緒形拳と「大河ドラマ」

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『太閤記』から『風林火山』まで
出演9作品を振り返る


番組ノート

2008年10月10日(金)

 緒形拳さんが2008年10月5日、突然この世を去った。緒形さんといえば、1965(昭和40)年、27歳で大河ドラマ『太閤記』の主役・秀吉に抜擢されて一躍人気となり、2007年の『風林火山』まで9作品に出演。どの作品でも抜群の存在感を示していた。今回は、緒形拳さんが大河ドラマに残した足跡をたどってみよう。



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 『太閤記』~主役に大抜擢で一躍スターダムに

 1965(昭和40)年放送(緒形拳27歳=初登場時の年齢)。
緒形拳の出世作となった記念すべき大河初出演作品。"サル"と呼ばれ信長に仕えた日吉丸が、やがて天下をとるまでをいきいきと演じ、大評判になった。
 大河ドラマ第1作『花の生涯』、第2作『赤穂浪士』の配役がオールスターキャストだったのに対し、3作目の『太閤記』は一転 して若々しく新鮮な配役となった。これは、演出を担当したのが、それまでドキュメンタリー番組『日本の素顔』や『現代の映像』を手掛け、ドラマは初めてだった吉田直哉ディレクター(奇しくも、緒形拳が亡くなる5日前、9月30日に逝去)の方針だった。吉田は「こっちも新人だから、役者も新人で」と、新国劇のホープだった緒形拳を主役の秀吉に、文学座研究生の高橋幸治 を織田信長役に抜擢したのだった。石田三成役の石坂浩二は慶應義塾大学に在学中だった。
 俳優のギャラが安い分だけ、製作費をロケに回すことができ、ヘリコプターを使って収録した大規模な合戦シーンなども、テレビドラマの新境地を開いた。
 吉田の大きな賭けは、平均視聴率31.2%、最高視聴率39.7%という好結果をもたらし、大河ドラマの人気を決定的に。緒形、高橋、石坂の3人はスターダムにのし上がった。



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 『源義経』~連続出演!準主役の弁慶に

 1966(昭和41)年放送(緒形拳28歳)。前年の『太閤記』に引き続き、準主役である武蔵坊弁慶をスケール大きく演じた。
 物語は、源平戦乱の時代、数奇な運命に翻弄された悲劇の武将・源義経の生涯を描くもので、京の五条の橋での義経・弁慶の対決や、最後の"弁慶の立ち往生"など、見せ場の連続だった。また、主役・義経を演じた尾上菊之助(現・尾上菊五郎)の当時23歳という若さも評判になった。



 『新・平家物語』~壮大な歴史絵巻を見つめる医師役

 1972(昭和47)年放送(緒形拳34歳)。
 盛者必衰の運命をたどった平家一門の政権獲得から栄華の時代、そして壇ノ浦で源氏に敗れるまでの姿を、平清盛(仲代達矢)を軸に描く華やかな歴史絵巻。
 緒形は、庶民の目線で歴史の大きなうねりをみつめる医師・阿部麻鳥を好演した。
 『大河ドラマ』10作目となったこの作品は、ほかにもそれまでの大河ドラマの主役級が勢揃い。源頼朝に高橋幸治(『太閤記 』で織田信長役、『天と地』で武田信玄役)、北条政子に栗原小巻(『三姉妹』でお雪役)、以仁王に北大路欣也(『竜馬がゆく』で坂本竜馬役)など、豪華なキャスティングが大掛かりなセットとともに話題になった。



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  『風と雲と虹と』~準主役の西海の雄・純友

 1976(昭和51)年放送(緒形拳38歳)。
 時は平安中期、京の都で権勢をふるう藤原氏に弓を引いた坂東の風雲児・平将門(加藤剛)と、西海の雄・藤原純友。緒形は、準主役の純友を演じた。
 大河ドラマでは(2010年の『龍馬伝』までで)最も古い10世紀半ばを舞台に、悲運の反逆者を主人公として、歴史ドラマの可能性の挑戦した作品。正義感あふれる坂東武者・将門と瀬戸内で海賊団を指揮した大胆不敵な純友の友情、そして、壮大な夢をダイナミックに描いた歴史ロマンとなった。



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  『黄金の日日』~13年ぶりの秀吉はかたき役

 1978(昭和53)年放送(緒形拳40歳)。
 緒形拳の秀吉、高橋幸治の信長、という『太閤記』のゴールデンコンビが13年ぶりに復活。ファンを喜ばせた(ちなみに、『太閤記』で秀吉の正室・ねね役だった藤村志保は、側室・淀君を演じている)。
 ただし、今回の秀吉は、主人公である堺の商人・呂宋(るそん)助佐衛門(市川染五郎/現・松本幸四郎)のかたき役。初め二人は立場こそ違え友情で結ばれていたが、ルソン交易や自由都市・堺の支配をめぐり、次第に対立していく。緒形は、権力の鎧に次第に覆われていく凄みのある秀吉像を見事に演じ切った。



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   『峠の群像』~2度目の主役は経済視点の忠臣蔵

 1982(昭和57)年放送(緒形拳44歳)。
 赤穂浪士の討ち入り事件を縦軸に、元禄の時代と人間たちを描く大河ドラマ20作目。大石内蔵助役の緒形にとっては『太閤記 』に次いで2度目の大河主役となった。
 原作は、元通産官僚で、のちに経済企画庁長官も務めた作家・堺屋太一。元禄を高度経済成長の"峠"をのぼりつめた時代としてとらえ、赤穂藩断絶を企業倒産になぞらえるなど、経済の視点で「忠臣蔵」事件を見つめ直した。緒形の内蔵助もこれまでの忠臣蔵とは一味違ったものになった。



  『太平記』~動乱の途中で尊氏に後を託す父親役

 1991(平成3)年放送(緒形拳53歳)。
 鎌倉幕府を滅亡させ、その後建武政権に背いて室町幕府の初代将軍となった足利尊氏(真田広之)を主人公に、南北朝の動乱 を生きた多彩な人間像が繰り広げる歴史絵巻。緒形は、尊氏の父・貞氏役。表面上は柔らかく優しく見えるものの、実は中に屈 折したもの、背負ったものをたくさん抱え、それが回を重ねるに従って見えてくるという複雑な役どころだった。
 ちなみに、この『太平記』の翌年、次男の緒形直人(当時24歳)が『信長 KING OF ZIPANGU』で主役の信長を演じている。



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   『毛利元就』~元就に大きな影響を与えるカッコいい知略家

 1997(平成9)年放送(緒形拳59歳)。
 主人公・毛利元就(中村橋之助)が少年時代に出会い、その後の生き方に大きな影響を与える出雲の守護・尼子経久(あまご ・つねひさ)をカッコよく演じた。
 緒形は演じるにあたって、次のように語っている。「経久に対する一般的なイメージは"陰謀家"でしょうが、私は闊達(かったつ)に演じたいと思っています。天下が統一される前の時代、生きていくのに当然のことをしたまでしょうから。そんな人間の欲望や嵐みたいなどよめきがドラマから伝わればいいなあと思っています」。



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 『風林火山』 ~Gackt"謙信"を支える知的な老軍師

 2007(平成19)年放送(緒形拳70歳)。
 緒形拳の大河ドラマの出演は『毛利元就』以来10年ぶり。そして、最後の大河となった。
 演じる宇佐美定満は上杉謙信(Gackt)の軍師であり、武田信玄(市川亀治郎)の軍師である主役の山本勘助(内野聖陽)と"軍師対決"を繰り広げる知的な老将として、8月から登場した。緒形は宇佐美のキャラクターについて「力と力が拮抗した戦国時代の中でのインテリジェンス、知的な老将」ととらえ、「武将にあるまじき優しさみたいなものが目に宿るといいな」と語っている。越後に潜入してきた山本勘助と腹のうちを探り合いながら「ふふふ」と笑って酒を飲むシーンは、まさにそんな宇佐美の懐の深さを見事に表現していた。


 28歳から70歳まで、40年余りにわたって、大河ドラマ9作品に出演した緒形拳さん。ほかのテレビや映画、舞台同様、大河でも主役・準主役はもちろん、後年に演じた脇役も、それぞれの物語になくてはならない"かなめ"だった。
 みなさんは、どの緒形さんがいちばんの思い出だろうか。


番組公開ライブラリーで観られるのじゃ!

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 緒形拳さんが出演した大河ドラマのうち、次の作品をNHKの番組公開ライブラリーで見ることができる(いずれも総集編) 。ぜひもう一度、緒形さんの名演をご覧いただきたい。
  『源義経』
  『風と雲と虹と』
  『黄金の日日』
  『峠の群像』
  『毛利元就』


視聴できる番組の検索・お近くの番組公開ライブラリーはこちら


みなさんからの投稿

(今回のノートを執筆中、更紗さんより下記の投稿を別番組の投稿枠でいただいた。ここに改めて掲載させていただく/アカイさん)


アカイさんにリクエストなんですけれど、もし可能なら「大河ドラマ」の「太閤記」を取り上げてください。
まるで申し合わせたようなタイミングで、ディレクターの吉田直哉さん、主演の緒形拳さんが相次いで亡くなられ、言葉にできない思いを持ったわけでして・・。
晩年の醜悪な秀吉ではなく、知恵と行動力で出世していく藤吉郎は本当に面白かったです。
緒形さんの葬儀に藤村志保さんも参列したというのを読んで、「“ねね”さまだものねぇ~・・。」って感慨深かったです。
「太閤記」ではいろいろな俳優さんが演じられましたけど、私にはやっぱり「藤吉郎」は緒形さんだし、「ねね」は藤村さんだし、「信長」は高橋幸治さんです。

(更紗)

投稿日2008年10月10日 23:47


アーカイブとして見た物でしょうか。緒形さんといえば「源義経」の「弁慶の立ち往生」の場面がとても印象に残っています。今回の訃報ニュースで、この場面が出てこなかったのが不思議なくらい印象が強いのですが、みなさんはどうだったのでしょうか(家としては「太閤記」を見ていたはずなのですが、私が小さかったからか、はっきりと記憶に残っているのは「新平家物語」からです)。
私も更紗さん同様に「秀吉」は緒形拳、「信長」は高橋幸治で決まりです。「黄金の日日」ではお二人が出られたので、涙なみだでした!
「風と雲と虹と」の「藤原純友」も印象が強い役柄でした。
緒形拳さんのご冥福を本当にお祈りいたします。

(omame)

投稿日2008年10月11日 06:01


アカイさん、こんなリクエストの投稿まで掲載しなくていいですから!!(笑)でも、嬉しいです。
ワイドショーで津川さんが、緒形さんの臨終の場面を語っておられましたが、『目をカッと見開いて、歌舞伎役者のよう・・』というのを聞いて、「源義経」の“弁慶の立ち往生”みたいだったのかなぁ~って思いました。あの場面は、本当に怖かったです。
今思い出したんですが、前なにかで読んだんですけど、
緒形さんはこの「太閤記」の原作者・吉川英治さんが詠まれた「春風や 藤吉郎の いるところ」っていう俳句が好きだったそうです。緒形さんの演じられる藤吉郎は本当にこんな感じでしたねぇ~・・。

(更紗)

投稿日2008年10月11日 07:18


緒形拳さんは役者としていつも最高の演技を旨として演じていた気がします。あの眼光は迫力満点。まだテレビの創世記に28歳で大河ドラマ「太閤記」に主演してた頃、白黒テレビで家族10人で見てたこと思い出します。一作ごとに演技がうまくなり最後は秀吉そのものの堂々とした立ち姿が一番印象に残ります。

(夢人)

投稿日2008年10月11日 20:36


緒形拳さんと大河ドラマについての、このブログを拝見できて、良かったです。2ちゃんねるで、紹介してくだっさった方がいらっしゃり。
私は20年近く前、緒形さんのサインが頂きたくて、京都の映画村に行ったのです。緒形さんのサイン会は、筆書きのサインを手渡ししてくださる、というスタイルでしたから、順番がすぐ進む感じで、あまり、話しかけすぎると、流れを止めるような気がして、早口にまくしたてて、伝えたいことを申しました。
”子供の頃から、緒形さんの必殺とか、秀吉とか大好きで”あったこと、(緒形さんが、大阪MBSのインタビューで、ご自身の健康法について、半身浴で、合掌している旨を話されていたので)、私は、手を合わせながら、”これからも、こうーやって、頑張ってください”、と。
緒形さんが、私の早口なおしゃべりとポーズに”ハハハハッ”と、満面の笑みでウケてくださり、来た甲斐があって、大変嬉しかったですし、ホッとしました。
「黄金の日日」で、涙と鼻水にまみれながら、”秀頼のこと、くれぐれも、お願い奉り候”みたいなことをしたためる、あの演技が特に印象的です。
私は、直人さんのサインも朝ドラ「ファイト」の懸賞で頂きましたし、追悼番組で、幹太さんと、直人さんが、いい持ち味の個性がそれぞれありつつ、仲良く兄弟としてご出演なのを見ることができて、微笑みも交えながら思い出を語られていて嬉しかったです。

(マシュマロ)

投稿日2008年10月12日 19:06


さきほど、投稿させていただきましたが、また、書かせていただきます。
緒形さんご出演の大河で、NHKに行かせていただいて今一度、拝見したいのは高校時代に見ていた、『峠の群像』です。家老として、藩の再興も願い、何を考えているかわからない様子で、奥方にびしびし言われている、ふわっとした、面白いところもある内蔵助さんでした。
姫路菓子博に春に参りましたとき、姫路城は、秀吉がもとは、建てたとのことで、また、赤穂の塩饅頭などを、見ると、緒形さんの大河を思い出していました。

(マシュマロ)

投稿日2008年10月12日 19:43


アカイさん、私のまとまりのない文章を掲載してくださって、お恥ずかしいやらで。でも、有難うございました。
高畑淳子さんは、神戸で舞台を見て好きになった女優さんで、その高畑さんが、緒形さんと「毛利元就」で、尼子氏で夫婦役になられて、楽しみにして拝見してました。追悼番組で拝見しましたが、緒形さんが、自分の女房役として、高畑さんにリラックスできるように話してはったんですね。
「NHKステラ」で載っていた、玉山鉄二さんと緒形さんの対談で、緒形さんは、”「帽子」の続編をやろうよ、春平が、遺影で”とかそのようなドキッとすることをおっしゃって。
でも、その「帽子」での、玉山さんとの対談で、玉山さんが来年ご出演の大河を見ているよ、というようなこと、緒形さんはおっしゃっていたので、緒形さんがきっと、上のほうから見守っているだろう、来年の大河、玉山さんにも注目して拝見したいと思っています。

(マシュマロ)

投稿日2008年10月15日 08:21


初めて緒形さんを見た連続ドラマは「開化探偵帳(1968-69年?)」でした。子どもだったので演技のことはわかりませんでしたが、かっこいい刑事役で最終回には泣いてしまいました。

(ハチ)

投稿日2009年01月21日 23:39


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