アカイさんノート: 2009/09/04

『大河ドラマ』の歴代"秀吉"

『天地人』

 2009年大河ドラマ『天地人』の豊臣秀吉が、8月30日の放送でこの世を去った。『天地人』では、主人公の直江兼続(妻夫木聡)の視点で、人間味あふれる天下人・秀吉(笹野高史)の姿が魅力たっぷりに描かれた。
 大河ドラマは『天地人』で48作目になるが、そのうち秀吉が登場したのは15作品。平均して3年に1度、秀吉が顔を見せていることになる。
 作品ごとにテーマが異なるため描き方も千差万別。しかし、日本史上最大のサクセスストーリーを実現した英雄・秀吉の人気は高い。そこで今回は、過去の大河で、秀吉を誰がどう演じたのか。エピソードとともに紹介しよう。

主役は2作品 緒形『太閤記』と竹中『秀吉』

 大河ドラマに初めて秀吉が登場したのは、1965(昭和40)年の第3作『太閤記』。まさに秀吉の生涯を描いた物語で、子役が演じる"日吉"時代からスタート。その後、青年期から晩年まで演じた緒形拳は、この作品で秀吉同様、一躍スターダムにのし上がった。


『太閤記』


『太閤記』


 なお、緒形拳は、13年後に第16作『黄金の日日』で、2度目の秀吉を演じている。ただし、『黄金の日日』では打って変わって、堺の商人を糾弾する悪役としての秀吉を熱演。この時、信長は『太閤記』に引き続き高橋幸治が演じ、コンビの復活も話題になった。
 

『黄金の日日』では悪役の秀吉に


 『太閤記』から31年。次に秀吉その人が主人公になったのは、1996(平成8)年の第35作、その名もずばり『秀吉』。ここでは、"日吉"の時代から主演の竹中直人が演じた。第1回の放送で、真っ黒に日焼けしたふんどし姿の日吉が泥大根をかじるシーンが鮮烈な印象を与えた。

『秀吉』


『秀吉』


見た目でなり切る

 秀吉は、脇役でも重要な役どころ。個性派俳優たちが、それぞれに秀吉に対する思いやこだわりをもって演じてきた。

 第27作『春日局』(1989年)で秀吉を演じた藤岡琢也は、役が決まったとき「本当にうれしかったですね。俳優になって32年、その総決算のつもりで自分をこの大役の中に全部投げ込んでみようと思ったんです」とまで話している。
 

『春日局』
 

『春日局』


 藤岡は役作りを考えるうえで「新書太閤記」(吉川英治著)全8巻を読み直してみたそうだ。そこで外観をそれらしく見せる手がかりとなったのが、「藤吉郎が赤毛だ」という描写だった。幼少年期、貧しかったために栄養のバランスがよくなかったからではないか。それならきれいな直毛であるはずもない。そんな推理の末に、チリヂリに縮れた赤毛のかつらを作ってもらい、それによってのりにのって演じられたという。

 第45作『功名が辻』(2006年)の秀吉役・柄本明がこだわったのはメーキャップだった。メイクで秀吉のサル顔に近づけたいとスタッフに希望したのだ。

『功名が辻』
 


『功名が辻』


 若いころは、おでこからほおにかけてハート型の赤みを入れ、丸く大きな弧を描く眉でサル顔を強調。出世とともに日焼けを表す赤みは抑えめなったが、今度は鼻の下の"人中"と呼ばれる部位に縦の黒い線を薄く入れるようになった。全体の印象がぼけてくるので、鼻の下の線でサル顔を維持したのだ。

 

"イケメン"秀吉No.1は

 この秀吉=サルのイメージを覆した配役として話題になったのが、第30作『信長 KING OF ZIPANGU』の仲村トオルだった。
 

『信長 KING OF ZIPANGU』
 

『信長 KING OF ZIPANGU』


 これまで暴君として捉えられてきた信長(緒形直人)。その生涯を、ヨーロッパから布教にきた一宣教師の目を通じてその内面まで掘り下げ、新しいタッチで描いた作品で、イケメン秀吉も新しい世界観づくりに一役買った。
 なお、仲村トオルは、第31作『琉球の風』の初回でも、同じ秀吉役で1シーンのみ出演している。

 

"恐怖の"秀吉No.1は

 一方、人懐っこいイメージとはうって変わり、恐ろしい天下人として、強烈な印象を残したのが、第25作『独眼竜政宗』(1987年)の勝新太郎だった。

『独眼竜政宗』
 

『独眼竜政宗』


 主人公の伊達政宗が小田原攻めに遅参して、秀吉と初めて対面。政宗が白の死装束で臨むという見どころのシーンで、勝新太郎が演じた秀吉の迫力はすさまじいものだったと、政宗役の渡辺謙がのちに語っている。「つえでパシッと首筋を叩かれた瞬間、本当に痛かったし、ぞくっとしました」と圧倒されたそうだ。

 

衣裳が表す出世街道まっしぐら

 農民から天下人まで上り詰めた秀吉。それだけに若いころから晩年までを演じる場合、その出世ぶりを表す衣裳の変遷には目を見張るばかりだ。
 第19作『おんな太閤記』(1981年)の西田敏行は、赤いふんどし1丁で川の中に潜り、『秀吉』の竹中直人は青いふんどし1丁で大根畑を走り抜けた。

『おんな太閤記』
 

『おんな太閤記』


 そのほかの秀吉も、最初はごく粗末な麻の着物で登場する。第41作『利家とまつ~加賀百万石物語~』(2002年)で秀吉を演じた香川照之は、「猿と呼ばれていた時代の扮装があまりに汚くて、マネージャーが僕だと気づかなかったんですよ」と笑っていたほど。

 

『利家とまつ~加賀百万石物語~』
 

『利家とまつ~加賀百万石物語~』
 

 それが、身分が高くなるにつれ直垂や道服を着るようになり、太閤になってからは金箔銀箔などがふんだんに使われるようになる。

『天地人』


 今年の『天地人』で秀吉を演じた笹野高史は、「秀吉の金ピカ趣味は心のバランスをとるためだったような気がしますね」と話している。あまりにも強大な権力を手に入れた瞬間、それを失うことの恐怖、守りきろうとするプレッシャーがすごかったのではないかと。「金糸や金箔を使った衣裳はずしりと重くて、それで自分を大きく見せようとした秀吉の必死さがうかがえる思いでした」と語っている。

 

 大河ドラマに秀吉がこれほど数多く登場していたとは驚きだが、歴史上の偉人でありながら親しみやすい庶民の英雄だからこそだろう。

 第21作『徳川家康』(1983年)で秀吉を演じた武田鉄矢さんが、秀吉役のことを「よく耕された英雄」という言葉で表現していた。すでに多くの俳優たちによって役が耕され、「僕の耕す土地は残っているのかな」と思いながら演じたそうだ。




『徳川家康』

 大河ドラマで次に秀吉が登場するのは、2011年、第50作『江 ~姫たちの戦国~』になる。信長の妹・お市の方の三女にして、徳川二代将軍・秀忠の正室、三代将軍・家光の生母「江(ごう)」の生涯を描くこの作品。重要な役どころとなる秀吉を、誰が、どう演じるのか楽しみだ。
 そして、その先の大河ドラマでも、たくさんの秀吉が登場し、そのたびに新たな魅力を引き出してくれることだろう。


秀吉が登場する『大河ドラマ』一覧

放送年(作目) 番組名     秀吉を演じた人 
1965年(3)  太閤記       緒形 拳(※主役)
1969年(7)  天と地と       浜田光夫
1971年(9)  春の坂道      中村芝鶴
1973年(11)  国盗り物語     火野正平
1978年(16)  黄金の日日     緒形 拳
1981年(19)  おんな太閤記    西田敏行
1983年(21)  徳川家康      武田鉄矢
1987年(25)  独眼竜政宗    勝新太郎
1989年(27)  春日局        藤岡琢也
1992年(30)  信長 KING OF ZIPANGU 仲村トオル
1993年(31)  琉球の風      仲村トオル
1996年(35)  秀吉            竹中直人(※主役)
2002年(41)  利家とまつ~加賀百万石物語~ 香川照之
2006年(45)  功名が辻      柄本 明
2009年(48)  天地人        笹野高史
2011年(50)  江~姫たちの戦国~ ? (予定)

  ※なお、2000年(第39作)『葵 徳川三代』の第2回「秀吉の遺言」で、秀吉が息を引き取るシーンがあるが、寝ている姿を遠目で映しただけなので省略した。
                            (2009年9月4日 記)


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みなさんからの投稿

  • 私が豊富秀吉が出てきてよかったと思ったのは、「江、姫たちの戦国」です。これからもどんどん大河を作ってください。  

    ゆーみ|投稿日2013年12月29日 13:58

  • 私は豊富秀吉を「偉大な人」と思っています。すごいです。

    ゆー|投稿日2013年12月29日 13:53

  • 私の豊富秀吉の第一印象は「悪い」ということです。でも戦国時代をタイトルにしようと思うとやはり豊富秀吉は必要不可欠で豊富秀吉がいないとドラマを作成できないのかなと思います。でも今は第一印象と違います。今は、「偉大な人だった」と思っています。

    ゆみ|投稿日2013年12月29日 13:46

  • 豊富秀吉は正直言って最初とても悪い人だと思っていました。でも、どんな大河ドラマをするには必ず、豊富秀吉は必要不可欠な人物だと分かり最近はそこまで悪い人だと思ってきました。特に2011年度の「江、姫たちの戦国」は特にそうだと思いました。でも、豊富秀吉を演じる俳優がだれになるのかということが私は大事だと思います。でも、やはり私の豊富秀吉の第一印象は「悪い」ということです。

    yumi|投稿日2013年12月29日 13:39

  • 龍馬伝では、映画「BLOOD]に続いて要クンが総司を演じるのでは・・・と期待しましたが、香川出身の要クンは龍馬の同僚の役での登場でした。発見は、岡田以蔵を演じていた俳優さん!若き暗殺者の苦悩を巧く表現されていました。一見の価値ありですよ!

    kei|投稿日2010年04月29日 09:08

  • 好きなのは、発展途上の、右肩上がりの(笑)、木下藤吉郎時代の物語なので、だからやっぱり「太閤記」になっちゃうかなぁ~。子どものころ読んでいた「少年少女世界の名作文学」にも「太閤記」が入っていて大好きでしたね。
    「秀吉」に限らず、大河ドラマや他のドラマで、同じ人物を演じた俳優さんが共演したり、同じ場面に出ていなくても、キャスティングされてると面白く感じますね。
    去年の「篤姫」で、同じ場面で勢揃いしたわけじゃなんだけど、過去に「沖田総司」を演じた(大河以外で)俳優さんがやたら出てらしたのが面白かったです。草刈正雄さんでしょ、小澤征悦さんでしょ、堺雅人さんでしょ、森田順平さんもだし、それに北大路欣也さんもその昔演じてましたよね(映画だったかな)。

    更紗|投稿日2009年09月05日 18:15