アカイさんノート: 2018/08/24

NHK人物録 志尊淳

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1995年生まれ。東京都出身。2011年に俳優デビュー後、ドラマ『表参道高校合唱部!』『きみはペット』『トドメの接吻』、映画『先輩と彼女』『帝一の國』など話題作に出演。11月3日には主演映画『走れ!T校バスケット部」が公開される。NHKでは、『植木等とのぼせもん』で若き日の小松政夫役、『女子的生活』でトランスジェンダーの主人公を演じ、注目を集めた。現在放送中の連続テレビ小説『半分、青い。』ではボクテ役で出演。『太陽を愛したひと~1964 あの日のパラリンピック~』では、車いす生活を余儀なくされる土山アキラを演じている。

エイエイGO!(2015)搭乗員ジュン

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この映像、なつかしいですね! 「エイエイGO!」は、一年間レギュラーを務めさせていただいた英語の語学番組です。「番組で最後になにかしたいことはありますか」とスタッフの方に聞かれて、「ニューヨークに行きたいです」と言ったら、「スケジュールを空けてくれるならいいですよ」と言っていただいたので、マネージャーさんにお願いして、スケジュールを1週間ほど空けていただきました。

役者というのは、いろいろな経験をすることで表現力が上がると思っていたので、ニューヨークに行ったときも、自分のことをきちんと相手に伝えて、たくさんの経験を積もうと思いました。自分が今までどういう役を演じてきたか、どういうきっかけでこの世界に入ったのか。辞書などで言い回しを調べながら、ノートに書き込んで、下準備をしていきました。

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英語で質問はできたけれど、答えが聞き取れない…!

 

ニューヨークではオフブロードウェイ『FUERZA BRUTA(フェルザ ブルータ)』を見に行き、舞台でキャプテンを務めるリアム・レーンさんに演技指導をしていただきました。最初は英語がまったく頭に浮かばなかったのですが、たとえ文章が間違っていたとしても伝えようとすることが大切だと思って、積極的に話すようにしていました。最終的にステージにも立たせていただき、達成感でいっぱいでしたね。あの経験は今思い出してもとても大きなものになりました。現在は、英語の勉強はできていないのですが、外国の方に会ったときや、海外に行ったときなど、機会があったらしゃべるようにしています。

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劇団員と一緒に本番のステージでダンス!

 

『エイエイGO!』は、僕も“学びたい”という一心で取り組んでいましたし、番組内で疑問に思った点をきちんと自分から発信していこうと思っていました。内容は中学生レベルなんですけど、今の中学生レベルってすごいんですよ(笑)。僕も学生時代に習ったことは忘れていることが多かったので、改めて教わることができてよかったです。

nuwarai.PNG共演させていただいた陣内智則さんと小林きなこさんはありがたいことに今でも応援してくださっていて、陣内さんはテレビで僕の名前を何度も言ってくださり、共演したときには「ジュン!」と親しく声を掛けてくださいますし、きな子さんもすごく気にかけてくださいます。一年間一緒だったので、共演者というよりも、ものすごく身近な関係だと思っています。

kinakoto2s.PNGキナコ(小林きな子)、リーダー(陣内智則)とともに宇宙船で旅をしながら英語を学ぶ

プリンセスメゾン(2016)奥田直人役

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主演の森川葵さんはもともと共演経験があったので、現場でもリラックスして臨むことができました。不動産会社の先輩・伊達さんを演じた高橋一生さんはこのドラマのあと、すぐに違うドラマでも共演させていただいたので、とても仲良くさせていただいています。

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居酒屋で働く沼越幸(森川葵)は自分の“家”を購入することが目標

 

僕が演じた奥田直人は不動産会社の社員なのですが、社会人の役というのは、たたずまいが難しいんです。僕は会社員の経験がないので、社会人の日常の動きをどれだけクリアにできるかが問題だと思い、まず、不動産会社の資料を読ませていただくことから始めました。不動産を取り扱う社員は宅建(宅地建物取引士)の資格を持っているのか、いないのか。賃貸と分譲マンションなど、なにをどこまで説明できるのか。別の資格が必要なのかなど、その仕組みから覚えていきました。

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持井不動産の若手社員・奥田はお調子者だが仕事には真剣

 

また、奥田は関西出身という役柄なので、関西弁で話さないといけなかったんです。関西弁の役は過去にも演じたことがありますが、やはり芝居になると難しいですね。気持ちを入れて演じたいのに、どうしてもイントネーションのことを考えてしまうので、方言のある役というのは今でも課題のひとつです。
『プリンセスメゾン』のときは、方言指導の方がいらっしゃらなかったので、関西出身の演出の方がセリフを吹き込んでくださった音源を聞いて覚えていました。だからほぼ我流で、正しい関西弁で話せているか不安なところもありましたが、自分が思う奥田直人として生きることを大事に演じていました。

kamimiruaoi.PNGokudabs.PNG“運命の物件”を探す幸を奥田も応援する

土曜ドラマ 植木等とのぼせもん(2017)松崎雅臣/のちの小松政夫役

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小松政夫さんの原作を読ませていただいたときに、現代にはないような師弟関係、すてきな人間関係、人間の情が描かれていると思いました。そのなかで、小松政夫さんの役を演じさせていただくことができ、とても光栄でした。

小松さんとは、『「植木等の時代」の魅力に迫る!』という番組で、当時、植木等さんと小松さんが住んでいたという経堂に行かせていただきました。2人で経堂を歩きながら、思い出の風景などを説明していただきました。小松さんはすごく熱い方で、“のぼせもん”ということばがふさわしい方だと改めて思いました。

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小松政夫とドラマゆかりの街・経堂を歩く

 

撮影現場では、毎日、共演者の皆さまに助けていただいて、胸を借りるつもりで演じました。このドラマで描かれた期間は小松さんの人生のなかでも濃いエネルギーに満ちていて、どのシーンをとっても熱量があるんです。目を腫らすぐらい泣いて、叫んで、喜怒哀楽の感情をたくさん演じさせていただき、僕の人生のなかで、こんな泣いて笑って怒った3か月があるのかと思うくらい貴重な体験になりました。とにかく、小松さんの思いをしっかり伝えなきゃいけないと思い、毎日必死でした。

higasamoti2s.jpg雅臣は大スター・植木等(山本耕史)の運転手兼付き人に採用される

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クレージーキャッツ公演の幕間の“つなぎ”を任されるが全くウケず…

 

植木等さんを演じた山本耕史さんにはすごくお世話になりました。僕が小松さんを演じるにあたって、乗り越えないといけない壁がいくつかあったのですが、耕史さんがアドバイスしてくださり、温かく見守ってくださったので、ドラマ以外でも本当の師弟関係ができていたと思います。

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連続テレビ小説 半分、青い。(2016)藤堂誠/ボクテ役

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僕が演じたボクテ(藤堂誠)はゲイの美青年で、秋風先生(豊川悦司)のアシスタントの中でも漫画家としての才能が最もあり、仲間にも優しい人物です。でも仕事に対するどん欲さを内に秘めている点は僕と似ていると思いました。

僕がボクテを演じるにあたり、間違った表現をしないようにするというのは一番心がけている点です。セリフで「ゲイだし」と言うシーンもありますが、できるだけ「性的マイノリティーだからこうなんだ」とならないようバランスをとって演じようと思いました。みんな同じ“人”という中で、ただボクテという人物を演じている感覚です。

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“ボクって…”という口癖からついた愛称が“ボクテ”

 

ボクテにとって他人に偏見のない秋風先生や、オフィス・ティンカーベルは、自分を解放できる場所だったと思います。鈴愛(永野芽郁)とユーコ(清野菜名)と一緒にいると等身大の若者になれましたし、三人のやりとりがとてもかわいらしくてコミカルで楽しかったです。

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裕子(清野菜名)、鈴愛(永野芽郁)とボクテは少女漫画家としての戦友、そして親友

 

秋風塾のクロッキー特訓シーンの合間で、永野さんと清野さんと一緒に豊川さんの似顔絵をそれぞれ描いたんですけど、完成した絵を豊川さんが見て「下手すぎて笑っちゃいそう」とツッコまれたことを覚えています(笑)。豊川さんも、菱本ちゃん役の井川遥さんも役を超えて僕たちを子どものように見守ってくださったので、お二人とのシーンを撮り終わったときは、本当にオフィス・ティンカーベルを巣立ち、自立するような心境でした。

kurokkigs.PNG10時間におよぶクロッキー特訓!

akikaze1s.PNG秋風羽織(豊川悦司)

太陽を愛したひと~1964 あの日のパラリンピック~(2018)土山アキラ役

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僕が演じた土山アキラという役は、事故で車いすの生活を余儀なくされる青年です。僕が経験したことがない境遇にいる人物なので、アキラに寄り添って演じることを心がけました。

車いすに乗る練習をさせていただいたときに、今使われている車いすと、劇中で使用する当時の車いすに乗らせていただいたのですが、今の車いすは、重さ、軽さだけではなく、倒れにくくなっていることがわかりました。僕は古い時代の車いすに乗り、撮影現場の近隣を動いてみたのですが、道が整備されているのか、いないのかということが車いすの方にとってすごく重要だということもわかりました。幅が狭かったり、手で押さないといけない扉があったり。「ここがこうだったらいいのに」と思うことが多かったんです。その経験をもとに車いすに乗り、アキラの気持ちを大事に演じようと思いました。

nakamuradrto.PNG車いすでの生活になったアキラに中村医師(向井理)はスポーツを勧める

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反発するアキラだったが…

 

撮影期間、ハプニングもありました。車で移動中、車が田んぼにはまってしまい、撮影に間に合うよう、僕だけ降りて現場まで4キロくらいひとりで歩いたんです。汗だくになりましたが、撮影するシーンが、アキラが車いすで10キロ走って来たあとのシーンだったので、アキラのような気持ちでそのまま撮影に入ることができました。

バスケットボールをするシーンでは、車いすバスケの全日本の代表の方が指導をしてくださいました。以前、バスケットボールが関係する作品に出演したことがあるのですが、車いすでプレイしてみると、腕だけの力でボールを扱うことがいかに大変かを感じました。バスケと車いすの練習をしたのはそれぞれ一回。車いすは撮影前に一時間くらい教えていただき、前輪を上げた状態を維持するウィリーもそこで習いました。ウィリーは、後ろに倒れる恐怖心さえ克服できれば大丈夫だと思い、思い切って挑戦したら、何回目かで成功したんです。そのあとは「またしてる」「もういいよ」と言われるくらい、ずっとウィリーをしていました(笑)。

basukefukan.PNG中村裕先生を演じた向井理さんは、テレビや映画でずっと拝見させていただいていた方なので、お芝居をさせていただくことがとても楽しみでした。ものすごくクレバーな方で、裕先生の主観的な意見だけではなく、俯瞰で見てクリエイティブなお話を監督とされていたので、背中がとても大きく見えました。

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“失った物を数えるんじゃない、残された物をどう生かすか…”

 

この作品は、普通に生活していたら知ることのない功績を遺した中村裕先生や、たくさんの方々の軌跡が描かれています。日本でのパラリンピック実現などもこの方たちがいらっしゃったからできたのだとわかります。絶対に感じるものがあるので、僕と同年代の人たちにもぜひ見ていただきたい作品です。

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