アカイさんノート: 2009/02/20

連続テレビ小説『ひらり』

 『ひらり』は、東京下町の両国を舞台に、相撲が大好きなヒロイン・ひらりが、近所の町医者をめぐって姉と繰り広げる恋の騒動を中心にコミカルに描いた青春物語。『連続テレビ小説』(朝ドラ)第48作として、1992年度下半期に放送された。
 『朝ドラ』初の「相撲部屋の日常」を描くとともに、若い女性の本音を赤裸々に描写した内館牧子の脚本が話題になった。

ヒロインは相撲大好き20歳

 「いちばん好きで、いちばん得意なことを仕事にするって決めたの。大相撲を仕事にする」
 藪沢ひらり、20歳。思い切りのいい、行動力のあるチャキチャキの下町娘。「男しか踏み入れられない相撲の世界」に関わる仕事がしたいと、様々な困難にぶつかりながら、持ち前の明るさと行動力で体当たり。家族や下町の人々の応援で、やがて相撲部屋専属の栄養士として活躍する。

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若貴ブームにのって大ヒット

 『ひらり』の放送当時(1992年10月~93年3月)は、若花田(当時/後の横綱若乃花)と貴花田(当時/後の横綱貴乃花)の"若貴ブーム"の真っ最中。貴花田はすでに1992年一月場所、前頭2枚目で初優勝。『ひらり』放送中の93年一月場所後には大関昇進を果たし、貴ノ花に改名した。一方、兄・若花田もこの93年一月場所、小結で初優勝した。
 そんなブームを背景に、ドラマも注目を集め、平均視聴率36.9%、最高視聴率42.9%を記録する大ヒットとなった。

 

見る側から書く側へ

 『ひらり』は、内館牧子のオリジナル脚本。内館は、2000年から横綱審議委員もつとめるほどの好角家として知られる。

 13年間OLとして大手メーカーに勤務した後、退職して脚本家を目指したが、当初はあまり仕事がなく、毎朝キッチンでコーヒーを沸かしながら朝ドラ『ロマンス』(1984年)を見ていた。『ひらり』を書く8年前のことだった。
 『ひらり』放送当時のインタビューで、彼女はこう語っている。「『ロマンス』のテーマ曲"夢こそ人生"が大好きで、あの明るさに私はどれほど元気づけられたか(笑)。"よしッ!とにかく今日も頑張ろう"って思わされたのね。『朝ドラ』の元気効果は身にしみてわかっているわけです」

 その後、NHK出版のドラマガイドに『朝ドラ』や『大河ドラマ』のストーリーを書いたり、脚本家や出演者のインタビュー記事を書いたりしていた。そんな経緯もあり、『朝ドラ』執筆の話が来た時は、『ロマンス』を見て励まされた人間が書く側に回るということに、信じられない思いだった、という。

 一方で、ドラマガイドの仕事をしていただけに、『朝ドラ』が脚本家にとって大きな仕事であり、どれほど苦労する仕事か、目のあたりにしてきた。そのため、「まだ早い」という思いもあり、一旦は、断ろうとした。だが、プロデューサー、ディレクターから、「あなたみたいに相撲好きの女の子の話を書きませんか」と提案され、相撲と聞いた瞬間、「お引き受けいたします」と答えたという。

 

ひらりは作者の分身

 内館は、『ひらり』を書くことが決まってから、舞台となる東京の下町を体験しようと思い立ち、まさに主人公・ひらりなみの行動力で浅草に引越した。肌で感じているだけに、季節の情景や風習など、下町に残る"古いもの"とそこに生きる人々の人情の機微が、『ひらり』の世界に巧妙に織り込まれている。
 ドラマの中で、ひらりは両国5丁目に住んでいるが、実際には両国は4丁目までしかない。しかし、質屋があって、鳶職人がいて、祭りがあって、という江戸っ子の人情が今も息づきながら、どんどん都市化が進む町のせめぎあいもリアルに描いた。
 

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汗と涙の「梅若部屋」力士たち

 ドラマで描かれた相撲げいこのシーンは、響き渡る怒号、飛び散る汗と、本物さながらの迫力と評判だった。相撲通の内館牧子をして、「オーディションでよくぞこれだけいい力士たちを選んでくれたものだって、感激しました」と言わしめた力士役たち。実は、学生相撲の出身や大相撲出身ではなく、1992年5月にオーディションで選ばれた、相撲はまったくの素人という俳優たちだった。

 彼らは元前頭2枚目の若ノ海正照(ドラマの中でもコーチ役で出演)の指導を受けて、6月から稽古を開始。週2回の自主トレまで行い、文字通り身体を張って『ひらり』を支えた。

 さらに、「太れ」という至上命令に応え、ひらりの従兄弟「寒風山」役の小林健は80kgから85kgに、部屋頭の「梅響」役の松田勝は82kgから110kgにと、演技だけではなく身体も一回り大きくなった。

 こうしたさまざまな魅力をもった出演者と、相撲の様式美に拘った内館脚本と演出によって、身体ひとつで勝負する世界に生きる若者群像が描かれていった。

 

ドリカムの主題歌も大ヒット

 『ひらり』では、ドリームズ・カム・トゥルーが歌う「晴れたらいいね」も話題になった。朝ドラ第32作『ロマンス』(1984年)の主題歌「夢こそ人生」(作詞:岩谷時子、作曲:山本直純、歌:芹洋子、榎木孝明)以来、8年ぶりの"歌詞入り"主題歌で、『ひらり』以降、朝ドラの歌詞入り主題歌が増えることになる。
 心が弾むような軽快なメロディーは、放送開始とほぼ同時にリリースされ、発売1週目でCDの売上げ約15万枚。いきなりヒットチャートの第1位に登場した(11月2日付オリコン・チャート)。これを機に、ドリカムのアルバム4枚が100位以内にチャートイン。従来のドリカムファンに加え、ドラマをみて主題歌を聴いた幅広い年齢層の心に受け入れられていった証である。

 作詞作曲を担当したヴォーカルの吉田美和は、朝ドラ第14作『鳩子の海』(1974年)が好きで、ヒロイン(子ども時代)の斉藤こず恵が劇中で歌った「日本よ日本」を最後まで歌えるほどの大ファンだったという。
「"ひらり"というひらがな3文字からいろいろ想像してこの歌を書きました。ことばの響きから、気持ちが優しくなったり、勇気が出たり――そのうち詩と曲が天から舞い降りてきた(笑)」と放送当時のインタビューで答えている。

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 ひらり役の石田ひかりさんは、放送前年の1991年、映画『ふたり』『あいつ』で数々の新人賞を受賞し、期待を一身に集めていた。ひらりと同じ20歳ということもあって、明るく行動的な"ひらり"を好演。その魅力で、ドラマ放送中の1992年大みそか、『第43回紅白歌合戦』の紅組司会に、1986年の斉藤由貴と並ぶ、当時史上最年少の司会に抜擢されたのを覚えている方も多いだろう(ちなみに、白組司会者は堺正章さん)。

 その石田ひかりさんは、2008年度下半期に、16年ぶりの朝ドラとして第79作『だんだん』に出演。マナカナ演じる双子のヒロインの母・一条真喜子(花雪)を演じている。
 『ひらり』では、渡辺いっけいさん演じる近所の町医者をめぐり、姉と恋のバトルを繰り広げていたが、今回は、20年前に離婚した夫(吉田栄作さん)や、その現在の妻(鈴木砂羽)との微妙な関係がストーリーの軸のひとつになっている。こちらの展開も楽しみだ。

◇放送期間 1992(平成4)年10月5日~1993(平成5)年4月3日
◇放送時間 総合テレビ 月曜~土曜 8:15~8:30
◇脚 本 内館牧子
◇音 楽 中村正人(ドリームズ・カム・トゥルー)
◇主題歌 「晴れたらいいね」 歌:ドリームズ・カム・トゥルー
◇制作統括 金澤宏次
◇演 出 富沢正幸、諏訪部章夫、若泉久朗、笠浦友愛
◇主な出演者   (カッコ内はドラマ開始時の設定年齢)
         藪沢ひらり (20) 石田ひかり  
  藪沢みのり (25) 鍵本景子  
        (ひらりの姉。大手商社のOL。しっかり者だが、恋は苦手)
  藪沢洋一 (48) 伊武雅刀  
        (ひらりの父。都市銀行の横浜支店長。家庭の中では居場所がない、孤独な父親)
  藪沢ゆき子 (47) 伊東ゆかり  
        (ひらりの母。大恋愛で結婚した洋一との仲は冷めている)
         
  藪沢小三郎 (75) 島田正吾  
        (ひらりの祖父で良き相談相手。質屋「やぶさわ」5代目)
  深川金太郎 (75)   花沢徳衛  
        (ひらりの母方の祖父。伝統ある町鳶の鳶頭。小三郎とは良きライバル)
  深川銀次 (42) 石倉三郎  
        (ひらりの叔父。ゆき子の弟。梅若部屋のおかみ・明子にあこがれている)
         
  安藤竜太 (30) 渡辺いっけい  
        (両国診療所の医師。みのり、ひらりから思いを寄せられる)
         
  梅若虎男 (53) 伊東四朗  
        (梅若部屋の親方。ひらりの人生の師)
  明子 (57) 池内淳子  
        (梅若部屋のおかみ。町内のマドンナ)
  小沢太郎 (40) 若ノ海正照  
        (梅若部屋のコーチ。現役時代のしこ名は「白梅山」)
  加賀谷久男 (18) 小林健  
  (寒風山)     (梅若部屋の力士、ひらりのいとこ)
  椰子の海 (18) マーシー  
        (梅若部屋・ハワイ出身の力士)
  梅響 (21) 松田勝  
        (梅若部屋のリーダー)
  緑風立五郎 (57) 出羽錦忠雄  
        (梅若部屋など8つの相撲部屋からなる緑風一門の頂点に立つ親方。審判部長)
◇語り 倍賞千恵子

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みなさんからの投稿

  • DVD化希望です!!
    面白かった。元気になった。今でも度々思い出しています。
    昨今の朝ドラも面白いですが、一番好きな作品です。

    hap|投稿日2015年06月19日 12:04

  • 当時小学生でしたが、家族で見てました。
    今でも印象に残り、私の1番好きな朝ドラです。
    皆さんのコメントを読みDVDになってないことに驚きました。
    できれば総集編でいいので、地上波で放送してほしいです。

    ゆかりちゃん|投稿日2014年08月01日 18:30

  • わたしは、このドラマの前向きて明るいヒロインのひらりが大好きでした。
    自分の娘もこんな娘だったら。そんな思いで娘の名前は「ひらり」です。
    ハタチになった娘は、前向きで明るい女の子に育ちました。前向きすぎる!ほど(笑)

    ひらりママ|投稿日2014年07月26日 15:02

  • 一番朝を元気にしてくれたドラマ。
    DVD是非希望します。

    Hirotake|投稿日2013年09月06日 12:23

  • かなりの相撲好きで下町派な俺。とくに二人のじいさんのやりとりや銀ちゃんの江戸っ子ぶりも最高だ。入院した小三郎を見舞う金太郎の不器用さに子供ながら感動したのを覚えてます。 

    まこっちゃん|投稿日2012年06月06日 23:56

  • DVD希望です!

    kimura|投稿日2012年01月08日 00:50

  • kanamix3さん、仮量RONJIIさん、僕も投票しました。
    なんでDVDにならないんですかね~「ひらり」は僕の青春す。
    見たいよ~!

    k|投稿日2011年01月04日 06:40

  • 投票してきました。
    以前に「たのみこむ」にもリクエストを出しておきました。
    小林先生の一連の行動をじっくり見たいです。

    仮量RONJII|投稿日2010年10月24日 22:44

  • DVD化希望の方は以下のアドレスで投票をしましょう!
    私も早速してみました。
    『ひらり』は私の青春です!!!

    http://www.nhk-ep.com/shop/contents/product_request.jsp

    kanamix3|投稿日2010年09月19日 13:39

  • 第48作目・ひらりを是非ハイビジョンで放送して下さい。リクエストします。

    KIRARI  |投稿日2010年07月26日 15:02

  • ひらり最高でした!
    当時、中学生でしたが、本当にさわやかで面白いドラマでした。後半、小三郎がロンドンに留学したのが印象的です。
    希望がいっぱい詰まったドラマでした。ぜひDVD発売をしてください!

    k|投稿日2010年07月11日 19:05

  • 「ひらり」のビデオ上・下巻とシナリオ本は持っているのですが、
    全話収録したDVDが欲しいので発売してください。
    朝ドラの中で「ひらり」が一番面白くて大好きです。
    小林先生の熱意と、みのりが幸せを掴んだ所が特に好きです。

    仮量RONJII|投稿日2010年06月26日 15:30

  • あの内館さんは大相撲横綱審議員だったんですんね。なるほど【ヒラリ】の!納得しました。

    金の粒2|投稿日2010年02月24日 18:51

  • >更紗さん
    表記ミス、そして、“朝ドラ最初の歌詞入り主題歌”について、ご指摘いただきありがとうございます。うっかりしておりました。それぞれ修正しました。

    アカイさん|投稿日2009年02月23日 13:32

  • 今気づいたんですけど、上の記事「見る側から書く側へ」で、内館さんが『「ロマンス」のテーマ曲“夢こそ人生”が大好きで・・』って言ってンじゃん!(笑) だからぁ~(笑)、朝ドラ史上初歌詞入り主題歌は「ロマンス」ってことなんで・・。

    更紗|投稿日2009年02月23日 10:37

  • 「ひらり」見ていましたよ!「番組ノート」にあるような深い意味なんて考えもせずに、単純に面白かったです。
    ヒロインの「石田ひかり」さんは「石田ひらり」さんだと思っていましたし、ヒロインのお姉さんの行動が気になったりして、全体的に飽きずに、朝から爽やかな気持ちで見ていました。 再放送が見てみたいと思っていたら、ずっと後になって、教育テレビの「外国人向けの日本語講座」にスキットとして、少し放送されていました。ぜひ再放送をお願いしたいですね!!!

    omame|投稿日2009年02月23日 06:24

  • 小学生の頃に若貴ブームで大相撲ファンになり、はじめて見た連続テレビ小説が「ひらり」です。ドラマ自体もとっても楽しくて、以来朝ドラをよく見ています。
    でも今でも「ひらり」がいちばん!最近私の「いちばん」に並んできたのが「風のハルカ」なんですが、どちらも渡辺いっけいさん出演ですね☆
    小学生の頃は、ひらりのような生き方が正しくて、みのりの優柔不断さが信じられないと思いましたが、今27歳の私はまさに「みのり」!何をするにも迷って揺れて・・・物事に保険をかけて・・・。今思えば、25歳独身なんてまだまだ焦らなくていいんですよね。やはり時代だなぁ。
    「だんだん」では、ひらりも銀ちゃんも洋一さんも出演されていますね。あまり共演シーンが多くないのも「ひらり」にならないためでしょうか(^^)
    花雪さんが着物を着ていてくれてよかった。16年経ってもひかりさんはかわいくって、舞妓をやめて結婚していたときの回想シーンなんてひらりにしか見えなかったです。

    ひらりんご|投稿日2009年02月22日 07:33

  • 「朝ドラ初の“歌詞入り”主題歌」は、「ひらり」ではなく、
    1984年(昭和59年)の「ロマンス」です!
    岩谷時子作詞、山本直純作曲、芹洋子さんと主演の榎木孝明さんが歌われました。

    更紗|投稿日2009年02月21日 15:09

  • ひらりの姉・みのりさんは“しっかり者”というより、真面目で、優柔不断で、ひらりの要領のよさに比べて、なんかこう、がんばれぇ~!って応援したくなっちゃうような女性でしたよね。竜太先生(通称・便所サンダル【笑】)と後任の小林先生の間で揺れ動いちゃうし。
    内館さんのドラマって姉妹で同じ男性を取り合うみたいな、ドロドロ系なものが有名だったから、NHKでそ~いうことになっちゃったらど~しよ~っ!?って心配しましたが、最後の方はみのりさんは竜太先生と小林先生のどっちを選ぶに関心がいって、安心したかなぁ~(笑)。
    石田ひかりちゃんもよかったけれど、脇を固める人が上手な役者さんばかりで楽しかったです。石倉さん演じる叔父さん・銀ちゃんがお酒のアテにキャベツをバリバリ食べてたのも面白かったですね。
    「ちゅらさん」みたいに続編見たかったなぁ~。

    更紗|投稿日2009年02月21日 11:26

  • 誤・・伊藤四朗  正・・伊東四朗
    “小沢太郎”“椰子の海”梅響”のカッコ内の部屋の名前が、「梅若部屋」が「若梅部屋」になっています。

    更紗|投稿日2009年02月20日 21:21