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老人ホーム入居権詐欺。犯人からの指示に注意
小原敏幸(記者)
2023年01月27日 (金)

詐欺にだまされないための対策を考える「ストップ!詐欺」。
今回のテーマは「老人ホーム入居権詐欺。犯人からの指示に注意」です。
去年(令和4年)、「老人ホーム入居権」などをかたる詐欺、いわゆる「架空請求詐欺」が大幅に増えました。
こちらは去年、青森県内で確認された特殊詐欺全体の被害件数です。
全体の件数は一昨年よりも減りましたが、「架空請求詐欺」が23件でほぼ倍増しています。
このうち「老人ホーム入居権」の被害は一昨年はゼロだったのですが、去年は「架空請求詐欺」全体のおよそ4割、被害額はおよそ3500万円に上りました。
今回は、この詐欺の特徴である「犯人からの指示」について、実例を紹介します。
去年8月、県内に住む70代の女性のもとに住宅販売会社の社員を名乗る人物から電話がかかってきました。
そして、その人物から「新たに建設する老人ホームに入居する権利があるが、どうするか?」と聞かれます。
女性が「入居する予定はない」と答えると、この人物から、「他の人に権利を譲っていいか?」と問われ承諾します。
そして、数日後、別の会社の社員を名乗る人物から電話があり、「入居費用をお支払いいただきありがとうございました」と伝えられます。
女性は「自分は支払っていない。他の人に権利を譲った」と話すと、その人物は「それは名義貸しであり犯罪だ」「トラブルの解決に1000万円必要だがいくら払えるか」とたたみかけてきます。
女性は「300万円くらいなら払える」と答えます。
すると、この人物は女性に対し「金を下ろす際は銀行の窓口の担当者に不動産投資に必要な金だ」と話すよう指示しました。
ここが今回のポイントです。
近年は銀行でも特殊詐欺を防ごうと、高額のお金を下ろす際に使い道を聞くことがあります。犯人はそれをかいくぐるために、被害者に指示を出しているのです。「窓口の担当者にこう説明せよ」というのは要注意です。
そして、女性はその指示に従い、窓口で現金300万円を下ろしてしまいます。
女性は指定された住所に現金300万円を宅配便で送るのですが、この人物はその際に宅配物の品名の欄に「本」と書くように指示しました。
老人ホーム入居権をめぐる詐欺では、金を下ろす理由や現金を送る際の品名などについて細かく具体的に指示するケースが少なくありません。
こうした指示があった場合は、まず詐欺であることを疑いましょう。
一方、「トラブルに巻き込まれてしまった」と思い込むと焦りを感じて指示に従ってしまいかねません。まずは落ち着いて家族や警察に相談しましょう。