アカイさんノート: 2017/12/18

NHK人物録 北村有起哉

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(プロフィール)

1974年生まれ、東京都出身。98年、舞台『春のめざめ』、映画『カンゾー先生』でデビュー。主な出演作にドラマ『怪盗 山猫』『視覚探偵 日暮旅人』、映画『長州ファイブ』『「桜田門外ノ変』など。NHKでは『ジャッジ』『刑事の現場』『君たちに明日はない』『ちかえもん』『千住クレイジーボーイズ』、大河ドラマ『義経』『江 姫たちの戦国』『八重の桜』などに出演。連続テレビ小説初出演となる『わろてんか』では落語家役に挑戦。

 

大河ドラマ 義経(2005)五足役

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 30歳、初大河でした。大河ドラマは役者なら誰もが目標にしていますから、僕の中でも出演が決まった瞬間は「よし!」という感じがありました。演じる役は平家か源氏かとドキドキワクワクしていたら「誰これ?」という第一印象だったことを覚えています(笑)。

 僕が演じた五足(ごたり)は京の町で暮らす孤児。お徳(白石加代子)に拾われて、後に平清盛(渡哲也)の“耳役”になります。周囲には白石さん、梅津栄さんらがいらしてとても心強かったですね。白石さんには神木隆之介くん演じる牛若(のちの義経)ら5,6人の子役とたき火をしているシーンで、僕が子どもたちを自由にさせようと盛り上げていたのを褒めてくださって。「そういう導き方、いいわよ」とわざわざ言っていただけたのがすごくうれしかったです。

gotaritousiwaka.PNG火事や干ばつで荒れた京の町を歩く五足と牛若(神木隆之介)

gotaritokiyomori.PNG五足は清盛(渡哲也)に情報を提供する「耳役」となる

また、清盛を演じられた渡哲也さんと特殊な関係の役でご一緒できたこと、そして五足という奇妙な人間を作っていけたことは、いま思えばすごい経験で、衝撃的な大河デビューだったと思います。五足役で忘れられないのが衣裳。平安時代の貴族たちのきらびやかな装束の中で、かなり汚しがかかっていたんですよ。ほかの人たちの衣裳は畳んであったり、つるされたりしていたのですが、僕の衣裳は45リットルのゴミ袋にくちゃくちゃに丸められて入っていたのが今でも思い出されます。それくらい汚かった(笑)。袋をポーンと投げてもらって自分で着替えていました。誰よりも汚く、アバンギャルドでしたね(笑)。

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大河ドラマ 江 姫たちの戦国(2011)豊臣秀次役

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秀次については勉強不足で、演じるまでどんな人だったのかあまり知りませんでした。『江』では田渕久美子さんが今までないスポットの当て方をしてくださったそうで、ある種、人間味のある気の毒な人として輪郭が浮かび上がってきました。ですから、プレッシャーから酒に溺れたり、羽目を外したりするシーンは同じ人として親近感を抱いてもらえるよう意識して演じました。亡くなるときにはいつの間にか「秀次さんは本当にかわいそうだったんだ」という思いに僕もなっていました。

nekorobuhidetugu.PNG秀次は豊臣秀吉の実の甥

江(上野樹里)の夫で弟の秀勝(AKIRA)とは共演シーンも多かったですね。彼は初めての大河ドラマにとても緊張していたので、どうにかほぐしてあげたいと思って、実はあるシーンで彼の所属するEXILE(エグザイル)のヒット曲『Choo Choo TRAIN』の振り付けを盛り込んだりしました(笑)。あまり露骨にはやりませんでしたけど、酔っ払うシーンで僕の真うしろにAKIRAさんが来たタイミングを見計らって「オレに続け!」とばかりにグルグルと…。AKIRAさんは心配していたけれど、本番OKが出ました。もうちょっとハッキリやれば良かったかなぁ (笑)。

gou1s.PNGakirahidekatu.PNG江(上野樹里)の夫・秀勝(AKIRA)は秀次の弟

choochoo.PNG酔った秀次が秀勝の前で“Choo Choo Train”?!

そんな秀次役ですが、自暴自棄になっていた時代は本当に“バカ殿様”みたいだと言われたりもしたんですよ。でも2016年に放送された大河ドラマ『真田丸』で同じ秀次を演じた新納慎也くんが、脚本の三谷幸喜さんから「(演じる前に)北村くんの秀次だけは見ておいてくれ」と言われたようで。『真田丸』で描かれた秀次は『江』の秀次と同じ方向性だったんですね。

sanadadehidetugu.jpg2016年『真田丸』の秀次(新納慎也)

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『真田丸』の放送を見せていただいたら、僕のなかにまだ秀次が残っていたのか、感情移入してしまいました。結末が分かっているのに「なんとか踏ん張れ!」と思っていましたし、もう心が折れるという瞬間も「目をそらしちゃだめだ〜」って。そういう意味ではいいお客さんだったと思います。

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木曜時代劇 ちかえもん(2016)竹本義太夫役

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竹本義太夫というと、恰幅が良くてぷっくりしたイメージがあったので、なぜ僕にこの役が来たのだろうと思いました。撮影に向けた準備が進むうちに、だんだんと焦りが出てきて、お引き受けしたことを後悔するような気持ちになっていきました。というのも、三味線は竹澤團七師匠が弾かれますし、人形を遣うのは桐竹勘十郎師匠。あれ?偽物は僕だけじゃないのということに気づいてしまって(苦笑)。人形浄瑠璃が好きなわけでも詳しいわけでもなく、演ってみなければ分からないと思っていたら、本当に難しかった。いずれは人間国宝になるような方たちと共演させていただくのだから、半端なことはできないと覚悟し、根を詰めて役に取り組みました。おかげでひとつの自信にはなりましたね。また、父親(俳優・北村和夫)譲りの太くて低い声には助けられました。声の質だけは生まれ持ったものですから、それを存分に利用しない手はないでしょう。父親には感謝ですね。

doutonbori1s.PNG道頓堀竹本座の最近の客の入りはさっぱりで…

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この作品はありがたいことにたくさんの賞をいただき、その度にみんなで祝杯を挙げていました。そのとき後日談で聞いたのですが、最終回で流れた義太夫の語りについて富司純子さんが「これは切ったらあきまへんで」とおっしゃってくださったそうです。それには鳥肌が立ちました。

実はこのシーンの撮影は京都の松竹撮影所で行われたのですが、なぜか東映の人たちも見学に来ていて、大勢に囲まれ異様な空気でした。僕には舞台経験もありますし、そういう場に立ったときに萎縮するのではなく、気合いが入るタイプだったこともあり、「いい所をみんなに見せてやろう」と挑んだことを覚えています。本当に大変な思いもしましたが、思い出深い作品になりました。

mannkititotika.PNG万吉(青木崇高)と近松門左衛門(松尾スズキ)

kirito.PNG近松の母・喜里(富司純子)

 

 

東京・足立区発ドラマ 千住クレイジーボーイズ(2017)野町巧馬役

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実はもともと北千住は大好きな街でした。僕の中では赤羽と蒲田に並ぶ三代聖地! 商店街が充実していて、飲み屋さんやお総菜屋さんがたくさんある。撮影は1週間ほどでしたが、毎日何をしに行っているんだろうと思うくらい、街そのものを楽しんでいました。

boysgs.PNG僕が演じた野町にはモデルになった方がいて、写真で見せていただいたですが、すごいムキムキのマッチョでした。二の腕を見せて「これがこの街の抑止力です」というくらい迫力のある方とのこと。僕自身とはかけ離れたキャラクターだったので、割り切って楽しくお芝居ができました。役は自分と遠ければ遠いほど素直にお芝居できちゃうんですよね。これがもし、僕自身に野町みたいな過去があったら、かえって恥ずかしくなってしまうかもしれませんね。

nomati1s.PNG理髪店を営む野町は町の若手のまとめ役

撮影はロケで行われたので、共演者とはいろいろと雑談もしました。そんななかで、シングルマザーで一児の母を演じていた比嘉愛未さんが、ストレスを爆発させてしまうシーンがあったんですよ。夜になり寒さが増す中でシビアなお芝居に気持ちを集中させようとしていましたが、子役さんと一緒の空間では大変だろうなと思ったことを覚えています。

nobara1s.PNGのばら(比嘉愛未)は娘のいちごを懸命に育てるシングルマザー

nobaratomusume.PNG人情の町・北千住を舞台にしたヒューマンコメディー

 

 

連続テレビ小説 わろてんか(2017)月の井団真役

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『わろてんか』の団真(だんしん)は『ちかえもん』に続いて、古典芸能を仕事にしている人物の役。もともと関西弁に苦手意識があるのも手伝って、実はお引き受けするのに躊躇(ちゅうちょ)したんです。しかも、喜楽亭文鳥役を演じられた笹野高史さんのインタビュー記事を読んだら、いつもは来た役をほとんど断らない笹野さんが今回に限っては少し寝かせたと書かれていたんです。笹野さんでもそうなんだと思いました。

dansin1s.PNG今回『わろてんか』で団真が披露した「崇徳院」はちゃんとやれば30分もかかるという大ネタ。ですから、どこを切り取るのかを絞ってもらうというのがお引き受けする大前提でした。そこを決めていただければ間に合うかなと思い、何とか演じさせていただくことができました。

suutokuinhirou.PNG落語「崇徳院」を披露

tentotoukiti.PNGてん(葵わかな)と藤吉(松坂桃李)

団真役は落語だけでなく、男女の惚れた腫れたのストーリーがあったり、屈折した男を演じる面白味がありました。ただ、台本のまま素直に演じると湿っぽくなってしまうかなと思い、僕なりの解釈で役作りをさせていただきました。僕が演じるなら、こっちの方がリアルで“すとん”と腑に落ちる。そういう役作りもとても楽しかったです。

tumaoyuu.PNG妻のお夕(中村ゆり)は団真の才能を信じ、つくす