アカイさんノート: 2018/08/24

NHK人物録 安藤玉恵 

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1976年生まれ、東京都出身。劇団「ポツドール」を経て、現在はテレビドラマや映画を中心に活動。映画『夢売るふたり』で第27回高崎映画祭最優秀助演女優賞を受賞。主な出演作は映画『探偵はBARにいる』シリーズ、『深夜食堂』シリーズなど。確かな演技力で様々なジャンルの役を演じ、注目を集める。NHKでは連続テレビ小説『あまちゃん』『はつ恋』『植物男子ベランダ−』『64(ロクヨン)』『悦ちゃん』などに出演。

 

連続テレビ小説 あまちゃん(2013)栗原しおり役

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最初に『あまちゃん』出演のお話をいただいたときはビックリしました。宮藤官九郎さんの脚本だというウワサがあったので、「何としても出たい」とは思っていましたが、私と同じような小劇場出身者はたくさんいるから激戦だろうなと。だから、出演が決まって本当に嬉しかったですね。まだ撮影が始まってもいないのに親戚から胡蝶蘭が届いたり(笑)と、周囲の反応が思った以上で驚いたのを覚えています。

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観光協会職員のしおりと副駅長の吉田(荒川良々)は物語後半で結婚することに…

 

共演者、特に北三陸チームの登場人物たちは個性派ぞろい。舞台出身者が多かったため、アドリブ合戦になってはいけないと、基本的には台本通りにお芝居をしていました。スタジオ前のスペースでは自然発生的にセリフ合わせが始まり、いかにテンポを良く面白く掛け合いができるかを稽古していましたね。とにかく皆で面白いものを作ろうという一致団結感がすごくて、稽古が始まると面白くてしょうがないんですよ。その延長線上で本番を迎えるので、みんなリラックスした状態で役を演じ、放送されないと知りつつカットがかかってもお芝居を続けていたほどです。

amacafegs.PNG震災後“海女カフェ”の再建をめぐって費用の計算中…

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ご紹介している動画のシーンは、吉田照幸監督の演出回でした。あまり練習しすぎると面白くなくなるので、一回軽く踊ってから「本番です!」ということに。しかも「じゃあ安藤さん、笑わせてください。よーい、スタート」って。無謀っちゃ、無謀ですよね(笑)。

実はこのシーンのために2,3日前からずっとTM NETWORKの「Get Wild」を聞いていて、脳内シミュレーションしていたんですよ。私はもともとダンスができないので、カッコいいダンスをイメージして表現してみたのですが、その出来てなさ加減がいいんじゃないかと思っています。途中からは、もはやストーブさんへの求愛ダンスみたいになってるんじゃ!?と思いながら踊っていました(笑)。

syokubaodori.PNGhirosibs.PNG職場で一人踊る姿を“ストーブさん”ことヒロシ(小池徹平)に見られ…

LIFE!人生に捧げるコント(2014)竜子役

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番組の脚本家のひとり、倉持裕さんのコントに呼んでいただきました。ちょうど倉持さんの舞台に出演した後で「安藤さんがやったら面白そう」とお声がけいただいたんです。コント番組の収録は初めてだったので、ドラマの現場とは雰囲気も進め方も違い、新鮮でしたね。

ドラマでは1シーンをいくつかのカットに分けて撮影ことが多いのですが、『LIFE!』は途中で止めずに長回しで撮るスタイル。1回リハーサルして本番ですし、本当に立ち位置とカメラの位置だけ合わせて「はい、どうぞ」って。そういうの、お笑いの方には普通なんですってね。

uttyankashu.PNG竹脇みつる(内村光良)は30年前のヒット曲“恋のチムニー”を歌い続ける歌手

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竜子と茶碗谷(田中直樹)との関係は…?

 

内村光良さんも田中直樹さんも、お会いしてすぐに信頼できる方たちだと分かりました。共演していて、あれだけ面白いものを作っているのに、みなさんすごく冷静で、キャラを演じながらも相手のことをよく見ているなと感じました。だからちょうどいいタイミングでセリフが言えるし、間を取れる。ちょっと笑いを入れてみたりするのも、計算なんだろうなと改めて思いました。だからこそ、違う世界からおじゃましている身としては“負けない”と思ってやっていました。

私は「セリフをちゃんと伝えなくちゃ」とか、どうしても役者としての目線で考えてしまうので、「間違えちゃったらどうしよう」という不安もありました。でも共演の皆さんはそんなこと気にしていなくて、その場の勢いやノリを大事にされているように感じました。みなさん、そういう訓練をしてきていらっしゃるんでしょうし、何をやってもリアクションしてくださるので楽しかったです。

uttyanto2s.PNGみつると竜子の“恋チム”デュエット!

 

土曜時代ドラマ 悦ちゃん(2017)春奴役

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私が演じた春奴は原作にない役だったので自由にやらせてもらえました。ウグイス芸者と呼ばれた歌手の役で、登場シーンが東京音頭を三味線一本で歌い上げるお芝居。クランクインの2か月ほど前から週に2回ほど三味線のお稽古をして、それ以外はカラオケボックスで自主練習していました。実際の収録では全部歌ったのですが、編集の都合上短くなっていて残念でしたね(苦笑)。

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“東京音頭”を歌う登場シーン

 

春奴は主役のロクさんこと柳碌太郎(ユースケ・サンタマリア)のことがずっと好きだったのですが、結婚したいとか一番になりたいという感じではないんです。いつも気にかけてくれればいいというかね。そんな風に思いを寄せていたはずが、物語が進むにつれてだんだんと親友みたいな関係に変わっていきました。

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春奴は売れない作詞家・碌太郎(ユースケ・サンタマリア)が気になる

 

春奴は芸者なので、色っぽい仕草や話し方が身についたキャラクターです。私の場合、色っぽいシーンのときはいつも体の使い方と肉体的な感覚を意識しているのですが、そうすると見ている方にも伝わりやすいのかなと思いますね。密室で男の人と二人きりになったときって、皮膚の穴からフェロモンが出るじゃないですか。セリフではなくフィジカルな部分をコントロールしながら再現すると、よりリアルになる気がしています。後から見るとちょっと恥ずかしいのですが、自分の中では密室の設定なのでね。

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碌太郎のお見合いの前夜に酒を飲ませ…

 

動画でご紹介しているシーンではレコード会社の大木(飯尾和樹)と、いい雰囲気に…。「ロクさんのことが好きじゃなかったの?」とビックリしましたが、このシーンは飯尾さんとの演技がうまくいって、本番中にも関わらずスタッフの笑い声が聞こえるほどでした(笑)。

ookinidakare.PNG大木(飯尾和樹)の求愛に揺れる女ごころ!

ドラマ10 透明なゆりかご(2018)  田中良子/木島いづみ役

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不倫の果ての出産で相手の男性に妊娠を告げず、さらには未受診のまま出産を迎えるという役どころで、第1話のゲストでした。名前も住所もデタラメで、由比産婦人科にとっては迷惑な患者です。出産後も子どもを置いて姿を消したり、不倫相手と病院で大げんかしたりと、どうしようもない部分が目立つ人物像でした。

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看護助手のアオイ(清原果耶)と未受診妊婦・いづみの出会い

 

でも、そんな彼女を演じる上で役に寄り添うために、彼女が年齢のリミットを考えて産むことに決めた過程や、妊娠を誰にも相談できずに過ごしてきた10か月を考えました。そういった部分は沖田×華(ばつか)さんの原作が実話を元にしたものでしたから、ひとつひとつのセリフに重みがあり、私自身、自分の経験や周囲の現実と比べても、とても身近に感じられました。

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そんな風に役を理解した上で、清原果耶さんが演じるヒロインのアオイとのシーンを感じるままに演じようと、現場に入りました。最終的には産まれた子と共に無事に退院するものの、後に赤ちゃんが亡くなってしまうという結末で、それが虐待だったのか、事故だったのかは誰にも分かりません。

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我が子を初めて抱くいづみ

 

最後のシーンは、赤ちゃんと添い寝をしたまま眠り込んでしまうというイメージシーンでしたが、監督からは「答えを決めていい」と言われて挑みました。演じる前に私が選んだのは“虐待ではなかった”という解釈。見ている方にその考えが伝わってもいいと思いながら演じました。原作者の沖田さんにお会いする機会があったら、ご覧になってどうだったかうかがってみたいです。

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太陽を愛したひと~1964 あの日のパラリンピック~(2018)村上久子役

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1964年の東京パラリンピックを成功に導き、その後、障害者の社会復帰に一生を捧げた伝説の医師・中村裕さんの半生を描いたドラマです。そのなかで私が演じたのは、事故で骨髄を損傷して車いす生活になった主婦の村上久子。彼女は中村先生からパラリンピックへの出場を勧められるのですが、自分の人生は事故にあった時に終わってしまったと心を閉ざしてしまいます。

久子は障害者水泳に挑戦するので、障害を持った方の泳ぎを学ぶためにパラリンピック競泳選手の成田真由美さんにご協力いただきました。実際に彼女の泳ぎを間近で見せていただいたり、腕だけを使った泳ぎ方を教えてもらったり、私の泳ぎ方を見てアドバイスをいただいたりもしました。

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1964年の東京パラリンピック開催に尽力した医師・中村(向井理)

 

私自身、泳ぐのは好きなのですが、健常者と障害者の泳ぎは使う筋肉が違うので、体の浮く部分、沈む部分にも違いが出てくるそうなんです。腕の回し方ひとつにしてもやり方がありますし、私はプールに入ると体が浮きますが、動かない体の部分は筋肉や脂肪が落ちているので沈むのだそう。実際の練習では足を沈めながら手だけを使って泳ぐように努力しましたが、顔が沈んでしまって怖くなりました。

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気持ちの面では、どこまで久子の絶望感に近づけるかだと思いました。どんなに想像力を駆使しても、やはり実際には経験したことがないのですから嘘っぽくなってはいけないと思ったんです。監督からは、セリフや描写が参考になるのではと井上雄彦さんの「リアル」という車いすバスケットボールを描いた漫画を薦めていただきました。あとは、なるべく多くの時間、役の現実を考えるように努めました。仕事を離れると普通の生活をしてしまいがちですが、こうした役を演じるときはいつも、同じような境遇の方のドキュメンタリーを見たりして、ずっと役が置かれた現実に意識を向けるようにしています。