相撲をするシーンでは思わず「ずるいなー(笑)」って思ったほど、見事な間を見せてくれました。

urarato2s.PNG木村は新人大工・うらら(須藤理彩)の指導係

kimurabs.PNGmatuobs.PNG

木村も親方の松尾(小林薫)も若い職人たちのことを何かと気にかけ…

 

ただ、僕自身もいろいろなことをさせていただきました。監督の佐藤峰世チーフ・ディレクター(当時)は、別の作品でご一緒したとき、僕がアドリブを入れて芝居するのを認めてくださっていたんです。そこで『天うらら』でも2行のセリフがあるとしたら、その間に1行アドリブを加えるなんてことをしていました。それだと前後にセリフがあるからカットできないでしょ(笑)。あるとき、薫さんから「徳井のセリフだけ多くないか」と突っ込みが入りましたけどね(笑)。落語家の方が江戸弁指導に入ってくださっていて、大阪出身の僕が標準語でアドリブを入れられるようになった作品でもありました。

連続テレビ小説 ごちそうさん(2013)大村宗介役

D0009120727_00000_S_001.jpg

 archives_comment_button01.gif

この作品で初めて東出昌大さんとご一緒したのですが、最初にお会いしたのは衣装合わせのときです。部屋で待機していた僕のところに、わざわざご挨拶に来てくださったので恐縮して立ち上がったら、なんと身長差30cm!思い切り見上げていました(笑)。帝大を卒業した西門悠太郎(東出昌大)が就職した大阪市役所の建築課の先輩にあたる建築技師というのが僕の役。ふたりで立ち飲み屋で酒を飲むなんてシーンも多く、だんだん彼を見上げることが心地よくなってきて、天神祭のシーンでは同じ衣装を着たふたりの姿も見ものでした(笑)。

 東出さんはとてもストレートなお芝居をされる方です。僕は逆にいろいろ仕掛けたくなるタイプ。両方がやり過ぎると芝居はくどくなってしまうのですが、東出さんと僕とは相性が良いというか、バランスが良くてものすごくやりやすかったですね。

kyositu2s.jpg帝大卒の悠太郎(東出昌大)を嫌み混じりに“赤門”と呼ぶ大村だったが…

tenjinyukata2s.PNG

天神祭ではそろいの浴衣で悠太郎の獅子舞の補助をする

この作品は声高に語ってはいないけれど、戦争責任や当時の国の在り方などもテーマにしていたのだと思います。岡本幸江プロデューサーが、空襲時に火を消そうとして亡くなった人のことなどをお話していたのを聞いたことがあり、岡本プロデューサーの真面目さも印象に残った作品でした。あとはヒロインの杏さんですね。僕が出演した朝ドラのヒロインを演じられた方はみなさんそうですが、あの膨大なセリフと朝から晩まで出ずっぱりの撮影を見事にこなしていらっしゃる。そのすごさは、ある意味、神がかっていたと思います。

tenjinsai2s.jpg

ヒロイン・め以子(杏)

木曜時代劇 ちかえもん(2016)喜助役

D0009120728_00000_S_001.jpg
archives_comment_button01.gif

この作品にキャスティングしていただいて何より嬉しかったのは松尾スズキさん、岸部一徳さんと共演できたことでした。僕は、劇団「大人計画」(松尾スズキ主宰)が今ほどメジャーになる前、家族から勧められて舞台を観て以来の松尾スズキファンだったんです。その後、舞台にも2回、松尾さん監督の映画『クワイエットルームにようこそ』にも出演させていただくという貴重な体験をさせていただきました。

tikamatubs.PNGhiranoyabs.PNGスランプ中の劇作家・近松門左衛門(松尾スズキ)と豪商・平野屋忠右衛門(岸部一徳)

kisukeyokome.PNG

喜助は平野屋に仕える忠義者の番頭

 

『ちかえもん』で感動したのは近松門左衛門を演じた松尾さんの大阪弁です。僕のように大阪出身の人間ではない松尾さんが、大阪弁をより大阪弁にしていた。ニュアンスが難しいのですが、完璧な大阪弁そのものとは少し違うのだけれど見事なまでに松尾さんの言葉になっている。後半で目盛りが振り切れるような勢いで、一気に長いセリフを語られたときは圧倒されました。ところが演出が「もっといってください!」と注文を出したんです。そこで、さらに振り切れた芝居になっていて、そのすさまじいまでのすごさに本当に感動しました。

tuyappoiseki.PNGkisukews.PNG

喜助だけが知る平野屋忠衛門の真実とは…

 

一方の岸部一徳さんは、僕が演じる喜助が番頭をつとめる「平野屋」の大旦那・忠右衛門役。ふたりのシーンでしっかりご一緒できたことは本当に勉強になりました。一徳さんは、ご自身に非常に厳しい方で芝居に臨まれるときの緊張感がすごいんです。僕は逆に本番直前まで別のことをしたり話したりして、あえて気持ちを楽にして臨むタイプ。だけど、さすがに一徳さんの前でそれはできない。いつも、ふざけたりしている僕も控えました(笑)。一徳さんは、そんな姿勢を“小栗組”と呼ばれる小栗康平監督の映画『死の棘』の現場で学ばれたとおっしゃっていました。あの作品で一徳さんは日本アカデミー賞主演男優賞を受賞されていますよね。自分で言うのも恥ずかしいのですが、一徳さんに芝居をほめていただいたことがあって、嬉しかったですね。ほかにも、竹本義太夫を演じた北村有起哉さんの義太夫の素晴らしさ、有起哉さんのすごさを目の辺りにするなど、本当に幸せな現場だったと思います。

gidayuu2s.PNG竹本義太夫(北村有起哉)

幕末グルメ ブシメシ!!(2017)   菊池庄兵衛役/お菊役(二役) 

D0009120729_00000_S_001.jpg

archives_comment_button01.gif

高野藩の伴四郎(瀬戸康史)が他藩に飛ばされてしまうという『ブシメシ!!』の新シリーズの台本を作っている段階で、僕が別の作品でおばあちゃん役をやっていることを知った制作チームが、南海藩の女中頭という役を決めてくださったんです。伴四郎と一緒におじの宇治井平三(平田満)も南海藩に行くけれど、僕の演じていた賄頭の庄兵衛がついていくわけにはいかない。そこで別人となって出演することになったわけです。

heizoubs.PNGshobeebs.PNG高野藩衣紋方の平三(平田満)と賄頭の庄兵衛は犬猿の仲

bansiroto2s.PNG

伴四郎(瀬戸康史)もびっくり!南海藩女中頭のお徳は庄兵衛にうり二つ!

 

衣装合わせのときは大変でした。着物の帯が苦しくて気持ちが悪くなり、これでお芝居ができるのかと一瞬不安になりました。しかし、やはり衣装合わせのときと芝居をするときとでは気持ちが違うんですね。役に入ると逆に所作などの制約があり、着物は大リーグ養成ギブスのような役割を果たしてくれてむしろやりやすかったです。

演技の注文はいろいろ大変でした。お徳が廊下でめまいをおこしてふらっとなるシーン。演出から「映画『団地妻』の白川和子さんのようにやってください」と注文が入るんです。「徳井さん、年代的にあの映画はご存じですよね」って(笑)。いや、一体この人は何を言っているんだろうって。それから入浴シーンまでありましたからね。まいりました(笑)。

otokumitiyuki.PNGただ、こういう楽しい内容のものは、演じる側が実はとても真面目にやらなくては成立しないんです。だから一生懸命やりましたけど、あろうことか終盤には平三役の平田さんと恋仲になり道行きのようなシーンまであって。平田さんも「お徳!」と名前を呼ぶところで、「やりづらいなー」と大声で言ってましたね(笑)。桔梗屋・源次役の国広富之さんにも本当の女性として恋をするなど、役者冥利に尽きる役でした。

また、ラストカットではお徳と庄兵衛が道ですれ違うというシーンも撮りました。セリフもそれぞれに録って演じているので注目していただけると嬉しいですね。

genjinisemarare.PNG

廻船問屋の源次(国広富之)にせまられ…

otokuuwame.PNGheizoumitumeru.PNGなんと平三といい仲に!

 

土曜ドラマ 不惑のスクラム(2018)緒方真一郎役

D0009120730_00000_S_001.jpg

 archives_comment_button01.gif

年齢も地位も関係のない不惑のラグビーチーム「ヤンチャーズ」の一員・緒方真一郎役で出演することになったのですが、僕自身の生まれ育った場所が舞台であり、経験してきたことと重なる部分も多く本当に驚きました。

ヤンチャーズの本拠地となるのは大阪の淀川の河川敷です。その周辺というのは、まさに僕が生まれ育ったところで高校を卒業するまで過ごした場所でした。ロケ地に向かう車中から、「ここが僕の小学校」「卒業した中学!」とひとり興奮してしゃべり続けて、共演者からは「徳井、うるさい!」と言われてしまったほど(笑)。

yanchars.PNG40歳以上の選手によるラグビーチーム「ヤンチャーズ」

sinitirou2s.PNG

さらに僕自身、公立では地域で一番強かった守口高校で3年間、ラグビーをやっていたんです。中学2年生のときから役者になろうとは思っていましたが、その一方で高校卒業後にラグビーのクラブチームにも所属していたので、一瞬、進路に迷ったこともありました。大学に行かずに就職して週末にラグビーを楽しむ生活もいいかなと。

きれいな夕日を浴びながら河川敷で一人、グラウンドにトンボをかけるシーンでは、いろいろなことが思い出されました。この場所で、ゴルフ練習をする親父のボールを探したり、兄とキャッチボールしたこと。高校時代に堤防の土手を走ったことなど、本当に感慨深かったです。

sinitirochukamae.PNG

緒方はチームの選手兼主務

 

共演者の中で僕がご一緒することが多かったのは、「ヤンチャーズ」のチーム創設者・宇多津貞夫役の萩原健一さん。丸川良平役の高橋克典さんなど出演者に萩原さんのファンが多くて、みんなけっこう緊張していましたね(笑)。僕も『傷だらけの天使』からの大ファンでしたから嬉しかったし、萩原さんとは一発にかけるという芝居の間が共通していて、テスト1回ですぐ本番というのがとても気持ちよかったです。病院の屋上のベンチで僕が相談するというシーンでは、萩原さん側ではなく僕の側を撮るというときに一番いい芝居をしてくださってありがたかったです。

utatu1s.PNGutatufusho.PNG宇多津貞夫(萩原健一)が試合中に足を痛め…