アカイさんノート: 2009/11/13

"食"が舞台の『朝ドラ』

『風見鶏』

 48年間続く連続テレビ小説(朝ドラ)の81作品の中には、"食"の現場が舞台となったドラマもたくさんある。
 伝統の味の店が舞台だったり、ヒロインがさまざまな"食"づくりにチャレンジしたり・・・。今回は、そんな朝ドラを振り返ってみよう。

"食"の道を究めるヒロイン第1号はパン職人

 朝ドラのヒロインは、さまざまな仕事に挑み、その道を究めてきた。"食"の仕事の第1号は、第20作『風見鶏』(1977年)のパン職人だろう。
 

風見鶏


 ヒロイン・ぎん(新井春美)が、神戸でドイツ人のパン職人と結婚。戦争で夫と生き別れると、自身も本格的なパン作りに情熱を傾ける姿を描いた。舞台の神戸・異人館は観光名所となった。

 

"しょうゆ"とくれば、次は"みそ"

 日本伝統の"食"をつくる家が舞台となった作品といえば、まず、第34作『澪つくし』(1985年)が思い出される。
 

澪つくし


 千葉・銚子のしょうゆ醸造の旧家に生まれた少女・かをる(沢口靖子)と、網元の長男・惣吉(川野太郎)の、相いれない世界の壁を越えて愛を育む物語。死んだはずの惣吉が視聴者の強い要望に応えて終盤再登場する展開が話題になった。
 醤油造りのシーンの撮影は、実際に千葉県で270年続く蔵元で行われ、秋田杉の大樽が並ぶ工場、伝統的製法なども、興味深いものだった。

 しょうゆ作りが舞台の『澪つくし』で演出を担当した西村与志木ディレクターが、8年後、初めて朝ドラの制作統括(チーフ・プロデューサー)を任された時、舞台として思い付いたのが老舗の"みそ屋"だった。そう、第50作『かりん』(1993年)である。
 

かりん


 物語は男女共学が始まった昭和23年からスタート。3代続く女系一家の一人娘・千晶(細川直美)が、恋や友情、そして家族のかっとうを経て成長し、傾きかけた家業を盛り返す半生を描いた。

 

大阪制作は関西の"食"オンパレード

 朝ドラは1975年度以降、東京と大阪が交互に制作するのが基本だが、その大阪放送局制作の作品は、やはり関西伝統の"食"をテーマにしたものが多い。

 京都の老舗・漬物屋が舞台となったのが、第45作『京ふたり』(1990年)だ。
 

京、ふたり


 ドラマでは、京の漬物が数々紹介されたが、中心となったのは千枚漬。130年続いた老舗伝統の味は、カブラの切り身の厚さにまでこだわったもの。4代目の祖父の味を絶やしてはいけないとライバル店で修業する孫の愛子(畠田理恵)。それに対して5代目となる母の妙子(山本陽子)は、あっさり味の"千枚漬ヌーボー"を考案するなど、新旧の味の対決も見ものだった。また漬物とともに京野菜の魅力もたっぷりと紹介された。

 神戸・灘の伝統の酒造家が舞台となったのが第57作『甘辛しゃん』(1997年)。酒造りの魅力にとりつかれたヒロイン・泉(佐藤夕美子)が、数々の困難にあいながらも、"最上の一滴"を探し求める姿を描いた。

甘辛しゃん


 丹後の川のせせらぎが日本一の酒米を育み、六甲の山の下をくぐり抜け、天下の名水となり灘に湧き出る。この水と米を使い杜氏(とうじ)の技と自然の助けを借りて造る灘の酒。水の流れ、酒造りの流れをヒロインの半生にオーバーラップさせたストーリー展開が新鮮だった。

 京都と奈良を舞台に和菓子職人を目指すヒロインの成長を描いたのが、第61作『あすか』(1999年)。

あすか


 ヒロイン・あすかを演じた竹内結子は2か月間、週に1回の割合で和菓子の特訓に通って、職人らしい手の使い方などを学んだという。
 ドラマには毎回美しい和菓子が登場し、それを食べるのが出演者にとっても楽しみだったとか。

 そして、関西の味を究めるヒロインを描いた作品といえば、第65作、その名もずばり『ほんまもん』(2001年)だ。

ほんまもん


 数々の食材に出会い、次々と料理にチャレンジするヒロイン・木葉(池脇千鶴)が最後に京の精進料理にたどり着くというストーリー。
 木葉が出会う料理として、大阪では鱧(はも)料理や鮮魚、熊野地方では、めはり寿司や山菜料理、熊野川で採れる鮎やエビ、そして精進料理のゴマ豆腐などが次々と登場した。また最初に就職したイタリアンレストランで木葉が考案したまかない料理、父が開いた創作和風料理の店のメニューなど、おいしそうな料理がたくさん。まさに料理と食材がもう一つの主役となったドラマだった。

 

ヒロイン考案のオリジナル商品

 "食"が舞台の劇中で、ヒロインが考えだしたアイデア商品も、ドラマを賑わした。
 まったく性格の違う双子のヒロインの挑戦と、それを取り巻く人間模様を描いた第55作『ふたりっ子』(1996年)。
 

ふたりっ子


 双子の妹・香子(岩崎ひろみ)はプロ棋士を目指し、姉の麗子(菊地麻衣子)は大企業に入社するが退職して実家の豆腐屋の経営に乗り出す。昔ながらの豆腐店をおしゃれな豆腐ブティックに改装してイメージチェンジ。豆腐ケーキなどのアイデアデザートでヒットを飛ばすが、ついには化粧品にまで手を伸ばすなど、事業を拡大しすぎて失敗に終わる。

 第68作『こころ』(2003年)は、生粋の浅草っ子のヒロイン・こころ(中越典子)が、2人の子持ち医師と結婚するものの、夫は雪山で遭難。血のつながらない2人の母、そして実家のうなぎ屋の若女将として奮闘する姿を描いた。

こころ


 このドラマの中でこころがうなぎの新商品開発に取り組むシーンがあった。試行錯誤の末、完成させたのは"うむすび"。うなぎの蒲焼きを小さく切ったものと、佃煮風に甘辛く煮たごぼうをご飯で包み、のりを巻いたおむすび。いえ、うむすび!
 こころ役の中越典子は、このうむすびにマヨネーズをつけて食べるのがお気に入りだったそうだ。

 ヒロインのオリジナル商品の中でも、かわいさで目をひいたのが第69作『てるてる家族』(2004年)のヒロイン・冬子(石原さとみ)が考案した"てるてるパン"だ。

てるてる家族


 物語は、パン屋の4姉妹が、それぞれの夢に向かってがんばっていく様子が描かれた。春子(紺野まひる)はフィギュアスケート、夏子(上原多香子)は歌手、成績優秀な秋子(上野樹里)は発明の道に踏み出した。
 そんな中、いったんは宝塚音楽学校に入ったものの、本当にやりたいことはパン職人だと気づいたのが冬子。父(岸谷五朗)のもとで修業し、和洋折衷の具材を使ったオリジナルのパンを生み出した。てるてる坊主の形で、4姉妹それぞれの名前を冠したパンとは・・・

  春子のてるてるパン(中身:大福もち)
  夏子のてるてるパン(中身:クリームチーズ) 
  秋子のてるてるパン(中身:さつまいも)
  冬子のてるてるパン(中身:いそべ焼き)

 

 今回挙げた作品以外にも、"食"が舞台として出てくる朝ドラはまだまだある。
 古くは、第12作『藍より青く』(1972年)。18歳で戦争未亡人となったヒロインが戦後を力強く生きて中国料理店を開業する物語。
 最近では・・・ヒロインの父親が大分・湯布院で理想のレストランづくりに乗り出す第73作『風のハルカ』(2005年)。愛知県岡崎市の八丁みその蔵元が舞台となった第74作『純情きらり』(2006年)。そして、実家の横浜・山手のケーキ店でパティシエをめざすヒロインが盛岡の名門旅館で女将修行をする第76作『どんど晴れ』(2007年)などなど。
 あなたの記憶に残る朝ドラの"食"といえば、どの作品の、どんなシーンだろうか。

"食"が舞台の主な『朝ドラ』

年度(作目) 番組名    登場した"食"
1972(12) 藍より青く   中国料理店
1977(20) 風見鶏     パン
1985(34) 澪つくし    しょうゆ
1990(45) 京、ふたり   京漬物
1993(50) かりん     みそ
1996(55) ふたりっ子   豆腐
1998(57) 甘辛しゃん   日本酒
1999(61) あすか     和菓子
2001(65) ほんまもん   精進料理ほか
2003(68) こころ     うなぎ
2003(69) てるてる家族  パン
2005(73) 風のハルカ   地場野菜のレストラン
2006(74) 純情きらり   八丁みそ
2007(76) どんど晴れ   ケーキ


※現在新規コメントは受け付けておりません

みなさんからの投稿

  • 今「ごちそうさん」の総集編見てるんですけど、これも「食」が舞台の朝ドラですね。
    全部おいしそうですよね。HP参考に作らさせてもぅてます(笑)
    牛スジカレーはなんか面倒くさそうで、まだチャレンジしてません・・(笑)

    更紗|投稿日2014年05月06日 10:58

  • 風のハルカをBS2・ハイビジョンでアンコールしてください。

    愛しき友へ|投稿日2011年01月13日 14:52

  • 「どんど晴れ」に出てくるケーキはとても多彩な作品と品がいっぱいでした。ヒロインの前向きにがんばるをもう一度観たいです。「どんど晴れ」再放送して欲しいです。

    スペシャル|投稿日2010年05月24日 14:40

  • 「風のハルカ」を観てすごく感動しました。関西地方では平均視聴率が15.6%でしたが、他の地方では18%以上の高視聴率を記録し、番組終了後に全国から再放送などの要望がありました。是非秋から連続テレビ小説アンコールスペシャルをBS2・ハイビジョンで再放送して下さい。どうか考えて下さい。

    スペシャル|投稿日2010年05月17日 13:18

  • 57作目「甘辛しゃん」の総集編連続4回分を是非再放送して欲しいです。BS2のあなたのアンコールで放送してください。

    s.y.|投稿日2010年02月01日 15:10

  • 「澪つくし」では思わず笑っちゃった場面がありました!
    かをるが惣吉さんを思うあまり、ノートに“惣吉““惣吉”って、惣吉さんの名前をたくさん書くんですけど、当時某コンビ二(セブンイレブン)のCMで、恵子さん(CMの登場人物)が夜中に無性に稲荷寿司を食べたくなっちゃって、ノートに“いなりずし”“いなりずし”ってズラ~っと書き込んでしまうっていうシーンがあったんです。
    これ絶対ジェームス三木がCMを意識して書いたよねぇ~って思いました。
    ジェームスならやりかねない!(笑)

    更紗|投稿日2009年11月14日 09:05

  • 66作の「さくら」(2002年)で、何年も仲違いしていたさくらの母・響子さんと祖父・功さんが、響子さんが功さんの大好物である“茗荷の天ぷら”を作ったことで仲直りするという場面がありました。
    私は“茗荷の天ぷら”って知らなかったんだけど、ためしに揚げてみたらすごくおいしくて、レパートリーのひとつになりました。
    ドラマでは丸ごと揚げたけれど、半分にした方がちゃんと火も通ります(笑)。
    あと、そうだなぁ~、印象に残ってるのは、63作の「オードリー」(春日じゃないよぉ~【笑】)で大竹しのぶさん(主人公の育ての母?)がお遣い物の和菓子を用意するという場面で、「扇屋一心堂(おおぎやいっしんどう)さんの“おかめまんじゅう”を云々」っていうセリフがあったんですよね。
    実物が出たかどうか忘れちゃったけど、「扇屋一心堂のおかめまんじゅう」といえば、「あすか」で登場した和菓子だったから、いい連携じゃん!ナイス脚本!って思いました。

    更紗|投稿日2009年11月13日 20:01