アカイさんノート: 2009/09/18

大河が描いた歴代"関ヶ原"

 現在放送中の『天地人』後半のクライマックスが、9月20日(日)放送「ふたつの関ヶ原」で描かれる天下分け目の関ヶ原合戦だ。主人公・直江兼続の盟友・石田三成率いる西軍と徳川家康率いる東軍が激突する関ヶ原の戦い。そして、もう一つの"関ヶ原"として東北の長谷堂を中心とする兼続ら上杉勢の戦いが描かれる。

『天地人』では、三成と兼続という西軍側の視点に立った関ヶ原だが、過去の大河ドラマはどんな描き方をしてきたのだろうか。それぞれの関ヶ原を振り返ってみよう。

政宗側から見た"東北版"関ヶ原

『天地人』で兼続が戦う出羽の最上義光。この最上勢に援軍を送ったのが伊達政宗だ。

 

『独眼竜政宗』政宗(渡辺謙) 
 

三成(奥田瑛二)


 大河ドラマ第25作『独眼竜政宗』(1987年)では、政宗(渡辺謙)が最上につくか、上杉につくかで苦悩する場面が描かれた。最上につくということは家康(津川雅彦)の東軍に味方することであり、上杉につけば西軍を表明することになる。これは東北諸藩の大名にとってはその後の命運を決する重大な選択だったからだ。
 『独眼竜政宗』では、政宗が家康にあえてさからい、100万石の領土を保証するというお墨付きをせしめたうえで、最上勢が苦戦する長谷堂城に援軍を出すことを決意。さらに、この機会に領土の拡大までもくろむという、政宗の大胆な狙いまで描かれた。


小早川秀秋の家臣から見た関ヶ原

 関ヶ原の戦いは、西軍の小早川秀秋の寝返りによって、東軍の大勝利となったことはよく知られている。

 この秀秋の家臣の立場から関ヶ原を描いたのが第27作『春日局』(1989年)だ。

 

『春日局』家康(丹波哲郎)
 

『春日局』夫・正成(右・山下真司)


 『春日局』の主人公・おふく(大原麗子)の夫が、秀秋の家臣・稲葉正成(山下真司)だった。関ヶ原に出陣した秀秋の家臣団は、西軍と行動を共にしつつも、家康(丹波哲郎)につくべきとする者と、三成(伊武雅刀)につくべきとする者とに二分されていた。正成は家康に内応すべきと考えていた。そしていよいよ関ヶ原の戦いの火ぶたが切られた。

 ドラマでは、互角の戦いが続き、勝敗の行方が混とんとする中、三成方から秀秋に出陣を促す合図ののろしが上がる。そこで思わず出陣しようとする秀秋を、正成は身をていして止める。続けて、今度は家康がいつまでも態度を決めない秀秋に苛立ち、秀秋の陣に向けて発砲してきた。驚き、うろたえる秀秋。そのすきに正成が強引に出陣命令を出した。それを見て西軍から東軍に寝返る武将が相次ぎ、西軍は大崩れとなった。

 『天地人』をはじめ、関ヶ原合戦が登場した大河ドラマには必ずといっていいほど、小早川秀秋の迷いやおびえるシーンが見られた。しかし、『春日局』では、家臣の視点で秀秋の寝返りを描くという珍しい展開となった。


名もなき兵が見た関ヶ原

 東軍の家康、西軍の三成、どちらも登場せず、合戦シーンもない。そんな関ヶ原が描かれたのが第42作『武蔵 MUSASHI』(2003年)だ。

 

『武蔵 MUSASHI』武蔵(市川新之助) 
 

『武蔵 MUSASHI』


 第1回放送の冒頭のシーン。夕刻の関ヶ原、すでに東西両軍の激戦は東軍の圧勝に終わっていた。周囲には折り重なるような遺体の山...。そこで気を失っていた武蔵が意識を取り戻すという寒々としたシーンだった。
 敵将の首を取り一旗上げようともくろんで、西軍の宇喜多田秀家軍について戦った武蔵(市川新之助/現・市川海老蔵)。ところが敗残兵となり、落人狩りから必死に逃亡するという情けない結果に終わってしまった。のちの剣豪武蔵の若き日の出来事だ。

 関ヶ原の戦いといえば戦国武将の姿しか思い浮かべることがなかったが、功名を立てるため、貧しい武士や農民が参戦していたことをこのドラマが教えてくれた。

武将の妻が活躍した関ヶ原

 内助の功で名高い山内一豊の妻・千代が、関ヶ原に一役買ったエピソードを描いたのが第45作『功名が辻』(2006年)だ。

 

『功名が辻』家康(西田敏行) 
 

『功名が辻』『功名が辻』一豊(上川隆也)と三成(中村橋之助)


 山内一豊(上川隆也)は、家康(西田敏行)に味方して東軍につくことを表明。自らの居城・掛川城から知行地、家来たちの屋敷や長屋までも家康に差し出して、家康を驚かせた。そんな一豊を見て他の諸大名も争うように城の明け渡しを申し入れる結果となる。この発言と働きが評価され、関ヶ原後、一豊は土佐一国二十四万石の領主の座につくことになった。

 実は、その影に千代(仲間由紀恵)の内助の功があった。関ヶ原直前、京にいた千代は、挙兵を告げる三成(中村橋之助)の書状と、自分の手紙を一豊に送った。そして2通とも封印したまま家康に渡すよう言付けた。一豊は千代の助言通り、封をしたままの書状を家康に渡し、その律儀さ、誠実さに家康が深く感動。それは他の諸将の心まで動かし、迷っていた彼らも家康につくことになったのだ。

 これぞ、戦場ではない場所で戦った千代の、関ヶ原の勝利といえそうだ。

主役・家康視点でじっくり描いた関ヶ原

 過去の大河ドラマで家康側の視点に立った関ヶ原といえば、第21作『徳川家康』(1983年)、そして第39作『葵 徳川三代』(2000年)だ。

 

『葵 徳川三代』家康(津川雅彦)
 

『葵 徳川三代』三成(江守徹)


 このうち、関ヶ原に至るまでの過程を9回、約2か月かけてじっくりと描いたのが『葵 徳川三代』だ。三成(江守徹)が挙兵を企てるところから、家康(津川雅彦)の上杉討伐、戦いの全貌、そして三成処刑までの出来事をつぶさに描写した。ことに関ヶ原で両軍が激突するまでの各地の交戦状況などもわかりやすく解説して好評だった。

 さすがに天下分け目の大戦、関ヶ原合戦は立場を変えただけで、まったく違う顔を見せてくれる。まだまだ、知らないことがたくさんありそうだ。
 再来年(2011年)の大河ドラマ第50作『江~姫たちの戦国~』では、どんな関ヶ原になるのか、今から楽しみだ。


関ヶ原を描いた大河ドラマ一覧

放送年(作目) 番組名      家康/三成を演じた人
1971年(9)  春の坂道      山村聡/中村敦夫
1978年(16) 黄金の日日    児玉清/近藤正臣
1981年(19) おんな太閤記  フランキー堺/宅麻伸
1983年(21) 徳川家康     滝田栄/鹿賀丈史
1987年(25) 独眼竜政宗    津川雅彦/奥田瑛二
1989年(27) 春日局       丹波哲郎/伊武雅刀
2000年(39) 葵 徳川三代  津川雅彦/江守徹
2002年(41) 利家とまつ~加賀百万石物語~  高嶋政宏/原田龍二
2003年(42) 武蔵 MUSASHI (登場せず)
2006年(45) 功名が辻     西田敏行/中村橋之助
2009年(48) 天地人       松方弘樹/小栗旬

                                    (2009年9月18日 記)



『天地人』 ふたつの関ヶ原 三成(左・小栗旬)  
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