アカイさんノート: 2013/05/02

海外ドラマ・人気シリーズ3  『アリー♥myラブ』 女性弁護士アリーの恋と仕事と人生と...

アリー・マクビール

アメリカ・ボストンの法律事務所を舞台に、そこで働く女性弁護士アリー・マクビールの恋、仕事、友情を描いたコメディードラマ。アリーと個性的な同僚や友人たちが繰り事件の数々、法廷での活躍など、笑いあり涙あり。そして時にはしんみりと考えさせるドラマだった。1998年から総合テレビで5シーズンにわたって放送された『アリー♥myラブ』の軌跡をたどってみた。

等身大ヒロインの“夢”と“悩み”に共感

 物語の舞台は弁護士の主人公アリーが働く法律事務所。登場するのも同僚弁護士や検事、判事など法律関係者がほとんど。たびたび法廷シーンも登場するとなれば、堅苦しいイメージのドラマかと思われがちだが『アリー♥myラブ』の弾けぶりは相当なものだった。

 まずアリー自身が弁護士にもかかわらず(?)、ささいなことですぐに落ち込んだり、パニックを起こしたり。さらには妄想癖もあり、夢と現実を混同しがちというやっかいな存在。常に理想のパートナーを求めているのに、それがかなわないからと情緒不安定になるという実に困ったキャラクターの女性なのだ。ところが、そんなアリーの姿が20代、30代の女性たちの共感を呼んだ。仕事の行き詰まりも、目尻にできたしわも同じレベルで悩み大騒ぎするアリー。まさに等身大の主人公がそこにいたのだ。 

 一方、アリーに輪を掛けた変人(?)ぶりを発揮する登場人物たちの人間模様も見応え十分。アリーと彼らが繰り広げる数々のバトルも見ものだった。それでも最後には協力し合い、難題だらけの訴訟を見事、勝訴に導く場面も痛快だ。訴訟内容も現代社会の病巣をえぐるようなテーマを取り上げることが多く、ただの“おふざけ”だけではなかったところも魅力だった。

 

第1〜第5シーズンの軌跡

 物語は、セクハラが原因で働いていた弁護士事務所を解雇されたアリーがボストンの街で、ばったりロースクール時代の同級生リチャード・フィッシュと再会したことから始まる。リチャードの経営する「ケイジ&フィッシュ法律事務所」で働くことになったアリー。ところが、そこにはアリーの幼なじみで元カレのビリーがいたのだ。ビリーはすでに結婚していた! やがてビリーの妻・ジョージアも同じ事務所に加入。第1シーズン(1998年10月〜99年5月放送)は、ビリー、ジョージアとの三角関係に巻き込まれながら、それでも「いつかは運命の人と結ばれたい」と願うアリーの複雑な心境が描かれた。

 “絶対零度”の美人弁護士ネリー、訴訟マニアで元は事務所のクライアントだったリン。第2シーズン(1999年10月〜2000年3月放送)は、事務所に新たに加わった2人の女性弁護士が強烈なキャラクターを発揮する。そしてビリーから「今でも愛している」と告白されたアリーが幻覚に悩まされるなど、奇行ぶりに拍車がかかった。

 第3シーズン(2000年10月〜01年3月放送)では、ビリーが脳腫瘍を患い帰らぬ人となる悲しい出来事も。そして30歳を迎えたアリー。美容整形に挑戦したり教会に駆け込んだり、アリーの大パニックも見ものだった。

 第4シーズン(2001年10月〜02年4月放送)でアリーはついに “運命の人”に出会う。弁護士のラリーだ。仕事ができて包容力があり気配り上手、歌もうまいし料理も作る。そしてハンサムと言うことなし。アリーだけでなく事務所内でもさまざまな恋愛エピソードで盛り上がるラブリーなシーズンだ。

 最終シーズンとなった第5シーズン(2002年10月〜03年3月)。これまで以上にクセモノぞろいの新キャラが登場。また大物ゲストのオンパレードなど最終シーズンを盛り上げた。最終話、アリーは長年勤めた「ケイジ&フィッシュ法律事務所」を辞めて、ニューヨークへの引っ越しを決意する。

 

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声の出演者たち:(左から)唐沢潤(ジョージア役)、若村麻由美(アリー役)、
山像かおり(レネ役)

 

奇才たちの奇行(!?)善行(!?)蛮行(!?)

 「ケイジ&フィッシュ法律事務所」のメンバーは、実に個性的というか一筋縄ではいかない人物ばかりだ。そんな彼らの不思議な発明や哲学をチェックしてみると…。

 法律事務所の共同経営者ジョン・ケイジは、法廷では向かうところ敵なしという優秀な弁護士だが、カエルのステファンをペットにする内気な変わり者。トイレ便座の温度調節や上げ下げ、水を流すためのリモコンなど、トイレグッズの開発に熱心だ。

 もう一人の経営者リチャード・フィッシュの口グセは「前向きに!」。この言葉自体はポジティブだが、実はフィッシュが口にするときは、逃げの姿勢を表していたり、ごまかそうとしていることもしばしば。それでも、どこか憎めないのがフィッシュだ。また、女性の首の“たるみ”フェチという悪趣味な一面もある。

 他人のもめ事が大好きというアリーの秘書・エレインが発明したのは老化防止グッズ“フェイスブラ”。ほおやあごが垂れるのを防ぐために固定するマスクで、実際に顔に着けて仕事をする姿は、ぎょっとするものがあった。

 人間ではないけれど、『アリー♥myラブ』で一躍人気者になったのがアリーの「妊娠適齢期を示す体内時計」が生み出した妄想という設定の“ダンシング・ベイビー”だ。不気味な顔をした赤ん坊が踊りまくるシーンに釘付けになった人も多いことだろう。

 また奇才ではなく、大物ミュージシャンのゲスト出演も見どころのひとつだった。アル・グリーン、チャビー・チェッカー、ティナ・ターナー、ランディー・ニューマン、バリー・マニロウ、スティング、エルトン・ジョン、マライア・キャリーと、そうそうたる顔ぶれが登場した。

 

ホットスポットは“トイレ”と“下のバー”

 アリーと親友でルームメイトのレネが暮らすアパートも魅力的なインテリアで目をひいたが、ドラマの主な舞台はやっぱり「ケイジ&フィッシュ法律事務所」。それも、なぜか男女共同のトイレが、事務所メンバーの本音が飛び交うホットスポットだった。秘密の話をしていると誰かが個室から出てきたり、トイレにいると心が落ち着くというジョンがトイレ内で空中回転をして入ってきた人に激突したり。ジョンの最愛のペットだったカエルのステファニーがトイレに流されるという事件も…。悲劇(喜劇)はトイレで起きていたといっても過言ではない。

 訴訟が一段落したり、何かお祝いごとがあったり、あるいは何でもない一日の終わりに事務所のメンバーが集まっていたのが“下のバー”と呼ばれていた店。メンバー全員がグラスを傾けて乾杯したり、カウンターで悩みを打ち明けたり、テーブル席でデートをしたりと、さまざまなシチュエーションが繰り広げられた。なかでも圧巻はゲスト出演の大物ミュージシャンによるステージ。音楽番組といってもいいほど豪華な顔ぶれが登場して素晴らしい歌を聞かせてくれた。また、第3シーズンの最終話はミュージカル仕立てのスペシャルバージョンだったため、レギュラー陣がこの店のステージでオープニングテーマを大合唱する姿も見られた。

 法律事務所を舞台に繰り広げられた非日常的な出来事、登場人物がすべて変わり者ぞろい、おかしな事件や脅迫観念の強すぎるアリーの恋愛模様など、独自の世界を面白おかしく描いてきた『アリー♥myラブ』。楽しいドラマだったはずなのに、エンディングテーマの「The End of The World」のメロディーが流れると、さんざん笑ったあとになぜかしんみりとさせられた。一見、ドタバタでいて実は深いテーマも秘めていたコメディードラマだったともいえそうだ。