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ドラマの世界観を表す書あれこれ
その制作舞台裏は・・・
2010年1月29日(金)
今年(2010年)の『龍馬伝』で49作目となる大河ドラマ。今回は、番組の冒頭、タイトルバックに登場する「題字」に注目してみたい。
重厚な刻字の題字が登場
斬新なオープニング映像とあわせて題字が注目を集めたのが、1987(昭和62)年放送の第25作『独眼竜政宗』(主演:渡辺謙)だ。

レーザー光線に浮かび上がる題字、さまざまな形をした変わり兜(かぶと)などを鮮明に記憶している人も多いのではないだろうか。
その題字だが「刻字」という「書いて刻(ほ)る」技法の文字が使われている。刻字は篆刻(てんこく)から発展分化した部門ということで、『独眼竜政宗』の題字を制作した書家・長揚石は当初、重厚性のある篆書体(古代文字体)を用いて表現しようと考えた。しかし、現代人にはなじみのない文字ということもあり、最終的には古代文字風を織り込んだ書となったという。
タテ3・ヨコ4という当時のテレビ画面と同じ比率にはめこまれた「独眼竜政宗」の刻字は、オープニング映像の色彩や光と見事に調和してインパクトのある題字となった。
「切り絵」の題字で幻想的な世界観を表現
「刻字」に続いて、「切り絵」で表現された題字を振り返ってみよう。
1994(平成6)年の第33作『花の乱』(主演:三田佳子)は、室町時代を舞台に八代将軍足利義政の妻・日野富子の生涯を描いたドラマだが、その華麗で繊細な世界にふさわしい切り絵の題字が採用された。制作したのは世界的な切り絵作家・宮田雅之だ。

宮田さんは、次回の大河ドラマが『花の乱』に決まったという新聞記事を読んで、その美しい活字に心を奪われ、思わず文字を切っていたという。
それを知った大河ドラマの制作スタッフが、ぜひ題字として使わせてほしいとお願いして決まったという経緯だ。
『花の乱』では題字だけでなく、毎回のサブタイトル文字、さらにドラマの最後にテーマに合わせた絵を宮田さんに依頼。室町文化を映し出す美しく幻想的な切り絵に目を奪われた。
元就本人の署名が題字に
歴史上の人物が自ら筆をとって大河ドラマの題字を書いた!? そう聞くと驚くが、実は現存する書状から署名を使用して題字としたのが1997(平成9)年の第36作『毛利元就』(主演:中村橋之助)だ。

三本の矢で知られる元就は、武人としてすぐれているだけでなく、教養人であり筆まめなことでも知られていた。そのため数多くの手紙が残されている。題字はそんな書状の中から選ばれたものだ。
原作者や脚本家が題字まで
ドラマの原作者や脚本家の手になる題字もある。

西郷隆盛と大久保利通を主人公に描いた1990(平成2)年放送の第28作『翔ぶが如く』(主演:西田敏行、鹿賀丈史)は、原作者である司馬遼太郎の書だ。

さらに、2000(平成12)年の第39作『葵 徳川三代』(主演:津川雅彦、西田敏行、尾上辰之助)は、脚本のジェームス三木が題字も手がけた。

同じように脚本家が題字も担当したのが2002(平成4)年の第41作『利家とまつ〜加賀百万石物語〜』(主演:唐沢寿明、松嶋菜々子)の竹山洋。脚本だけでなく題字でもドラマの世界を表現したいということだった。
俳優、僧侶と幅広く
俳優の手になる題字もある。

1995(平成7)年の第34作『八代将軍 吉宗』(主演:西田敏行)は、仲代達矢の書。
翌年の第35作『秀吉』(主演:竹中直人)の題字は、味わいのある字で知られ多くの揮毫(きごう)作品がある森繁久弥が手がけた。
さらに、ほかにも奥州藤原氏四代の物語を描いた1993(平成5)年の第32作『炎立つ』(主演:渡辺謙、村上弘明)の題字は、天台宗僧侶の山田惠諦が書いたものだ。

さまざまな分野で活躍する人たちの書は、その人となりを感じさせて興味深い。
若々しい書家たちが"戦国"に挑戦
戦国時代を舞台にした最近の大河ドラマ2作品は、若手の人気書家が題字を担当した。
2007(平成19)年の第46作『風林火山』(主演:内野聖陽)は、書をアートにまで昇華させたと高い評価を得ている書道界の革命児・柿沼康二だ。

制作に必要なのは筆より「ロックミュージックとランニング」と言う柿沼さんは、『風林火山』の題字も酸欠状態になるほど走り込み、自らを追い込んだところで、音楽をかけながら夜通し書き続けたそうだ。
昨年(2009年)の第48作『天地人』(主演:妻夫木聡)の題字は、独自の創作活動で話題を呼ぶ書家・武田双雲だった。

武田さんは、「利」を求める戦国時代にあって「義」と「愛」を重んじた主人公・直江兼続の生き方に共感する部分が多かったという。しかし、いざ文字を書き始めるとなかなかピンとくるものにたどり着けず、苦しんだとか。
最終的には「傷つきやすくナイーブな心を持ちながら志を遂げていく」姿を込めた題字になった。
女性書家たちが活躍
今年の『龍馬伝』は、ユニークな活動を続ける書道家・紫舟さんが手がけた題字にも注目が集まっている。紫舟さんによれば「繊細でシャープで、情熱を秘めたイメージ」を込めたそうだ。
同じように、女性の書家が手がけた作品も何作かある。
最近では2008(平成20)年の第47作『篤姫』(主演:宮﨑あおい)が青森在住の書家・菊池錦子の手になるものだった。

「凜(りん)として真っ直ぐひたむきに進む強さのなかに、たおやかさ、寛容さを。そして全体に風が通り抜ける感じで書いてみました」という菊池さん。江戸城大奥で時代を見据えた天璋院篤姫の見事な生きざまを題字からも感じさせてくれた。
今回、改めて大河ドラマ49作品の「題字」に注目して、その舞台裏をひもとき、書を担当した方々を以下の一覧でまとめてみた。
ただし、初期の作品は、タイトルバックに担当者の名前が無いものがほとんどで、不明のままとなっている。情報をお持ちの方は、ぜひお寄せいただきたい。
大河ドラマの題字担当者一覧
放送年(作目) 番組名 題字担当(※空欄は不明)
1963年(1) 花の生涯
1964年(2) 赤穂浪士
1965年(3) 太閤記
1966年(4) 源義経
1967年(5) 三姉妹
1968年(6) 竜馬がゆく
1969年(7) 天と地と
1970年(8) 樅ノ木は残った
1971年(9) 春の坂道 山岡荘八
1972年(10) 新・平家物語 望月美佐
1973年(11) 国盗り物語
1974年(12) 勝 海舟
1975年(13) 元禄太平記
1976年(14) 風と雲と虹と
1977年(15) 花 神
1978年(16) 黄金の日日
1979年(17) 草燃える
1980年(18) 獅子の時代 渡辺裕英
1981年(19) おんな太閤記
1982年(20) 峠の群像 望月美佐
1983年(21) 徳川家康 渡辺裕英
1984年(22) 山河燃ゆ
1985年(23) 春の波濤 望月美佐
1986年(24) いのち
1987年(25) 独眼竜政宗 長 揚石
1988年(26) 武田信玄 渡辺裕英
1989年(27) 春日局
1990年(28) 翔ぶが如く 司馬遼太郎(原作者)
1991年(29) 太平記 大鹿洋江
1992年(30) 信長 渡辺裕英
1993年(31) 琉球の風 水谷勇夫
1993年(32) 炎立つ 山田惠諦(天台宗僧侶)
1994年(33) 花の乱 宮田雅之
1995年(34) 八代将軍吉宗 仲代達矢(俳優)
1996年(35) 秀 吉 森繁久弥(俳優)
1997年(36) 毛利元就 毛利元就(自筆書状より)
1998年(37) 徳川慶喜
1999年(38) 元禄繚乱 渡辺裕英
2000年(39) 葵 徳川三代 ジェームス三木(脚本)
2001年(40) 北条時宗
2002年(41) 利家とまつ 竹山 洋(脚本)
2003年(42) 武蔵 MUSASHI 吉川壽一
2004年(43) 新選組! 荻野丹雪
2005年(44) 義 経 陳 變君
2006年(45) 功名が辻 だん きょうこ
2007年(46) 風林火山 柿沼康二
2008年(47) 篤 姫 菊池錦子
2009年(48) 天地人 武田双雲
2010年(49) 龍馬伝 紫舟
(2010年1月29日 記)
ことし(2010年)までの大河ドラマ49作品のうち、39作品を、全国のNHKにある番組公開ライブラリーでご覧いただける。ぜひ、それぞれのドラマの世界観を表す「題字」にも注目していただきたい。






















題字の作成者が誰か?っていうのは書かれてなかったんですけれど、NHKの演出の大原誠さんの「NHK大河ドラマの歳月」(昭和60年刊)を読んでいたら、「タイトルバックは第二演出者の責任において制作することになっている。(中略)プロデューサーを含めて何日も議論する」」ってあったから、題字をどなたが書いたか当時のスタッフの聞いたらわかりそうですよね。
私の好きな題字は「国盗り物語」です。馬の疾走する脚が映ったあと、バンッって「国盗り物語」って画面いっぱいに出てくるんだけど、たて一直線でも、横一直線でもなく、右上“国”、右下“盗”、左上“物”、左下“語”で、“り”が“盗”と“語”の間に書かれてるんですよね。
題字の出方がテーマ曲と合っていて、躍動感があったしとてもインパクトがありました。
(更紗)
投稿日2010年01月30日 04:16
篤姫の題字を書いた書家のお名前は、菊地錦子ではなく、菊池錦子です(「菊地」ではなく「菊池」地ではなく池)。
ご訂正ください。
(くにのら)
投稿日2010年02月04日 14:06
>くにのらさん
誤字のご指摘、ありがとうございました。
お詫びして、訂正いたします。
(アカイさん)
投稿日2010年02月04日 22:57
「徳川慶喜」の題字は、主演の本木雅弘ではなかったかと記憶しています。
(匿名)
投稿日2010年03月12日 17:38
>匿名さん
お問い合わせ、ありがとうございます。
大河ドラマ『徳川慶喜』の制作スタッフに尋ねたところ、「主演の本木雅弘さんに書いていただいた文字はポスターに使いましたが、番組には使用していない」とのこと。
番組の題字は、「隷書体」という書体を組み合わせてNHKで制作したものということです。
(アカイさん)
投稿日2010年03月12日 18:52
総集編のオープニングを見て分かったのですが、新・平家物語の題字は望月美佐と書いてありました。
(k,h)
投稿日2010年05月20日 17:28
>k,hさん
情報ありがとうございます。
私も、NHKアーカイブスに保管されている『新・平家物語』総集編・上の巻、下の巻(1972年12月30日、31日放送)のオープニングで、「タイトル題字 望月美佐」の表記を確認しました。
記事の「大河ドラマの題字担当者一覧」に、この情報を追加しました。
(アカイさん)
投稿日2010年05月25日 14:07
第9作の春の坂道ですが、その原作本をだいぶ前、読みました。
そのときは、作者の山岡荘八さんが題字を書いてあったと思います。それをそのままタイトル字にしたのではと思います。
映像が残ってるそうですが、その本とVTRでお確かめしてもらえればありがたいです。それでは。
(サワダヒロタ)
投稿日2010年07月31日 19:23
>サワダヒロタさん
確認しました。NHK放送センターの図書室に昭和46年に出版された本が保存されていました!本の題字は「山岡荘八」、確かにドラマのタイトルと同じです。
情報ありがとうございました。
(アカイさん)
投稿日2010年08月03日 14:41
「国盗り物語」のタイトル文字はダイナミックさに溢れ本当に素晴しい。当時中学生だった私を未だに魅了し続けている題字です。是非とも当時、制作に携わった方に調査して頂ければと願っています。
ところで「風と雲と虹と」のタイトルは原作者の海音寺潮五郎氏。NHK大河ドラマ・ストーリーの目次(P15)に記名されています。(昭和51年1月・日本放送出版協会発行) また「花神」のタイトルは川村実氏。NHK大河ドラマ・ストーリーの目次裏(P4)に記名されています。(昭和52年1月・日本放送出版協会発行)。
私は趣味で大河の新聞記事等を収集した頃もありましたので資料価値の重みを十分に理解しています。家庭用ビデオ等ない時代、タイトルバックを残したくてテレビ画面を写真に撮っていたくらいです。ドラマを録音テープで録ったりもしていました。全国の皆様が楽しめるアカイさんノートの更なる充実を心から応援致しております。
(別府の湯)
投稿日2010年09月25日 06:12
大河ドラマも「江」で50作になりましたね。
歴代の大河ドラマの題字が、けして書家の手によるものだけではなかったということが、意外でもありましたが、よく分かりました!!
それは書道の伝統的な技法云々という次元ではなくて、デザイン的なセンスとか、書かれている人の精神性が反映されている、いわば一癖ある個性的な題字にしようという、演出意図がそこにあるのですね。
(良助)
投稿日2011年06月13日 01:50
どうすれば自分が書いた字が表題になるのか教えていただきたいです。
わずかながら書活動をしているので、夢です。
(梨華)
投稿日2011年12月16日 17:43
「国盗り物語」は躍動感あるオープニングの映像と、題字と、そしてテーマ曲が見事に合っていて、大好きでした。
その曲を書かれた林光さんが亡くなられたそうですね。
私は現代音楽にはあまり興味も、接する機会もありませんでしたが、大河ドラマでは日本を代表する作曲家の音楽を聴けて、なおかつN響の演奏で、しかももちろん日本を誇る指揮者の方々の指揮で聴けるというのが本当に贅沢なドラマだなぁ~と思っています。
林さんの作曲では「花神」もそうだそうですが、これもいい曲ですよね。
ゆるやかに漂って、なんというか曲に抱かれる感じで、これも好きです。
ご冥福をお祈りします。
(更紗)
投稿日2012年01月09日 11:59