アカイさんノート: 2017/12/25

NHK人物録 東出昌大

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(プロフィール)

1988年生まれ。埼玉県出身。2012年映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビュー。主な出演作に、ドラマ『問題のあるレストラン』『あなたのことはそれほど』、舞台『夜想曲集』、映画『GONINサーガ』『聖の青春』『関ヶ原』など。NHKでは連続テレビ小説『あまちゃん』『ごちそうさん』、大河ドラマ『花燃ゆ』、新春スペシャルドラマ『富士ファミリー2017』など。2016年放送開始の大河ファンタジー『精霊の守り人』シリーズにタンダ役で出演。

 

 

連続テレビ小説 あまちゃん(2013) 若き日の大吉役

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 “朝ドラ”への出演が決まったとき、それほど気負いはありませんでした。ただ、ここから本当にキャリアが始まるんだ、その第一歩を踏み出すんだということは実感できました。まだそれほどドラマや映画を経験していたわけではなく、完成した台本を読む機会も少なかったころです。ところが『あまちゃん』の台本を読んだとき、腹を抱えて笑ったことを覚えています。こんなに面白い台本があるのかと思い、その世界に身を投じられることが大変うれしかったです。

haruko1s.PNG歌手を夢見る春子(有村架純)は大吉に自分の歌の入ったテープを渡す

daikiti1s.PNGharukodaikiti.PNG春子は東京へ行こうとしていた…

 地方ロケに行かせていただくことも初めてでした。北三陸鉄道の開通式のシーンを撮るときには、現場にスタッフ、キャストさらにエキストラも含めて大勢の方々がいらっしゃって、撮影規模のすごさを痛感しました。また、ロケでは台本を読んだときから気になっていた“まめぶ汁”も食べることができました。「なんとも形容しがたい」とあったように、たしかに美味しいのか美味しくないのかわからない味(笑)。そこも台本通りで面白かったですね。役者としての第一歩どころか八歩くらい(笑)、踏み出せた作品でした。

tapecut.PNGsanrikutetudousyasyou.PNG北三陸鉄道開通の日、大吉は二十歳

 

 

 

連続テレビ小説 ごちそうさん(2013)西門悠太郎役

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『あまちゃん』を撮っているころに、『ごちそうさん』の出演が決まりました。セリフが関西弁というのも、大阪に泊まり込みで毎日みっちり撮影するというのも初めてのことで、素晴らしい経験をさせていただきました。ただ、さすがにものすごくきつい仕事でした。撮影終盤のころにはメインキャストが口を揃えて「もう一回、朝ドラやるのは無理!」と言ったほど(笑)。でも、終わってみたら本当にいい思い出になりました。出演者はみな一癖も二癖もある役でしたが、とても温かい人たちばかり。大変ではあったけれどストレスのない10か月でもあったんです。

yutaroumeiko.PNG悠太郎のために最高のおむすびを作ろうと研究するめ以子(杏)

kasenjiki2s.jpgめ以子は見合いの席を飛び出し、悠太郎のボート競争の応援に…

僕自身もこれほど長くひとつの役に携わることもなかなかないことで、別の人間の人生を過ごすことができたと胸を張って言えます。素晴らしい経験であり、かけがえのない時間となりました。その分、僕の中で『ごちそうさん』の存在が大き過ぎることもあり、実は今でもなかなか見返すことができません。

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大河ドラマ 花燃ゆ(2015)久坂玄瑞役

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大河ドラマへの出演ということで「兜(かぶと)の緒を締める」ではないですけど、「やってやるぞ」と思って飛び込んだ現場でした。史実ものをやるということの難しさを抱えながらも、みんなが情熱を持って心血を注ぐことができた作品だったと思います。

gennsuisinsaku.jpg久坂玄瑞と高杉晋作(高良健吾)は“松下村塾の四天王”に数えられる俊才

前半は、吉田松陰の松下村塾が舞台になりましたが、元々の成り立ちからして今では考えられないくらい男くさい世界(笑)。だから僕らもみんな目をぎらつかせていましたね。萩にはロケでも行きましたが、その前から役作りに取り組んで訪れた人もいて、国を憂う気持ちをみんなが一様に持ってお芝居をしていたような気がします。その中でも久坂玄瑞はとくに進んだ思想の持ち主ではありましたが、みんなが心の奥底で思っていたのが「世のため、人のため」ということでした。決して自分のためではない。それは維新側だけでなく幕府側も同じでした。明治維新にならなかったら、テロリストのようになりかねないのですが、全員が「人のため」という純粋な気持ちを持っていたからこそドラマになるんだということに気づかされました。

gensuiaya.jpg久坂玄瑞は松陰の妹・文(井上真央)と結婚

物語は、杉文が主人公ということもあって女性の影響も多大に受けていました。久坂と文さんのエピソードなど、ドラマでは描ききれなかった部分もあるので、そこは史実も併せて勉強しながら見ていただくと、それはそれで面白いのではないかと思います。歴史好きなので大河ドラマ出演はうれしかったのですが、もし機会があれば大好きな戦国時代の人物を演じてみたいと思っています。それに、幕末の人物はその容姿などが写真で残っていたりして、身長の高い僕がそうではない人物を演じるとなると「こんなはずがない」とジレンマを感じてしまいそう(笑)。その点、戦国時代のほうが大きく嘘をつけそうです。

kinmonnohen.jpg禁門の変 久坂は2万の幕府軍に対し挙兵するが…

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新春スペシャルドラマ 富士ファミリー2017  ぷりお(黒松平蔵)役

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前作を見ていたこともあり、『富士ファミリー』という出来上がった世界観の中に入っていくことに、プレッシャーはありました。ところがいざ現場に来てみたら、すごく温かい空気の中でみなさんが撮影していらっしゃったので馴染むのも早かったです。僕が演じたぷりおが抱えていた問題は、広い見方をすればよくある話だとも思いました。助手をつとめていた大学の教授による論文データの改ざんという設定は特殊かも知れませんが、自分一人が頑張っても報われないことというのは、たぶん誰しも経験したことがあるような気がします。裏切りという言葉でくくってしまっていいのかわかりませんが、自分を責める気持ちもわかるし、ぷりおの悩みはうなずけるものがありました。

purio1s.PNG“ぷりお”はコンビニ「富士ファミリー」のアルバイト店員

 

共演者では、やはり笑子バアさんを演じられた片桐はいりさんの役者魂に圧倒されました。空き時間でも役以外のよけいな感情を入れないようにと、ずっと笑子バアさんで接してくださったんです。腰も曲げたままでいらっしゃっしたから、肉体的にもとてもきついことだと推測はしていました。作家の羽田圭介さんも新米ユーレイ役で出演されていました。お芝居は初挑戦とのことでしたが、とても素敵な演技をなさっていましたね。とにかくみなさんキラキラしていて、木皿作品に出ている方は素敵な人しかいないんだなと、ほれぼれするような現場でした。

syoukobasan.PNG笑子バアさん(片桐はいり)

naheda1s.PNG作家・羽田圭介が新入りユーレイ“テッシン”役でドラマデビュー

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ぴかぴかに炊けたご飯がきれいだとか、富士山を見ながら好きなときにおにぎりを食べられる幸せ、年末年始の忙しさもあるけれど仕事ができる幸せ、みんなと働ける幸せ…。このドラマは、そんな普遍的なことだけれど、つい忘れてしまうような幸せを伝えてくれていたような気がします。みんなの気持ちも表情も晴れ晴れとしていて、本当に素晴らしい作品に出演させていただきました。

katayamakyojyu.PNG店を訪ねてきたのはデータ改ざんをした教授・片山(萩原聖人)

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大河ファンタジー 精霊の守り人(2016-2018)タンダ役

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原作を読ませていただいていたので、これほどスケールの大きな作品がドラマ化されることに驚きました。撮影の年月や規模がそれに見合うだけのものだと事前にうかがい、クランクインするのがすごく楽しみでした。実際、なかなか行けないような場所へ連れて行っていただいて、“場の力”をもらいながら撮影するという貴重な体験もできました。

barusatanda2s.PNG用心棒・バルサ(綾瀬はるか)にとってタンダは心許せる幼なじみ

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第3シーズンで壮大なドラマが完結しますが、バルサの強さも圧巻でした。武芸だけでなく人間としての強さ、それは演じた綾瀬(はるか)さん自身が持っていらっしゃるものだったので、本当に尊敬できたしカッコ良かったです。これまでなかなか自分を出していないようにみえたタンダは、より人間的になっているところも見られるので、そこも楽しんでいただけたらいいですね。

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タンダは、僕がこれまでに出演した作品の中でも、一番こういう人間になりたいと憧れる人物でした。自分よりも人のことを大事に考え、誰よりも我慢強い。人間としてこうあるべきだと決めたことの芯がぶれることがない。それは原作の上橋(菜穂子)さんが考えられたタンダで、僕はそのキャラクターを演じさせていただいただけですが、本当に素敵な人物だったと思います。仕事を通して役の影響を受けることがたぶんにあり、タンダのような男になりたいという憧れは、日常の僕自身を成長させていただくことにもなっているような気もします。だから、自分の身の丈よりも大きい役をやらせていただけるのは素晴らしい経験だと、いつもワクワクしています。

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