アカイさんノート: 2017/12/25

NHK人物録 渡辺いっけい

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(プロフィール)

1962年生まれ、愛知県出身。大学の学生劇団だった「劇団☆新感線」での活動を経て上京。「状況劇場」に参加。以降、数多くの舞台に参加し、個性的な演技派として注目を集める。NHKでは連続テレビ小説『ひらり』の竜太先生役で好評を博す。以降、『風のハルカ』でヒロインの父親役を好演したほか、『冬の蛍』、大河ドラマ『葵 徳川三代』『いつか見た空』『お見合い放浪記』などに出演。『精霊の守り人 最終章』ではジグロの兄・カグロを熱演した。

 

連続テレビ小説 ひらり(1992)安藤竜太役

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当時、バリバリの舞台役者として活動していたので、実はあまりテレビに出る気がなかったんです(笑)。『ひらり』の時は石田ひかりさんの相手役でNHKのスタッフさんから事務所にお声がけいただき、オーディションに参加することになりました。ですから僕自身は受かるつもりがなく、気軽にやったんですよね。それが良かったのか、予想に反して選考に残り、ついに決まりそうだということになって…。すでに舞台出演が決まっていたこともあり、大きな役になるとマズイと思ったので「僕は朝の顔じゃないと思う」と生意気なことを言いました。そうしたらスタッフさんが「今回は朝の顔ではないかもしれない渡辺さんをあえて起用したいんです」とおっしゃった。それを聞いて「面白い人たちだな」と僕自身、姿勢が変わりました。決まっていた舞台を断り、演劇の世界にはもう戻れないかもしれないと覚悟してお引き受けすることにしたんです。

ryotaisi.PNG竜太は両国診療所の医師として力士たちの健康を預かる

ryotatohikari.jpg相撲が大好きなヒロイン・ひらり(石田ひかり)

 

当時、チーフ監督をされていたのが富沢正幸さん。とてもステキな方で、テレビでのお芝居が不慣れな僕にていねいにレクチャーしてくださいました。「一緒に見ようよ」と撮影したばかりの演技をモニターで見ながら、「君の顔は目が大きいだろう。ちょっと横にずらすだけでギロリと鋭い。今ここで欲しいのは、ふっと見る視線。だから目を少し動かすだけにするといいんじゃないかな」とアドバイスしてくださったことも。実際にそれに従って演じてみると、おっしゃった通りのお芝居になっていて、本当に勉強になりました。

ryotaminori.PNGひらりの姉・みのり(鍵本景子)は竜太に思いを寄せるが…

そんな素晴らしい経験を経て、テレビの仕事も魅力的だということに気づき、『ひらり』が終わった後は伝道師のようになりました(笑)。「テレビの世界にも本気で面白いものを作ろうとしている人が絶対にいるから、あんまり偏見を持たない方がいいと思う」と舞台の仲間たちに言いましたね。今は舞台で活躍している俳優さんたちも、垣根なくテレビで個性を発揮している方が多くいらっしゃる。僕らの時代とは違うな〜と思いますね。

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金曜時代劇 宝引の辰捕者帳(1995)能坂要役

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主役の宝引の辰を演じた小林薫さんは「状況劇場」の大先輩。僕が所属していたころにはお辞めになっていたので面識はありませんでしたが、一度、当時僕が住んでいた神田川沿いのぼろアパートの近くですれ違ったことがあったんですよ。そのときは「ごあいさつしたいけれど、するもんじゃないよな…」と考えているうちに通り過ぎてしまいました。それが、『宝引の辰』で薫さんと共演できるなんて! 声をかけることもはばかられたのに、共演者としてプライベートなお話をできるようになれたことが単純にしみじみとうれしかったことを覚えています。

dousintotatu2s.PNG同心の能坂と岡っ引きの辰(小林薫)が江戸を騒がす事件に挑む

今はなくなってしまった金曜時代劇の枠ですが、大河ドラマとは違い、市井の人に照準を合わせた時代劇っていいなと思います。僕自身は時代劇は得意ではないけれど、スタッフ、役者が一緒になって作るチームプレイのような印象。そんななかで出会ったのが、今回『精霊の守り人』でもお世話になっている片岡敬司監督でした。当時は3番手の監督でしたが、スタイリッシュな演出と新鮮なアプローチで、最初の出会いをいまだに覚えています。

dousin1s.PNGtatu1s.PNGtetugorouto.PNG辰の父で先代岡っ引きの鉄五郎(小林桂樹)と捜査をすることも…

 

 

 

大河ドラマ 葵 徳川三代(2000)本多正純役

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『葵 徳川三代』はいわゆる大河ドラマの王道を行くような作品でした。大御所から舞台役者さん、映画スターまでそうそうたる顔ぶれがそろっていましたね。僕が出演したのは二代将軍・秀忠(西田敏行)の時代までなので、ドラマのおよそ3分の2ほど。長丁場の現場でしたが、特に印象に残っているのは家康を演じられた津川雅彦さんとの共演です。小劇場だけで活動していたら絶対に出会えなかった大スターで、僕が生まれる前からずっと第一線で活躍してこられた方なので、この貴重な機会を絶対自分の財産にしたいと思ったんですよね。

tugawaieyasuto.PNG家康(津川雅彦)の側近として大坂・夏の陣へ

ieyasutols.PNG迫る真田軍に家康は死を覚悟する

 

津川さんとの共演は思っていた以上にすばらしい経験でした。側でお芝居していると想像もつかないようなアプローチの仕方に出会う瞬間があり、とても勉強になりました。

でも第一印象で津川さんのことを「怖いな」と、実は思っていたんです。ですから、自分からはなかなか声がかけられずにいました。ところが津川さんご自身は垣根のない方で、自分が面白いと思ったら近づいてこられる。クランクイン後、1か月ほどしたころに「いっけいちゃんはさ、どういうところでお芝居してきたの?」と話しかけてくださり、一気にこちらの緊張も解けたことを覚えています。いまでも交流があり、かわいがっていただいているんですよ。

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連続テレビ小説 風のハルカ(2005)水野陽介役

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『ひらり』以来の“朝ドラ”出演でした。脚本が以前、『きみはペット』でお世話になった大森美香さんで、プロデューサーは『宝引の辰』の監督だった片岡敬司さん。そんなご縁もあってお引き受けし、思い出深い作品になりました。『風のハルカ』は大阪制作の朝ドラだったので、撮影の時は大阪で泊まりになることが多く、必然的に共演者やスタッフと食事に行ったり一緒に時間を過ごしていたんです。そうすると自然に仲良くなり、いつの間にかファミリー感が出る。そんな風に時間を重ねていき、父親役だったこともあって最後にはもう仕事ではなくなった作品ですね。いまだにヒロインを演じた村川絵梨ちゃんやその妹役だった黒川芽以ちゃんとは連絡を取っているし、チームで集まったりもしています。

yousukewarai.PNG陽介の夢は緑豊かな大分・湯布院でレストランを開くこと

harukawarai.PNGハルカ(村川絵梨)は陽介の夢を応援する

ryokanyosinoto.PNG老舗旅館の女将・百江(木村佳乃)は陽介の漬物を絶賛!

 

また大森さんや片岡さんはクリエイターとして尊敬していますし、僕にとって生涯付き合っていける同士のような存在になりました。作品の話はもちろん、垣根なしでいろんな相談ができる人たちで、思い入れがありすぎて語れないほど。そんな方々と出会えた『風のハルカ』はとても幸せな作品だったと思います。

restrantmiageru.PNG地元の野菜料理が名物の陽介のレストランは評判に…

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大河ファンタジー 精霊の守り人 最終章(2017)カグロ役

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『精霊の守り人』はジグロとバルサを中心としたお話ですよね。そのなかで、カグロは鍵を握る役どころだったので、責任の重圧があって台本をもらったときに震えました。そんな役を僕に任せていただけて、とても感謝しています。

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吉川晃司さんが演じたジグロとの槍舞のシーンは、アクションコーディネーターの方とパフォーマンスの方が『精霊の守り人』の世界観を作るために呼ばれていました。役者が動く前にかなりの時間を割いてどうやって槍舞を表現するのか、ミーティングを重ねていらっしゃったのだとか。そうしてできあがった動きを教えていただきながら、何か月もかけて立ち回りの練習をしました。

jigurotokaguro.PNGカンバル王の命令により弟・ジグロ(吉川晃司)と戦う

 

リハーサルを入念に重ねて挑んだ本番は、吉川さんのスピードについていくのがやっと。吉川さんはいい意味でアーティストなので、クイッと本番モードに入るととてつもない集中力なんですよね。綾瀬はるかさんから「吉川さん、半端ないですから気をつけてください。何度棒が折れたことか…」と聞いていたのですが、本当にヘトヘト、フラフラになりました。吉川さんはさすが世界ジュニア水球選手権大会の日本代表だっただけあって、体力の差が歴然(笑)。僕としては役者として演じきれていない部分があると感じていますが、ジグロが戦いながら教えるという場面なので必死について行く設定で助かりました。そういう計算じゃないところまで追い詰められることってなかなかないので、必死に演じました。

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また、バルサとの立ち回りは不思議とストレスが全くなく、集中できました。本来なら、女優さんの顔のすぐ側を槍で突く立ち回りなんて本当に怖いのですが、実際にやってみると波長が合うのか気持ちよく動けて、最終的には楽しかったんです。

barusaniramu.PNGジグロに育てられたバルサ(綾瀬はるか)は短槍使いの用心棒

 

内容はハードなドラマですが、舞台裏はドラマの世界観とは全く違って和やか。一緒に苦労している分、笑いが絶えない現場でしたね。また、CGを含めた完成形を見て、これは後に残るお仕事だったと改めて思いました。そして最後にひとつ、人物デザイン監修の柘植伊佐夫さんに感謝しているのがヒゲ。ヒゲの形にしたものをのりでペタッと貼るのが普通なのですが、今回は少しずつ束にしたものを付けてハサミでカットしていきました。時間はかかりましたが自前のヒゲに見えるので、役作りにも一役買ってくれましたし、そのこだわりに“精霊チーム”の本気度を感じることができました。

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