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青森大学×NHK 大学生と未来を考える 青森ミライラボ「人口減少と若者の未来」後編

執筆者佐藤裕太(記者)/ 吉永智哉(記者)
2023年05月12日 (金)

青森大学×NHK 大学生と未来を考える 青森ミライラボ「人口減少と若者の未来」後編

青森の未来を考える研究室「青森ミライラボ」。
前編に続き、青森県が抱える最大の課題の1つ、人口減少と若者の未来について、今回は20年以上前から「りんご娘」をプロデュースしてきた、リンゴミュージック代表の樋川新一さんをスペシャルゲストに迎えてじっくり考えました。

どうして青森県で、アイドルをプロデュースしようと考えたのでしょうか。

僕も高校を卒業してから、都会に憧れて青森を出て進学・就職をして、そしてUターンで青森に戻ってきました。
すると、例えば、若者にとって本当にワクワクする憧れのストリートだった弘前の土手町商店街が、いろんなお店が無くなってシャッター街になってしまっていたんです。
もちろん僕らが小さい時も、人口減少をはじめいろんな課題が挙げられていましたが、青森に戻ってきて、街に元気がなくなってさみしくなっていく様を見て、何か元気にできないかなと単純に思ったのがきっかけです。
アイドルなら、小さい子どもからお年寄りまで楽しませながら町も元気にできる、活性化ができるんじゃないかなと思ったんです。

なるほど。きっかけは青森が衰退することへの危機感で、解決策の1つとしてワクワクするエンタメという道を選んだということなのですね。

ここからは、青森大学の学生200人余りに答えてもらったアンケートの調査結果から見えてくることを、樋川さんと一緒に考えます。回答を分析すると、3つのキーワードが見えてきました。

▼県外志向
▼安定志向
▼青森の将来、悲観的?

この3つの観点から結果を見ていきたいと思います。

まず1つ目です。
将来どこで働きたいか聞いたところ、県外での就職を希望する学生が6割近くになりました。県外で働きたい、「県外志向」です。どのようにご覧になりますか。

このデータは、僕らが若い時とあまり変わっていないと思うんですね。ただ、青森県に生まれた若者がいったん県外に出て、都会と田舎、県外とふるさととの違いを知ることで青森の良さにも気付くことができるので、都会に出ること自体は構わないと思います。
逆に、県外から大学生が青森県に来ると思いますが、そうした学生さんたちに青森をもっと大好きになってもらい、将来青森に住んで仕事をしたいと思ってもらえるようなきっかけが必要かなと思います。

続いて、仕事選びで大切なことは何か、聞きました。
複数回答で、全体の70%余りが「収入の安定」を答えました。ほかにも「ワークライフバランス」、「長く続けられる」などが上位にランクイン。
「安定重視」の傾向がみられました。
樋川さんは、本業のかたわらで、りんご娘をプロデュースする“挑戦”を選択されたわけですが、「安定重視」の傾向をどのように考えますか。

たくさんの学生さんと関わる中でいろいろお話ししてみると、若者自身というよりむしろ両親の思いが大きいと思います。自分がいなくなったあと、子どもたちが安定した生活をしてほしいという親の強い愛情があります。
そして子どもも、その思いをくんで職業を選択している部分があると思うんですね。
ただ、本当にこれから人口が少なくなっていく時代です。
さらに、「人生100年時代」と言われていますので、60歳で定年したあともまだまだ長いですから、やはり“1人多数役”というか、1人で何役もこなす、たくさんの仕事をできる時代になると思います。
安定した仕事ももちろん大切だけど、若い人たちにはそれ以外にも、自分が本当にワクワクするような、やってみたい仕事や趣味でも何でもいいので、心に夢の種をたくさん植えてくださいとアドバイスしています。
100年におよぶ長い人生の中で、そうした夢がいくつも叶っていく時代になっていきます。そういう考え方がこれからは大切かなと思います。

キーワード、最後の1つです。
青森の将来について、よい方向と悪い方向、どちらに向かうと思うか。5段階評価で聞いたところ、「悪い方向」と答える学生はおよそ4割で、「よい方向」を上回りました。
若者が青森の未来に対して希望を持てるようにするためには、どうしたらいいでしょうか。

「地域を活性化させたい」という思いで23年前に芸能プロジェクトを始めましたが、当時から青森はあまりよい状況ではなかったんですね。ただ、「青森には夢がある」「必ずいい町になる」「楽しい元気な町になる」といったイメージが、まずは大事だと思います。
地域の活性化には「よそ者・ばか者・若者」が必要だということばがあります。ちなみに僕は「ばか者」、普通の人が考えないようなことを、「そんなことできるわけないだろ」と言われ続けてもやり続けています。
僕1人では続けてこられなかったんですけれど、それを一番助けてくれたのは、実は「よそ者」、県外の人たちなんです。県外の人は都会の良さももちろんわかっていますが、青森にしかない魅力、われわれのふるさとの魅力に一番気付いてくれる人たちなのです。そういう人たちにかなりサポートしてもらい、青森の魅力をエンターテインメントとして出すお手伝いをしてもらっています。
そして、あとはもう「若者」です。私が運営するアクターズスクールでは、小学校3年生から大学生、社会人まで、若い人たちで青森を盛り上げようということで頑張っているので、まだまだ可能性、チャンスはあると思います。

「よそ者・ばか者・若者」。
そうした人たちと接点を作って具体的にアクションしていくことが大切だということですね。
樋川さん、ありがとうございました。

取材後記 長谷川 史佳(アナウンサー)

“安定”を求める青森の若者たち。先が見えない未来、失敗したら自分だけ取り残されてしまうのではないかという不安――。
学生たちの姿を見た時、就職活動をしていた頃の自分を思い出しました。

一方、今回スタジオでお話しを伺った樋川さん。
かっこいい、率直にそう思いました。
「『夢のタネ』をまき続けて欲しい」と笑顔で話す樋川さんの姿が印象的でした。

できるはずがないと言われても、諦めずに自分の夢に向かって突き進み、次々と実現している樋川さんの姿は、本当にまぶしく映りました。
樋川さんのようなかっこいい先輩がいる青森は、もっともっとおもしろくなる!「青森には夢がある」と信じて走り続ける樋川さんのように、私も青森に暮らす若者やその未来を、これからも応援し続けていきたいと思います。

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