NHKスペシャル『マネー革命』

ドキュメンタリー/教養平成10年代1990年代ま-もA-M


突撃取材で迫る!
世界を動かす米金融業界の裏のウラ


番組ノート

2009年4月10日(金)

 NHKスペシャル『マネー革命』は、アメリカのヘッジファンドと呼ばれる金融業界の裏側に迫った、1998(平成10)年放送、4回シリーズのドキュメンタリー番組。
 時代は、投機のプロたちがコンピューターネットワークで世界を結び、ノーベル賞受賞者による金融工学を駆使して莫大な利益を上げる一方で、世界の金融は混乱し、ロシアや東南アジアの国々に深刻な財政危機をもたらしていたころ。
 今回は、とかく難解な最先端の金融の世界を、番組の制作者たちがどう取材し、どう伝えたのかをお話ししよう。

マネー革命   マネー革命
葛西アナウンサーと相田ディレクター

 担当ディレクター自ら語る

 NHKスペシャル『マネー革命』は、難しいテーマをわかりやすく伝えるため、あるユニークな進行スタイルが採られた。
 それは、制作担当の相田洋(ゆたか)ディレクターが、向かい合って座るアナウンサーを相手に、取材の裏話や逸話、エピソードの数々を、映像を交えて講談調に語りかける独特のもの。
 かつて相田ディレクターが制作して大ヒットしたNHKスペシャル『電子立国 日本の自叙伝』(1991年・6回シリーズ)、NHKスペシャル『新・電子立国』(1995~96年・6回シリーズ)と同じものだった。前2作の三宅民夫アナウンサーに対して、『マネー革命』では葛西聖司アナウンサーが聞き役を務めた。

 実は、この進行スタイルの源は、NHK衛星放送の試験放送中の番組にさかのぼる。
 1987年、総合テレビで放送されたNHK特集『自動車』。4回シリーズの放送時間の合計が3時間30分に対し、相田ディレクターら制作スタッフが実際に取材した映像素材は500時間にものぼった。この500時間の素材を活用して、担当ディレクター自身が取材秘話を語るという企画が、当時、放送枠を埋めるのに窮していた衛星放送で採択され、『自動車~日米 世紀の攻防~』というタイトルの特集番組10回シリーズ(放送時間は、54~99分と各回まちまち)で放送された(このときの聞き役は松平定知アナウンサーだった)。
 このスタイルが視聴者から大反響を呼んだ。「日頃テレビで見ている情報なんて現実のごく一部だと改めて思った」「ディレクターとアナウンサーの本音が聴けて、総合テレビより数段面白かった」などの意見が寄せられたのだ。かくして、この演出スタイルがNHKスペシャル『電子立国 日本の自叙伝』『新・電子立国』、そして『マネー革命』に引き継がれることになった。


素人制作集団の七転八倒の取材

 『マネー革命』では相田洋のほか5人のディレクターが担当した。それまで歴史番組や朝の生活情報番組を制作してきたが、みんな金融にまったく縁がなかった。

 制作スタッフはまず本集めに奔走。スタッフルームに500冊もの本が積み上がった。さらに、金融を題材にした映画を見て楽しみながら知識を得ていった。その中には、株式市場や先物取引に関係ある映画として、『エデンの東』(ジェームス・ディーン演じる主人公が豆の先物取引で儲けるシーンが出てくる)から『男はつらいよ~第34作 寅次郎真実一路』(寅さんが酒場で知り合った証券会社の社員を訪ねるシーンが出てくる)まであった。
 同時に大学の教授や外国為替ディーラーなど専門家に会って、なかなか理解できない話を聞く日々が続いたという。金融用語の「裁定取引」という言葉について、「裁判所の決定にしたがった取引ですか?」といった落語もどきの珍問答の連続だったという(正しい意味は、「同じ金融商品が別の市場で異なる価格で取り引きされているとき、割安な市場で買って割高な市場で売ることで利ザヤを稼ぐこと」)。


突撃取材で特ダネをつかむ

 1年にわたる取材・制作期間中、制作スタッフは数々の特ダネをつかんだ。
 中でも、ビクター・ニーダーホッファーという天才投機家へのインタビュー成功は、世界中をおどろかせた。彼は、1997年10月のニューヨーク株式市場大暴落のため、たった1日で50億円もの損失を出し破産。150社以上のマスコミから取材申し込みが殺到していたものの、それまで一切応じていなかったからだ。
  実はこのスクープインタビューは、偶然と突撃取材の賜物だった。取材クルーは最大手ヘッジファンドの取材で、まだ撮影許可が取れない中、せめて建物外観だけでも撮影しようとコネチカット州に飛んだ。ところが、この会社は別の場所に移転しており、撮影はまったくの空振り。途方に暮れるスタッフの1人が地図を見ると、同じく取材申請をしたものの2か月以上返事がないあの破産投機家・ニーダーホッファーの自宅が近くにあることに気付いた。とりあえず場所の確認のためと、自宅前まで行った取材クルーは、ダメもとでインターフォンを押してみた。アメリカでは住居不法侵入罪で訴えられることがあるので、アポ無しはめったにない。ところが、ニーダーホッファーはクルーを敷地内に招き入れ、後日、1週間後、インタビュー撮影に応じたのだ。世界中でたった1社、特ダネを掴んだ瞬間だった。


 


 この番組が放送された1998年から10年あまりたった。当時、金融界混乱の元凶とされたヘッジファンド。そのヘッジファンドを産み出したアメリカの投資銀行が、今度は世界金融危機の元凶とされるサブプライム・ローン問題を引き起こし、消滅の危機に直面している。

 金融危機はなぜ起きたのか? 巨大マネーはどのように膨張していったのか?
 NHKスペシャルでは、2009年4月から『マネー資本主義』5回シリーズを放送する。第1回のタイトルは「"暴走"はなぜ止められなかったのか~アメリカ投資銀行の興亡~」(総合テレビ4月19日(日)放送)だ。投資銀行を破綻にまで追い込んだ真相に迫る取材成果を是非見て欲しい。



NHKスペシャル『マネー革命』
◇放送期間 1998(平成10)年11月23日~1998(平成10)年12月11日
◇放送時間  総合テレビ 21:00~22:14(第4回のみ21:30~22:44)

●第1回「1日で50億円失った男~ある投機家の栄光と挫折~」 11月23日
 わずか1日で50億円もの大金を失って破産した米国の大物投機家に密着取材。当時の世界経済大激動の主要因とされながら、それまでベールに包まれてきた「ヘッジ・ファンド」の実像とは?

●第2回「世界は利息に飢えている」 11月29日
 地球上を縦横に結ぶコンピューターネットワークを駆使して、年間40%という驚異の利回りを出し続ける巨大ヘッジファンド。何億円にも上る富をほんの数秒で稼ぐ投機のプロたち。金融界の大物たちの素顔と手法に迫る。

●第3回「金融工学の旗手たち」 12月6日
 現代社会を左右する「金融の怪物」デリバティブは、米国のノーベル経済学者たちの手で10年ほどの間に大発展を遂げた。金融工学と呼ばれるその手法を作り上げてきた人々の波瀾万丈の物語を紹介し、現代のマネー革命の全貌に明らかにする。

●第4回「リスクが地球を駆けめぐる」12月11日
 コンピューターネットワークとデリバティブによって瞬時に地球を駆けめぐる巨大なリスク。巨大損失や市場崩壊がどのようにして起きるのか、ロシア危機やブラックマンデーの舞台裏を探る。

みなさんからの投稿

私は、「電子立国」のときの、相田さんと三宅アナとのツーショットが印象に残っているんですけど、このスタイルが「視聴者の目線」というか、コンピューターにも金融にも疎い者と同じ目線で解説、説明してくれていたのがよかった、というか、スゴイ面白かったです。
たぶん全部は理解できてないんだけれど(笑)、とっつきやすかったです。

(更紗)

投稿日2009年04月15日 10:39


「マネー革命」は経済や投資に関心ある学生に是非見せたい番組です。「マネー資本主義」も期待してます。 日本のメガバンクから地銀まで金融工学が発展してる中で果たして経営方法が変わり経営体制を変革してきたのか疑問。外資がM&Aを主導してきた。企業価値を上げるマネーのあり方が問われてる。

(知足)

投稿日2009年04月26日 11:32


アカイさんの別場所でも書き込みさせて頂いたのですが、こちらにも書きますね。
多分、20年くらい前のNHKのドラマ、9:00ぐらいだったと思います。8:00からだったかも? 連続ドラマではなかったような感じです。
記憶違いかもしれませんが、そのドラマの設定は、何年後かの日本だったように思います。それで、違う話がいくつかあるオムニバスだったような記憶です。
その中のある話で、・・・ある家族(母と子供)が、見知らぬ老人からこんなことを言われます。目には見えないが、 今!この目の前を 大金が流れてる。大河のように・・・どうどうと音を立てて・・・
たぶん、こんな意味のセリフだったように、思います。なんというドラマだったのか思い出せません。ぜひ、どんな内容のドラマだったのか知りたいですね。
私は、ハゲタカも大好きなドラマでした。ハゲタカを見た時、瞬間的にこの老人のセリフが
思いおこされ、気になっていました。
また、ある話では、自動車を組み立てる自動ロボットの設計者の話でした。多分、もう、あの頃に描かれた何年後かの日本は過ぎていると思います。現実では、ちょっと違った日本になっているように感じますね。
さて、今 また このようなドラマをNHKが、つくるとしたら、どのような日本を、描くのか、凄く興味があります。
意外にも、明るい日本であればいいのですが・・・

(ナオ)

投稿日2009年07月31日 21:46


著名人がたくさん出ていて、もう一度見たいんですが、アーカイブにもないし、検索しても情報ありませんで、非常に残念です~~。
本も買ったけど映像が見てみたい。

(オンデマンドに入れてください)

投稿日2010年02月02日 12:59


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平家全盛時代を築いた
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アカイさんが書きつけてきた、番組資料の膨大な数のノート『アカイさんノート』には、みんなが知っている有名な番組から思い出すのに苦労するような番組まで、メモや写真で事細かに記録してあります。

読めば読むほど、番組の様子やその当時のことが思い起こせる『アカイさんノート』。
さあ、みなさんもアカイさんと一緒に、NHKアーカイブスの奥深~い世界をのぞいてみましょう!

愛犬ブースとともにみなさんからの投稿を待っています。


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